人性補欠 桑原田日記

2017年の初夢をみた。
その日の夜、僕は人性補欠のメンバーとスタジオに入っていた。
曲作りが上手くいかないことや、メンバーのアレンジ意識、創作意欲の低さに腹が立っていてとうとう「お前ら勝手にやっとけ!」と僕はスタジオを飛び出した。

深夜の2時くらいだった。季節は夏から秋に変わる頃。僕は未来型車に乗って行き先もなくただひたすらに車を走らせた。
この未来型車とはハンドル操作一切不要の車だ。タイヤも付いてないし道路に埋め込まれた強力磁石を利用して宙に浮きながら走る車。
先ほど、行き先もなくと書いたがその車にはカーナビゲーションシステムが搭載されていて「行き先を教えてください」のナビゲーションのアナウンスがあり、「どこか遠くへ。」と僕は答えていた。
夜から朝になった。スタジオから変わらずに僕の心は気持ち良いものとは程遠かったけど、秋先の朝が照らす空の色だけ気持ち良さそうに光っていた。

「ドンッ!プシューー!」の音で僕は目を覚ました。しまった。完全に居眠り運転をしていた。辺りを見回すとそこは全く知らない土地で、道もボコボコしている。おそらくここは道路にまだ強力磁石が埋め込まれていない無磁石道路立ち入り禁止地帯と呼ばれる場所だ。
「ゴロゴロゴロゴロ!ガコン!」
急なストップによって車の部品が外れて小さな部品が転がっていった。転がった先には古ぼけた民家があり、その家の外壁にガコン!とぶつかった。

やっちまったな。車を降り外壁を見ると少しだけ擦れた跡が残っていた。謝ろう。「すみません!誰かいらっしゃいますか?」と玄関越しに声をかけると、中から男の子とその男の子のお母さんが出てきた。
「すみません、実は」と謝ろうとすると、それを遮るようにお母さんが「これを読んで欲しいの。」と一冊の絵本を僕に差し出した。
その本は英語で記されており、題字の上には和訳で『世界を売る男』と書かれていた。
1ページ目をめくると強烈な挿絵が書かれていた。それは黒人の子どもたちが白人の子どもたちを縄で吊るし上げて遊んでいる挿絵だった。
読んでいくと、かつて白人に植民地にされ人種差別を受けてきた黒人が恨みと憎しみから長い年月を経て権力を持つようになり、今や白人は植民地にされ「白人問題」が生まれた。全てが逆転したという物語だった。

読み終わり「なんでこれを僕に?」と聞くとお母さんは何も言わずに優しく微笑んだ。
するとさっきまでサッカーボールで遊んでいた男の子が「それだけじゃないんだよお兄ちゃん。1ページ目の絵をもう一回みてごらん。そう、その白い肌の子どもたちの頭のところ。そこにこの絵本の本当のメッセージが隠されてるんだよ。」
僕は1ページの挿絵に戻り吊るし上げられていた白人の頭の部分を見た。なにやらそこにはみたこともない文字が逆さまになって書かれていた。
「これ、どういうことなの?」
男の子に尋ねると男の子は「お兄ちゃんまだ分からないの?これはね…」と言いかけた時、僕は夢から覚めた。

その絵本が何を意味していたのか、男の子とお母さんが僕に言おうとしていたことは何なのか、は思い出しても分からない。
ただ、そこに小さな小さな黄色い僕に確かに光と闇をみたことは確かだ。

元旦、通販からのメールで1st ALBUM「人性補欠」のCDが欲しいと連絡があった。住所は埼玉県になっていたが今鹿児島にいて直接いただけるならありがたいということで中央駅のアミュ広場に向かってみた。向かう途中にゲスの極み乙女。のまりちゃんに会った。「この子従兄弟なんだー。明日東京戻るねー。またね。」と可愛らしい笑顔でバイバイした。可愛かった。

アミュ広場の待ち合わせ場所付近に到着すると荷物をたくさん抱えた男性がいた。
感覚的に彼だ。と思った。
近づいてみると彼はこっちを見て軽く会釈をした。話を聞いてみるとどうやら埼玉から友人と九州旅行をしているらしい。10日ほど前にyoutubeを聴いて僕らのことを知ったらしい。今から電車に乗って宮崎の都城へ行くというのでCDにサインを書いて渡してまたどこかで会いましょうと行って別れた。

そのままアミュの眼鏡屋さんへ行って壊れていた眼鏡を直してもらった。
正月はセールをやっているからか人が滅法多い。大阪の梅田くらいの人だかりだ。ということは今日大阪の梅田はグッチャグチャのライブハウスみたいになってんだろうなとか考えたらちょっとにやけてきた。ダイブしながら買い物してるおば様方を想像しながらアミュの知り合いのいるお店へ行って新年の挨拶をした。
そのお店でたまたま中学の同級生でHIP HOPをやっている折尾に会った。折尾は相変わらずの立ち振る舞いでガッチリ握手をキメてさよならした。
本屋に行ったが、欲しかった本がなかったので村上春樹の「職業としての小説家」を購入。
そのまま鍵を失くしてライブハウスCAPARVO HALLに止めっぱなしにしてた自転車を取りにそのまま天文館まで歩いた。
途中出水でイベントをやっている慶大佐に遭遇。神社帰りの彼女の目はまんまるしててなんだか光に満ち溢れた目をしていた。今年も出水で面白いことしようねと約束してバイバイ。
CAPARVO HALLの地下へ行くと自転車は早く乗ってと言わんばかりに僕を待っていた。
ただ、鍵がなくて開かない。どうしようか悩んでいるとライブハウスによく来てくれるハマダさんが現れた。ハマダさんは僕と同じ歳なのだがライブハウスの番人みたいな人なのだ。「何してるんですか」と聞くと「ブラブラしててさっきコーヒー買って、今ブラブラしてる。YES FUTURE行くね。」とのこと。どんだけブラブラするんだよ!とツッコミを入れたいところをグッとこらえて今年もよろしくお願いしますでバイバイした。
CAPARVO HALLの下にある居酒屋『とんとり』のおっちゃんに会ったのでペンチを借りて自転車の鍵を切った。
「今日は17時からやってるからよー。」とおっちゃん。自転車の鍵買いに行ってもしかしたら行くかもとおっちゃんに伝え自転車屋さんに行った。
自転車トミハラで鍵とライトを購入し、天文館の本屋さんMARUZEN(手塚治虫の漫画ほぼ置いてるから大好きな本屋さん。でっかい本屋さんなのに人が少なくて図書館みたいな本屋さん。永島慎二の漫画も置いてー。)に行って欲しかった銀杏BOXZぴあを買った。

そのまま1人でCAPARVO HALLの下の「とりとん」へ。
おっちゃんメッチャ喜んでくれた。2017年第1号だー。って振る舞い酒と正月料理出してくれた。
1人だったから買った本読もうと思ってたけどなんかおっちゃんと話してたら読む気なくなっちゃった。
帰って読もう。


昨年指宿のおばあちゃんが亡くなって本当は明けましておめでとうって言ったらいけないんだけど。
おばあちゃんの分までたくさんの人に言いたい。

明けましておめでとうございます。人性補欠は今年で10年を迎えることが出来ました。
今年もどうかよろしくお願いします。
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出水ZIP!で行われた熊本震災チャリティーイベント『FUTURE LINK』に出演した。出水に行くのは2回目で、前回は今年の3月20日の『Connect by sounds』。年に2回も出水でライブ出来ることを本当に嬉しく思っていた。主催の慶大佐と協力してくれてる出水や水俣のみんなに感謝だった。

会場に着いて、前回と同様に「だいわ」の中にあるうどん屋に入った。お腹は空いてたけど全然腹の中に入って行かなかった。
うどん屋を後にして東京スカパラダイスオーケストラとken yokoyamaのコラボ曲「道なき道、反骨の。」をイヤフォンで聴きながらライブ会場へ戻った。
イベントがスタートしてまずはダンスの部。小中学生が練習してきた踊りを一生懸命踊っていた。恥ずかしそうにしてる子もいたが、目は真剣な眼差しで真っ直ぐ前だけを見ていた。可愛かったしかっこよくみえた。
なんでかそこら辺から自分の中にあるモヤモヤに気づき始めた。
そこからはバンドのライブ。
何かが俺の中で襲いかかってくるのが分かった。誤解して欲しくないがイベントがどうのこうのとか、出演していたバンドがどうのこうのという話ではない。あくまで自分の中にある怒りにも悔しさにも悲しさにも近いようなものが時間が過ぎるに連れて、何度も何度も襲いかかってきた。そいつは出番が近づくほどだんだんとデカくなっていった。
自分の一番嫌っていた「慣れ」みたいなものもその要因に含まれていたんだと思う。

人性補欠の出番になり4曲目の「終わらない」を歌い終えたくらいだった。保たれていた、いや、無理してずっとずっと保っていた1本の感情の糸がプツンと切れた。

あとはあまり覚えていない。
ただ滲みながらも、笑顔でステージを観てくれている人、真顔でステージを観てくれている人、楽しそうな顔をしてステージを観てくれている人、睨みつけるような顔でステージを観てくれている人。その顔だけが少しだけだが記憶に残っている。

楽屋への階段を登る途中にアンコールらしき声が聞こえてきた。この日ステージに戻ることは出来なかった。

『FUTURE LINK』に来てくれたみんなへステージからもっとしっかりありがとうが言えたら。そう思ったらまた自分の小っぽけさに悔しくなって情けなくなって。


帰りの車。

やっと一周出来たんだ、と思った。
遅い早いはあるだろうがやっとこの景色に戻ってこれた。俺はたまに精神発達障害者と呼ばれることがある(笑)が、全くその通りでやっとやっと気付けることが多すぎる。

そんな俺に何度も何度も気付かせてくれる場所を作ってくれ、与えてくれる人たちがいた。
彼らともいつか一緒に真のガッツポーズがしたい。本音の本音だ。


ふと『ボロボロになったらツアー』中にメンバーが離脱して、ファイナルを迎えずしてツアー中断になったことを思い出した。
少なからず待ってくれていた人がいたはずのあのツアー。
いつか絶対ファイナルやるから。
もっと強くなって、優しくなって、面白くなって、カッコよくなった時に。


あらゆる物事は全てが繋がっていて、それを人は「物語」と呼んだりもする。
俺も君ももうすでに、今まさに、その真ん中にいるのだ。



thank you song

道なき道、反骨の。/東京スカパラダイスオーケストラ feat. ken yokoyama
元気はなくすなよ/SION

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