ロディックのセンターへのサーブがフェデラーのバックハンドリターンのラケットを吹き飛ばした。次のポイントでネットに出たロディックをフェデラーのバックハンドパスが鮮やかに抜き去った。高い集中力で二人は決勝戦に突入する。そして始まった決勝戦は去年に続いて今年も伝説となる試合になった。
2009ウィンブルドン男子単決勝
フェデラー 57 76 76 36 1614 ロディック
第一セット、予想通りのサービスゲームのキープ合戦、5-6となったところでフェデラーがロディックのサーブで先行した。ロディックはサーブの力で取り返すが、それでもブレークポイントを握られた。サーブの力で押すロディック、ネットにおびき出してパスで仕留めるフェデラー、際どい攻防か繰り広げられる。フェデラーの方に分があるような展開、しかし苦しい中、ロディックは4度のピンチを切り抜けてキープに成功した。ピンチの裏にチャンスあり、6-5で今度はロディックがブレークポイントを握った。フェデラーのクロスをロディックはバックハンドダウンザラインで切り返す。それを更に切り返したフェデラーのボールはラインを割った。第一セット7-5、ロディックが第一セットを先取した。
第二セット、両者共にサーブの調子がよい。ブレークポイントすら許さずにサービスゲームのキープが続く。TBに突入した。先にロディックがミニブレークした。フェデラーのファーストサーブの入りが悪い。ロディックはバックハンドのストレートでウィナーを決めた。ミニブレークを更に一つ取った。ロディック6-2、そこでロディックが守りに入った。ストロークを入れに行く。絶好のチャンスボレーでバックハンドボレーをミスする。ファーストサーブが入らない。フェデラーは冷静に対処する。そこから6ポイント連取でフェデラー逆転TB奪取、第二セットをフェデラーが取り、セットオールとなった。
第三セット、徐々にフェデラーはロディックのサーブにタイミングが合いだした。キープに苦しみだすロディック、それでもサーブを守り、再びTBに突入する。今度は先行したのはフェデラー、追い上げたのはロディック、だが結末は第二セットと逆、先行したフェデラーがシッカリとセットポイントを決め、TBをフェデラーが連取した。
第四セット第四ゲーム、ようやく来たブレークポイント、ロディックがバックハンドダウンザラインでフェデラーのバックボレー側を強襲、ミスさせて、ついにこの試合始めてのブレークに成功した。次のロディックのサービスゲームでデュースにもつれたが、ロディックが踏ん張って取りきった。1ブレークアップのまま5-3まで来た。ロディックのサーブイングフォーザセット、サーブが来ない、フェデラーに二ポイント取られた。0-30、だがそこからファーストサーブを入れた。ストローク戦で粘った。40-30まで戻した。そしてロディックのサーブに押されてフェデラーのリターンがラインを割った。第四セット6-3、ロディックがセットオールに戻した。
ファイナルセット、いきなりフェデラーにブレークポイント、だがロディックがここも踏ん張ってキープした。ここまでフェデラーはまだブレーク出来ていない。その後、両者共にテンポ良く自分のサービスゲームをキープする。あっという間に6-6となった。ウィンブルドンのファイナルセットにTBはない、どちらかが2ゲーム差を付けるまで試合は続く。7-7、8-8、ロディックにブレークポイントのチャンスが来るが、フェデラーがサーブの力で乗り切る。だがフェデラーは足に疲労が来ているようで、ミスが増えている。9-9、10-10フェデラーがロディックのサービスゲームでデュースに持ち込むがロディックは逃れた。11-11、12-12、13-13またデュースをロディックは逃れた。14-14、そしてフェデラーの15-14でまたデュースになった。今度はフェデラーが先行した。チャンピオンシップポイントが来た。フェデラーの深いショットがロディックのフォアを弾いた。ファイナル16-14、このフルセットマッチでフェデラー最初にして唯一のブレークが優勝を決めるゲームとなった。
許したブレークゲームはたった一度である。ファイナルが通常の二倍近くのゲーム数となったことを考えると、ロディックは延6セット近いサービスゲームをキープし続けたのである。しかも相手はフェデラーである。更にロディックは二度フェデラーのサービスゲームを破っているのである。それが最後の最後で許した一度きりのブレークでロディックは敗れた。第二セットのTBをリードしながらも逆転され落としたことは生涯の痛恨事となることだろう。だが、そこでロディックは崩れなかった。セットカウントでフェデラーにリードされながらもついていき、追いつき、ファイナルで最後まで競り合った。総合的な技術力ではフェデラーの方が上であることは明らかである。だがそれでもサーブとフォアを武器に立ち向い、バックで耐え続け、リスクを背負ってネットに果敢に挑んだ。ロディックの不屈の精神が圧倒的強者として復活しつつあるフェデラーの前に敢然と立ちはだかり、後一歩というところまで追い込んだのである。
如空が「未完の大器」と呼んだロディックももう26歳である。大器であることを証明出来ずに未完のままで終わるのではないかと正直失望しつつあった。彼は何度も希望の持てる結果を出しながらそのつど失望を味あわされてきた。彼のファンも、彼自身も、そしてその失望を与えた相手は他の誰でもないロジャー・フェデラーである。他の誰よりも、ロディックのテニス人生に大きな影響力を与え、高い壁となってロディックの夢や希望をことごとくフェデラーは打ち砕いてきた。しかし、ロディックは挫けなかった。同世代の「ニューボール・プリーズ」キャンペーンの選手たちがフェデラーに頭を抑えられているうちに沈んでいった中で、ロディックだけは何度も何度も立ち上がり、何度でも挑み続けた。ランキングトップ10にとどまり、若手の台頭してくる中でも存在感を維持して、そして敗れても、敗れても、圧倒的強者に今度こそと挑み続ける。どんなに情けない負け方をしても、恥ずかしい敗北をしても、それでも次があると、再び挑む。自分より強いやつに挑む。その姿勢に大きな勇気をもらった人は多いはずだ。
フェデラーはグランドスラムタイトルを15タイトルとし、サンプラスの持つグランドスラムタイトル数14を抜いて歴代単独トップとなった。名実共に史上最強最高の称号を得たといえよう。それだけでなく過去一年グランドスラムに全て決勝進出、かつ全豪以外の全米・全仏・全英タイトルをとり、ナダルを抜いて堂々のATPツアーエントリーランキングNO1返り咲きを決めた。会場にはフェデラーの偉業をたたえるためか、引退したサンプラスも来ていた。しかし、会場の拍手はその偉大な王者に負けず劣らず、ロディックに向けられた拍手が多かったと思うのは如空だけか。試合終了後閉会式の準備中も観客席はフェデラーだけでなくロディックに賞賛の拍手を送っていた。
ロディックは「もう26歳」とはいえ、それでもニューボール・プリーズの世代の中ではもっとも若い一人だ。フェデラーより一つ若い彼は「まだ26歳」とも言える。これからロディックがもっとも好きな真夏の北米ハードコートシーズンが始まる。ロディックの挑戦はこれからも何度でも続くだろう。彼の勇気を分けて欲しいのなら、耳を澄ませばいい。ロディックの放つサーブの音を聞け、その音がロディックを蘇らせる、何度でもだ。
2009ウィンブルドン男子単決勝
フェデラー 57 76 76 36 1614 ロディック
第一セット、予想通りのサービスゲームのキープ合戦、5-6となったところでフェデラーがロディックのサーブで先行した。ロディックはサーブの力で取り返すが、それでもブレークポイントを握られた。サーブの力で押すロディック、ネットにおびき出してパスで仕留めるフェデラー、際どい攻防か繰り広げられる。フェデラーの方に分があるような展開、しかし苦しい中、ロディックは4度のピンチを切り抜けてキープに成功した。ピンチの裏にチャンスあり、6-5で今度はロディックがブレークポイントを握った。フェデラーのクロスをロディックはバックハンドダウンザラインで切り返す。それを更に切り返したフェデラーのボールはラインを割った。第一セット7-5、ロディックが第一セットを先取した。
第二セット、両者共にサーブの調子がよい。ブレークポイントすら許さずにサービスゲームのキープが続く。TBに突入した。先にロディックがミニブレークした。フェデラーのファーストサーブの入りが悪い。ロディックはバックハンドのストレートでウィナーを決めた。ミニブレークを更に一つ取った。ロディック6-2、そこでロディックが守りに入った。ストロークを入れに行く。絶好のチャンスボレーでバックハンドボレーをミスする。ファーストサーブが入らない。フェデラーは冷静に対処する。そこから6ポイント連取でフェデラー逆転TB奪取、第二セットをフェデラーが取り、セットオールとなった。
第三セット、徐々にフェデラーはロディックのサーブにタイミングが合いだした。キープに苦しみだすロディック、それでもサーブを守り、再びTBに突入する。今度は先行したのはフェデラー、追い上げたのはロディック、だが結末は第二セットと逆、先行したフェデラーがシッカリとセットポイントを決め、TBをフェデラーが連取した。
第四セット第四ゲーム、ようやく来たブレークポイント、ロディックがバックハンドダウンザラインでフェデラーのバックボレー側を強襲、ミスさせて、ついにこの試合始めてのブレークに成功した。次のロディックのサービスゲームでデュースにもつれたが、ロディックが踏ん張って取りきった。1ブレークアップのまま5-3まで来た。ロディックのサーブイングフォーザセット、サーブが来ない、フェデラーに二ポイント取られた。0-30、だがそこからファーストサーブを入れた。ストローク戦で粘った。40-30まで戻した。そしてロディックのサーブに押されてフェデラーのリターンがラインを割った。第四セット6-3、ロディックがセットオールに戻した。
ファイナルセット、いきなりフェデラーにブレークポイント、だがロディックがここも踏ん張ってキープした。ここまでフェデラーはまだブレーク出来ていない。その後、両者共にテンポ良く自分のサービスゲームをキープする。あっという間に6-6となった。ウィンブルドンのファイナルセットにTBはない、どちらかが2ゲーム差を付けるまで試合は続く。7-7、8-8、ロディックにブレークポイントのチャンスが来るが、フェデラーがサーブの力で乗り切る。だがフェデラーは足に疲労が来ているようで、ミスが増えている。9-9、10-10フェデラーがロディックのサービスゲームでデュースに持ち込むがロディックは逃れた。11-11、12-12、13-13またデュースをロディックは逃れた。14-14、そしてフェデラーの15-14でまたデュースになった。今度はフェデラーが先行した。チャンピオンシップポイントが来た。フェデラーの深いショットがロディックのフォアを弾いた。ファイナル16-14、このフルセットマッチでフェデラー最初にして唯一のブレークが優勝を決めるゲームとなった。
許したブレークゲームはたった一度である。ファイナルが通常の二倍近くのゲーム数となったことを考えると、ロディックは延6セット近いサービスゲームをキープし続けたのである。しかも相手はフェデラーである。更にロディックは二度フェデラーのサービスゲームを破っているのである。それが最後の最後で許した一度きりのブレークでロディックは敗れた。第二セットのTBをリードしながらも逆転され落としたことは生涯の痛恨事となることだろう。だが、そこでロディックは崩れなかった。セットカウントでフェデラーにリードされながらもついていき、追いつき、ファイナルで最後まで競り合った。総合的な技術力ではフェデラーの方が上であることは明らかである。だがそれでもサーブとフォアを武器に立ち向い、バックで耐え続け、リスクを背負ってネットに果敢に挑んだ。ロディックの不屈の精神が圧倒的強者として復活しつつあるフェデラーの前に敢然と立ちはだかり、後一歩というところまで追い込んだのである。
如空が「未完の大器」と呼んだロディックももう26歳である。大器であることを証明出来ずに未完のままで終わるのではないかと正直失望しつつあった。彼は何度も希望の持てる結果を出しながらそのつど失望を味あわされてきた。彼のファンも、彼自身も、そしてその失望を与えた相手は他の誰でもないロジャー・フェデラーである。他の誰よりも、ロディックのテニス人生に大きな影響力を与え、高い壁となってロディックの夢や希望をことごとくフェデラーは打ち砕いてきた。しかし、ロディックは挫けなかった。同世代の「ニューボール・プリーズ」キャンペーンの選手たちがフェデラーに頭を抑えられているうちに沈んでいった中で、ロディックだけは何度も何度も立ち上がり、何度でも挑み続けた。ランキングトップ10にとどまり、若手の台頭してくる中でも存在感を維持して、そして敗れても、敗れても、圧倒的強者に今度こそと挑み続ける。どんなに情けない負け方をしても、恥ずかしい敗北をしても、それでも次があると、再び挑む。自分より強いやつに挑む。その姿勢に大きな勇気をもらった人は多いはずだ。
フェデラーはグランドスラムタイトルを15タイトルとし、サンプラスの持つグランドスラムタイトル数14を抜いて歴代単独トップとなった。名実共に史上最強最高の称号を得たといえよう。それだけでなく過去一年グランドスラムに全て決勝進出、かつ全豪以外の全米・全仏・全英タイトルをとり、ナダルを抜いて堂々のATPツアーエントリーランキングNO1返り咲きを決めた。会場にはフェデラーの偉業をたたえるためか、引退したサンプラスも来ていた。しかし、会場の拍手はその偉大な王者に負けず劣らず、ロディックに向けられた拍手が多かったと思うのは如空だけか。試合終了後閉会式の準備中も観客席はフェデラーだけでなくロディックに賞賛の拍手を送っていた。
ロディックは「もう26歳」とはいえ、それでもニューボール・プリーズの世代の中ではもっとも若い一人だ。フェデラーより一つ若い彼は「まだ26歳」とも言える。これからロディックがもっとも好きな真夏の北米ハードコートシーズンが始まる。ロディックの挑戦はこれからも何度でも続くだろう。彼の勇気を分けて欲しいのなら、耳を澄ませばいい。ロディックの放つサーブの音を聞け、その音がロディックを蘇らせる、何度でもだ。