DSC03554














KENWOOD LS-1001
1993年、それまで89年に発売されたLS-CX7を除いてはハード素材一辺倒のスピーカーばかりだったKENWOODから、突如普及価格帯(60,000円/2本1組)に発売されたソフトドーム2WAYスピーカーです。

LS-1001はご存知の方も多いと思いますが、K’sというKENWOODが当時仕掛けていたコンパクトなハイクオリティコンポ(略してハイコンポ)のスピーカー部として発売されたもので、好評だったため、その後SP部のみLS-300Gとして発売された経緯もあります。
当時のKENWOODのスピーカーラインナップは、1989年に発売されたLS-G5000を最後に、大型スピーカーのラインナップは消失しており、そんな中で93年に、2本1組60,000円の価格帯で、LS-11EXLS-1001(300G)という2機種をラインナップしました。

LS-11EXは、80年代から続くLS-11の後継機であるLS-11ESの改良版で、サイズ・構成と共に踏襲したうえで、ミッド&ハイの振動板などを改良したもので、高剛性素材を使用した日本的なアプローチのHifiスピーカーでした。一方のLS-1001は、小型ながらゆったりした低域と柔らかな中高域で、音楽をリラックスして楽しめるスピーカーとして発売され、その当時流行しつつあったヨーロッパ風小型2WAYの走りでした。

両者に上下関係や造り込みの差は無く、事実LS-1001はLS-11EXよりも大分小さいのにも関わらず、重量では1Kg1001が軽いだけです。LS-1001のフロントバッフルはパーティクルボードに多重黒塗装されたMDFを重ね合わせたもので、その厚みは40mm位になっていますし、ウーハー&ツィーター各ユニット共に厚みのあるダイキャストフレームを使用しています
当時ONKYOからライバル?として出ていたD-202シリーズはW&TWともにフレームは鉄板プレスの表面化粧版だったので、造り込みでは真面目にやっていたんですね‥‥KENWOOD。


IMG_3332-1















LS-1001ウーファーユニット

IMG_3340-1IMG_3343-1






LS-1001のウーファーは、フランジ厚平均1cmはある4本足の立派なアルミダイキャストフレームに、メインマグネット直径90mm・サブマグネット直径80mm(共に実測)を乗せた防磁仕様となっています。
写真3枚目から分かるとおり、振動板の素材としてはペーパーコーンの表面に特殊コーティングを施したもののようで、小口径振動板にもかかわらず細かいコルゲーション・リブも入っていて、かなり改良に次ぐ改良、検討を重ねて造られたものの様な気がします。
ポリプロピレンなどの樹脂コーンを使用したヨーロッパ2WAYの様な艶やかさは無く、サウンド全体が地味な落ち着いたトーンになっています。


DSC03997













LS-1001ツィーターユニット

LS-1001のツィーターユニットは、ナイロン素材にコーティングを施したもので、現在主流のソフトドームの様な、艶のあるコーティングとは素材感が違います。また、サイズは敢えて規格外の2.8cmで開発されていて、コレには出来るだけ中高域をツィーターで再生する狙いがあったようです
実際に、現在のハイエンドスピーカーでも、ツィーターとミッドのクロスは出来る限り下げる方向で、FOSTEXやYGアコースティックなどは2000Hz代までおとしていますし、小型2WAYで優れたモデルを作ろうとする場合、このアプローチは間違っていないように思います。
実際にカタログ値では、クロスは1,500Hzとなっています(異例に低い数字ですよね?)

DSC03995













ツィーターユニット裏面

バックカバーはプラスチック製のもので、メインマグネットとサブマグネット(防磁用)の上に接着剤でくっつけられています。この辺もヨーロッパ製モデルのユニットをよく研究したのか、それまでの国産ユニットと違い、磁器回路のセンターポールに穴をあけ、それをバックカバー内まで繋げることでユニットの背圧を処理して奥行き感のある中高域再生を実現しているようです

このバックカバーが結構鳴くのかと思い、一度ブチルゴムと鉛テープで防振した事がありましたが、中高域の艶が減ってやせ細り、奥行き感が無くなってとてもつまらない音になってしまったのでヤメました。

どうやらココは
音作りに大きな影響を持っている箇所
らしく、気持ちよく鳴く素材で作ってやったほうが良さそうです。ちなみに、ソナス・ファーベルの初代ガルネリ(95年)は、ツィーターの背面を削りだしの半球状の木製カバーで覆っていました。いかにも綺麗に響きそうですね。そんへんが甘美な音色の秘訣でもあったのでしょう。

DSC04000













エンクロージャー内から見たバスレフポート

バスレフポートは厚手の紙筒製で、結構長さと太さがあります。
ポートを見る限り結構バスレフを活用した設計のようで、これが厚みのある低域の表情を作っているのに一役かっていそうです。

がっ!紙筒製の長いポートは中高域で猛烈に鳴きますし、低域のバイブレーションにも弱そうで心元ありません。そこで、TWユニットから剥がした鉛テープを、バスレフポートの先端にグルグル2回巻きして補強完了。たったこれだけの改造でも、低域の締まりが増して、アタックの力感が力強くなりました( ´∀`)つ
ちなみにWilsonAUDIOのPuppy?・DALIのEUPHONIAなどは、バスレフポートにアルミダイキャストを使用しています。流石っすね‥‥‥はぁ


DSC04003




















LS-1001のネットワーク

LS-1001のネットワークはシンプルな設計で、パーツを見る限りウーハー側はコイルと電解コンデンサーの−/12dBツィーター側はフィルムコンデンサーを使用した−/6dBネットワークとなっているようです。
諸先生方や他の方のHPの中でも、ネットワークは−6dBでしか正確な位相特性は実現できない、という事を仰っている方が多く居ますが、確かにその通り。実際に聴いてみると、音像が太めで柔らかく、大変自然な音がします。

このモデルは、それまでTRIO時代から続くTRIO/KENWOODのネットワークの必須パーツだった電解コンデンサーに替わり、初めてTW領域にフィルムコンデンサーが使用されています。ウーハー側にフェライトコアコイルと電解を使っているのが残念ですが、どこでもフィルムを使いまくれば良いわけではないので、2WAYで厚みのある音像を出したい時は、ウーハー側は電解でも良い気がします。まぁ適材適所ですね。
デザインもそうですが、この辺りはSonusFaberCharioなどのイタリアンSPを相当研究した結果なんでしょう。




【音質】
ドライブ環境
?CEC3300R×PM8100SA Ver2
?CEC3300R×RA-870BX

まず一聴して大変優しい音質です。刺激的な音が出づらく、低域がたっぷりと膨らんでいて、柔らかく温かい印象を与えます。ボーカルなどは肉質感たっぷりに優しく耳元で歌われているような感覚ですが、今一エロさというか、色気が足りません。
基本的に解像度はソコまで高くなく、余韻の再現性は高くないですし、響きの残響時間も長くありません。解像度中・高域伸び微妙‥‥それだけならソフトドームのスピーカーにはありがちですが、中域に甘い響き、というか奥行き感が薄い事が、エロさを削いでいるような気がします。

刺激なく安心して聴いていられる音質は、87年あたりを頂点にしたハードドーム全盛のスピーカー達と比べると大分扱い易いように思いますが、同時にキレや色気など、聴かせ所まで弱まってしまっているため、今一聴き込ませるような・訴えかけてくるようなプレゼンスが弱い事が欠点かな‥‥。


最初のド・ノーマルの状態だと、本当に大人しい性格のSPで、何を聴いてもキレが無く、代わりに分厚い低域と太目の音像(男性ボーカルや女性ボーカルの低い声の部分はモワモワです)がズーンと押してくる印象で、それまで使用していたLS-606やLS-202とは余りに違う性格に驚きました。

余りに大人しすぎて、当時の自分にはつまらなかったので(笑)、結局内部配線を交換しました。太めの芯線(0.25mm位だったかな?)のOFC線に錫メッキを施したAudioTechnica製のそれほど太くないSPケーブルに交換しました。これで少しヌケのよさが改善されましたが、今聴いてもLS-1000や990HG/606などと比べれば圧倒的に優しい音質である事には変わりありません。

他のSPを聴いた後このスピーカを聴くと、音像が膨らんだ立ち上がりの鈍いツマらない音に聴こえますが、しばらく聴いていると肉質感のあるボーカルや刺激ない滑らかな音の佇まいに、何時までも聴いていられるような優しさを感じます。

ちなみにクラシック向きとする意見もあるようですが、弦楽器は少し艶が無くてイマイチ引きこまれません。音場再現も、サイズからすると低域がかなり出る事もあって、最近のEntrySの様な、小型らしい漂うような空間表現とは趣を異にします。エネルギーバランスは大型のSPのようです。まぁ、雄大な低域と漂うような音場再生まで2本60,000円に求めちゃあ酷ってもんなんでしょう。(´−д−;`)



 ただこのスピーカーを聴いた後、3WAYの大型SP達に戻ると、変に音像がやせ細った神経質な音を鳴らす”変な音”のスピーカーに聴こえます。大型ウーハーの汚い中高域も否応なしに意識させられますし、各ユニットがバラバラに鳴るような印象が強く、落ちついて音楽を聴いてられません。
多分どっちが自然か‥と聴かれたら間違いなくLS-1001の方で、本当の世界の音は、音像はそんなにキリキリとやせ細ってはいませんし、耳が痛くなるような音もありません。この音像のふっくらした自然さと、刺激のない引っ込んだ音はやはり小口径ユニット×−6dBネットワークの恩恵が大きいのだと思います。

あと、流石にヨーロッパを参考にした2WAYらしく、英国人が音決めしているROTELとの相性は抜群で、大変繊細な音場が奥行き方向に綺麗に拡がる鳴り方にウットリします( ´_ゝ`)ノ


総合的には、この時代にこの価格で提案された分の価値は十分にあるSPだと思います。




が、例えばソナスファーベルのガルネリの様な、小型でもオーディオファイルのメインスピーカーとして『猛烈に愛されるような魅力』には薄い、と言わざるを得ません。

現状では解像度も中域の伸びも足りないですし、ふくらみ気味の音像は優しさを感じるものの、オーディオ的な物理特性の悪さと立ち上がりの鈍さが気になります。気が向いたらコンデンサー&コイルを現代のフィルムコンデンサーと空芯コイルにして、どこまで魅力を引き出せるか遊んでみるのも面白いかもしれません。




<あと書き>
読み直してみると何か悪いSPみたいですが、優しくバランスの取れた音はハイテク3WAYやマルチチャンネルの調整に疲れた方には、いい癒しになると思います(・∀・)つまたミニコンポからのグレードアップにもオススメで、今市場で売られている一本5Kg足らずの安っぽいソフトドーム2WAYよりはずっと造りも音もいいです。

但しセッティングには少し気遣いが必要で、リアバスレフな上に箱容積が小さいので盛大にエアーが噴出します。出来ればしっかりした台に置いた上で、後ろ壁からは離してセッティングするといいと思います。
また低能率っぷり(82dB)は凄まじく、LS-1000で通常リスニング時3目盛位までしか行かないBehringer A500のパワーメーターが、LS-1001では瞬間的には5目盛位まで跳ね上がります(ちなみにクリップは9目盛り目)。本気で躍動感を出して鳴らそうと思ったら、パワーアンプへの投資は必須なんでしょうが、安物のアンプでも嫌な音を出さないので比較的楽しめるのが良いところです。