2012年02月17日

本澤二郎の「日本の風景」(989)

<「アラブの春」のチュニジア>
 チュニジアから沸き起こった「アラブの春」は、目下、シリアで悲劇が連日繰り返されている。リビアに手出ししたNATOも動けない。国連ではロシアと中国が安保理決議に拒否権を行使、アサド独裁政権による反政府市民への武力弾圧は拍車をかけている。そうした中、チュニジア外務省のアジア担当者・ベンアベス氏が東京を訪問、日本記者クラブで記者会見(2月14日)をしていた。昨夜、動画で取材した。


 会見で革命の闘士は、繰り返し「民主主義」「自由」という言葉を連発した。正直なところ、聞いていて安堵させられた。険しい道のりに立ち向かうチュニジアに声援を送りたい。旅費のある日本人は北アフリカの観光地巡りをして、ささやかな貢献をするのも方法であろう。
<ベンアベス外務省アジア担当>
 彼は会見に慣れていない。延々と持論を英語で語り続けて通訳を泣かせた。其の分、言いたいことを全て吐き出してくれた。
 「何十年にもわたってチュニジアは、中東・北アフリカの成功物語として伝えられてきた。教育レベルも高い。立派な国の制度も確立していた。しかし、現実は23年の独裁政権による腐敗で、中身は空っぽだった」
 あれれ!日本のことではないのか?中東と北アフリカをアジア・東アジアに置き換えるとどうだろうか。叱られるだろうか。
 「2011年1月14日から1カ月、抗議活動を行った。自発的なもので指導者はいなかった。独裁政権下、国民の生活格差は広がり、若者が失業していた。国民の不満は充満していた。第一、チュニジアのジャーナリストは沈黙を強いられてきた」
 日本のジャーナリストも現在そうではないか。生活のために沈黙を余儀なくさせられている。本物のジャーナリストには紙面も映像もない。幸い、インターネットがある。これは救いである。筆者もこうして正論を発信できるのだから。
 しかし、現役の記者らは自己抑制・自粛を強いられて、本当の自由がない。自らジャーナリストを止めて、生活のためのペンを走らせるだけである。
<外交辞令・日本をモデル?>
 彼は日本の真実を知らない。それゆえにか「日本がチュニジアのモデルだ」と繰り返した。「透明性と民主主義」において日本こそが、その代表とほめちぎるのである。日本の官僚の評価は別だろうが、善良な日本人が聞いたら、穴があったら入りたいことを、彼は平然と絶賛した。
 透明性のある日本?これが事実であれば、多くの日本人は世界に向かって胸を張れるだろう。教育によって、日本の真実を知らなかった多くの日本人は、3・11事件によって、透明性どころか嘘と隠ぺいの日本を気付かされたはずである。

 ご存知、政府もマスコミも学者も原発事件の真実を報道しなかった。報道していれば、住民を80キロ圏外に避難させたろう。真実の報道がなされていれば、政府の対応いかんにかかわらず、住民が自主的に避難したであろう。
 居住できない周辺地域に戻れるという恐ろしい当局の指導さえなければ、沢山の住民の健康が最悪の事態から回避できたであろう。
 彼は論語の「民はよらしむべし、知らしむべからず」のアジアを知らないのだ。官尊民卑の日本を分かっていなかった。それが残念でならない。彼を招待した外務省は、内心“してやったり”と満足しているのではないだろうか。
<フランス革命が本心>
 彼はフランス革命の地に留学した。本心はフランス革命にあるに違いない。そこで革命の志士に出会って覚醒したというのだから。やはり革命の先進地・フランスは偉大である。宇都宮徳馬はよく「フランス革命を日本人はもう一度学ぶべきだ」と言っていた。市民革命は王制を打倒して今日がある。
 父親の代から皇室事情を熟知していた彼は「京都に帰して自由な市民生活をさせてあげるべきだ」と繰り返していた。間違いなくチュニジアの闘士は、フランス革命に範を求めている。断じて日本の天皇制を学ぶつもりなど無いだろう。
 現に、革命後のフランスは右にぶれることはない。いまのサルコジが間もなく退陣させられるのも、不思議なことではない。この点を日本人はしっかり学ぶ必要があろう。
<司法・言論の完全独立>
氏は革命成功後のチュニジアを語った。「まず国民政権議会を立ち上げた。そこで民主主義を確立、総選挙を行った。3つの大政党が連立政権を樹立した」「改革の第一歩は、司法の独立とメディアの改革だった。後者はあらゆる表現の自由を担保する。むろん、活字や映像にも。それは民間のみならず、公共放送も自由に、独立して運営する」
 これはすごい。NHKなど頭を垂れるしかないだろう。いまのNHK会長は財界の代表である。彼の親分は「三宝会」にも関係している右翼経済人で知られる。こんなおかしなNHKについて、日本の議会は反対していない。司法の独立?小沢事件をつまみ食いするだけで、それは否定されよう。
 ベンアベス氏の口から飛び出した革命の成果は、はるかに東京やワシントンを超えている。すばらしい。これを花開かせることが出来れば、世界一の民主主義国家となるだろう。
<自立重視>
 「我々は革命の結果に責任を負っている。地域や周辺国に影響を与えている。従って成功させることしか選択の余地はない。アラブ初の民主的な革命だ。誇り高いチュニジア人は、自立することを大事にしている」
 自立することは人間のあるべき姿である。服従は排除・軽蔑の対象である。敗戦後の日本は、ワシントンに服従してきている。今も、である。米軍基地を平然と受け入れている。
 本来、服従を拒絶するはずの右翼・民族主義者が、こぞって対米従属・屈米に熱心である。その代表的人物が岸・中曽根・小泉である。チュニジア外務省のアジア担当者は「我々は決して外国に服従しない」と力説したのだ。
 「小さい国だが、お互い助力する対等な関係を構築してゆく」と公約した。大賛成である。「日本はチュニジアにとって親友国として大事である」が、しかし、それは当然のことながら「対等なウインウインの関係」だと訴えた。
 彼はフランスの僕(しもべ)にはならないとの宣言でもあった。
 かの国はイスラム国家だが、政教分離を当然視した。過激派を排する穏健なチュニジア政府なのだ。現在、シリアから大使を召還して抵抗するチュニジア政府が一番恐れているのは「政治的解決に失敗すると、内戦に発展して中東が壊滅な事態になることだ」という。
 イランの核問題については「民生用の核であれば反対しない。核兵器開発には反対だ。それはイスラエルの核にもいえる」と語った。正論である。
 革命のチュニジアから、日本が学ばなければならないことが一杯ある。チュニジアの将来に幸あれと祈りたい。
2012年2月17日18時59分記


jlj001 at 18:59 この記事をクリップ!
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