2017年12月17日

北京近況<本澤二郎の「日本の風景」(2825)

<天気良好は石炭使用禁止か>
 このところ大気汚染の北京が姿を消してしまったらしい。11月28日深夜に北京入りして以来、北京郊外の市民の感じである。環境対策は、どうやらやれば出来るのである。北京入りして以来、初めて利用したタクシー運転手の話(12月16日)では「住宅暖房が切れる来年3月中旬まで、大きな建設工事現場は作業中止。北京周辺の石炭使用は禁止」という。確かに近くでの大型スーパー建設中の工事は止まっている。知り合いの福州の茶屋の主人は「最近までに500万人の出稼ぎ農民が北京を出た」と語っている。


<徹底する当局の取り締まり>
 マンション1階の売店でスマホ音痴が使い方を教えてもらっている最中だった。警察官が数人の部下を連れて入ってきた。入り口の炊事用扉を開けると、ガスボンベを引き出して持ち出してしまった。このマンションは電気専用で、一般住宅に比べて高い。やむなくガスを利用する業者は多いのだが、警察の取り締まりは厳しい。

 ここの住人はよく電動三輪車をタクシー代わりに利用する。地下鉄駅まで5元、バスがないので利用しているのだが、警察は見つけると、追い払ってっしまう。市民が「それならバスを走らせなさい」と文句いうと、取り締まる側は「上からの指示なので」といって逃げる。
<タクシーを呼ぶのにも食事もスマホでOK>
 これもネット社会というものか。
 昨夜利用したタクシーは、北京市内の友人が「遅くなったのでタクシーをよぶ」という。彼はスマホで連絡、タクシーを団地の近くに呼んでくれたので、それに乗って郊外の1K住宅まで帰ることができた。10年前の北京・上海で、夜間にタクシーをつかまえるのに30分はかかった。便利である。支払いもスマホで処理するらしい。
 昼飯の弁当もスマホでOK。食事をつくらない家庭が増えているのに驚く。
<EV車・脱原発に乾杯>
 タクシーに乗ったのは、土曜日の午後7時前であるが、片側3車線の市内の道路は、車がいっぱい走っている。東京都と比べられない雰囲気である。これが全てEV車になれば、北京は文句なしの国際都市NO1になるのであろう。
 しかも脱原発に舵を切ったという。これは人類への貢献第一だ。素晴らしい。

 以前から一般車両もプレートのナンバーで「走れない日」と規制されているが、かの運転手は「休みの日はマイカーで白タクで稼いでいる」と胸を張った。「上に政策、下に対策」なのか。金が左右する中国は、相変わらずだ。
<衰退日本・消えたイトーヨーカ堂>
 北京入りして数日後、各国大使館のある朝陽区にある友人宅に行った時には、日本で唯一のスーパーマーケットのイトーヨーカ堂の看板があった。ところが、昨日午後に看板はなかった。撤退したのだ。
 中国の変化に追い付けず、相変わらず高額商品で対応していたようだ。

 日本生活では、年金生活者だと果物に手が出なかったが、北京では割安の果物ばかりである。今朝もリンゴ・キウイフルーツでビタミン・ミネラルを補給した。朝粥は5種類の穀類で作った。中国は穀類が豊富で、日本に比べると割安だ。蛋白補給でもあるし、胃に優しい。漢方は冷たいものを排除して胃腸を保護する。
 日本の食生活は、貧相でバランスに欠ける。
<子供部屋に改めて圧倒>
 以前にも中国家庭の子供部屋を見て圧倒されたが、今回も5歳児の部屋に仰天してしまった。
 日本流だと3K住宅であるが、居間の前後左右の書棚に、子供の玩具と幼児本で膨れ上がって
いた。床にはスポンジ用の敷物を敷いてあるため、飛び歩き、転んでも安全である。3歳児のころは、玩具という玩具で膨らんでいた。日本製を含め、外国製のものばかりである。
 今回は若者が興じるゲーム機まで玩具の対象だった。動物を描いた幼児本を開くと、そこの動物の鳴き声が聞こえてくるのだ。
 「夫の父親が何でも買い与えるので心配」と母親は心配げだ。
 およそ玩具などとは無縁の環境で育った者には、評論のしようがない。30代の夫妻の幼児教育も、改めて考えさせられてしまった。5歳児も簡単な英語を使う。幼児教育の成果だ。
<子供教育成功で北京暮らしの裁縫屋のおばさん>
 マンションの一角に裁縫の店を出しているおばさんがいる。彼女には、二人の息子と娘がいる。出身は広西省というから、北京から遠い南の地である。それでいて、どうして北京に住んでいるのか。
 「教育でしか一人前の生活が出来ない中国」を、彼女は、食うや食わずで、子供に実践し、見事成功した素晴らしい中国人女性である。
 聞けば涙の出るような彼女の生い立ちだ。小児麻痺で今も普通に歩くことは出来ない。それでも働き者の男と結婚、二人の子供の教育に集中した。二人の子供も親に従順、よく勉強した。「北京にいれば、北京大学にも入学できる能力を身につけた」という。
 長男も長女も、優秀な学生となって北京で就職、後者は英語の通訳も出来る。夫は亡くなったが、二人のお蔭で、母親は北京のマンションで暮らせる身だ。
 今の北京は、昔からの北京人と官僚になった一部の特権北京人、北京や地方の大学を卒業、北京で仕事を得た新北京人で成りったっている。さらには出稼ぎ農民が加わる。北京のインフラは出稼ぎ農民労働者の成果である。
 出稼ぎ労働者として成功した努力家も、新北京人である。
<静かな変革の北京>
 いま北京は、静かな改革が進行している。市民の一部には衝撃を与えているようだが、物知り顔のタクシー運転手によると、北京は「安全・安定している」という。「住宅で持つ北京」は、これから「値上がりはしないが、下がりもしない」というのだ。
 東京のタクシー運転手は、東京のいまをどう評価しているだろうか。
(パソコンのキーボードがふらついていて、なかなか原稿が書けない。昨夜はパソコンを開くことも出来なくなった。パソコンの扱いに問題があるのか。ネット社会はこれで老人には大変だ)
2017年12月17日記(政治評論家・日本記者クラブ会員)

jlj001 at 13:29 この記事をクリップ!
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