2007年10月20日

43【ジェニーと健太の再会】

 オーナーの家。
 ジェニーと一緒に、カティの妹と弟が庭のテレスで
 遊んでいた。
「エレナ、おいで!」とオーナー。
「は〜い」
 エレナが走って来た。
「二人で食べなさい。」
 オーナーがカットしたマンゴを皿に乗せ、手渡した。
 エレナはニコニコして、弟の分と二皿持って行った。
「ジェニーもこっちで食べなさい。」
「ありがとうございます。」とジェニー。
 二人がソファーに座った。
「甘いでしょ!」
「、、甘いですね!」
「ねえジェニー。私思うんだけどさ、短期間に
 いろんな事が起きたから、、」 
「、、」
「どうかな。貴方の今後の事も合わせて、もう一度
 考えた方がいいんじゃないかな、、」
「私の、今後?」
「誤解されると困るけど、今は何故、健太と別れたか
 その事情や状況を、有る程度は健太も知っている。
 でもそれは、全て第三者から聞いた話でしょ。
 二人の心の整理をする意味で、今こそきちんと
 健太と向かい合って、話し合った方がいいと思う。」
「、、」
「やり直す、やり直さないでなく、事実を伝え、
 誤解を解き、お互い納得するための話し合いよ。」
「、、」
「私も随分と悩んだわ。カティがこんな状況の時に
 するべき話しだろうかってね。でも
 悩んでいるのは健太も同じだと思う!」
「!!」
「カティがこんな時だからこそ、健太は決断を迫られ
 ている訳でしょ。健太が後悔しない決断をするため
 には、先ず、ジェニーと健太の過去のわだかまりを
 精算すべきだと思う。」
「、、」
「その上でどんな決断するかは、健太が決める事。
 その決断を待ちましょう。」
「、、」
「ジェニーは、カティの気持ちを優先したいのだろう
 けど、健太はジェニーとの事が納得できてないのよ。
 それじゃ健太が正しい判断できないし、
 有る意味、アンフェアだと思う。」
「、、」
「どう?、、、」
「そうですね。確かにそうだと思います。」
「そうでしょ!」
「私、健太と逢います。逢って話し合います。」
「その方がいいと思うよジェニー。」
「はい!」

健太は考えていた。
 あの別れを告げられた時に戻り、ジェニーの気持ち、
 そして自分の気持ちを問いたかった。
 、、ジェニーと逢おう!
 何を話すか迷いはあるが、先ず逢おう!
 健太はオーナーに電話した。
「ヘロー!ヤマちゃん、いえ健太。」
「カティがこんな時、不謹慎と思われるかもしれません
 が、ジェニーに逢ってきちんと話したいのです。
 ジェニーが今どこに居るか教えてくれませんか。」
「そう、一寸待ってね。」
 オーナーはジェニーに伝えた。
「ジェニーは今、ここにいるわ。あなたの気持ちを伝え
 たら、ジェニーもあなたと再会し、きちんと話したい
 と言ってます。これから来れますか?」
「はい、伺います!」
「じゃあ待ってるわね。」
 それから30分程して、健太がやって来た。
「いらっしゃい健太。私はエレナ達の傍にいるから
 ここで話し合いなさい。
 私から敢えて言うとしたら、
 健太が苦しんだ様に、あの時ジェニーも苦しんで、
 別れを選択したと言う事。別れる事が健太への愛’
 だったと言う事。それだけ理解してあげて。
 じゃ、ゆっくり話し合ってね。」
「久しぶり、ジェニー」
「はい健太。」
「こうして再び君に会えるまで、とても遠い
 道のりだった、、」
「私も、、、」
「別れの電話をもらってから色んな事が有り過ぎた。
 こうして君に再会できた今、
 何を話そう何を聞こうか、いろいろ考えたけど、、
 小さな事はどうでも良く思える。」
「、、」
「僕が今、敢えて聞きたい事は3つだけだよジェニー」
「はい!」
「一つは、僕に別れの話しをした時の、君の本心を
 聞かせてほしい!」

「、、あの時わたし、病気で死んでしまう事が怖かった。
 毎日、毎日、死の恐怖に襲われとっても辛かった。
 死を怖れながら健太の事を考えていました。
 将来が無くなった私が、せめて健太に何をして
 あげられるのか、、あの時、私が話した一つ一つを
 今でもはっきり覚えてます。
 でも本心は、健太を心から愛していました。
 真実を伝えても健太を苦しめるだけ。
 たくさんの愛をくれた健太をこれ以上、経済的にも
 追い詰めたく無かった。
 その金額があまりにも大きかったから。
 お金が無いためにいずれ消えていく自分を考えた時、
 憎まれても恨まれても、無駄な努力をさせる事なく、
 あなたには別の幸せを見つけてほしかった。
 だから健太にだけは、お別れの手紙も書かず、
 あなたに嫌われながら死んでいく道を選択しました。
 死んだ事すら知られない道を選びました。
 ただ一つ私が残念だった事があります。
 それは、「家族を紹介するね。」あの約束、
 その機会が無くなった事がとても悲しかった。

「そう、、ありがとうジェニー。ではもう一つ。
 今ジェニーは僕をどう考えてるの?」
「二人の間に月日は流れました。いろんなシチュエーシ
 ョンが変わり、いろんな考えが私の頭の中をよぎりま
 した。知らなかった出来事。知りたくなかった時間の
 流れ、聞きたくなかった囁き、たくさん有りましたが
 私のとても大切な人で有る事に今も変わりありません。
 私の人生は健太の存在そのものです。
 今でも健太の為ならどんな人生も後悔しません。
 この愛が報われるか、報われないかは問題ではありま
 せん。大切な事は、今も何一つ変わらない愛を持ち続
 けている事です。」

「ありがとう!
 最後にもう一つ聞きたい。これが最後です。」
「はい。」
「僕がジェニーに何かを望んだら、どうしますか?」
「、、、」
 ジェニーはしばらくの間、額に手をあて考えていた。
 やがてジェニーの唇がうごいた。
「受けます。、健太の望みが何であれ、私は健太の望みを
 全て、受け入れます。それが私の生でも死でも、
 そのまま何も言わず受け入れます。 
 それが健太の、心からの望みであれば、、!」

「ありがとう。全てを信じます。
 僕は再び、ジェニーに救われたよ。」
「、、」
「聞きたい事の全て、納得する事ができた。
 次はジェニー。あなたから話して下さい。」
「、、」
「、、」
「日本で手術が無事に終わり元気になればなるほど、
 健太に再会したい、、今さら逢える訳ないけど
 逢いたかった。健太は今どうしているの?、、、
 元気なの?、、それだけでも知りたい。
 そんな事を何度も考えてました。
 自分から一方的に別れ、状況が変わったからと
 言って、今さら元に戻れ無い事も分かってました。
 それを知りつつ逢いたいと願う気持ちを抑える事で
 精一杯でした。
 その私が今、健太にこうして再会できました。
 私が聞きたい事は、一つだけです。
「それは、何?」
「健太は今、幸せですか?私の望みは健太の幸せだけ。
 健太が幸せなら望む事はありません。
 もし幸せじゃないなら悲しく思います。
 健太が幸せになれる道を私に教えて下さい。
 どんな望みも私は叶えるでしょう。それで健太が
 幸せになれるなら、どんな事にも従います。」
「、、」
「、、」
「ジェニー僕に時間を下さい。、、
 僕は自分が幸せなのか、そうでないのか、あまりに
 いろんな事が有りそれさえ分からなくなっています。
 しばらく、幸せとは何なのか考える時間がほしい。
 その幸せとは僕だけのものでなく、僕を取り巻く人
 の幸せも含めて考えたい。」
「はい。健太が納得できる幸せを選択して下さい。
 どんな選択で有っても、私は何も問題ありません。」
「ありがとう! では近い内にまた逢いましょう!」
「はい。」
「その時、どこに行けばジェニーに会えるの?」
「私はサロンに戻ります。どんな時でもオーナーが
 知ってますので、オーナーに聞いて下さい。」
「わかった!ではジェニー、僕は帰ります。」
「ありがとう健太。こうして静かに話せる機会を与えて
 くれた事に心から感謝します。」
「感謝しているのは僕も同じです。
 君に再会できてとても良かった。」
「私もです。」
「では、また逢いましょう。」
「はい。分かりました。」
 健太が帰る後ろ姿を、
 ジェニーはオーナーと共に見送った。
「どう、ジェニー?」
「オーナーありがとうございました。私は今、
 とても清清しい気持ちです!」
「そう!二人が納得できる話ができた、と言う事ね。」
「はい。何ひとつためらう事なく、私の本心を
 伝える事ができました。」
「そう!それは良かったわ。」
「健太に再会でき、気持ちを伝えるチャンスを与えて
 いただき、心から感謝しています。」
「そう!それは何よりも嬉しい言葉よ。」
「、、」
「これからの事は何か、話せたの?」
「全て健太に委ねました。後は健太の選択に任せます。」
「そう。うん、それで良いと思います!」
「はい。健太が私の所在を尋ねる連絡が有ったら、
 その時はそのまま伝えて下さい。」
「わかったわ。現実を迎え入れる’と言うことね。」
「はい。健太がどんな選択でも、私は一生、
 健太を愛する事に変わり有りませんから。今はただ、
 変わらず健太を愛し続けてきた自分を誇らしく思い、
 とても清清しい気持ちです。」
「強くなったわねジェニー!」
「えっ、そうですか?」
「うん!それはとっても良い事だと思うわ!」
「ありがとうございます。」
「現実を真正面から受け入れるジェニー、かわいいゾ!」
 と、おどけて見せた。
「じゃあ、この前までは可愛くなかったって、こと?」
「そんな事は言って無いわよ。
 前は前で、そこそこかわいいよ!」
「あ、ひど〜い!」
「ウフフッ」
「ウフッ、ありがとうございますオーナー!」
「さ、お茶にしましょう!」

 健太はホテルに戻り、日本の会社に電話をした。
 休暇は後2日だけ。
 今の状況を考えると残り2日ではとても足りない。
 健太は休暇の延長を会社に依頼する事を考えていた。
 ジェニーに再会でき、あの別れの真実を知り、
 今もなお愛してくれている気持ちを聞いた。
 自分の決定に従うと言ってくれたジェニー。
 ジェニーへの思いが大きくなる一方、
 カティがこんな状況の時に、こんな事を考えている
 後ろめたさも感じていた。

 それはカティへの責任感なのか? 愛なのか?
 健太は自問自答していた。


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