2006年01月15日

つきは見ている〜祈り〜オンライン小説 作品

日本ブログ大賞読み物部門に参加しています。


つきは見ている〜祈り〜

隆二は、窓の外をぼんやり見ていた。

もう何時間も外を見ている。外は夕日が落ちて、もうすっかり日が暮れた。

今日見かけた花屋にいた女性はさゆりなのか・・・

さゆりには5年前に振られた、そうとう嫌われているようだった。

なぜか分からない。電話も繋がらない。そのまま5年が過ぎた。

俺はさゆりのことが好きだった。

そのとき、どこからか声がした。見上げるとつきが話している。

つき「悩み事か?」

隆二「5年前に振られた女のことが忘れられなくて、俺はなぜ振られたかもわからない。

5年前に戻って俺が振られた原因を知りたいのだが・・・」

つき「その願い、叶えてやろうか」

隆二「本当か?昔に戻ることは可能なのか?」

つき「ああ、ただ、過去は変えられないから、お前は昔言ったとおりにしか

話せないし、行動できないのだが・・・つまり、過去のお前を見ている状態に近い。

そして、願いは一度だけだ」

隆二「お願いだ、俺は知りたいんだ。5年前に戻してくれ」

つき「わかった、明日、遊園地に行け」



遊園地、ここが俺がさゆりとデートした最後の場所だった。

さゆりに会った、笑顔はまぶしかった。

ああ、会いたかった。懐かしかった。つきよありがとう。



そのとき、急ブレーキの音、車どうしがぶつかった。

俺はとっさに助けに行こうとした。さゆりもそうだった。

しかし、手足が動かない話もできない。過去の自分の行動通りにしか

動かない・・・

過去の俺は、さゆりの手をひいて遊園地に向かっていた。

隆二「ほっとけ、あんなのにつきあってたら、せっかくのデートが無駄になる」

忘れていた、振られたショックで忘れていたのか・・・

さゆり「ちょっと待ってよ、今私たちしか見てなかったじゃない」

隆二「俺はさゆりといる時間を1分1秒でも無駄にしたくないんだ」

さゆり「でも・・・」

隆二「さあ、行こう」

過去の俺はどんどん手を引いて、アトラクションに向かっている。

待てよ、待ってくれ過去の俺よ待ってくれ。

隆二「さあ、行こう、今日は1日楽しもう」

あっ・・・あの時、気づかなかったけど、

隆二「みんなが、並ぶ前に並ぼう」

もしかして、

あの事故の車に乗っていたのはさゆりのお父さん?

似ている。

さゆりのお父さんに間違いない。

さゆりは目が悪い、気づいてないんだ。過去の俺も気づいていない。

隆二「やっぱり、最初はジェットコースター」

さゆりは、乗り気でない顔をしている。しかし、過去の俺はひとりで馬鹿みたいに、

はしゃいでいる。そうだ、今、あの場所に花が添えられてる。さっきはなかった。

だれか、あの場所で死んでいるのだ・・・助けないといけない君の父さんを。

一刻もはやく。

隆二はさゆりの手をひいて、ジェットコースターに向かっていた。

俺はもがいた、もがき苦しんだ・・・地獄のデートは続いた。

ああ、もうダメだ。涙が出てきた。しかし、涙は流れない。

きっと・・・さゆり、ごめん。ごめんではすまないだろうけど。

午後2時、デートがようやく終わった。

さゆりは、気分が悪いと行って帰っていった。

遊園地から出たとき、さゆりは消えた。


ようやく、手足が動かせるようになった。

今に戻った。泣けてきた、ようやく涙がでるようになった。

俺は叫んだ「さゆり」




あの場所に花を添えている女性が振り向いた。

さゆり・・・そこに、いたのか・・・

さゆりは逃げるように去っていった。

隆二は黙って見送った。涙が止まらなかった。



つきが出るのを待っていた。ようやくしぶとい太陽が沈んだ。

隆二「つきよ、お願いだ、もう一度願い事を叶えてくれ」

つき「願い事は1回だけだ、それは前にも言ったはずだ」

隆二「俺は交通事故で苦しんでいるさゆりの父さんを助けなかった

だから・・・俺が殺したんだ・・・どうすればいいだ俺は・・・」

つき「さゆりは教会の手助けをしている。その教会はもうぼろぼろだ、

建て直すお金もまだ集まってない手伝ってやれ」

隆二「さゆりは許してくれるだろうか」

つき「やるだけやって祈るだけだ」


稼がなくてはならなかった。

俺はとにかく、働いた。昼夜を問わず働いた。

それから、自分の名を明かさず、教会に寄付した。

さゆりは許すことはない。でも、俺はさゆりのために何かを

せずにはいられなかった。

教会の近くの家を回り寄付を呼びかけた。

何人かは寄付をしてくれたようだった。



そして、2年の歳月が経った。


新しい教会が建った。

さゆりが新しい教会に入っていった。

さゆりは手を合わせ、そして、祈った。


隆二の幸せを




童話小僧〜創作童話の世界〜
オンライン小説
ショートショート

オンライン小説 作品




jinjin13 at 08:42│Comments(19)TrackBack(1)シリーズ〜つきは見ている | 大人の童話

トラックバックURL

この記事へのトラックバック

1. 本当の幸せ  [ 世界の終わりの端っこで ]   2006年01月16日 15:58
童話小僧?創作童話の世界?:つきは見ている?祈り?(オンライン小説) - livedoor Blog(ブログ) 童話小僧さんのお話を読んであまりにも切なくなってしまったので勝手に続きみたいなものを書いてしまいました。 −−−− さゆりは街の教会で手伝いをしている。 数年...

この記事へのコメント

1. Posted by めろんぱん   2006年01月15日 20:01
泣いてしまいました・・・。
悲しいけど いいお話ですね。
自分の過去を そして未来を考えさせられました。
2. Posted by のぞみ   2006年01月15日 20:58
つきの存在大きいですね。
途中せつなくなりましたけど結末がほっとしました。
過去は振り返れるのは記憶の限界までですね。童話小僧さんのお話好きです★
3. Posted by 戀子。   2006年01月15日 23:13
今度は...
さゆりさんの願いが叶う。
彼の幸せは、彼女なのだから....
二人が「つき」の前で、笑っているといいな...
4. Posted by ぷりん王子   2006年01月16日 02:16
シリーズとおして、つきのキャラクターがはっきりしていて良いですね。
それにしても隆二、ひどい男だ
5. Posted by ユキ   2006年01月16日 08:04
5 おはようございます(^o^)/
ユキでーす。切なくなりました。目の前の魅力に惑わされるのは当たり前で、裕二さんは仕方がなかったとは思います。お互いの運命が変わっても二人が思うのは相手の幸せ、というエンディングにユキ涙がでました(;_;)自分の悲しみに裕二さんを巻き込まないがために、恋を離れ父の供養をするサユリさんに優しさとは何かを学びました。童話小僧さ〜ん(;_;)
6. Posted by 陽月美龍   2006年01月16日 15:18
5 読み終わった瞬間にとっても切なくなりました(TT)
私はこの2人に幸せがやってくることをねがってしまいます。
7. Posted by ユキ   2006年01月16日 15:35
童話小僧さん、ごめんなさい。祐二さんでなくって、隆二さんだったのですね・・・
8. Posted by kokoro105   2006年01月16日 21:06
5 過去が変えられたなら、どんなにいいだろう・・・。
でも、変えられない。
過去は変えられない。
・・・変えられないけど、見つめなおすことはできる。
間違いは正すことができる。
それは、物によっては一生かかることかもしれない。
でも正せる。
それが、人の儚さ、そして強さなのかもしれませんね。

あと、これは余計なコメントなのかもしれませんが、あえて。
出来れば、登場人物の個人名を、物語調にしてくださるといいな、と思います
(外国人名だったり、実在しない名前だったり)。
実在する名前だと、童話の中にどうしても現実が覗いてしまう感じがするから。
それと、名前によっては、知り合いの名前とかぶってしまって、その印象が抜けなくなってしまうから。

あくまで、一意見ですので。
童話小僧さんの童話、切なくて暖かくて、大好きです。
これからも頑張ってくださいねv
9. Posted by 童話小僧   2006年01月16日 21:21
めろんぱんさんへ

いつも<(_ _*)> アリガトォ
泣けるような話を書きたいと
思っていたので泣いてもらって
嬉しいです。

のぞみさんへ

はじめまして。読んでくれてありがとう
ございます。またお越しくださいね。たまにはいい物語も書きますから。

戀子。さんへ

つきが見守っているので、
2人はきっと幸せになると思います。
10. Posted by 童話小僧   2006年01月16日 21:39
ぷりん王子さんへ

隆二はひどい男でした。でも今はいい人になりつつあります。
許してあげて下さい。

ユキさんへ

今回のテーマは泣ける話だったのすが、
いまいちかなと思っていたら、
(;_;)マークがあってちょっと
喜んでいます。
これって不謹慎ですね。こめんなさい。
11. Posted by 童話小僧   2006年01月16日 22:11
陽月美龍さんへ

続きを考えてくれてありがとうございます。2人の幸せを祈っていたので
私も安心しました。

kokoro105さんへ

kokoro105さんの言うとおり過去の間違いを正すことが人間の強さだと思います。
過去のあやまちをただす行動をすると、
過去も変わってくると思います。

名前の件ですが、もう少し夢のある話が書ければそのような名前もつかってみたいと思います。
今のところ存在しない名前を使うと
私の力量不足でリアリティーに欠けて
しまうので実在する名前になっています。
名前は1度使ったものは使わないように
心がけています。

12. Posted by nonbiri   2006年01月17日 18:37
こんばんは♪ 「月」の問いかけ方がとても落ち着いていて、お話のポイントになっているのが好きです。ショート・ショートなのに、いつも心に残るお話なので「童話 小僧さん」って凄いですよね☆ (*^。^*)
13. Posted by SUKI   2006年01月17日 19:43
はじめまして、SUKIと申します。
大人の童話素敵でした。
更新が楽しみです!

リンクをはらせて頂いたのですがいかがでしょうか?(アホブログなので・・・お恥ずかしい限り)
ご迷惑でしたらすぐに外しますのでご連絡くださいませm(_ _)m
どうぞよろしくお願いいたします。
14. Posted by 童話小僧   2006年01月17日 22:27
のぞみさんへ

以前、そちらのブログにお邪魔した
のぞみさんでしたね。
リンクがなかったので勘違いしました。
m(_ _;)m ゴメンナサイ!!
15. Posted by 童話小僧   2006年01月17日 22:38
nonbiriさんへ

つきの問いかけの時は、ちょっと
格好つけて書いています。
ヾ(・・;)ォィォィ
また、格好いいつきを書きたいと思います。

SUKIさんへ

リンクしていただいてありがとう
ございます。私も更新が楽しみです。
まだ、書いていませんが・・・・・・
(´0ノ`*)
16. Posted by kazuhikoo   2006年01月17日 23:22
5 月の他にも、見ている者がいると信じたい。
人の過去は変えられなくても
過去を振り返ることで未来は変わるはずだから。
17. Posted by 童話小僧   2006年01月18日 09:14
kazuhikooさんへ

そうですね。今をどう生きるかで
過去の見方も、未来も変わってくると
思います。



18. Posted by おぢ。   2006年01月18日 10:27
ご無沙汰してました、童話小僧さん。

つきは見ている〜
心に沁みる物語をありがとうございました。

またお邪魔しますね。
19. Posted by 童話小僧   2006年01月18日 20:46
おぢ。さんへ

読んでくれて<(_ _*)> アリガトォ。
心に沁みる物語を書けるように
頑張ります。

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔