2009年04月21日

日本へ再入国しないことを条件とする「日系人離職者に対する帰国支援事業」は憲法違反だ

4月1日から、厳しい再就職環境の下、再就職を断念し、帰国を決意した日系人に対し、同様の身分に基づく在留資格による再度の入国を行わないことを条件に、一定の帰国支援金を支給する制度がスタートした。帰国支援金を支給すること自体は結構なことであるが、これを受け取った日系人に対して同様の身分に基づく在留資格による再度の入国を認めないこととする入管制度上の措置を執ることは憲法上の重大な問題をはらんでいる。


厚生労働省は支給対象者が再入国しないことを約束させるとしているが、これが仮に、「定住者」「日本人の配偶者等」「永住者」などの在留資格を有する日系人が、入管法に定める再入国許可申請を行った場合にも、これを許可しないという趣旨であるならば、再入国許可に関する法務大臣の裁量権を逸脱あるいは濫用するものとして、違法と言わざるを得ない。


すなわち、帰国支援金の対象者は、日本人の血を引く移民2世・3世など特別な地位を有する人たちであり、それゆえに入管法上も優遇された在留資格を与えられて定住する人たちである。そのような事情を踏まえて考えると、これらの人たちが支援金を受け取ったからといって、法務大臣がその再入国許可申請を不許可とする合理的理由とはならない。再入国の許可は、実際の運用では、我が国の法律に違反する行為を行ったとか、著しく国益に反する行為を行ったなどの事由がない限りは、ほぼ100パーセント許可されている。そのような特段の消極事由がないにもかかわらず不許可とするのは、「社会通念に照らして著しく妥当性を欠く」処分に当たるものというべきである。


この制度では、いったん帰国した日系人が、有効な旅券等を所持して再び来日しようとする場合の上陸審査において、戸籍謄本等の資料により日本人の子孫としての入国目的の正当性(在留資格該当性)を立証するときにもその入国は認められないこととなる。入管法上は、有効な旅券等を所持する外国人が、在留資格に該当し、かつ上陸拒否事由に該当しない限り、義務的に入国を許可することとされている。社会通念に照らして、帰国支援金を受け取ることが上陸拒否事由に該当するとはとうてい考えられない。


それにもかかわらず、行政運用上の措置として、その入国を認めないとするのは、法律によらずして、特定の外国人(帰国支援金を受け取った日系人)に限って、上陸拒否事由に該当しないのに入国を禁止するものであって、他の一般外国人の入国手続との関係で日本国憲法に定める平等原則に反するのみならず、法治主義の原則にも反する。


日系ブラジル人をはじめとする日系人は、過去の我が国の海外移民政策に応じてブラジル等に移住し、苦難の道を歩んで今日の地位を築いた人たちとその子孫である。1990年の入管法改正による日系人に係る在留資格の整備に伴い、約37万人の日系人が定住者として来日し、長きにわたって我が国産業の発展に貢献してきた。彼らが帰国せざるを得ない状況に追い込まれたのは、誰もが予見し得なかった未曽有の経済危機が原因であることは明白である。日系人自身の責めに帰すべき事由はない。


第二の祖国である日本にUターンしてきた日系人のうち今回の経済不況で帰国を余儀なくされた人たちについては、景気が回復し、再び来日を希望する場合には、温かく迎えるという姿勢が日本政府に求められる。


jipi at 15:25│