2013年03月03日

本澤二郎の「北京の空」(友好の旅)4回目

<濃霧の北京>
 2月28日の北京はさえない1日となりそうな雲行きだ。マスクの出番だと覚悟した。「霧の街・ロンドン」が北京に伝染してきたような、どんよりとした、それでいて冷たい空気がすっぽりと大地を包んでいた。朝方のCCTVニュースも暗い予報だった。しかし、チベットのラサは雲ひとつない晴れだとの予報を出していた。天候報道に力を入れる中国なのだ。幸いにも、午前10時過ぎホテルに新華社OBの張さんが訪ねて来てくれた。彼は、ホテルに辿り着くのに相当苦労したらしい。


 そのはずで、有名な北京飯店は天に向かってそびえているのが、ここからもよく見える。この翆明庄賓館は、お気に入りのいいホテルだが、いかんせん5階建てで小さい。周囲にはこの種のホテルはいくつもある。地下鉄の王府井から歩いて10分から15分。初めての中国人にとっても、厄介な場所探しに違いなかった。
<車をやめた張さん>
 確か東京特派員生活を3度も経験した張さんは、北京に戻ると、車を購入したという。運転はもっぱら奥さんだった。しかし、年齢のことも考えて「手放した」というのだ。
 いい時期での判断だった。北京の車500万台は多すぎるのだから。「中国人は高級車を乗り回して威張るという風潮があるが、流れはかわりつつある」という解説をしてくれた。
 「地下鉄やバスを利用する市民が増えてきた」というのだ。「日本の失敗を繰り返していいわけがない」とも指摘した。中国の知識人はまともな判断を示してくれた。新たな変化が習近平体制で起きてくるに違いない。
<日本マスコミと日本人に苦言>
 日本のマスコミの中国報道に対して、日本語と日本を研究してきた知識人にとって、それはもはや耐えられないものとなっている。それに左右される日本人に「どうしてなのか」と疑念を抱いてしまう。
 「日本人の教育レベルは高い。しかし、思考能力・分析能力を高める必要がある」と断じたものだ。
 彼の思いは筆者も同様である。戦前の大本営発表の新聞報道を体験してきたはずの日本人である。現在もまさに、そうした状況下にあるのだが、これの分析ができない日本人ばかりなのだ。
 歴史の教訓を生かせない日本人に苛立ちを感じる中国・知日派の言い分に耳を傾けるべきだろう。日中友好が最善の道だ。72年に確立したこの理念は、これからも変えてはならない。
<中国の日本研究にも>
 筆者は、中国の日本研究者にも疑問を抱いてきている。それは仕方のない部分もある。日本での日本研究は、日本の恥部を知る機会を持たないまま過ごして北京に戻る。
 本当の日本を知らないで、すなわち幻想の日本を学んで帰国して、それを基礎にして日本を分析する。ここに大きな落とし穴がある。そのことを彼にも指摘してみた。
 素直に頷いてくれた。そして具体例を示した。「2002年に帰国した後、北京の日本大使館主催の集まりに2度出かけたことがある。そこでの日本事情説明会において、日本には言論の自由が存在する、日本の新聞は自由に報道しているといわれた。こうした説明に惑わされる中国人もいなくはない」と。
 さらに「日本にいる中国人の中には、日本政府を信じている者が多い」とも語った。
<多くの日本人は真面目>
 張さんは年に数回、日本で生活する親類を訪ねる。滞在中によく公園などで日本人とおしゃべりをする。
 そこで感じる日本人像は「みなさん、真面目ないい人ばかりだ」と信じ込んでいる。其れがひとたびマスコミ報道による反中キャンペーンに左右されてしまう。そこが「理解できない」というのだ。
 新聞テレビを信じ込む日本人と、それらを半分しか信じない中国人という現実に、善良な市民は気付く必要があろう。
 この食い違いを埋めるためにどうすべきか。「民間交流の拡大」ということになる。民の力で官を動かすしかないのだ。民意を反映するメディア・マスコミの存在が不可欠となろう。
 不幸にして日本のマスコミの多くは、政府・財閥・電通・CIAの配下に置かれている。「権力に屈する腐敗マスコミ」に抵抗していた宇都宮徳馬のような反骨の人材がいない。
 マスコミの論調に振り回される日本人に、問題の根っこがある。中国は?
<ネット世論で動く中国民主主義>
 日本人や欧米のジャーナリストは軽蔑な感情でもって「中国に言論の自由はない」と断定している。これに筆者は、現時点では断固として反対である。中国には、日本に存在していない民主主義が生まれてきている。
 日本は財閥独裁である。3・11でも原発推進内閣が誕生している。その内閣はこれまでの武器輸出3原則を放棄するかのようにF35ステルス戦闘機の部品を、紛争当事国に輸出する方針を打ち出した。民意も平和憲法も踏みにじっている。それをただ報道するだけのマスコミと、それを子羊のように受け入れる日本国民である。
 その点で中国はネット世論が国や地方を動かしている。日本では考えられない直接選挙で、村の長が選ばれたりしている。日本では12・16総選挙の不正疑惑さえマスコミは沈黙している。公害企業建設計画を、市民が反対して計画を断念させた例も中国にある。民意で動く中国民主主義に敬意を表したい。
 山東省の風光明美な場所に原子力発電所計画が推進されているというが、これにも住民が反対に立ち上がっている。成り行きを注目したい。犯人は東芝なのか?

 こうした筆者の中国認識に張さんも同意した。彼は「延安での事故発生に、現場担当者が笑っていた映像がネットに流れた。一緒に彼の高額な腕時計を映っていた。結局、彼は失脚した」「二つの戸籍を持つ住宅担当の官僚は、住宅を数十個も保有していることがネットで報じられて責任をとらされた」「いま役人はハラハラしながら仕事をしている」などと話してくれた。
<節約と腐敗退治の新体制>
 昼食に二人してホテル前の庶民食堂に入った。二人で種類の違う麺を二つ注文した。それを半分ずつ食べた。餃子も頼んだ。少し残ると、彼は筆者に「夜食に」と押し付けた。
 習近平体制の政策は、質素倹約なのである。彼の新政策に対して国民の評判は高まっている。「中央の大きな虎と地方のハエを退治しようと号令をかけている。本当に貧しい農家を訪問して生の声を聞いている。習さんは中学・高校のころ、延安の貧しい農村で生活した。それを今も忘れていない。庶民感覚で政治を行っているから、庶民の評判がいい。後は腐敗退治のための法制度の確立が残っているが」という説明に納得した。
<マスクで王府井・天安門散策>
 張さんと一緒にホテルを出た。王府井から天安門に向かった。北風も吹いている。初めてマスクをつけた。中国人はマスクに慣れていない。マスク姿の市民はまだ少ない。
 張さんは地下鉄に乗らなかった。バスに乗った。60歳から無料だからだ。これも節約と言って、バスに平然と乗り込んだ。一人して天安門に向かった。赤茶けた色の高い塀とその前の堂々たるポプラ並木を通り過ぎて、天安門東側の便所に飛び込んだ。売店も無く清潔そのものだった。
 天安門直前で警察官の検問に止められてしまった。手に持っていたメモ用紙が気になったらしい。実に仕事熱心な警察官である。
2013年3月3日13時15分記


jlj001 at 13:14 この記事をクリップ!
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