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■ テーマ: 【No. 1790 香港返還15周年で式典「一国二制度堅持」と中国主席】
■今日のニュース:No. 1790 香港返還15周年で式典「一国二制度堅持」と中国主席
・香港返還15周年記念式典と行政長官就任式が1日午前、開催され、長官が官僚出身の曽蔭権氏(67)から実業界出身の梁振英氏(57)に交代した。民主派は中国共産党・政府との関係が密接な梁氏の長官就任に反発しており、同日午後に大規模な抗議デモを行った。
・式典・就任式には胡錦濤国家主席ら中国の党・政府高官を含む約2300人が出席。胡主席は「『一国』の原則を堅持するとともに、『二制度』の違いを尊重する」とした上で、「一国二制度、香港人による香港統治、(香港の)高度な自治を実施するという中央政府の方針は全く揺るがない」と強調した。
■ 戦略ポイント: 香港返還15周年が過ぎ、香港の大きな政治的変化が迫っている
■ Skipper Johnのコメント
1997年7月1日未明、香港の返還式典を終えた英国・チャールズ皇太子が英国軍艦で香港を離れ、香港の中国本土復帰が実現しました。
昨日香港返還15周年記念式典が行なわれ、中国の胡錦濤国家主席が出席しました。香港返還から15年が過ぎ、今や香港の街中で話されている言葉は変化し、広東語や英語より中国語を耳にする機会が増えています。
香港政府統計処が12年2月に発表した2011年の国勢調査報告によると、香港における北京語は普及率が初めて英語を抜き、現地で2番目の主流言語となりました。香港の総人口は約707万人で、うち「北京語を話せる」とする人口は約46.5%を占め、割合は2001年より13.2ポイント上昇しました。
香港返還から15年 北京語の普及率が英語抜く
香港特別行政区政府によると、香港が中国に返還された1997年7月から2009年末までのあいだに、62万人が中国本土から香港に移住しました。港政府は本土出身者の香港社会への早期適応を目的に、乳幼児に対する医療や検査、住環境に関する支援、経済援助などを行っています。97年7月から09年末までに2万4925人が、定住7年未満の本土出身者を対象に提供される総合援助サービスを受けました。
香港返還後、62万人が中国本土から移住―香港
このような中国からの移民奨励策も北京語の普及に拍車をかけています。中国では全国どこでも「普通話=北京語」の教育を行なっているので、中国からの移民の多くは香港でも「普通話」を話します。また、香港での「普通話」教育も普及してきました。
しかし、香港人と中国人の生活習慣や異文化ギャップも表面化しています。香港では駅の改札内は飲食禁止となっており、違反者には最大で罰金2000香港ドル(約2万円)が科せられます。12年1月、地下鉄車内で中国からの女性観光客が娘にお菓子を食べさせていたため、地元乗客が注意したところ、女性観光客は「子どもなのに」などと反論しました。これをきっかけに激しい口論が始まり、その様子が動画投稿サイトで公開されると、ネット上で大きな話題となりました。
香港地下鉄で本土女性と地元乗客が口論、「本土客に対する差別意識の表れ」
香港人の多くは、「『郷に入れば郷に従え』ができない中国人観光客は十分に反省すべき」と感じていますし、中国人の多くは「中国本土の人間に対する香港人の差別意識の表れ」ではなかと感じています。経済的・文化的な差がなくなりつつある香港と中国ですが、生活習慣の違いはまだ大きく残っています。
香港浸会大学の馬成龍主任の「中国本土在住の香港人と香港在住の中国本土人のコミュニケーションと適応性に関する研究報告」によると、香港在住の中国本土出身者のうち3割が、生活の様々な場面で「差別を受けている」と感じていました。例えば、買い物をしていて本土出身者だと分かると値段を釣りあげられたり、外出先で冷たい対応をされたり、といった経験を挙げています。一方、中国本土在住の香港人の3割が「本土の人はマナーが悪い」と思っています。
香港在住の本土出身者、3割が「差別を感じる」
香港は東京23区の2倍の面積に700万人が暮らす狭い都市です。観光から小売り、金融や不動産まであらゆる産業で中国本土への依存度は高まり続けています。陸続きの広東省を中心に、大陸とのヒト、モノ、カネの融合を進めていて、香港にとっての経済的恩恵は莫大なものがあります。そのことを多くの香港人は理解しているものの、一方で大陸との同化が進み、自由が尊重される空気が薄まることへの警戒感があります。
香港の「中国人」嫌悪 日本も他人事ではない
また今日のニュースでは、行政長官就任式も同時に開催され、長官が官僚出身の曽蔭権氏(67)から実業界出身の梁振英氏(57)へと交代したと伝えています。民主派は中国共産党・政府との関係が密接な梁氏の長官就任に反発していて、1日には大規模な抗議デモも行なわれました。
以下、福島香織さんのコラム、中国新聞趣聞から香港政治について引用します。
中国新聞趣聞 福島香織「狼と豚の闘い」を制した梁振英氏
『新長官である梁振英(CY・リョン)氏は1954年、香港生まれで原籍は山東省。香港理工学院建築測量学部を卒業後、英・ブリストル理工学院(現西イングランド大学)で修士課程を修了、建築測量士の資格を取得しました。1988年から中国では土地使用権の一部の有償譲渡、転売が容認されるようになり、公開入札や土地(使用権)売買について上海市政府や深圳市政府にコンサルティングするなど、中国の不動産業界と政界に深く関わってきた人物です。』
『香港が中国に返還された後、不動産コンサル業の傍ら、江沢民氏の庇護を受けて初代行政長官となった董建華氏のもとで、行政会議という諮問機関のメンバーとしてブレーンの役割を果たしました。2003年からは中国の全人代(全国人民代表大会)の諮問機関、全国政治協商委員会(参院議員みたいな名誉職)に就いていて、中国とは深いつきあいのある親中派です。』
『香港の初代行政長官・董建華氏は2005年3月、2期目の任期半ばで失脚して辞任しました。国家安全条例である基本法23条立法の採決をごり押ししようとして、市民50万人規模の激しい抗議デモを招き、香港社会を混乱した責任をとるため、詰め腹を切らされました。』
『昨年春からの「中国式ジャスミン革命」騒動だの、烏坎(広東省烏坎村の住民の反乱)式抵抗だのに香港の民主派やメディアが関わっていると見られる中、香港の反体制活動をコントロールすることが、にわかに切実な問題になってきました。』
『長官普通選挙の導入要求については2012年からではなく2017年に先延ばしされています。(中略) 2017年までの5年間の香港の動きは、香港の一国二制度の行方だけでなく、中国の一党独裁の行方を占う上で、注意深く観察する価値がある。』
昨日の香港中心部でのデモは、社会主義体制の中国の主権下で幅広い自由などを認める「一国二制度」の形骸化を危惧する人々が多数参加しました。参加者数は主催した民主派団体「民間人権陣線」が事前に見込んだ5万人を大きく上回ったようです。また、中国の活動家・李旺陽氏の不審死の真相究明を求めたりする人々らもデモに参加したとのこと。
香港、返還15周年で大規模デモ 民主化後退を懸念
香港の政治は、行政長官の選挙を含めて中国の共産党中央がしっかり把握しています。しかし、香港から距離的に近い広東省烏坎村の住民抗議活動など、民主的な動きの連動には中央政府が敏感に反応しています。
2017年の行政長官選挙が実施されるのか、あるいは国家安全条例である基本法23条が施行されて国家反逆、中央政府転覆などのほか、外国の政治団体の活動や香港の政治団体との連携などを取り締まるような時代がくるのか、返還後15年を過ぎる香港の政治が今後大きく変化しそうです。
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■今日のニュース:No. 1790 香港返還15周年で式典「一国二制度堅持」と中国主席
・香港返還15周年記念式典と行政長官就任式が1日午前、開催され、長官が官僚出身の曽蔭権氏(67)から実業界出身の梁振英氏(57)に交代した。民主派は中国共産党・政府との関係が密接な梁氏の長官就任に反発しており、同日午後に大規模な抗議デモを行った。
・式典・就任式には胡錦濤国家主席ら中国の党・政府高官を含む約2300人が出席。胡主席は「『一国』の原則を堅持するとともに、『二制度』の違いを尊重する」とした上で、「一国二制度、香港人による香港統治、(香港の)高度な自治を実施するという中央政府の方針は全く揺るがない」と強調した。
■ 戦略ポイント: 香港返還15周年が過ぎ、香港の大きな政治的変化が迫っている
■ Skipper Johnのコメント
1997年7月1日未明、香港の返還式典を終えた英国・チャールズ皇太子が英国軍艦で香港を離れ、香港の中国本土復帰が実現しました。
昨日香港返還15周年記念式典が行なわれ、中国の胡錦濤国家主席が出席しました。香港返還から15年が過ぎ、今や香港の街中で話されている言葉は変化し、広東語や英語より中国語を耳にする機会が増えています。
香港政府統計処が12年2月に発表した2011年の国勢調査報告によると、香港における北京語は普及率が初めて英語を抜き、現地で2番目の主流言語となりました。香港の総人口は約707万人で、うち「北京語を話せる」とする人口は約46.5%を占め、割合は2001年より13.2ポイント上昇しました。
香港返還から15年 北京語の普及率が英語抜く
香港特別行政区政府によると、香港が中国に返還された1997年7月から2009年末までのあいだに、62万人が中国本土から香港に移住しました。港政府は本土出身者の香港社会への早期適応を目的に、乳幼児に対する医療や検査、住環境に関する支援、経済援助などを行っています。97年7月から09年末までに2万4925人が、定住7年未満の本土出身者を対象に提供される総合援助サービスを受けました。
香港返還後、62万人が中国本土から移住―香港
このような中国からの移民奨励策も北京語の普及に拍車をかけています。中国では全国どこでも「普通話=北京語」の教育を行なっているので、中国からの移民の多くは香港でも「普通話」を話します。また、香港での「普通話」教育も普及してきました。
しかし、香港人と中国人の生活習慣や異文化ギャップも表面化しています。香港では駅の改札内は飲食禁止となっており、違反者には最大で罰金2000香港ドル(約2万円)が科せられます。12年1月、地下鉄車内で中国からの女性観光客が娘にお菓子を食べさせていたため、地元乗客が注意したところ、女性観光客は「子どもなのに」などと反論しました。これをきっかけに激しい口論が始まり、その様子が動画投稿サイトで公開されると、ネット上で大きな話題となりました。
香港地下鉄で本土女性と地元乗客が口論、「本土客に対する差別意識の表れ」
香港人の多くは、「『郷に入れば郷に従え』ができない中国人観光客は十分に反省すべき」と感じていますし、中国人の多くは「中国本土の人間に対する香港人の差別意識の表れ」ではなかと感じています。経済的・文化的な差がなくなりつつある香港と中国ですが、生活習慣の違いはまだ大きく残っています。
香港浸会大学の馬成龍主任の「中国本土在住の香港人と香港在住の中国本土人のコミュニケーションと適応性に関する研究報告」によると、香港在住の中国本土出身者のうち3割が、生活の様々な場面で「差別を受けている」と感じていました。例えば、買い物をしていて本土出身者だと分かると値段を釣りあげられたり、外出先で冷たい対応をされたり、といった経験を挙げています。一方、中国本土在住の香港人の3割が「本土の人はマナーが悪い」と思っています。
香港在住の本土出身者、3割が「差別を感じる」
香港は東京23区の2倍の面積に700万人が暮らす狭い都市です。観光から小売り、金融や不動産まであらゆる産業で中国本土への依存度は高まり続けています。陸続きの広東省を中心に、大陸とのヒト、モノ、カネの融合を進めていて、香港にとっての経済的恩恵は莫大なものがあります。そのことを多くの香港人は理解しているものの、一方で大陸との同化が進み、自由が尊重される空気が薄まることへの警戒感があります。
香港の「中国人」嫌悪 日本も他人事ではない
また今日のニュースでは、行政長官就任式も同時に開催され、長官が官僚出身の曽蔭権氏(67)から実業界出身の梁振英氏(57)へと交代したと伝えています。民主派は中国共産党・政府との関係が密接な梁氏の長官就任に反発していて、1日には大規模な抗議デモも行なわれました。
以下、福島香織さんのコラム、中国新聞趣聞から香港政治について引用します。
中国新聞趣聞 福島香織「狼と豚の闘い」を制した梁振英氏
『新長官である梁振英(CY・リョン)氏は1954年、香港生まれで原籍は山東省。香港理工学院建築測量学部を卒業後、英・ブリストル理工学院(現西イングランド大学)で修士課程を修了、建築測量士の資格を取得しました。1988年から中国では土地使用権の一部の有償譲渡、転売が容認されるようになり、公開入札や土地(使用権)売買について上海市政府や深圳市政府にコンサルティングするなど、中国の不動産業界と政界に深く関わってきた人物です。』
『香港が中国に返還された後、不動産コンサル業の傍ら、江沢民氏の庇護を受けて初代行政長官となった董建華氏のもとで、行政会議という諮問機関のメンバーとしてブレーンの役割を果たしました。2003年からは中国の全人代(全国人民代表大会)の諮問機関、全国政治協商委員会(参院議員みたいな名誉職)に就いていて、中国とは深いつきあいのある親中派です。』
『香港の初代行政長官・董建華氏は2005年3月、2期目の任期半ばで失脚して辞任しました。国家安全条例である基本法23条立法の採決をごり押ししようとして、市民50万人規模の激しい抗議デモを招き、香港社会を混乱した責任をとるため、詰め腹を切らされました。』
『昨年春からの「中国式ジャスミン革命」騒動だの、烏坎(広東省烏坎村の住民の反乱)式抵抗だのに香港の民主派やメディアが関わっていると見られる中、香港の反体制活動をコントロールすることが、にわかに切実な問題になってきました。』
『長官普通選挙の導入要求については2012年からではなく2017年に先延ばしされています。(中略) 2017年までの5年間の香港の動きは、香港の一国二制度の行方だけでなく、中国の一党独裁の行方を占う上で、注意深く観察する価値がある。』
昨日の香港中心部でのデモは、社会主義体制の中国の主権下で幅広い自由などを認める「一国二制度」の形骸化を危惧する人々が多数参加しました。参加者数は主催した民主派団体「民間人権陣線」が事前に見込んだ5万人を大きく上回ったようです。また、中国の活動家・李旺陽氏の不審死の真相究明を求めたりする人々らもデモに参加したとのこと。
香港、返還15周年で大規模デモ 民主化後退を懸念
香港の政治は、行政長官の選挙を含めて中国の共産党中央がしっかり把握しています。しかし、香港から距離的に近い広東省烏坎村の住民抗議活動など、民主的な動きの連動には中央政府が敏感に反応しています。
2017年の行政長官選挙が実施されるのか、あるいは国家安全条例である基本法23条が施行されて国家反逆、中央政府転覆などのほか、外国の政治団体の活動や香港の政治団体との連携などを取り締まるような時代がくるのか、返還後15年を過ぎる香港の政治が今後大きく変化しそうです。
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