2012年01月25日
株式会社エス・ティ・ティ
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技と人は一生の財産。
仕事を通じて豊かな人生を
送るための舞台となるお店を作る
飲食業界で40年以上、フランス料理のシェフとしても20年を超えるキャリアを持つ坂口俊郎氏が代表取締役を務める株式会社エス・ティ・ティ。ここ数年、大阪で相次いで出店を行っている同社が根底に持つ、人材への思いと将来へのチャレンジについて伺った。
株式会社エス・ティ・ティ
代表取締役
坂口 俊郎氏(61才)
鳥取県出身。上京して洋食店でキャリアをスタートさせ、30代からフランス料理を活躍の舞台に。現在、「社長業とシェフ業の割合は7対3ほど。シェフ業の大半は仕入れと皿洗い」とのこと。西宮市商工会議所で独立開業指導員も務め、自身の経験を伝えながら後進の育成に力を注いでいる。
軸足を大阪に移し、
味とサービスに磨きをかける
1988年の創業以来、西宮と芦屋を拠点にして地域に親しまれるフランス料理店を複数展開してきた株式会社エス・ティ・ティ。そして今、同社は軸足を大阪に移し、新たな市場で飛躍を目指している。現在7店舗を展開するうちの6店舗が大阪市内だ。
「大阪は価格と質に対する目がシビアですね。ただし市場は大きいので、新規の来店者は獲得しやすい。これは言い換えれば、私達が納得の料理とサービスを提供できなければリピーターは獲得できず、経営は安定しないという意味。厳しいですが、チャレンジしがいのある市場です。」
坂口氏のこの言葉を象徴するのが、「ヤサイフレンチ」という同じブランド名を掲げながらも、細部では大きく異なるという西梅田の「NR」と難波の「BP」だ。やや若年層が多いNRでは、素材にひと工夫を加え、新たな食べ方・楽しみ方の提案に力を入れている。一方、50才以上の来店者が多いというBPでは、素材そのままの味わいを重視。これらの違いは、来店者と真摯に向き合い、「お客様にとってのベスト」をそれぞれのお店が考え抜いた結果だ。
また、NRとBPの“枝分かれ”は、同社の特徴である「すべての店が独立した別の店」という考えの象徴でもある。各店舗では店長に大きな裁量が与えられ、独自判断で経営を行っているのだ。
「会社が担っているのは、新店の企画ぐらいです。店長は立候補制で、『やりたい』と手を挙げた人に全面的に任せます。人は、与えられた仕事ではどうしても『やらされている』という感覚を持ってしまう。それでは本人も成長せず、店も繁盛しません。自分から手を挙げ、責任と権限を委譲されているからこそ、本気で取り組めるのです。」
この考えに基づき、メニューやサービスは店長の判断にゆだねられている。「会社がやっているのは、日々の仕入れぐらいでしょうか」と坂口氏が言うほどだ。また、店舗を跨いだ人事異動は基本的に行わない。自らが選んだ職場に対し、本気で取り組むことでスキルを磨いていく。そんな環境を制度面からも支えているのだ。
海外研修に独立支援制度。
人材育成こそが会社の使命
現場の裁量を大きくすることは、一般的には、会社としての求心力が低下するという側面も持つ。しかし同社は、創業20年以上たった今なお、高い求心力を持つ。その秘訣を坂口氏は、「技と人は一生の財産だから」と言う。すなわち、人材育成だ。
代表的な取り組みは、創業時から続けている海外研修だ。入社5年程度のスタッフを対象に、約1年間、フランスやイタリアなど、本人が希望する国へ派遣している。この研修により、技術はもちろんのこと、感性を磨き、また、困難な環境でもくじけない強い気持ちを養ったスタッフが数多く育っている。
社内では、スタッフ1人ひとりに「自ら考え、行動する力」を磨くことを呼びかけている。来店者の年令や食事の進み具合、アニバーサリーなどのシチュエーションに心を配り、それらを料理とサービスに反映する。このスタンスがぶれないように、坂口氏からは「売上よりも料理とサービスの質を重視する」という号令が発せられている。
また、「北浜の店以外、ほかの店にはほとんど顔を出さない」という坂口氏だが、実はスタッフの家族構成や通勤時間など、細かな情報は店長以上に把握している。そして、「子供が生まれたばかりだから、なるべく残業を減らしてあげよう」、「結婚が決まっているし、昇給を考えてあげよう」など、店長に指示を出しているのだ。
「飲食業は確かにきつい仕事です。だからこそ、家族の理解が不可欠。会社の役割とは、家族が納得して見守ってくれ、本人が業務に打ちこめる環境を整えることではないでしょうか。また、本人に『働く意味』を問い続け、仕事を通した成長と充実した暮らしをサポートすることではないでしょうか。店はそのための舞台なんです。仕事に真剣に打ちこむことができれば、本人には技と人という一生の財産が残ります。それが結果として、会社への求心力になっているように思います。」
夢を持った人材とともに
アジア市場を目指す
スタッフが心を1つにし、大阪という新たな市場で確かな基盤を築いてきた同社。次に見つめるのは、中国をはじめとしたアジア市場だ。経済発展にともなって街場のフランス料理店、イタリア料理店が増えてきているとあって、日本からの進出にも大きなチャンスがあると坂口氏は見ている。
「和食が実証してきたように、海外進出にあたっては、日本人が持つ料理やサービスに対する繊細さこそが最大の武器なんです。ジャンルは関係ありません。日本人らしさ、エス・ティ・ティらしさに自信をもって、アジア市場へ私達の料理とサービスを提案していくつもりです。」この目標に向けて同社が期待するのは、「夢を持った人材」だ。経験や知識・技術以上に、意欲ある人とともに海外進出を目指したいと考えている。
長く飲食業界の最前線で活躍し、今なお旺盛なチャレンジ精神を持つ坂口氏。最後に、飲食業界で働く若手へメッセージを送ってくれた。
「夢と意欲を持って頑張り続けられるかどうかは、正直なところ、入社した会社の環境に左右されます。そこで私が提案しているのは、期間限定の『体験入社』です。実際に現場に身を置き、店長や社長の行動と考えに触れてみる。そのうえで納得して入社すれば、きっと、辛いことがあっても頑張れます。仕事は一生のことです。中途半端にならないためにも、『ここぞ』と思う会社には体験入社を申し出てはどうでしょうか。もちろん当社では大歓迎ですよ。あなた自身で、店長やスタッフの働く姿を見て、感じてください。」
■企業プロフィール
1988年創業。1995年、現在の株式会社エス・ティ・ティとして法人化。2009年の北浜での出店を皮切りに大阪進出を加速させる。現在、6拠点で7店舗を展開中。
■株式会社エス・ティ・ティの展開ブランド
・レスプリ・ドゥ・クゥー・ドゥ・フランス ・カフェ・ドゥ・コルス
・ヤサイフレンチ・ノール ・ヤサイフレンチ・ビー・ピー
・ル・コントワール デュ グー
・ビストロ・バー クゥー・ドゥ・ヴァン ・アシヤ ゴメンヤ
お問い合わせ:06-6223-7088(レスプリ・ドゥ・クゥー・ドゥ・フランス)
「グルメキャリー2012年1月26日号」掲載
