そして3連チャンで泣いた記事、ふたつめ。

3月27日に、再審が決定され、即刻釈放された袴田さん。
久しぶりの「正義が通った」朗報に歓喜もしたが、
48年間に及ぶ勾留。
48年て私の人生じゃん。
そしてお姉さんの秀子さんが48年ぶりに弟の手を握ったという事実に、呆然とする。

今さらではあるけれど、再審開始を決定した静岡地裁の裁判長のこの言葉をかみしめる。

「元被告は死刑の恐怖のもとで極めて長い間、身柄を拘束された。これ以上勾留を続けることは耐えられないほど正義に反する」(NHKニュースより


で「泣いた泣いた」ニュースふたつめは、これ。

【袴田事件】 一審死刑判決、今も悔やむ 「謝りたい」と元裁判官(47NEWS)

 洗礼の準備のため訪れたカトリック教会で、神父の説明を聞く元裁判官の熊本典道さん=1月、福岡県古賀市
 静岡地裁の元裁判官、熊本典道さん(76)は、袴田巌死刑囚(78)を死刑とする判決文を書いたことを今 も悔やんでいる。「こんな証拠で死刑にするのはむちゃ」と訴えたが、先輩の裁判官2人を説得できなかった。「袴田君に謝りたい。申し訳なかった」。その目 は止めどない涙であふれる。判決から46年、この思いが晴れたことはない。

 ▽多数決

 一審を担当した3人の裁判官で最も若かった熊本さんは公判の途中から裁判に加わった。審理が進めば進むほど、自白や証拠への疑問が湧き上がった。 しかし、有罪の心証を持っていた先輩裁判官2人と多数決になり、死刑判決を書くことを命じられた。書きかけていた無罪の判決文を破り捨てたという。

 死刑判決の付言で「長時間にわたり被告人を取り調べ、自白の獲得にきゅうきゅうとし、物的証拠の捜査を怠った」と捜査批判を繰り広げたのは、控訴 審で捜査のおかしさに気付いてもらい、判決を破棄してほしかったから。だが、控訴審や上告審、第1次請求審で、死刑判決が覆ることはなかった。

 ▽告白

 「心にもない判決を書いた」と良心の呵責に耐えきれず、判決の翌年に裁判官を辞めた。弁護士になったものの、法廷で「私はやっていません」と訴えた袴田死刑囚のまなざしが忘れられない。酒浸りの生活を送り、一時期は自殺を考えたこともあった。弁護士も辞めてしまった。

 第1次再審請求の特別抗告審が大詰めを迎えた2007年に、無罪の心証を持っていたことを初めて明らかにした。「勇気ある告白」と称賛する声も多 く寄せられたが、自分の中では「もっと早く言わないといけなかった」との思いの方が強かった。最高裁は特別抗告を棄却し、告白は実を結ばなかった。

 ▽洗礼

 「袴田君の気持ちを少しでも理解したい」。東京拘置所で84年にキリスト教の洗礼を受けた袴田死刑囚の心に近づこうと、自身も今年2月22日、カトリックの洗礼を受けた。

 脳梗塞で足や言葉が不自由となっているため、神父に福岡市の自宅に来てもらった。聖水を頭にかけられると、感激のあまり、おえつが漏れた。「袴田さんの心に近づけましたか」と問われると、すっきりした表情で深くうなずいた。

 袴田死刑囚の第2次再審請求で、静岡地裁は27日に再審可否の判断を示す。「再審は開始されるのか」と問い掛けると、熊本さんは即座に「開始は考えられない」と言い切った。「司法はあの時と何も変わっていないから」









フェイスブックで、自分でシェアーした記事に、3連チャンで泣くわ泣くわ。
フェイスブックだと、どんどん流れて行ってしまうので、ここにもアップ。

まずはひとつめ。
これは朝の新聞で読んで、涙がちょちょ切れたのだった。
何に涙がちょちょ切れたかって、この言葉だ。

「みなさんの未来にとって、そして大学、社会の未来にとって、学び続ける自由こそ重要であり、民主主義の根幹です」

自分の子どもたちが頭に浮かんでしまうのだ・・・。


赤旗(2014/3/28)より。
和歌山大学長_秘密保護法を批判_赤旗


























                      




以下は、和歌山放送ニュースのWEBサイトよりコピペ。


和歌山大学で卒業式 学長式辞で特定秘密保護法を批判(和歌山放送ニュース)

和歌山大学の卒業式がきょう(3/25)午前10時半から和歌山市民会館大ホールで行われ、4つの学部生と大学院の1000人余りが卒業しました。


山本学長(左)から学位記を受け取る卒業生

山本学長(左)から学位記を受け取る卒業生


卒業式では、教育、経済、システム工学と観光の4つの学部と大学院の総代らが、色鮮やかな袴や黒のスーツ姿で壇上に上がり、山本健慈(やまもと・けんじ)学長から学位記を授与されました。

山本学長は、式辞で、特定秘密保護法について、かつて治安維持法の時代に、旅先の風景を語っただけでスパイとして罰せられた学生がいたことを例に挙 げ、「何が秘密かも知らされない特定秘密保護法は、どこに地雷が埋まっているかわからないという恐れを抱かせ、何かを知ろうとする若者たちの意欲を萎縮さ せるものだ」などと述べた上で、「自発的な学びの意欲を阻害するような制度は、大学の経営を任されている者として容認できない」として、特定秘密保護法の 制定を批判しました。


式辞を述べる山本学長

式辞を述べる山本学長


また、山本学長は、「学び続ける自由こそ民主主義の根幹。学ぶことの価値と意味を体験した皆さんには、学ぶことを阻害するものに抗していただきたい」と訴え最後に「和歌山大学は、とりわけ学び続けるあなたの人生を応援します」とエールを贈りました。

きょう卒業を迎えた和歌山大学の学生は、教育、経済、システム工学、観光の4つの学部と大学院をあわせて1159人で、卒業生は、「卒業を迎えて 清々しい気持ち。責任を持って行動できる社会人になりたい」「大学院を含めて6年間、在籍しましたが、学んだデザインを活かして大阪で災害に強いまちづく りに取り組みたい」などと話し、卒業後の新たな生活への期待に胸を膨らませていました。









そしてもう一つ、辺見庸さんの記事。
以下紹介する。
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特集ワイド息苦しさ漂う社会の「空気」 辺見庸さんに聞く

毎日新聞 2013年05月09日 東京夕刊
(毎日新聞ではリンク切れになっているので、こちらから)

 ◇今の日本は自己規制、ファシズムの国

  高い支持率を誇る安倍晋三政権。膨らむ経済再生への期待。なのに、この息苦しさは何だろう。浮足立つ政治家や財界人の言葉が深慮に欠け粗くなる傍ら、彼ら への批判を自主規制しようとする奇妙な「空気」が漂っていないか。何が起きているのか。作家の辺見庸さん(68)に聞いた。【藤原章生】

  「イタリアの作家、ウンベルト・エーコはファシズムについて『いかなる精髄も、単独の本質さえもない』と言っている。エーコ的に言えば、今の日本はファシ ズムの国だよ」。「ファシズム」とは大衆運動や個人の行動がコラージュのように積み重なったもの。独裁者の言葉に突き動かされるのではなく、そんたくや自 己規制、自粛といった日本人の“得意”な振る舞いによって静かに広がっていくということだ。

 ファシズムと聞くと全体主義、ムソリーニ独裁 やヒトラーのナチスが浮かぶ。「そういう、銃剣持ってざくざく行進というんじゃない。ファシズムはむしろ普通の職場、ルーティンワーク(日々の作業)の中 にある。誰に指示されたわけでもないのに、自分の考えのない人びとが、どこからか文句が来るのが嫌だと、個人の表現や動きをしばりにかかるんです」

  辺見さんは自らの体験を語った。月刊誌「すばる」2月号に発表した小説「青い花」を大幅加筆し、近く単行本として出版する。だが、雑誌での編集作業は言葉遣いを巡って大いにもめた。「頭のおかしくなった主人公のセリフで朕(ちん)をチンチンにするとか、政治家をからかうのは問題ないのに、例の『花は咲く』 を揶揄(やゆ)したら、それだけはどうしてもダメだって言うんだ」

 「花は花は花は咲く」とNHKがよく流すせいで、嫌でも耳にするあの歌 のことだ。「俺はあれが気持ち悪い。だってあの歌って(戦時中に隣組制度を啓発するために歌われた)『とんとんとんからりんと隣組』と一緒だよね。そう 思って書いた部分を、編集者が『書き換えてほしい』って言う。文芸誌で何を書こうがいいじゃないか、なぜ遠慮しなくちゃならないのかって言うと、『あれは みんながノーギャラでやってて、辺見さんも自作をちゃかされたら嫌でしょ』と。もう目をぱちくりするしかないよね」

 それに絡み、生まれ育った宮城県石巻市の話になった。

  「芸能タレントとテレビキャスターと政治家が我も我もと来て、撮影用に酒なんか飲んだりしてね。人々は涙を流して肩を組み、助け合ってます、復興してますと。うそだよ。酒におぼれ、パチンコ行って、心がすさんで、何も信用できなくなってる人だって多い。PTSD(心的外傷後ストレス障害)ね。福島だって『花は咲く』どころじゃないんだよ。非人間的実相を歌で美化してごまかしている。被災者は耐え難い状況を耐えられると思わされてる」

 辺見さんは地中海人的だ。「何を唐突に」と思われるかもしれない。だが、著書「瓦礫(がれき)の中から言葉を」の中にある<根はとてつもなく明るいけれども、世界観と未来観についてはひどいペシミスト(悲観主義者)>や<あの荒れ狂う海が世界への入り口だったから、いつか、どんなことをしてもあの海のむこうに行くんだと決めていた>といった自己描写は、「南の思想」を著したイタリアの社会学者、フランコ・カッサーノの言う地中海人の定義にぴたっと収まる。

 カッサーノによれば、地中海人は強大な国家に虐げられた歴史から政府や多数派が求めるものを疑ってかかり、海の向こうに自由を求める。辺見さんも同じだ。引用するのはエーコや哲学者のジョルジョ・アガンベンらイタリア人が目立つ。感性の波がうまく共鳴するのだろう。

  「昔は気持ち悪いものは気持ち悪いと言えたんですよ。ところが今は『花は咲く』を毛嫌いするような人物は反社会性人格障害や敵性思想傾向を疑われ、それとなく所属組織や社会から監視されてしまうようなムードがあるんじゃないの?政府、当局が押しつける政策や東京スカイツリー、六本木ヒルズ10周年といったお祭り騒ぎを疑う声だって、ほとんど出てこない。それが今のファシズムの特徴です。盾突く、いさかうという情念が社会から失われる一方、NHKの『八重の桜』や『坂の上の雲』のように、権力の命令がないのに日本人を賛美しようとする。皆で助け合って頑張ろう、ニッポンチャチャチャでやろうよと」

 安倍首相は靖国問題で「国のために尊い命を落としたご英霊に対して尊崇の念を表するのは当たり前のこと」と言い、「どんな脅かしにも屈しない自由を確保していく」と中国や韓国に反論した。

  「英霊でいいのに、ご英霊と言う。一言増えてきた」と注意を向けたうえで、辺見さんはこう語る。「安倍首相の言葉や閣僚の参拝に対し、国会でやじさえ飛ばない。野党にその感性がない。末期症状です。新聞の論調も中国、韓国が騒ぐから行くべきでないと言うばかりで、靖国参拝とはなんぞや、中国が日本にどんな 恐怖感を持っているかという根本の議論がない」

 この空気を支えるものは何か。キーワードとして辺見さんは、哲学者アガンベンが多用する「ホモ・サケル」を挙げた。「古代ローマの囚人で政治的、社会的権利をはぎ取られ、ただ生きているだけの『むき出しの生』という意味です。日本でもホモ・サケルに近い層、言わば人間以下として放置される人たちが増えている。80年代までは、そういう貧者が増えれば階級闘争が激しくなると思われていた けど、今は彼らがプロレタリアートとして組織化され立ち上がる予感は全くない。それどころか保守化してファシズムの担い手になっている。例えば橋下徹・大 阪市長に拍手をし、近隣諸国との軍拡競争を支持する層の多くは非受益者、貧困者なんです」

 政治を野放しにするとどうなるのか。「安倍首相 は官房副長官時代、官邸に制服組をどんどん入れ、02年の早稲田大の講演で『現憲法下でも戦術核を持てる』と語った。その考えは今も変わらないと思う。今の政権の勢いだと、いずれ戦術核の議論までいくんじゃないですかね。マスコミの批判は出にくいしね」

 言語空間の息苦しさを打ち破れるかは「集合的なセンチメント(感情)に流されず、個人が直感、洞察力をどれだけ鍛えられるかにかかっている。集団としてどうこうではないと思うね」と辺見さん。まずは自分の周り、所属する組織の空気を疑えということか。

 きわめて地中海人的な態度と言える。


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