弟子への暴行疑惑の真っただ中、渦中の鳴門親方が突如逝去。何というタイミングか。
第59代横綱隆の里。同時代の大横綱である北の湖、千代の富士等と比べると地味な印象も拭えないが、俺の記憶の片隅にも多少たりとも残っている。通称”おしん横綱”。入門早々に糖尿病に取りつかれるも、努力と精進を重ね、歴代2番目の高齢で横綱昇進となる。全盛期は短かったものの対千代の富士戦の通算成績で勝ち越すなど、その潜在能力を疑う者は日本国民にただの一人もいない。喰うことも仕事の力士にとって糖尿病とは大変な病だったろうが、食事療法を取り入れ、その経験を生かし、料理本を出版したり、TVの料理番組の講師として出演したこともあったと云う。

その男が、よりによって弟子にインシュリン注射の暴行とは!
自分に厳しかった分、弟子への教育も厳しかったらしいが、殴る蹴るとかならまだわかるがインシュリン注射って、どんな暴行や。気味悪いにも程があるよ。「それだけは勘弁してください」と泣いて懇願する弟子を押さえつけ、ブスリとインシュリン注射を打っていたと云うのか。そもそもインシュリン注射を打つとどうなるのか、何故に暴行となるのかもわからん。
昨今角界では八百長疑惑と並んで、弟子への暴行事件が表面化し物議を醸してはいるが、そもそも格闘技なんてそんな世界やろ。勿論死までに至った事件等は許されないが、言うこと聞かない若い衆に体で憶えさせるなんて当たり前じゃないのか。それを警察に駆け込んだり、親方を訴えたり、本当に今日日の若者の感覚は不可解だ。俺の餓鬼の頃はまだ教師による体罰も日常的に行われていたし、俺も何度かシバかれたが、それを親に言ったりするはみっともなかったし、言ったら言ったで、何しでかしたんやと親からも怒られるだけだった筈だ。

決して暴力を肯定するわけではないが、教育上必要なときもあると思う。ただインシュリン注射って・・・変質プレイみたいでやはり気味悪すぎるぅ。
元読売巨人軍のビル・ガリクソンや、LA METAL BANDのPOISONブレット・マイケルズなんかも糖尿病でインシュリンの注射キットを携帯してシャブ中の如く自ら注射していたらしいが、薬物汚染はびこる米国でこのインシュリン注射キットを持てるのはむしろ紳士の証だったとも聞く。


さて”鳴門親方”、”疑惑の渦中での急逝”・・・というキーワードで日本国民全員がある事件を否が応にも思い出さされたことだろう。

大鳴門親方急死事件
1996年、週刊ポスト誌上で「大鳴門親方の爆弾手記」(何と言うマジカルで甘美な響き)なるタイトルで大相撲界の八百長・金・女・ドラッグを暴露しまくっていた大鳴門親方(元関分・高鉄山)と実業家橋本成一郎氏(元力士・琴登)の爆弾コンビが同じ日・同じ病院・同じ病名(肺炎)で突如急死したウルトラ怪事件だ。奇しくも「爆弾手記」の連載に加え、暴露本出版、外国人記者クラブでの会見を目前にしてのことだった。
これは、俺も当然のことながら思ったことだが、ほとんどの人は”消された”と考えるのが筋だろう。
しかもこの二人が恩ある相撲界を裏切るかたちで爆弾を投じた理由は、現役時代親友でもあった第52代横綱北の富士こと陣幕親方に冷たくされたという私恨から始まっているというから始末に悪い。(北の富士はこの前登場したばっかりやなW)相撲界の中枢で権力を恣にしていた北の富士に楯突いたのも”消されて当然”と世間に思わせるのに十分だった。

ここで一冊の怪著が登場する。
IMG「日本怪死人列伝」(2002年/ 安部譲二)
41回逮捕
された”懲りない”怪人G安部が未解決の12の怪死事件に舌鋒鋭く切り込む。朝日新聞阪神支局襲撃事件、新井将敬議員、尾崎豊、オウムの村井、日航機事故等、書いているだけで憂鬱になってくるような怪事件の真犯人をG安部が推理、いや妄想しまくる不可解な代物。
この中の一つとして大鳴門親方の事件が取り上げられていた。

G安部も、最初はご多分に漏れず、”消された”と考えたと言う。そして取材を続けるうちに二人の死のわずか10日程前にゴルフ、そしてソープランドに遊んだ事実を突き止める。普通に考えると、この事実からも、二人は病死するような状態で無く、”消された”疑惑は深まるばかりだが、さすが41回逮捕されたほどの男はまったく違う確信を得るに至る。

暴露本出版で久々に世間から注目を浴びている高揚感からか、ソープ嬢相手にいつも以上にハッスル、ことが終わり優越感と男の誇りに満ち溢れ、エアコンの冷気を胸一杯に吸い込む。そのエアコンの清掃が行き届いておらず肺炎の菌が貯まっており、それをたっぷり吸い込んで、10日後死んだ!

なんというドリーミング怪説。41回逮捕されたらこんなマジカルな妄想が生み出されるというのかよ。

しかし41回逮捕されたG安部はこのように締めくくっている。「死んだふたりは理想的な死だと羨ましくてならない。ゴルフを楽しんでから、大満足なスケベをして、あっさりと死んだのだ。いくら考えても、これ以上の死に方は思いつかない。」

ファンタジック!もう虚実などどうでもいいんじゃないか。

鳴門親方と大鳴門親方と橋本成一郎氏に捧げし哀歌

鳴門 小鳴門 大鳴門 別れの言葉も無いままに われの前より 去りにけり 
疑惑と云う名の 爆弾かかえ 松永弾正 気取りかよ

(UNTIL YOU SUFFER SOME) FIRE & ICE (POISON / 1993年)

リッチー・コッツェン加入で本格派BANDへ脱皮。ブルージーなバラードで、POISONらしからぬ名曲。
鳴門親方に捧ぐ。