ああ、フェデラーよ、お前はやはりカエサルにはなれず、スキピオの前に敗れ去るハンニバルになってしまったか・・・・・・

2006年MS第4戦ローマ大会決勝
ナダル 67 76 63 26 76 フェデラー

前回の対戦で未だにナダルの左利きのスピンボールに対処できなかったフェデラー。そこに来てQFアルマグロ戦、SFナルバンディアン戦で見せたフォアハンドの不安。ひょとしたらナダルの前に一方的に押されまくるのではないかと思った。しかし、さすがはATPに君臨する皇帝フェデラー、しっかりとここまでの課題を克服して対ナダル戦に臨んで来た。第一セットはいきなりの打撃戦、フェデラーはようやくナダルと第一セットからラリーを展開できるようになった。がっぷり四つに組んで6-6となりいきなりTBに突入する。しかし、ここからのフェデラーが凄かった。ここまでストローク戦に終始していたフェデラーがTBに突入してからはネットに突進、パスの心構えが出来ていないナダルをたたみかけ、なんと7ポイント連取で第一セットを奪った。

第二セット、キープ合戦で5-4まで来る。フェデラーのサービスゲームでブレークポイント、イコールセットポイントをナダルは握るが、フェデラーの背面打ちバックハンドボレーがアングルに決まり、危機を乗り越える。ナダルのテニスの質を上げて対抗、再び6-6でTBとなった。第一セットとは対照的に長いラリーが続き、ナダルが落ち着きをもって主導権を握る、フェデラーにもチャンスがあったのだが、最終的にナダルが7-5で押し切った。第二セットは76でナダルである。

第三セット、2-2からナダルがブレーク。そのまま1ブレーク差を守りきって6-4でナダルが取る。
第四セット、今度はフェデラーが先にブレーク。そのまま1ブレーク差を守りきって、最後もブレークで決めて、6-2でフェデラーが取る。

ファイナルセット、フェデラーのフォアハンドのダウンザラインが鋭さを増した。そこからのネットプレにも切れが出てきた。ナダルのパスが通らなくなった。第四ゲームでフェデラーブレーク。第五ゲームフェデラーが先行して圧倒するかと思われたが鉄壁のナダルは崩れない、ディースにまで戻した。ディースが繰り返される。が、フェデラーも崩れない、強気の攻め、フォアのダウンザライン、そしてネット、ついにキープ。だが4-2で試合を決める大事なフェデラーのサービスゲーム、ここでナダルがブレークバック。さらに次のサービスゲームを苦しみながらもキープ。4-4、完全に互角になった。両者共にギアを上げる、レベルが上がる、攻守がめぐるましく入れ替わる。5-5になった。先にフェデラーがキープ。ナダルのサービスゲーム。ファーストポイントでナダルがラインを割った。そして痛恨のダブルフォルト。フェデラーチャンスだ。試合を決める決定的場面がきた。しかし、フェデラーは突然攻めなくなった。まるで恐々とテニスをしているように長いラリーが二ポイント続き、それぞれが一度づつミスした。どちらも攻めていない。強く打てない。2人共に守りに入ってしまって攻撃しようとしない。世界のトップに君臨するこの二人にさえ重圧はやはりかかるのか。フェデラーがチャンピオンシップポイントを二つ握る。だがフェデラーは攻めなかった。繋ぐだけのラリーをしてミスした。更にミスをしてマッチポイントを逃した。危機を乗り越え、ディースから押し戻し、ナダルがキープ。6-6で三度TBに突入した。

TB1-1でコールを覆され、ポイントのやり直しになった。ここでようやくフェデラーの目が覚めた。フェデラーよ、お前が「美しい」と自画自賛するテニスとは何だ。それはフォアの強打からの連続攻撃だろう。攻めろ。フォアを打て、強打だ。フォアハンドでハードヒットしてくれ。フェデラーらしい強気の攻めを見せてくれ。

ついにフェデラーがフォアを叩いた。フォアの強打からの連続攻撃。フェデラーが行く。しかし、それがナダルまでも目覚めさせてしまった。カウンターでフェデラーを抜き去り、フォアのスピンが強打に変わり、フェデラーがしのぎきれない。最後の猛攻を仕掛けたのはナダルだった、フェデラーは守りきれず、ボールは最後に大きくアウトした。TB7-5、今日も赤土の上のナダルは負けなかった。

フェデラーは技術的・戦術的な問題を少しづつ克服して、クレー上でのナダルとの差を埋めつつある。その意味では前進している。だが、今日の敗北は大きい。フェデラーの強さはその技術、スピード、パワー、センス、あらゆることが超一流だということであるが、何よりもメンタルが強靭で揺るがない、強い強い精神力があってこその強さだった。どんなときでも逆転できる、最後に勝つのは自分だと信じている。自分自身の強さと、その結果としての勝利を信じて疑わなかったからこそ、強かったのだ。その自信が崩れた。勝ちびびりになって守りに入ったフェデラーをはじめて見た。ナダルの側にも動揺はあったのだ。しかし、そこにつけこむどころか、自分が動揺してしまい、攻め切れなかった。そしてようやく目覚めたとき、その開かれた瞳孔はナダルも動揺から立ち直らせてしまった。

今後、クレーの上でナダルと対戦するとき、今日の悪夢がトラウマとなってフェデラーを襲うだろう。この傷跡は深くて大きい。この傷は結果をもってを克服するしかない。全仏制覇による生涯グランドスラムの達成、年間グランドスラムへの夢、それどころではなくなった。次のMSハンブルグ大会。フェデラーには大いなる試練が待ち構えている。同じことが繰り返されれば、そこから二度と回復できないかもしれない、大きな大きな傷跡になる。

皇帝の座が揺らいだ。そんな2006年のMSローマ大会だった。