グランドスラムタイトルホルダーにしてエントリーランキングNo1経験者である「女王」のうち、現時点で最強の4人がマドリッドでぶつかった。

2006WTAツアー選手権 準決勝
エナンH 62 76 シャラポワ

第一セットのエナンの気合は凄まじかった。速攻でポイントを早め早めに取りにいった。最初のサービスゲームをエナンがブレークする。エナンの圧力の前にさすがのシャラポワも勢いに乗ることができずに、そのままずるすると第一セットを失った。第二セットで試合はようやく落ち着きを取り戻し、3-3までサービスゲームのキープ合戦が続く。だが、シャラポワのサービスゲームである第7ゲームでディースになり、白熱した攻防の末、エナンがブレーク。これで5-3となり、エナンの勝利が決まったと思った。しかし、ここからのシャラポワが見事だった。なんと次のエナンのサービスゲームをブレーク、その後も苦しいながらも喰らいつき6-6TBまで持ち込んだ。エナンがミニブレークで先行する。それが最後に効いて、7-5でTBを征したエナンがストレートでシャラポワを降して決勝進出と年間最終ランキングNo1を同時に決めた。集中力を上げたエナンの猛攻をしのぎながら第二セットTBまで持ち込んだシャラポワの粘りは見事である。がそれ以上に、そのシャラポワの執念を断ち切ったエナンの底力は恐ろしいものがある。シャラポワは相手選手の心の奥底に眠っている心の牙を目覚めさせる。そういう選手だ。今日もまた、エナンの心に火をつけた。そんな気がする。

モーレスモ 62 36 63 クライシュテルス

クライシュテルスはモーレスモに対して一昨年まで連勝していたが、今年に入って二連敗している。一つは全豪のSFであの時は足首を捻ったクライシュテルスが棄権した結果だった。だから、モーレスモとの本当の力関係がどうなっているかを示す良い機会にこの試合は位置づけられると思う。
第一セットでモーレスモは深いグランドストロークと切れのあるネットプレーでクライシュテルスを圧倒して第一セットを62で先取する。だが第二セットはお互いが別人になったかのようにクライシュテルスが攻め、モーレスモが守る。怒涛の攻めでブレークをものにして第二セットをクライシュテルスが取り返した。
ファイナルは拮抗した打ち合いの中で徐々にクライシュテルスが押し始める。2-2でクライシュテルスがモーレスモのサービスゲームでブレークポイントを3つ握る。ワイドにアプローチを打ってネットに出たモーレスモの眼前をクライシュテルスのショートクロスが通り過ぎてコートの中に落ちた。キムがブレーク、3-2で先行した。だが、ここからのモーレスモがすごかった。なんとここから2ブレークを含む4ゲーム連取で6-3で逆転、フルセットマッチを征して準決勝進出を決めたのだった。
今日のモーレスモはストロークが深かった。クライシュテウルスに打ち負けていなかった。クライシュテルスは威力と角度でモーレスモを押すのだが、長いラリーになったとき、先にミスしてしまっていた。モーレスモはいつもより回転を抑えて、低い弾道のボールを左右打ち分けた。バックハンドのダウンザラインではため息の出るような見事なウィナーを何度も見せた。ネットではかつてない切れと冴えを見せた。トレーニング不足より肩回りの筋肉が落ちているのだが、それがかえって体の切れを増しているのではないだろうか。フォームは変わっていないのにサーブの威力が増しており、クライシュテルスに楽にリターンさせなかった。エースも量産した。

二試合とも目が離せない好ゲームであった。今年のグランドスラムでの女子の各試合よりも充実しているのではないだろうか。4人の女王はそれぞれに個性的で、他の選手が真似できない独自の自分のテニスを作り上げ、そのテニスで強敵相手に立ち向かった。メンタルで崩れることなく、テニスの内容で相手をうわまるべく全力を尽くし、かつ相手の力量も引き出し、レベルの高いテニスを展開した。実にすばらしい試合であった。

さて、決勝はエナン対モーレスモである。どちらが先に主導権を握るかが鍵になろう。今年グランドスラムの決勝で二度対戦し全豪では棄権、全英では力負けしたエナン、ツアー選手権の予選も敗れている。シャラポワに対する姿勢に全米決勝でのリベンジを強く感じた。モーレスモ相手には連敗してしまっていることになるエナンはここでどのような態度で臨むのだろうか。エナンは年間最終ランキングNo1を決勝進出を決めた時点で確定した。もはやプレッシャーとなるものがないかのように思われるが、プレッシャーから開放されているのはNo1を逃すことになっているモーレスモも同じである。そして忘れてはならないのは、クライシュテルス・シャラポワ・モーレスモの三人が持っていてエナンがもっていないものがあるということ。それがこの最終戦ツアー選手権のタイトルである。さてどのような結末を迎えるのか。WTAとしては充実したシーズンであった2006年であったかのように思う。その締めくくりにふさわしい試合を期待しよう。