2012年01月28日

No. 1634 鶏1羽が1088元、落語の世界を地でゆく、中国の年越し商戦

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■ テーマ: 【No. 1634 鶏1羽が1088元、落語の世界を地でゆく、中国の年越し商戦】

■ 今日のニュース:鶏1羽が1088元、落語の世界を地でゆく、中国の年越し商戦

・浙江省寧波市で春節に「1羽1088元(約1万3400円)で食用の鶏が売り出されて、評判になった。「とんでもない高値」だが、「高い」という理由で次々に売れたという。日本の落語にある「千両みかん」を“地でゆく”ような光景が、中国で繰り広げられた。
・鶏の1羽当たりの小売価格は、時期や場所、種類によって大きく異なるが、20元程度で買える場合もある。
・旧正月期に「トンデモ価格」で鶏を販売したのは、大学院の修士課程に在籍する学生だった。発売は旧暦の大みそか。価格は1088元。縁起がよいとされる数字「8」を組み込んでこの価格にした。鶏そのものに特に違いがあるわけではない。
・購入した市民は、親類の家に年始のあいさつに行くので手土産に買った。普通の鶏だが「普通ではない。1088元を出したのだから」との考えだ。親類の家では、皆が驚いた。その鶏を料理して、あっという間に食べてしまった。手土産に何がよいかと悩んでいたが、「あの鶏は成功だった。皆がはっきりと覚えてくれた」と、効果は抜群だったという。
・考案者の学生によると、旧暦の大みそかだった22日から24日までに374羽が売れた。現地政府が贈答品用に買い上げた47羽と、飲食店が買った76羽以外は、すべて一般市民と見られる人が購入した。
・同学生は「大企業の経営者が買ってくれると思っていましたが、違いましたね。基本的に、普通の人が買ってくれました。特に若い人が多かった。贈答用ですが、1088元の鶏を買ったら面白いと感じたことが、購入の動機のかなりの部分を占めていたようです」と説明した。
・同学生は、元宵の前日までに用意した1000羽を売り切るつもりだ。

■ 戦略ポイント: ニワトリを1,088元で販売、その発想と価格設定、実行力に脱帽

■ Skipper Johnのコメント
中国では時に、通常では思いも付かないような商品やサービスが登場して驚かされることがあります。例えば、中秋節の月餅市場です。

広東省東莞市の月餅の売上は毎年1億元前後で、そのうち4000万元は箱代とのこと。売上の約40%は箱代になっています。また、月餅の原価というのはだいたい1箱6個で40元くらいで、6で割ると月餅1個の原価は6元とか7元程度です。

原価40元の月餅に数十元の箱代を加えた月餅一箱が、定価では200元前後で売られているのが現状です。ずいぶん利益率の高いビジネスです。さて、ここで登場するのが月餅の引換券です。中秋節が近づくと引換券が市中にあふれかえります。

月餅の引換券は月餅製造会社から企業がまとめ買いします。だいたい定価の70%で購入されます。引換券は社員に配られたり一部は販売されます。しかし社員も配られた引換券を全て月餅に引き換えることはせず、引換券回収業者に定価の40%で買い取ってもらいます。回収業者は引換券を沢山買い取って、定価の50%で元の製造会社に買い上げてもらいます。

これにより回収業者は濡れ手に粟で転売手数料20%が手元に残る計算となります。このしくみは「月餅金融」と呼ばれています。

月餅製造会社は回収した引換券を再販したり、売れ残りとして償却したりします。もし生産した月餅が少なくて在庫が足りない場合は、月餅引換券で他の商品(まんじゅうとか)と引き換えてもらうことで、他の商品の在庫も減らせます。製造会社にとって月餅引換券は打ち出の小槌になっています。

月餅金融のようなアイデアやビジネスモデルは一朝一夕でできるものではありません。これは企業が月餅引換券を交際費あるいは福利厚生費で購入して贈与するという「寄付行為」が前提となっていて、その寄付金額をメーカーと回収業者と月餅を食べる消費者が利益配分しているモデルです。また、最近では上海カニの引換券も同様の仕組みで運用されています。

ただ、このモデルには脱法性があります。製造元は回収した引換券を売上取消しせずに再販しているので差益分にかかるべき所得税の脱税に当たります。回収業者は2割の転売利益分の所得税や増値税等を脱税していることになります。

ちょっと前置きが長くなりました。さて今日のニュースでは、寧波市の学生が春節に「1羽1088元(約1万3400円)」で食用の鶏を販売したところ、3日間で374羽も販売したと伝えています。また、購入者の3分の2が一般市民でした。

筆者は、このビジネスに卓越したものを感じます。特に以下の3点について書きます。

第一に、「発想」です。そもそも価値が同じものは価格も同じです。今回の場合、ニワトリの価値はかわらないので、消費者の購入価格は基本的に市場価格となります。ところがこの主人公の学生は、あえて価格を上げました。主人公が「春節前なので大企業の経営者が高く買ってくれる」と読んだからです。これは素晴らしい発想です。

第二に「価格設定」です。主人公はニワトリ一羽に極端に高い価格(1088元)を設定しました。もしかしたら、ノリで「1000元以上で縁起のいい88元を加えた」程度の軽い気持ちだったのかもしれません。ただ、ニワトリ一匹1,000元以上という価格設定が素晴らしい。価値が同じニワトリにあえて想像以上の価格をつけることで「特別なニワトリ」という新たなブランド価値を生み出しました。

第三に、「実行力」です。普通は思いついても調べる人はあまりいません。ましてや実際に実行する人はもっと少ない。筆者の感覚では、講演会でいい話を聞いて自分の行動をすぐに変更できる人は1%もいないでしょう。主人公は思いつきをすぐに実行に移し、春節前のわずか3日間で374羽を販売、40.7万元(約488万円)を売り上げました。これは都市部のホワイトカラー4名分の年収に相当します。

主人公の当初の仮説は「大企業の経営者が高く買ってくれる」というものでしたが、実際に販売してみると何と三分の二が一般市民でした。これも実証してみて初めて分かる大切な経験値です。

また、贈答品として購入した一般市民は「あの鶏は成功だった。皆がはっきりと覚えてくれた」と言っています。贈答効果の面でも主人公の想定どおりとなっています。

このように、ビジネスの成功には発想から企画をし、実行に移して利益を上げるというプロセスが必要です。かつ、月餅金融のような脱法性がありません。この主人公が非常に鋭い感性でこのビジネスを成功させた点に脱帽です。


john1984jpn at 00:08│Comments(0)TrackBack(0)この記事をクリップ!新しいビジネス | 新しいアイデア

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