2010年06月13日

本澤二郎の「日本の風景」(490)

<映画「ONE SHOT ONE KILL」>
 冷静に立ち止まってアメリカという国を眺めると、実に不可解で不思議な為政者の集団であろうか。地球をわがもの顔に闊歩して恥じない。最も野蛮で狡猾な国である。それでいて「自由の国」「民主主義の国」と喧伝して止まない。庶民・大衆は日本や中国にもいる素朴な普通の民である。そのアメリカに日本人映画監督が挑戦した。「ONE SHOT ONE KILL」。殺人兵訓練をカメラが追った。その映画を6月9日、日本記者クラブで観賞した。


 戦争直後の日本映画には、いいものが沢山つくられた。貧しい農村の学校で毎月、講堂で映画会が開かれた。反戦平和を題材にした優れた作品ばかりだった。もともと体に染みついていた日本人の平和主義に自信を植え付けた。戦争放棄の9条憲法が戦後60年経ても、財閥資本・軍需産業の野望にもかかわらず9条支持が圧倒する理由である。
 護憲政党は社民党と共産党にすぎないのだが、それでも護憲派は民主党、自民党、公明党の中にもいる。たとえ党の政策が自主憲法制定であっても、創憲論などと不可解な立場を打ち出しても、そして改憲派がありとあらゆる巧妙な屁理屈で9条解体を工作しても、平和を愛する国民はそれに同調しない。
<監視対象は松下政経塾>
 信じがたいことだが、特に80年代から財閥右翼の音頭に踊るメディアが跋扈する日本である。改憲軍拡の銅鑼を打ち鳴らし続けている。それでもアメリカのような戦争国家への改造は無理である。日本国民とアジアの人民がしっかりと監視しているからである。
 9条はアジア・人類への日本人の約束なのだから。国境を超えるインターネット社会がしっかりと監視してくれている。油断は禁物だが、市民の防御線は完璧である。改憲ミニ新党乱立の参院選挙の行方を注目していきたい。
 監視すべきは自民党ではない。今後は「松下PANASONIC財閥」にコントロールされている政経塾・PHP研究所の動向である。武器弾薬で暴利をむさぼろうとする強欲企業の策略である。平和・軍縮派の宇都宮徳馬が、雑誌「軍縮問題資料」を立ち上げた理由であった。
 軍事国家・軍国主義化する愚かさを、この日本人監督は米海兵隊にカメラを向けることで、普天間問題の根源を暴いてくれている。ここ数十年来、日本映画は衰退の一歩を辿ってきている。価値ある作品は皆無といってもいい。だが、この「一発一殺」へと駆り立てる野蛮きわまりない海兵隊の実像に迫った映画は、藤本幸久監督と影山あさ子プロデューサーとその関係者の成果だ。深く敬意を表したい。ジャーナリズム衰退がもたらした作品といってもいいだろう。
 日本のマイケル・ムーアチームである。アメリカにはムーア支援者がいっぱいいるらしい。日本にはいない。日本の富豪はこうしたことに金を出さない。その中での成果である。
<監視付きのインタビュー>
 海兵隊くらい野蛮な軍隊はいない。それを自衛隊員から聞いて数年経つ。沖縄の悲劇はそうして沢山起きた。これからも、である。鳩山由紀夫は気付いて軌道を変えようとした。しかし、外務・防衛官僚に抑え込まれてしまった。岡田と北沢の悪しき実績となってしまった。
 カメラは新兵訓練所(ブートキャンプ)に焦点を当てる。12週間経つと一発一殺人間に変身する。そんな殺人鬼を影山がインタビューする。彼女の語学力がいかんなく発揮する場面だ。語学力だけではない。この殺人兵の正体に詳しい。適切な質問を即座に繰り出すのだ。
 そこから、その場面に監視役がついていることを観客に知らせるのである。自由・民主のアメリカが、これの取材に独裁国と同じ手法を強制していた。「政治的な質問はするな」という縛りがあったのだ。監視人は映像に映っていない。しかし、その存在をインタビューアーは、見事に観衆にわからせている。
<アメリカの不条理の原点・海兵隊>
 監督の藤本は「人は人を殺すように出来ていない。どうして、普通の若者が人を殺せるようになるのか。普天間に駐留する海兵隊とは」という素朴な疑問をカメラに収めた。海兵隊訓練所は2か所。1915年に開設。もう100年以上の歴史を有する。
 ヒトラーのドイツ・国家社会主義、東條の日本・天皇制国家主義を退治したときは解放軍として評価された。しかし、そこまでだった。ソ連と対決する中で野蛮な軍事国家・軍国主義化する。武器弾薬を背景にする外交を国際舞台で駆使する。
 とりわけ1%富豪支配が露骨になる共和党政権下で牙をむく。その先兵が海兵隊なのだ。
訓練では、ひたすら大声を張り上げさせられる。服従を誓わされる。命令は絶対なのだと。それを繰り返しさせる。旧日本軍は暴力でもって殺人鬼に仕立て上げたのだが、アメリカは言葉の暴力で服従させる。その都度、大声で命令に従うと誓う。そこには一片の人間性はない。許されない。
 沖縄に軍事基地を置く不条理にいささかの疑問も持たないルース駐日大使とオバマ大統領である。とても人類の尊敬を得ることは無理・不可能なのである。
<貧困が生み出す殺人兵>
 そんな殺人鬼に手を上げる「自由の国・アメリカ」の若者である。なぜか。日本もそうだったが、可能にさせる基盤は貧困である。
 「ここにいるとギャングになるしかない。麻薬に手を出すしかない。それならば大学に行ける機会もある海兵隊のほうがマシだ」という土壌が、常に用意されているアメリカ社会だと関係者はいう。そうなのであろう。毎週500人から700人の新兵が入隊するアメリカだ。男性の90%、女性の85%が卒業するという。2008年10月から2009年9月までの1年間に16万4千人が入隊、うち3万1千人が海兵隊。早ければ数カ月でイラクやアフガンの戦場に立つ。
 アメリカの人口3億1千万人(世界3位)、米軍145万人(陸軍54万人。海軍33万人、海兵隊20万人、空軍33万人、沿岸警備隊4・3万人)。このほかに州兵46万人、予備役120万人。元兵士2700万人、ベトナム戦争時の兵士は840万人。アメリカのホームレス人口350万人(ホームレスと貧困法律センター推計2007年)。
 2001年以降2009年10月までの派兵200万人以上、うち複数回軍人80万人、戦死者5347人、負傷兵36571人(2010年2月5日現在)。2002年から2007年に退役軍人病院を受診した兵士の3分の1が精神疾患、5人に1人がPTSD。
 イラク・アフガン帰還兵のホームレス3700人以上(退役軍人病院調査)
 1%富豪が生き残る、支配するアメリカである。日本の右翼議員を「ミニ米国になろうとしている」と非難したのは河野洋平である。

 なお、藤本監督は8時間14分の「アメリカ」を2009年に完成している。現在「辺野古を考える」全国上映キャラバンを実施している。映画の貸出もしている。問い合わせ先は影山事務所011−206−4570。

 マスコミの衰退と映像文化の再生をひしひしと感じさせられる。勇気ある人々を映像でとらえる勇気に感謝したい。
2010年6月13日10時20分記


jlj001 at 10:25 この記事をクリップ!
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