第五シードデルポトロダウン、ナダルの代わりに男子トップハーフ筆頭の位置に入ったデルポトロを破ったのはなんとヒューイットである。

2009全英男子単二回戦
ヒューイット 63 75 75 デルポトロ

かつては引退したアガシと共に「リターンの名手の双璧」と言われたヒューイットである。だがNo1だった当事の勢いを失いつつある今、「リターンの名手」の代名詞はジョコビッチとマレーに移りつつある昨今であった。だがこの日のヒューイットは違った。かつて名レシーバーの名を轟かせたスーパーリターンを何度も見せた。ファーストサーブに対しては堅実で、相手にサーブからの攻撃を許さず、セカンドサーブに対しては攻撃的で、コートの中に入り、厳しいコースに厳しい球をリターンから打ち返していた。デルポトロのサーブはあまり回転量の多いタイプでなかったので、なおのことヒューイットのフラットなレシーブにタイミングが合ってしまった。リターンから攻められ、デルポトロはサービスゲームのキープに苦しみ、最後にはブレークを許してしまう。さらにこの日のヒューイットはサーブもよかった。力の抜けたサーブを厳しいコースに打ち続け、エースも量産した。ストローク戦でもデルポトロに負けていなかった。デルポトロの強打を粘り強く打ち返し、攻めへの展開も早く、ヒューイットはラリーでも主導権をほぼ握っていた。リターンゲームでもサービスゲームでも押され続け、デルポトロは次第に戦意を失っていった。ヒューイットのサーブイングフォーザマッチで初めてブレークに成功し、そこから反撃なるかと思われたが、流れは変わらず、次のデルポトロのサービスゲームをヒューイットはまたもブレークし、次のサービスゲームはきっちりとキープに成功、ストレートで第五シードの撃破に成功した。

ヒューイットがここ数年でも最高の出来でプレーしていたのは事実だが、それ以上に気になるのはデルポトロの元気のなさである。全豪でフェデラーに公開処刑されたときもそうだが、デルポトロはスコアが一方的になると、自信を失い、早い段階で戦意を失ってしまう場面が多い。常に反抗の機をうかがい、その時点で出来ることはすべてやる、といった粘り強さと覇気がもう少し欲しいものである。

デルポトロほど覇気を失ったわけではないのだが、キリレンコも試合序盤にウォズニアッキに9ゲーム近く連取されほとんど公開処刑状態だった。

2009全英女子単二回戦
ウォズニアッキ 60 64 キリレンコ

こちらは早い展開の打ち合いに真っ向勝負を挑んでいるのだが、ウォズニアッキの方が一枚上手で、キリレンコはそれに振り切られてしまっている状態だった。だがそれでも戦意を失わずに、第二セット途中からの猛チャージで一時4-4まで押し戻している。ストレートで負けるにしても、あれだけの覇気を維持し続ける姿勢は大事だろうと思う。