5章の考察

5章開幕から学級裁判後までの考察。


※ネタバレ注意!!


ニューダンガンロンパV3 1章 『 私と僕の学級裁判 』 の考察
ニューダンガンロンパV3 2章 『 限りなく地獄に近い天国 』 の考察
ニューダンガンロンパV3 3章 『 転校生オブザデッド 』 の考察
ニューダンガンロンパV3 4章 『 気だるき異世界を生かせ生きるだけ 』 の考察
ニューダンガンロンパV3 5章 『 愛も青春もない旅立ち 』 の考察
ニューダンガンロンパV3 6章 『 さよならダンガンロンパ 』 の考察
ニューダンガンロンパV3 終章 『 みんなのコロシアイ修了式 』 の考察
ニューダンガンロンパV3 全章『 ダンガンロンパ 』 の考察

第5章 愛も青春もない旅立ち


1.4章を終えて

5章のランク表

 残り七人。Dランクのゴン太と入間が退場して、残りのコロシアイ参加者はAランクとEランクだけになってしまいました。キーキャラクターとなるAランクは四人。本質を見抜く百田。嘘つきの王馬。真実を暴く最原。首謀者である白銀。5章では同格でありながら全くタイプの違う四人の活躍が見所になります。


2.モノクマーズの遺影

モノクマーズ

 冒頭でモノクマーズを偲ぶ(?)モノクマの寸劇が流れます。これまでのような次の章の重要イベントを先取りしたゴフェル計画を盛り上げるための内容ではなくなったのは、王馬の計画のせいで運営の用意したシナリオの進行が成り立たなくなったためです。どう演出していいのか分からないまま、シナリオの核心に触れないどうとでもなる内容でお茶を濁しています。


3.今後の方針

 学級裁判から一夜明けて、食堂で今後の方針を話し合います。夢野の“外の世界の真実”への不安に対しては百田が「外の事なんて考えるだけ無駄だろ」とモノクマの罠である可能性を指摘し、「王馬君を早く何とかしないと」という白銀の焦りに対しては最原が「それなら大丈夫」と静観を推奨します。白銀がなおも食い下がったところでモノクマ登場。ご褒美アイテムが渡されることにより、話題が学園の謎にシフトします。ここはいつものやり取りに見えて、主力三人の才能が光る場面です。“外の世界の真実”というよく分からないものに対しては百田の勘が正しい答えをつかみ取り、王馬を一刻も早く排除したい白銀の誘導に対しては最原の推理力が不合理な行動を許さず、モノクマのフォローがもう少し遅ければヒートアップした白銀は“首謀者のあぶり出し”という王馬の罠にかかっていたことでしょう。首謀者である白銀はモノクマや才囚学園のサポートによって他のコロシアイ参加者の上位に位置しますが、それでもそれぞれの得意分野においては最原たちに分があります。三人の才能が嚙み合えば、このコロシアイを終わらせられることは決して不可能ではないのです。


4.超高校級の宇宙飛行士の研究教室

 モノクマから渡されたご褒美アイテムで、“超高校級の宇宙飛行士の研究教室”が開放されます。そこで“ゴフェル計画”の文書が見付かりますが、計画の要旨以外の全てがマジックで塗り潰されていて読めません。結局は思い出しライト頼みということになり、思い出しライトを求めて探索を続行することになります。ちなみに、本来なら奥のコールドスリープルームも併せて開放されているはずでしたが、王馬が首謀者の座を乗っ取ったというイレギュラーに対応するためシナリオの進行が一時的に止められています。これは、王馬の狙い通りにコロシアイが膠着状態に陥っているということです。


5.キーボと最原

 これまで厳重に警備されていたエグイサルの格納庫でしたが、モノクマは「今となっては無意味だから」と最原たちが入ることをあっさり許可します。中に入って調査をする最原とキーボ。もはや乗り手のいなくなったエグイサルを見て、キーボは「入間さんなら、この場所に大きな意味を見い出したでしょうね」と入間を偲びます。ちなみに、キーボは最原に対応しています。“超高校級のロボット”の才能が膨大なデータの中から必要な判断材料を検索でピックアップして合理的に分析できるように、“超高校級の探偵”の才能は膨大な記憶の中から必要な判断材料を注意力で拾い上げて論理的に推理できるのです。


6.天海の研究教室

天海のプロフィール

 天海の研究教室らしき部屋を発見しますが、鍵がかかっていて入れません。そこにモノクマが登場。「すでに退場した生徒の研究教室は永遠に開放されない」というルールを説明した上で、「まったく、どこのバカが殺したんだよー」と愚痴を零します。モノクマの言う“バカ”とは、もちろん1章の事件の真犯人である白銀のことです。そして、モノクマの言葉には、「ダンガンロンパを終わらせないために全てのリスク(Sランク二人分)を排除したい」白銀と「コロシアイを盛り上げるためならある程度のリスク(Sランク一人分)は許容する」モノクマのスタンスの違いが表れています。これは、白銀がモノクマを裏で操っているわけでないということであり、白銀とモノクマはコロシアイを管理する方向性において必ずしも意見が一致するわけでなく、現状は白銀のみならずモノクマの思い通りにも進んでいないということです。

 また、4章の開幕デモで検閲済みの天海のビデオメッセージを見せながら、ここでオリジナルである検閲前の天海のビデオメッセージを見せないということは、検閲済みの天海のビデオメッセージだけを見せてミスリードを誘っているということです。ひとまず、4章の開幕デモで植え付けられた先入観は全て捨ててしまいましょう。


7.中庭の文字

 食堂で白銀から「中庭の文字が書き足されていた」と報告されます。これで「このせかいはおうまこきちのもの」として意味が通るようになったわけですが、これは単なる王馬のイタズラではありません。元々意味のあった文字列に、新たに書き足すことで別の意味を持たせるというミスリードです。重要なのは最初の文字列だけで、新たに書き足された文字には何の意味もありません。


8.孤独なヒーロー

 中庭の文字から王馬の捜索へと話題が移りますが、百田は「もう放っておこうぜ」と切って捨てます。百田には、みんなを脱出させるための考えがあるというのです。夢野の「んあー、また根拠のない自信が始まったか」という発言に、百田は「…根拠がねーだぁ? へっ、テメーらにはわからねーだろうな。まったくヒーローってのは孤独なモンだぜ」と応えます。百田の自信の根拠は勘なので、本人にも理解しようのないものなのです。さらに、百田はその根拠のない自信でみんなを引っ張りながら、その超優秀さとプライドの高さ故に仲間を頼りにはできません。そして、それは王馬も同じです。夢野が助かるための根拠をひたすら積み上げながら、その超優秀さと臆病さ故に仲間を頼りにはできません。誰かのために孤独に戦いながら、決して理解されることのない二人。百田と王馬は、まさに“孤独なヒーロー”と呼ぶべき存在なのです。


9.“超高校級の保育士”の才能

愛が深いタイプとか!?

 夜時間に春川から「百田が私の研究教室を見せて欲しいって言ったから、あんたも来なよ」と誘われます。これはもちろん百田と最原の仲直りの機会を作るための行動です。春川は心に壁を作っているため理解されにくいだけで、本来は困っている人を放っておけないという“超高校級の保育士”と呼ぶに相応しい心根の優しさを持ちます。ちなみに、春川の心根の優しさが見られる場面は、ここだけに限りません。2章で「動機ビデオを勝手に持って行っていい」と星の頼みを承諾したところや、3章で夢野に強い言葉を使ってしまった転子を心配したところ、4章で体調の悪そうな百田をトイレまで追いかけようとしてしまったところでも見られます。


10.モノクマとの最終決戦の準備

オレがまとめてブッ壊してやっからよぉ!

 まずは百田のターンです。百田は王馬を放置して今夜モノクマとの最終決戦に臨むようみんなに呼びかけます。本質を見抜く百田には、コロシアイを膠着状態にするための王馬の嘘が通用しないのです。しかし、王馬は、夢野を守るためにも、計画を台無しにされないためにも、百田たちの行動を放置するわけにはいきません。かくして状況の停滞は破られます。百田が動かざるを得なかったのは健康状態の悪化のせいで、あらかじめ百田にウィルスを打ち込んでいた白銀の仕込みが生きました。


11.絶望のデスロード その2

つまらなくはなさそうだよね

 次は王馬のターンです。体育館に集まった百田たちの前に現れ、エレクトボムをチラつかせながら「オレと一緒に生き残りたいのは誰かなー?」と希望者を募ります。これは百田のリーダーシップに王馬の誘導をぶつけることで、みんなの団結を試すためです。もっとも、誰も誘導に乗らなかったため、この場でも首謀者を特定できません。そこで、王馬はみんなにエレクトハンマーを与えて、絶望のデスロードへと誘導します。そして、“外の世界の真実”を見せた上で絶望的な嘘をついて行動する意志を挫き、さらにリーダーシップと行動力のある百田をみんなから引き離します。百田が「王馬を放置してモノクマと戦う」と発言してから急遽用意したとは思えないほどの完璧な嘘でした。ただ、百田をみんなから引き離したことで、白銀に付け入る隙を与えてしまいます。


12.思い出しライト その4

思い出しライト

 さらに白銀のターンです。王馬が百田を拉致してから二日後に、食堂で思い出しライトが見つかります。今回の記憶は、絶望に打ちひしがれていたみんなの心に希望の光を灯すものでした。希望ヶ峰学園と江ノ島盾子、絶望の残党、未来機関、希望VS絶望、自分たちが新しい希望ヶ峰学園の生徒だったこと。思い出しライトを浴びたみんなは、王馬の打倒と百田の救出を決意します。そして、これは春川に王馬を殺害させるための白銀の策略です。5章が始まってからここまで思い出しライトが見つからなかったのは、百田がみんなのリーダーでいる限りは白銀の策略に成功の見込みがないからです。今回の思い出しライトは今までのものと違って明確な悪意によって作られているので、百田の勘がその危険性を絶対に見逃しません。また、白銀が強引に思い出しライトを使ったとしても、百田が春川の暴走を止めるでしょうし、白銀の行動の不自然さに最原が疑念を抱く恐れがあります。ところが、王馬によって百田がみんなから引き離されたためにそうした懸念は払拭され、悪意に満ちた思い出しライトを使うことが可能になりました。白銀は改めて世界のコスプレを行うことで、王馬を排除するための嘘を用意したのです。


13.格納庫の下見

戦わないとダメだよ、真実と(回想)

 いきなりですが、1章における赤松とのエレベーターでの会話を憶えているでしょうか。

赤松 「あのさ、最原くん。
    さっきの話の続きなんだけどさ…」
最原 「…え?」
赤松 「真実を知るのが怖い気持ちって…
    きっと誰にでもあると思う。
    でも、真実を見つけた人だけが、
    その先の運命を選ぶ事ができるんだよ。
    何が嘘で何が真実かわからないままだと、
    何かを選ぶ事もできないし…
    きっと、自分が選んだ事すらわからないままだと思う。
    だから…怖くても戦わないとダメだよ、
    真実と。
    キミはそれができる人なんだからさ」
最原 「………………」
赤松 「それでも怖い時は…
    遠慮なく他人の力を借りればいいんじゃないかな?
    自分だけじゃなくて、他の人の為だと思うと、
    もう少しだけ力が湧いてくると思うよ?
    …私もそうだったからね。
    コンクールで吐きそうなほど緊張してる時、
    いつも頭に浮かべていたのは…
    私のピアノを聞いて
    笑顔になってくれた人達の事だからさ」
最原 「赤松さん…」
赤松 「じゃあ、行こうか!
    こういう嫌な事はサクッと終わらせちゃおうよ!」

 あの場面は、格納庫での百田との会話に対応しています。

百田 「終一、しばらくは任せたぜ」
最原 「…え?」
百田 「オレがいねー間、
    テメーがみんなを支えてやってくれ。
    特にハルマキは…
    すぐに暴走しちまうところがあるからよ」
最原 「うん…」
百田 「テメーは大した探偵だけどよ、
    でも、きっとそれだけじゃねー。
    テメーなら真実だけじゃなくて、
    その向こうにあるものまで手が届くはずだ。
    それと、忘れんな!
    テメーは1人じゃねーんだ!
    1人で何もかも背負い込むような真似はすんなよ!
    すぐに疲れちまうぞ!
    そういう時こそ、仲間を頼らねーとな!」
最原 (仲間を頼る…か。
    そっか、僕に足りなかったのは…
    僕にできていなかったのは…)
百田 「オレはテメーを信じてる。
    だから、しばらくはテメーに任せたぜ。
    なぁ、終一!」
最原 (百田くん…ありがとう。
    また、その名前で僕を呼んでくれるんだね)

 赤松と百田のどちらもが、死を目前にしながら最原に心配をかけまいと不安を隠し、最原なら真実のその先へ手が届くと本気で信じて、さらに最原が一人で背負い込みすぎないよう心から案じています。ただ、赤松はSランクで百田はAランクなので同じようでも微妙に違っていて、赤松は「仲間のことを頭に浮かべるように」と、百田は「仲間を頼るように」と言っています。仲間を頼ることはともかく、仲間を思い出すことにどのような意味があるのでしょうか。そのヒントは、すでに作中で示されています。

 それはそれとして、死を目前にしてすら最原を心から案じるAランクの百田の想いが“友情”なのだから、Sランクの赤松の想いはやはり“愛情”なのでしょう。最赤…尊いよぉ…。


14.捜査パートのパートナー

 翌朝にみんなで百田を助けに格納庫へ向かったところ、プレス機に潰された死体を発見します。最原にとっても、春川にとっても、白銀にとっても、不可解な状況です。また、これまで死体発見後は必ず誰かと一緒に捜査をしていましたが、今回は一人で捜査をすることになります。

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 実は各章の捜査パートのパートナーは最原の信頼度に対応していて、これまで最原が成長するにしたがって信頼度の下がったパートナーがあてがわれてきました。今回の捜査にパートナーはいませんが、Aランクに成長を遂げた最原にとって何の問題もありません。そして、ここから先は“大した探偵”である最原のターンです。


15.百田と王馬 その3

 今回の学級裁判では誰がクロか分からないという(前作5章のような)展開になりますが、シナリオの構造から判断してすでにクロは確定しています。2章以降の学級裁判で最原の精神的な成長を示すのは、百田の役目だからです。

百田と最原

 そして、シナリオの構造から判断してすでに誰のトリックかも確定しています。2章以降の学級裁判で最原の探偵としての成長を示すのは、王馬の役目だからです。

王馬と最原

 つまり、ここまで正しく読解できていれば、学級裁判が始まる前から今回の事件が百田と王馬の共犯だと推理できるということです。そして、百田と王馬のどちらもが、相手の才能を認めながらも相手を頼ったわけではありません。Aランクの生存フラグが『仲間を頼る』であることから、そもそもどちらか一方でも相手を頼りにするような関係性であれば、運命的に双方の死が確定している王馬の計画は成立しなくなるのです。


16.学級裁判での最原 その5

Aランクの最原

 最原にとって、成長の上限であるAランクになってから初めての学級裁判となります。百田や王馬と同格の実力があることと、二人との明確な方向性の違いが見所です。まず5章学級裁判において春川と夢野がそれぞれ人に言えない真実を抱えていますが、これは2章学級裁判と3章学級裁判に対応しています。真実を隠す仲間に対して、本人の心を動かして話す気にさせるのが百田で、場を誘導することで発言を引き出すのが王馬、推理で真実を暴くのが最原。さらに言うと、みんなとの関係性において、強いリーダーシップで引っ張るのが百田で、嘘をついてコントロールするのが王馬、論理を説いて協調するのが最原。コロシアイを終わらせるために、自分の信じるゴールへ道なき道を突き進むのが百田で、自分の行きたいゴールへ嘘で道を作るのが王馬、正しいゴールへの道を推理で明らかにするのが最原です。

 5章での最原は、まさに百田のアドバイスどおりの成長を遂げました。探偵として高い実力があるだけでなく、一人で背負い込まずに仲間を頼って、真実の向こうにあるものまで手が届く。それがAランクの最原です。5章学級裁判では、自身の実力とみんなの協力によって王馬のトリックの全てを暴き、クロであるはずの百田をも信じて真実の向こうにある真実とは別の結論を導き出し、みんなへはその結論を信じて自分と共に命を懸けるよう望みます。これはたった一人で首謀者に立ち向かった王馬とみんなでモノクマとの最終決戦に臨もうとした百田に対応しており、Aランク同士で方向性に違いはあれども本来は実力や覚悟に差がないことを示しています。

 また、学級裁判の後半戦で、被害者の入れ替えがあった可能性をみんなで考えることになります。格納庫での百田のアドバイスを思い出す最原。Aランクの生存フラグは『仲間を頼る』であり、これでAランクのままでいる限りは最原の最終的な生存が確定します。


17.学級裁判での王馬 その5

 王馬はいろんなルートに行った時のいろんな台詞を全部台本にして百田に託していました。裁判決着後に「オレのアドリブも結構あったんだぜ?」と百田が言いますが、基本的に古いギャグ以外の全ては王馬の台本どおりだと見て間違いありません。何故ならば、嘘つきとして敵を騙すのは王馬の役割であり、この5章学級裁判こそが王馬最大の見せ場だからです。そして、その台本の分厚さは、王馬の才能の超優秀さだけでなく、王馬にとって本心を伝えるのに必要な嘘の量を示すものだったと言えるかも知れません。以下は、学級裁判で夢野が「クロスボウを持って来るように頼まれていた」と証言した後の場面です。

最原 「それって…百田くん?」
白銀 「え? 百田君?」
最原 「格納庫にクロスボウを運ぶ事を頼むなんて、
    その場にいた王馬くんか百田くんしか考えられないし…
    百田くんなら組み立て方を教わっているから、
    クロスボウを扱えるはずだ。
    だとすると、夢野さんに頼んだのは、
    百田くん以外には考えられないよ」
キーボ「さすがに、王馬クンに頼まれて持っていくとは、
    考えられませんしね…」
夢野 「と、当然じゃ…
    ウチがなぜ王馬の頼み事を聞かんといかんのじゃ」
王馬 「オレの事が好きなクセにー」
夢野 「好きな訳ないじゃろ! 大嫌いじゃ!」
王馬 「…オレは好きだけどね」
夢野 「…んあっ?」
白銀 「ちょっと! 夢野さんの女心で遊ばないでよ!」


 自分が負けた場合に相手に勝つための計画として、あらゆる局面に対応した分厚い台本を用意して、その中の実際に起こるか分からない展開に本心を混ぜ込み、夢野の女心で遊んでいるような軽口を装って、自分を演じる百田を通じて「好き」という言葉を口にするという、あまりに回りくどすぎる愛の告白です。4章での最原への告白では才能を使わなかったせいでグダグダになりましたが、今回の夢野への告白では才能を使い過ぎたせいで全く本心が伝わらなくなっています。


18.学級裁判での百田 その5

 王馬の“首謀者をあぶり出す”計画は、白銀の差し金により失敗となってしまいました。そこで王馬はすぐさま“このコロシアイがゲームとして成立していないことを証明する”計画に切り替えます。計画の全ては王馬の立案によるものですが、学級裁判のクロ役には王馬本人よりも百田の方が適任です。コロシアイを終わらせるために投票を決行すべきか。それとも、みんなを助けるために計画を中止すべきか。王馬には正しい判断がつきませんが、百田の勘なら確実に正しい答えを選べるからです。そして、百田が投票直前に計画の中止を選んだということは、つまりモノクマが最原の当初の推理通りに百田をクロだと判断したということです。王馬の嘘でモノクマを騙せても、最原の嘘ではモノクマを騙せなかったのでしょう。結果的に王馬はゲームに勝てませんでしたが、決して負けたわけでもありません。百田の言うとおり、王馬の計画のお陰で間違いなく“真の首謀者”の牙城に迫ったからです。


19.“真の首謀者”の牙城

道をつけてやる

 王馬の計画はこのコロシアイをゲームとして破綻させられませんでしたが、その代わりに運営の用意した“作り話”を完全に破綻させます。白銀が本来赤松妹に切るはずだった“絶望の残党”のカードを王馬に切ってしまったこと。最原が今回のあまりに都合の良すぎる展開から思い出しライトの記憶に不信感を抱くようになったこと。最原たちが百田の説明を通じて、このコロシアイが“見世物”で、“これを見ている人”がどこかにいるはずだと強く意識するようになったこと。これら三つが決定打となり、物語はゴフェルルートからダンガンロンパルートへと分岐することになります。二人の命を使った計画は、百田の言葉どおりに「ここから出るための道をつけた」のでした。


20.王馬の本当の才能

超高校級の嘘つき

 ところで、王馬の才能を“超高校級の総統”と認めるには、あまりにも発言に信用が無さすぎます。赤松の通信簿イベントで、エスパーレベルの洞察力を持つ赤松も王馬の才能が本当に“超高校級の総統”なのかを疑っていました。王馬の才能は“ギフテッド制度”で政府のお墨付きを貰っていることから、“常識”で考えれば王馬の才能に嘘はありません。しかし、王馬が政府に嘘をついていたとすれば、「政府のお墨付きは正しい」という“常識”によって王馬の嘘が守られていたことになります。そもそも春川と夢野が自分の才能で嘘をついた段階で、筋金入りの嘘つきである王馬ならもっと上手く嘘をつくはずだと考えるべきだったのです。2章学級裁判における是清の台詞「ククク…夢野さんは徹底してるネ。まァ、夢を与える人間は徹底的に嘘つきでないとネ」から、王馬が徹底的に嘘つきである原因は夢を与える人間だからだという可能性に思い当たります。また、探偵である最原が“首謀者”の存在に勘付き、冒険家である天海が“世界”の存在に勘付きました。他方の王馬は、2章裁判直前でこのコロシアイが“見世物”で、3章裁判決着後にどこかに“これを見ている人”がいて、4章日常編で思い出しライトの記憶が“作り話”だと勘付いたのだから、それに相応しい才能であるはずなのです。4章で運営の“作り話”により強い“作り話”をぶつけて、5章でモノクマをゲームの盤面に引き摺り下ろすという最高の“見世物”を、“これを見ている人”にショーアップできる才能。それは嘘で夢を与える“超高校級のエンターテイナー”だと見て間違いありません。王馬の本当の才能は、夢野と同系統の、決してコロシアイ向きとは言えない才能だったのです。


21.夢野の成長 その3

 百田から「本当に最後の最後まで……あいつは筋金入りの嘘つきだったぜ」と言われる王馬は、これまでの『極限状態での発言に嘘はない』というルールを覆して死の間際まで嘘をついたのだから、確かに筋金入りの嘘つきでした。「首謀者も視聴者も全部ムカつくから、どんな手を使おうと絶対にこのゲームを終わらせてみせるんだ(意訳)」という王馬の最後の言葉は本心ではありません。王馬の一番強い想いは「愛する人(夢野)を守りたい」だからです。そうして最後まで嘘をつき通した王馬は、誰にも本心を悟らせないまま退場してしまいます。王馬の最期に対してのみんなの反応は様々でしたが、ここで信用すべきは百田の勘による「王馬の発言は嘘」という結論と、百田と結論を同じくする夢野の「あやつは本気の涙を流すようなヤツではない」という王馬の才能への理解です。王馬の動機は、百田の推理では的外れであり、キーボの合理的判断では分析できず、白銀のコスプレが通じず、最原が推理しようにも証言と証拠が足りません。それでも、王馬と同系統の才能を持つ夢野だけは、将来的に王馬の動機を解き明かすことが出来ます。これは夢野が自分で考えられるよう成長したために生まれた可能性であり、今後はこれまでとは逆に王馬の存在で夢野の心がいっぱいになります。


22.春川の成長 その3

 白銀のコスプレでは、春川が王馬を殺害するはずでした。しかし、そうはならず、百田は春川による止めの一撃から王馬をかばいます。百田に「愛する人(春川)を守りたい」というフィクションを超える想いがあったからです。これまで百田の一番強い想いは「コロシアイを終わらせたい」でした。それが甲斐甲斐しく世話を焼いてくる春川の暖かさに触れることで、春川への想いがどんどん大きくなっていったのです。孤児院の子供たちが春川の心根の優しさを正しく理解できるように、百田もまた春川の心根の優しさを正しく理解できます。そして、そうした才能だからこそ、春川の告白を受けてすら自分の想いを伝えるわけにはいきませんでした。「春川のためにはならない」という正解が分かってしまうからです。百田は春川のために春川にとって本当に必要な言葉だけを伝えます。百田が自分の想いを口にすれば、春川はきっと百田によって壊された心の壁の穴を大事にしてしまうでしょう。百田以外を受け入れない強固な心の壁をそのままにして。だからこそ、百田は春川の心から自分の痕跡が消えると分かっていてなお、春川自身のために自ら心の壁を取り払うように諭したのです。そして、この百田のアドバイスによって春川の生存フラグ(心の問題を解決する)が立ち、ここで春川の最終的な生存が確定します。


23.おしおきでの百田

 百田はおしおき前に「オマエらの望むとおりには死なねーからな」と宣言し、そのとおりおしおき中に病死します。これは自らの命を犠牲にすることで、狙いどおりに学級裁判でモノクマを騙した王馬に対応しています。どちらも相手に勝ったけど負けた。あるいは、勝てなかったけど負けなかった。そんな局地戦における互角の勝負は、Aランクの百田と王馬がコロシアイに対して命懸けでようやく得られる最大級の戦果なのです。


24.ダンガンロンパルートへ

 ゴフェルルートが破綻したことにより白銀とモノクマに打つ手は無くなりましたが、一方で最原たちも真相を明らかにするだけの実力が足りていません。しかも、それでいて最原・春川・夢野の三人に生存フラグが立っており、最原は才能の特性から捜査パート以降でなければ白銀たちを追い詰めるような活躍ができず、なおかつ次章が最原たちと白銀たちとの最終決戦になります。百田のおしおき後にキーボのアンテナが折れたのは、そうした制約を踏まえた上で最終章を盛り上げるための布石です。白銀でもモノクマでもない何者かによって、最原たちの状況は完璧に誘導されています。


25.百田と王馬と最原

 2~4章のAランクは百田と王馬の二人だけの対比でしたが、5章で最原がAランクになったことにより三人の対比になります。コロシアイを終わらせたいと願う動機が、“みんなを守るため”なのが最原で、“みんなを守るため”と“愛する人を守るため”なのが百田、“愛する人を守るため”なのが王馬。愛する人との関係において、自分が先に好きになったのが王馬で、自分が相手とほぼ同時期に好きになったのが最原、自分が後から好きになったのが百田。愛する人との別れにおいて、相手をクロにさせなかったのが百田で、相手をクロにも被害者にもさせてしまったのが最原、相手を被害者にさせなかったのが王馬。愛する人との関係性において、相手との信頼関係があり相手の心に自分の才能の影響が残っていないのが百田、相手との信頼関係があり自分の心に相手の才能の影響が残っているのが最原、相手との信頼関係がなく相手の心に自分の才能の影響が残っているのが王馬です。


26.百田と王馬と白銀

 5章学級裁判が開かれるきっかけを作ったのは、百田と王馬と白銀の三人。この三人の動機は対比になっており、“コロシアイに乗らず外に出たい”のが百田で、“コロシアイを膠着状態にしたい”のが王馬、“コロシアイを起こしたい”のが白銀です。さらに言うと、王馬の作り話が白銀の作り話を上回り、百田の勘が王馬の計画を回避し、白銀の事前の仕込みが百田を動かすという三すくみの展開から、白銀の悪意は百田の勘の前で発揮できず、百田の決断は王馬の誘導に屈し、王馬の嘘は白銀の思い出しライトに利用されるという逆方向の三すくみの展開になります。もっとも、Aランクの百田と王馬ではSランクの白銀に対して最初から勝ち目はありませんでした。しかし、勝てなかったと見るや標的をモノクマに変更した上で百田と共闘するという判断を迅速に下した王馬と、王馬と共闘してモノクマと戦いながらも常に仲間のことを思いやっていた百田によって、運営のシナリオは不可逆のダメージを負うことになったのです。


27.ゴン太とアンジーと王馬

 ゴン太とアンジーと王馬の三人は政府からの才能の認定が間違っているという共通点があり、それぞれの本当の才能は対比になっています。自分で考えられず答えを出せないのが“超高校級の野生児”の才能で、自分で考えずとも答えが貰えるのが“超高校級の巫女”の才能、自分で考え抜いて答えを出すのが“超高校級のエンターテイナー”の才能です。


ニューダンガンロンパV3 1章 『 私と僕の学級裁判 』 の考察
ニューダンガンロンパV3 2章 『 限りなく地獄に近い天国 』 の考察
ニューダンガンロンパV3 3章 『 転校生オブザデッド 』 の考察
ニューダンガンロンパV3 4章 『 気だるき異世界を生かせ生きるだけ 』 の考察
ニューダンガンロンパV3 5章 『 愛も青春もない旅立ち 』 の考察
ニューダンガンロンパV3 6章 『 さよならダンガンロンパ 』 の考察
ニューダンガンロンパV3 終章 『 みんなのコロシアイ修了式 』 の考察
ニューダンガンロンパV3 全章『 ダンガンロンパ 』 の考察