2009年マスターズ1000シリーズ第三戦モンテカルロ大会
準決勝第一試合
ジョコビッチ 46 61 63 バブリンカ

この日のGAORA中継の解説は辻野隆三氏である。辻野氏いわく「第一セットの流れは僕の予測と逆ですね。ジョコビッチが攻めて、バブリンカが受けて立つという感じになると思ったのですけどね。逆ですね。バブリンカが攻め込んで、ジョコビッチが受身に回っていますよね。」辻野氏の解説通り、第一セットはバブリンカがその見事な潜在能力の高さを見せてジョコビッチを上回るテニスを展開した。6-4で第一セットをバブリンカが先取したとき、今日はバブリンカがフェデラーに続いてジョコビッチまで倒すのかとまで思われた。だが事態は急転した。第二セット、バブリンカのウィナーとエラーの差がはっきりとし始めた。特にフォアのクロスが強く打つとことごとくエラーした。そしてエラーの数がウィナーを上回り始める。一方でジョコビッチは第一セットを取られても慌てずに、自分のテニスを安定させながらギアを上げて行き、そしてバブリンカの自滅をチャンスに変えていく。あっという間に第二セットを6-1で取り返すと、第三セットでもその流れを放さず、バブリンカが立ち直る前に6-3で勝負を決めてしまった。

バブリンカのテニスを一試合見たのは久しぶりだった。以前見たときもその才能溢れるテニスに大いなる可能性を感じたのだが、いかんせん気分にムラがあるのだね。一試合集中して試合に臨めていない。その部分はこの試合を見ても変わっていなかった。フェデラーを破った先日の試合はその問題の集中力が一試合維持できたのだろう。そういう試合を続けられるようになれば、彼はもっと上に来ることになる。だが今はまだ、ジョコビッチの方がはるかに上のテニスを一試合通じて行っている。それがこの結果となった、ある意味わかりやすい試合であった。

ナダルは17歳で優勝してから5年間、ここまで常勝無敗、このモンテカルロ大会をまさに自分の庭にしてしまっている。一方でマレー陣営のベンチにはあの全仏決勝二回進出の経験があるスペインのコレチャがいる。コレチャをスタッフに加え、クレー対策を強化して、マレーはこのモンテカルロでついにSFまで勝ちあがってきたのだ。ナダルが全仏と共にもっとも輝くこのモンテカルロの赤土の上で、英国期待の星、北海の狼マレーがクレー用にバージョンアップさせたテニスで挑戦を開始した。

準決勝第二試合
ナダル 62 76 マレー

自信に満ち溢れたプレーをクレーコートの上で展開するナダル。あっという間に6ゲームとってしまい、第一セットを6-2で先取した。しかし、マレーもまた、ナダルから第一セットで1ブレークを捥ぎ取っている。マレーにはチャンスがいくつか見えているような展開だった。
第二セット、ナダルが再びブレークで先行した。ナダルリード5-3で迎えた第九ゲーム、ナダルのサーブイングフォーザマッチである。ここでニューボールになった。そして最初のポイントでマレーは中ロブをミスしてラインオーバーしてしまった。これでナダルが一気に勝負を決めにかかる、そう思われたこの瞬間から、マレーの反撃が始まった。次の長いラリーを制して最後にアングルのバックハンドクロスを見事に決めると、次はバックハンドサイドから回り込みのフォアをダウンザラインに打ちこみ、ウィナーを連続して奪った。相手はあの赤土の上の要塞ナダルである。観客が盛り上がる。だがナダルはまだ冷静だ。次のポイントでドロップショットを決めて、30-30に戻す。更に攻め込むナダル、だがネットに出たナダルのバックハンドにマレーがロブを上げた。ナダルのバックハンドハイボレーはコートのラインを割った。30-40、ブレークポイントがマレーに来た。だがナダルはまだ慌てない。サーブで押し込み、短くなったボールをフォアで鋭く切り返す。マレーは一歩も動けず、ナダルはウィナーでデュースに持ち込んだ。プレッシャーのかかる場面で両者共にミスとウィナーを繰り返し、ブレークポイントとマッチポイントが入れ替わる。そして最後にスマッシュを決めて取りきったのはマレーだった。5-5、マレーが追いついた。両者共にここからサービスゲームをキープして6-6、TBに突入した。ナダルがブレークすれば、マレーもブレークする、ナダルがキープすればマレーもキープする。一進一退の攻防が続く。緊張感が高まり、興奮が渦巻く赤土の上、ナダルがバックのサイドラインから、逆サイドのサイドラインに抜けるバックハンドのスーパーショットが炸裂した。これでマッチポイント、ナダルの圧力に抗し切れず、マレーは押し切られ、最後に7-4でナダルがストレート勝利を決めた。

第二セットからマレーのフラットドライブはナダルのトップスピンを捉え初めて、深いところにボールが連続して入り始めた。そのことがナダルのトップスピンを短くして、マレーが攻め込むきっかけとなった。破れはしたが、クレーの上でマレーは自信を掴んだのではないだろか。

さて赤土の上の要塞ナダル城は今日も健在であった。決勝戦はナダル対ジョコビッチである。フェデラーは元々この大会をスキップする予定だったので、事実上の第二シードはこのジョコビッチであったともいえる。双頭の鷲ジョコビッチはこの高い城塞を破ることができるだろうか。いよいよ頂上対決がせまる。熱戦を期待しよう。