電脳網庭球寺 僧房

テニスの修行僧如空の修行の日々とテニス観戦記を綴る

テニス:修行

明日のためにその一ボレー

今年は桜の開花時期が長いそうだ。先日琵琶湖と越前海岸に週末旅行してきたのだが、いたるところで桜が咲いていた。それこそ京都・滋賀・福井の山並みのあらゆるところに桜が咲いていた。桜ってあんなに広く分布しているものであったのか。知らない風景がまだまだあるものだ。

先週のシングルスの練習は地味にボレー、地味にネットプレー、地味にひたすらネットでワイドにボレーで切り返す練習を続けた。
「遠い球だけでなく、体に近い球でも踏み込んで打ってください。ダブルスの並行陣ではないのですから、ポジションキープなど気にせず、二歩動いてください。外足・内足で二歩です。近いからといって一歩で踏み込まない。外・内で二歩です。それで足でたたけます。手打ちで叩かずに、足で勢いをつけるのです。上半身は面・角度のコントロールに専念させて、下半身でボールを打つのです。そのためには一歩でなく二歩で打つ。打点は前に、踏み込んだ二歩目の足のさらに前で打ってば、パチンと前でボールを打てます。面を外側に向ければワイドにボールは飛びます。引きつけると角度はつきませんよ。踏み込んで、そして打点は踏み込み足のさらに前にです。」
「ラケットをもっと顔から放して、目とラケットの距離を一定にしてボレーしてください。そうすればラケットを引いたり、打点が近くなく癖が矯正できます。」
「踏み込んで打点を前にしようとすると、上半身が前に突っ込んでしまったり、腰が折れてしまったりする人がいますね。そういう人は目とラケットとの距離を一定にするだけなく、思い切って頭を後ろに下げるような意識でボレーしてみてください。目とラケットの距離を打つときにさらに広げるような感じです。実際には広がらないのですが、そう意識すれば上体が起きて、腰が折れず、下半身とラケットだけが前に出て、いい感じでボレーができるようになりますよ。」
ボレーの時に「頭を後ろに下げるように意識する」というコツはいいね。如空が練習で試してみると、いい感じで打てた。というより、普段上体が前に突っ込んで、腰が折れ気味だったことにあらためて気づかされる。

延々球出しでボレーを続ける。ボレー対ストロークだと続けてしまって、角度をつける練習、前に踏み込む練習にはならないから、延々球出しでネットプレーの練習をする。
「シングルスにつなぎのボレーはないのです。一本目で決めるのです。それがローボレーであっても、決めにいかなくてはいけません。だからワイドに打つのです。相手のいないところに打つのです。しょぼいボレーでもワイドに打てば決まります。ネットを越えて、サイドラインに向かって打つのです。サイドラインに向かって打つべし、打べし。」
ってまるで「明日のジョー」みたいだね。明日に向かって打つべし、打つべし。

修行は続く。

腕を外側にねじって振るフォア

二月の初めにとても気温が上がってこのまま春になるのかと思ったが、順調に寒の戻りがあり、二月末から三月にかけて結構寒かった。それでも春はやってくる。四月になった。コートでも汗ばむ季節である。

最近のシングルスの練習は地味な基本の反復練習が多い。それだけにこの「修行」の記事のネタにはなりにくいレッスンがこの数カ月続いている。しかし、このような地味な反復練習が上達には効くのだろうな。特にミスが得点になるこの競技では。

ストロークも地味にコースの打ち分けがメインである。動いて、止まって、狙ったところに打つ。簡単なように見えて、練習でも完璧にこなすには至らない。まして試合では精度はもっと落ちる。
「スピンを打つなら、打つ直前にヘッドダウンしてください。それがサーキュレーション(ラケットを8の字状に振りまわす過程)からのヘッドダウンでも、初めからヘッドを落としておくのでも、ラケットを立てて引いた後のバックした反動で落とすのでも、なんでもいいです。テイクバックは振り遅れない限りは自分の好きな動作でラケットを引けばいいです。しかし、ラケットを振る直前は同じ形、つまりヒットする形に腕がセットされていなくてはなりません。」
「グリップの厚い・薄いにかかわらず、フォアハンドストロークのスピンでは腕が外側にねじられるようになるはずです。それでヘッドが落ちる。そこからヘッドを振り上げる、腕も振り上げる、肩も回す。その時、グリップを強く握りしめると、鋭く振れなくなります、体の回転の切れもなくなります。腕を外側にねじってそのまま振りだすのです。そうすれば腕がねじられた状態でロックされるので、強く握らなくても面が固定されるのです。強く握らないから振りが鋭くなり、回転がかかります。そのためには外側にねじった状態がヒットの時の形になっていないと打てませんよ。スピンをかけようとして手首をこねたりせず、腕全体で形を作って、それが外側にねじれていて、そのねじれた腕全体をそのまま振り上げてください。そうすれば安定してスピンが打てます。フォアハンドストロークのスピンボールはストローク、しいてはテニスのゲームそのもの要です。ここをしっかりと安定させてくださいね。」
と練習中に何気に解説するコーチ、こちらは振りまわしに疲れ果てているところにいうものだから、頭に入り辛いですよ。ましてそれを体に覚えこませるにはね、ただひたすら反復練習ですかね。

修行は続く。

アングル打ちたきゃ冷静に

仕事がとんでもない状況になって来たぞ・・・・四物件掛け持ちだって。しかも一つはあの有名な某ホテルの再建計画、これは荒れるぞ、忙しくなるぞ、今の内にテニスをしておこう。休んだレッスンを取り返すためにせっせと振替を取り、コートに向かう。

シングルスのクラスを休んだ分をダブルスのクラスで取り返す。この日のテーマはアングルボレー、せっせとワイドに出されたボールをストレートとアングルに打ち分ける練習をする。昔はバックボレーの方がアングルに飛びやすかったが、今ではフォアの方がアングルを打ちやすい。手首を内側に深く折って面を内側に向けながら立てる。ボールの外側にラケット面を入れて、体ごと外から内へボールを運ぶ、まるで障子をあけているようだ。
「その打ち方ではなくて体は外へ体重移動しながら、面操作だけでアングルに打ってほしいのですけどね。」とコーチはいう。如空はそれがうまくできない。実際そのようにして打っているバックボレーではアングルボレーというよりもドロップボレーがネット際の反対側に落ちたという感じなる。フォアも外に逃げながら背中方向に打つとそうなる。タッチに何か問題があるのだろうか。とにかくネットの上で打っているのに厚い当りにならなくて悩んでいる。我流だが体重移動を内側に入れる方が、厚い当りのボレーをサイドラインに抜けていくように打てる。だがこれもバックでは出来ない。

それでも球出しレベルではなんとか打てるので、実際のゲームの中で使ってみましょうということでゲームをしてみると、アングルボレーを使うところまでいかない。如空だけでなく他のレッスン生もアングルが使えない。
「もっと冷静にね。コート全体を見ながらプレーしてくださいね。」
とコーチは静かに言う。
「ネットにつくとみなさん慌てすぎですよ。ボールのコースを変えることを思いつかないし、実際にコースを変えるとミスをする。アングルにはアングルで切り返せるけど、ワイドよりに来たボールをアングルに切り返せない。ネットについて壁になってベースラインからのショットを打ち返しつつ、チャンスボールを待つ心構えを常に持っていないといけません。浮いたら叩く、外側に来たらアングルを狙う、それを常に意識してないから、実際に来ても反応出来ないのです。センターにパスを続けて打たれるとそれを打ち返すことに夢中になってしまって、他のことに意識が行かなくなっている。余裕がないのです。技術の問題ではなく、意識の持ちようの問題ですよ。」
おっしゃることはよくわかる、しかしネットに出るとシングルスでもダブルスでも余裕がなくなってしまう相変わらずの如空であった。

修業は続く。

ライジング・アプローチと腕の柔軟さと

年末のNHK紅白歌合戦の審査員に引退したプロテニスプレーヤー杉山愛さんが出ていてびっくりした。加えて、正月番組でも晴れ着を着てラケットを持って出演、別番組でキムタクとさんま相手にテニスで対決もしていた。今日もどこぞのスポーツニュースのコメンテーターで出演していた。現役を引退したらゆっくりするものかと思っていたが、TVでまた忙しい日々を送っているようで、何よりです。40歳になっても現役修行僧の如空は今日もせっせと修行に励みます。

この日のシングルスの練習はライジングで打ってネットへアプローチである。「フラットでよいのですよ。パパーンとタイミングよく上がり鼻を叩いて前に出るのです。下がって打つのではなく、コートの中に入って打つところがミソです。アプローチするのですからネットまでの距離は短い方が良いです。でも前に出ながら打つのではありませんよ。打つときは止まって打ってください。前に出ながら打つときはスライスでキャリオカステップを使って出たほうが良いです。フラットをライジングで打って出るときは、一度止まって、ライジングで打ってから、ネットに出てくださいね。」
なぜか今日はバックハンドの方が上手く打てるな。フォアはスピン重視のグリップとスイングにしているからライジングでは打ちにくいのかね。ここは少し研究が必要だろうか。

この日の練習の後半の試合形式の一対一のポイント練習、如空はサーブ・リターン・ストロークフォアバック共に好調で、ポイントを量産できて至極ご機嫌であった。だがその翌日、出場したシングルスの大会では、ストロークが全然コントロールできずに第一試合を0-6で落とした。第二試合も0-3まで自滅モードである。何で昨日あれだけ打てたのに今日は打てない。ゆっくり入ってシッカリと打っているつもりなのだが・・・・と第二試合の途中で昨日の感覚を取り戻せた。だが時既に遅し、で第二試合は3-6で敗退。今年もシングルスの勝敗では苦労しそうである。
ところで試合途中で打てるようになったのはフォアで腕を柔らかく使うようになってからだ。打つ前にヘッドを落とす、その際に腕は外側に捻られる。捻ったまま打って、打った後フォロースルーで上に振り上げる。そうするといいスピンが打てる。フォアが打てるようになるとバックも打てるようになる。やはり試合突入直後は体が固いのだね。練習ではアップやラリーで適度にほぐしてから打っているので、柔らかい状態が出来上がっているのだ。リストなんか試合の序盤はがちがちだった。「ゆっくりと入って早く柔らかくなる。」これが大事ということか。しかし、サーブはなぜか練習時より試合の時のほうが良い。これは練習ではいきなりサーブを打つことがなく、ポイント練習まで打っていないためだろうかね。こちらも研究。趣味のテニスだ、今年も研究だ

修行は続く。

年末年始の振替消化

去年の12月に休んだ分を取り返さなくては。1月には試合もあることだし。というわけでせっせと空き時間を捻出しては(決して暇になった訳ではない)、レッスンの振替を消化する日々が始まった。

ストローク主体のレッスンが多かったので、こちらもストロークの安定化に専念する。
フォアハンドはスピン。フラットドライブを打ちたくなっても、じっと我慢でトップスピンを打ち続ける。ハンマーグリップで握る。早く構える。構えとはボディターンするだけでなく、左手をラケットから離して、右手でグリップエンドをボールに向けて、ヘッドを後ろに向ける。右腕は肘をたたんで体に近いところにラケットをセットしておく。手首を回すのではなく、ひじから先でワイパースイングする。腕を振るのではなく、腰と肩を回す、特に右腰と右肩は後ろから前に押し出す。グリップを強く握りしめずにスイングする。ボールが早くてもゆっくりスイングして、スピンといえどもストリングにも十分仕事をさせる。ゆっくりスイングして、グリップエンドからボールを打ちにいくが、フォロースルーではヘッドを前に、そして上にしっかりと返す。返すとスピンがよくかかる。これらのことが自然にできていると自分なりによくコントロールされたスピンが打てている。
両手打ちバックはフラットドライブ、当てて押すことに集中する。早く構える。構えとは両手でグリップを作って、ヒットのフォームを作ってから打点に入る。左肘を曲げながら引いてヘッドを後ろに向ける。左肘を伸ばしながら前に出してヒット、フォロースルーで左ひじをたたむ。インーアウトのスイングを意識するとボールはまっすぐに飛ぶ。それを意識しないでスイングするとボールはイメージよりクロスに飛びやすくなる。顔を打点に残して、フォアハンドほど体を回さないように意識する。

以上のことを何も考えずに、無意識にできていれば、ストロークはほぼ安定いている。問題はそれがポイントで常時できるようになることだ。幸いにして最近サーブ・リターンから始まるポイント形式の練習が多いので、そこを重点的に取り組んでいる。これが試合で結果として出てくれればよいのだが。

振替の中にはシングルスのレッスンがうまく取れずにダブルスのレッスンにいかなくてはならない日もある。ダブルスの試合もあるので、こちらもせっせと参加する。ダブルスのレッスンにでると、ネットプレーがまだまだへたくそであることを思い知らされる。その日はチャンスボールを踏み込んでボレーする練習がメインだったが、ボールが浮いたときに足が出ず、うまく踏み込めないで苦労した。他の人たちは苦も無く実践で来ていたので、如空のフットワークに問題があるのだろう。

ちなみにそのダブルスのレッスンの時、レッスン生の一人がボレーでもラケットを振ってしまう癖をコーチに指摘されていたがうまく矯正できてなかった。「振るな」という指導がうまくいかないことを見たコーチは助言を変更する。「振ってもいいです。その代わりに振る方向を制限してみましょう。ボールが自分の体から遠い時はインーアウト、つまり自分の体に近いところからラケットを遠い方へ押し出すのです。ボールが自分の体に近い時は逆にアウトーイン、ラケットを遠いところから体の正面に持ってくるのです。それでボールを押してみてください。」と言われてもそのレッスン生はうまくボレーできなかった。ストロークと同じようにボールが来るとラケットを後ろに引いてしまって、そこから打ちにいくので振ってしまっている。コーチはさらに色々と試してみていた。
この前出のアドバイス、つまり「遠いボールのボレーはインーアウト、近いボールのボレーはアウトーイン、スイングしてよいのでそれでボールを押してみる」というアドバスは昔如空も別のコーチに言われたことがある。思い出して如空自身がその場で試してみると、ボレーがいい感じになった。特にローボレーでいい感じになった。自分以外の人の指導も耳を傾けていると、いい話が聞けるものだ。

修業は続く。

グランドスマッシュ・ブーム

昔、まだブログを書き始める以前のこと、ダブルスのレッスンのコーチが必ず一日のレッスンにグランドスマッシュの練習をさせる時期があった。結構長い時間を使って練習させるので、とても珍しく感じた。後日、その話を知り合いにすると、その経緯を知らされた。そのコーチと親しい彼曰く、以前彼がレッスンをつけている人のペアが堺市の市民大会だか草トーだかに出たとき、対戦相手にひたすら深いロブを上げられ続け、それを叩けずに負けた試合があったそうで、その教え子の負け試合を偶然見たコーチは「グランドスマッシュを普通に打てるようにさせなければ」と思い、そのような練習が他のレッスンでも始まったのだということだった。半年くらいそのグランドスマッシュの練習は続いただろうか。おかげでレッスン生はグランドスマッシュは普通に打てるようになった。如空は普通のスマッシュの方がよほど不安で、グランドスマッシュの方が安定して打てるくらいだった。

だがせっかく練習したグランスマッシュを使う機会は試合でほとんどない。ダブルスでは並行陣で深いロブを上げられれば直接スマッシュか、後ろに下がってリカバーショットでとりあえず落としてから打つ。ダブルスで雁行陣なら、後衛に任せるし、その後衛はストロークでそのロブを処理する。それはシングルスでも同じだ。第一ロブがグランドスマッシュを打てるいい頃合の高さまでバンドしてくれないとグランドスマッシュは打てない。バウンドが低くてもストロークのスイングなら打てる。こうして試合では使うことなく、グランドスマッシュ・ブームは終わっていった。

先日のシングルスの練習で珍しくグランドスマッシュの練習があった。そして以前のグランドスマッシュ・ブームのことを思い出した。さらに思い起こせば、試合でもポイント練習でも、実はグランドスマッシュを打つチャンスは数多くあったのだが、それを見逃してストロークを打っていた。ポイント練習で使わないのだから、実際の試合ではまず使わない。1日に一度あるかないかの頻度でしかないが、それでも打っていかなくては試合で使わない。練習も大事だが、ポイントで使わないことにはいけないな。

修行は続く。

ゆっくりと試合に入りなさい

継続は力なり、ではないが毎晩仕事から帰ってからほんの数キロ走る習慣を始めてから、足がよく動くようになった。深夜のランニングをするまでは、急に走ると体の中の内臓が上下に揺さぶられる感じがして、気持ち悪かったが、最近は走り続けても案外体に負担を感じない。むしろ少しハードに走った後の方が体がよく動く。これもトレーニングの効果であればうれしいのだが。
体が動くようになると、試合の内容も変わってくる。ポイントのスタートが入りやすくなった。サーブが入りだすと、何時までも入ってくれる。疲れた時に崩れるシーンが少なくなった。リターンも安定する。試合中不安定だったのは、体力、特に下半身の持久力が衰えていたのが原因の一つだったんだね。もっと厳しいトレーニングを日常に取り入れれば、さらに安定するのだろうけど、仕事や家庭の兼ね合いから、現状が精いっぱいだ。

ポイントの入り方が安定しても、ポイントをとることが簡単になった訳ではない。開始早々の自滅モードはなくなるが、やはり詰めの甘さから来るミスは相変わらず多い。9月に出場したシングルスの大会では予選リーグで1-6、4-6の二連敗して予選敗退した。最初の1-6は自滅である。足がとても動くのだよ。しかし、スイングが追いつかない。動けるものだから打点に早くに入りすぎて慌てて打ってしまっていた。ほとんどテニスにならなかった。二試合目の4-6はようやくまともなテニスの試合になる。だがこちらは最初の1ブレーク差をそのまま守られてしまった。相手を確実に上回らなければ勝てないね。この大会はコンソレーションで予選敗退者の4ゲーム先取総当たりリーグがおまけであり、参加させてもらった。2-4、4-0、4-2、0-4と四試合させてもらって、色々なタイプの選手といっぱいゲームができていい勉強になった。最初に2-4で負かされた相手は如空のよく知る人で、草トーで優勝経験のある人だった。この人が予選落ちしているのだから、彼の入ったドローが如何に厳しかったかがよくわかる。ゲームが終わった後、コートからら引き上げる途中で、彼は如空に言った。

「もっとゆっくりと試合に入りなさい。初めから打ちすぎです。だからペースをつかめない。ストロークを安定させるのが遅すぎるのです。だから前半で不用意に相手にゲームを与えてしまって、後半それを取り戻すことができない状態で終わってしまうのですよ。」「試合が終わるたびに、一回一回リセットして、毎試合ごとに初めのアップから入るつもりでいないとだめです。気持ちをリセットするだけでなく、体もリセットさせるのです。試合が連続であっても次の試合はまた一から体を作って入るのです。まして試合の間が開いたときは、体が冷えて元に戻っているのですからまた一から入りなおすのです。そしてできるだけで早く試合中に体をアップさせてストロークとサーブを安定させるのです。そしてゲームを取り合ってスコアで相手についていく、そうすれば後半にチャンスがきます。そこで相手を上回るのです。それが最初からストロークを安定させるのに時間がかかって、ゲーム差で離されてしまっては勝てませんよ。一試合ごとに心も体もリセットして、ゆっくり入って、早くストロークを安定させることです。そこから戦いは始まるのです。如空さんは始めるまでに時間がかかりすぎです。始める前に試合が終わってしまっているようなものです。」

試合を始める前に終わっている、ですか。その通りかも知れませんね、と素直に反省する。だが、その次の大会でその反省は生かされなかった。相手が強すぎたこともあるが2-6 1-6の二連敗で予選リーグ敗退である。ゆくり入ってできるだけ早くストロークを安定させようという心つもりはあったのだが、一試合目の相手のやたらと跳ねるトップスピン打法、二試合目の相手の最初から飛ばしてくるハードヒットの前に慌ててしまって、ストロークの安定どころではなかった。

慌ててしまう・・・・これって相手が強かったせいだけかね。と終わってから少し考えた。「ゆっくりと入りなさい、すぐに(強打を)打ってはいけません。」とあの人は言った。早くストロークを安定させなければと、かえって慌ててしまっていたのではないか。ゆっくりと入りなさい、すぐに打ってはいけません、ゆっくりと・・・・

先日もまた、懲りもせずシングルスの大会に出てきた。予選リーグ方式で例によって2-6 4-6の二連敗、予選敗退である。しかし、慌てずにゆっくりと入った。二試合目もリセットして、一試合目後半でいい感じだったことを忘れて、ゆっくりと入った。二試合の相手は強打にドロップショットを混ぜる戦術で、正直な感想を言えば一試合目の相手より手ごわい相手だった。しかしこちらのストロークを早い段階で安定させることができたので、一試合目よりスコア上は競ることになった。ただポイントの入り方、試合の入り方はうまく行ったが、ポイントの終わらせ方、ゲームの締め方はうまくいなかった。特にストロークの調子が良くなり、ラリーで押して短い球をもらう、そこで練習通りストレートに叩いて前に出る・・・・・まではよいのだがそのあとのネットプレーがことごとくミスする。知り合いが二試合目を見ていてくれたのだが、「如空さん、ストロークがいいのにネットがね・・・・ボレーで振ってたよ、ラケットを」と注意してくれた。ストロークに神経を集中させていてもネットでは集中できずに慌てていたようだ。一昨年の今頃はストロークがダメでなぜかたまに出るネットは上手く行っていたのに、まだまだ修行が足らないということだね。

一試合ごとに心身ともにリセットしてゆっくり入ってストロークを安定させる。そこから試合は始まる。試合は始まった、次は試合の終わらせ方だ。先は長いな。

修業は続く。

クロスで長短組合せ

10月の初めにはまだ暑くてスーツの上着が邪魔だった。それが11月になろうかという頃にはコートが欲しくなる。良い気候の時期というのは短いものだ。それでもスポーツの秋である。

先週のシングルスの練習は深いコーナーへのクロスとショートクロスとの組み合わせだった。オープンコートを突くのではなく、同じサイドで深い球と浅い球を交互に打ち分ける練習だ。「クロスコートのラリーは深くコーナーに入れ続けることが基本。これで相手が崩れたり、短いボールをくれたり、オープンコートを作ってくれたらそこから攻めです。しかし、相手もその深いクロスコートラリーに対応し、相手も深いボールをクロスコートに打ち返してきたら、あるいはそこまでこちらが深いボールを何度もコーナーに運べなければ、逆に相手に攻め込まれてしまいます。そのような状況は特にゲーム後半、お互いに相手のストロークに慣れてきた場面でよく起こります。そこで、むやみに強打したり、コースを無理に変えたりすると、こちらが逆にミスしてしまうことも多く発生します。」
「そこでクロスコートのラリーが単調になってきたら、ボールの長短で相手を揺さぶるのです。深いコーナーに抜けていくボールだけでなく、サイドラインに抜けていく浅いボールを織り交ぜて相手を動かし、かつ打つタイミングに緩急を入れさせるのです。無理にストレートへ展開するよりも、安全でかつ結構効果的です。」
「大事なのは角度だけでなくボールの深さを調整する必要があること、そして浅いボールを打っても確実にネットを越す高さを通すこと。つまり浅い角度のあるボールは回転量をより多くて打つことが大事ということです。」
「フォアならスピンでよいですが、バックだとスライスでクロスラリーをすることもあるでしょう。スライスでボールの深さに長短をつけるには回転量も大事ですが、タッチも大事です。これはスライスショットに自信がない人はよく練習してください。スピンも同じです。片手でも両手でもバックハンドはフォアハンドより回転量をコントロールすることが難しい人がほとんどだと思います。タッチと回転量、両方をうまく使って打ち分けてください。」
と黙々とコーチの球出しのボールをクロスとショートクロスに打ち分ける。確かにバックは難しいわ、フォアも距離の調節が難しい。それでも皆集中してボールを打ち続けているとできるようになっている。選択と集中が大事である。
その後、「実際のゲームで使ってみましょう。」とサーブからのポイントゲームが始まるが、ここでクロスコートラリーに手いっぱいになってボールの長短で相手を揺さぶるところまでいかない。これは実は高等戦術なのではないだろうか。クロスコートのラリーの精度を高めて、長短の揺さぶりを仕掛けることができるレベルまで早く至りたいものである。

修業は続く。

スマッシュの前に

忙しいぞぉ・・・・・自分のテニスの時間も取れなければ観戦する時間もない。せっかく大阪の靱テニスセンターで行われていたHPジャパン女子オープンも世界スーパージュニアも会場での観戦に行けなかったじゃないか。もったいない。
建設業界は不況である。不況ならば仕事がなくなるかといえばそうではない。少ない仕事を取るために営業努力が要求される。設計の人間は営業支援やコンペに駆りだされ、不況ゆえの忙しさに巻き込まれる。夏から続けて3件、設計コンペが続いた。ホテルと学校と工場である。もう何でもありだな、設計屋の如空も今や何でも屋になってしまっている。とにかく仕事を取らなければ、テニスできる環境を維持するためにも本職で稼がないと。
忙しいので、レギュラーでとっているシングルスのレッスンもお休みすることが多くなっている。それでも時間を見つけて、振替に行く。ただシングルスのレッスンは特殊なクラスで、振替先がない。おかげで久しぶりにダブルスのレッスンを振替で取ることがこの頃多い。

振り替えたクラスはスマッシュ強化月間であった。連続スマッシュ5連打の後、今度は下がりながらのジャンピングスマッシュが5連打である。下がりながらのジャンピングスマッシュ5連打はきついわ。ネットタッチして下がってロブをスマッシュ、戻ってまたネットタッチしてスマッシュである。マイムマイムのフットワークのおかげで下がっても構えられるようにはなってきている。問題は実際のゲームでね、これネットプレーをして下に下にと意識が行っているときに突然ロブが上がると反応が遅れる。アプローチからボレー、そしてスマッシュ、あるいはアプローチからいきなりロブに対してスマッシュ、など最初の一球目のロブに反応できるかがポイントになる。ただこれは実際のゲームで練習していくしかないのだろうな。

修行は続く。

技術と体力のドリル 

もう8月の終わりには風が秋色になっていた。9月に入るとクーラーなしで眠れる夜になり、帰宅時には半袖のシャツでは肌寒いと感じるようになる。今年は秋の訪れが早いのだろうか。それでも休日の日中に屋外でテニスをすると翌日には顔が真っ赤になる。

8月の中旬あたりからこの連休まで、なぜかシングルスのレッスンでは体力増強期間などとコーチが勝手に決めたハードで地味な練習が続いた。基本はスパニッシュ・ドリルである。センターマークの位置に立って、深い球出しを斜め後ろに下がってクロス、浅い球出しを斜め前に踏み出してストレート、これをフォアバック交互に行う。センターマークを中心にして×字に動いて打つのである。これを4周連続16連打でするのだが、結構きつい。これを3セットから多いときには6セット近くする。「これはアップですよ。こんなもんでばてないでくださいね。ジュニアたちは平気な顔してやっていますよ」とコーチは涼しい顔していう。四十路直前のおじさんにはこれだけで十分息が上がる。

スパニッシュ・ドリルにはバリエーションがあって、この「×字フォアバック長短4連打」の他に、コーンを置いてそれをかわして、くの字に動いてフォアサイドだけ、バックサイドだけを前後に動いて打ち込む「くの字長短二連打」がある。コーンを前回りしてフォアバックを下がって打つ「山形長打二連打」も8周連続16連打くらいするととてもハードになるドリルだ。昔はよくコーンを二つ置いてその周りを8の字を描きながらフォアバック交互に打つ「8の字連打」を良くやったものだ。あれは後ろか前に弧を描いて動いて、ボールを打つというコンセプトであった。スパニッシュ・ドリルは違う。斜め後ろに直線的に下がってから打つ。「ボールを追い越して、下がりきってから止まって打つことが大事です。今はこれです。ナダルのようになりたければスパニッシュ・ドリルです。」とコーチはこのドリルにはまっている。

また深い球は下がってクロス、浅い球は前にコートに入ってストレートと打つのが基本形であるが、何度目かに一度は深い球をストレート、浅い球をショートクロス、と打つ方向を変えてドリルをする。短い球に関しては色々コーチの注文がつく。
「ストレートでもクロスでも短い球を打って、ネットにアプローチせずに戻るときは、打ち切ったときに足を動かさないでくださいね。オープンスタンスなら問題ないですが、スクエアやクローズドなら打った後、後ろ足を前に勢いあまって出すことがありますね。ショットに体重を乗せるためには有効かも知れませんが、戻ることを考えると有効ではありません。踏み込んだ前足に体重を乗せた後、そのまま、前足で体を後ろに押し戻した方が早く戻れます。特にネットより低い打点で短い球を打つときは叩けないですね、スクエアやクローズドでクロスにコントロールショットを打つことが多いと思います。ここでは打った後、すぐにセンターに戻ることが大事です。ここでネットアプローチする時みたいにホップジャンプなどしてしまうと、戻れずにオープンコートに切り返されてしまいます。コートの中に入ってもここは攻めでなくつなぎ、あるいは作りの場面と思ってコントロールショットに徹してください。そしてセンターに戻るのです。」

球出しのスパニッシュ・ドリルは他に「深い球を下がってクロス、反対サイドの短い球をコートに入ってクロス、逆サイドでボレー」という「ジグザクアプローチ」もある。フォアの深い球をクロスに打てば、バックの短い球をこれまたクロスに打ってアプローチ、そしてフォアボレーをクロスでフィニッシュである。バックが深い球ならフォアでクロスアプローチ、最後はバックボレークロスである。これは楽しい。ひたすら前に進むドリルだ。やはり後ろに何度も戻るのが苦しいのだね、練習でも試合でも。

ボレーも球出しではジグザグである。フォアボレーストレートの後すぐにバックボレーストレート、バックボレーストレートの後すぐにフォアボレーストレート、フォアボレークロスの後にバックボレークロス、バックボレークロスの後にフォアボレークロス。「シングルスにはつなぎのボレーはないのですよ、一発で決めるのです。そのためにはオープンコートに打つ。一発目で決まらなければ、二の矢、三の矢をすぐに打つ。ただし相手のいないところに打つのです。」とコーチの声が飛ぶ。

「球出しはアップです。」といいながらレッスンの1/3から半分はこれに費やされる。ここで如空たちはほとんどグロッキーである。人数が少ないときなど、これだけで吐きそうになる。でこの後、プレースメントの練習、つまりラリーの練習が始まる。

このところ、プレースメントではチェンジ・オブ・ディレクション、ラリー中のコースの打ち分けが重点課題である。オーソドックスな練習は二対一でラリー、二人サイドはストレートに返球し、一人サイドはそれをクロスに返球する。これ、一人サイドはストレートをクロスに打ち返す分けだが、一人で左右に延々走り回るので、めちゃくちゃしんどい。体力的に苦しい上に、十分ボールに追いついて後ろに入って打たないと、深いクロスを返球できない。「ちゃんと走って、そして止まって打ってください。この練習は楽な方の練習なんですよ。この程度でダメにならないでください。」とコーチの叱責が飛ぶ。「楽な方の練習」というには当然もっと苦しい練習があるということである。それが二対一で二人サイドがクロス、一人サイドがストレートの打ち合いである。これ、一人側が左右に走らされるだけでなく、クロスボールの軌道は反対サイドの自分からは逃げる方向に飛ぶので、走る距離もスピードもストレートの時より上げなければ追いつかない。これは苦しい。さすがにこれをやったときには練習にならなくて、コーチも一度やったきり、二回目はやらなかった。

このクロス対ストレートは一対一でも行うが、当然クロスを受けてストレートに切り返すほうが苦しい。単純な練習でありながら続けるのがもっとも難しいドリルでもある。技術的にも体力的にも厳しいトレーニングだ。ジュニアたちはこれを平気で何分間も続けるからね。やっぱ凄いわ。

少しプレースメント・ドリルらしい練習は一対一でクロス二球の後ストレートを打つ、ストレートを打たれたほうはクロスに切り替えして、そこから相手がまたクロスを二回打つという練習である。クロス二本にストレート一本という配球はストローク戦の基本中の基本だ。ストレートをクロスに切り返すのもディフェンスの基本である。これもやはりディフェンス側、つまり打ち込まれたストレートをクロスに切り返す方が苦しい。この練習はバックサイドでバックを打つパターンの時と、バックサイドを回り込みのフォアハンド逆クロス二本のあと、回り込みのフォアでストレートとのパターンの時の二通りあり、如空的には回りこみのフォアを使ったパターンの時のほうが安定している。動く量は回り込む分、フォアの方が多くて体力的には苦しいはずだが、コントロール面ではやはりバックはフォアに比べてまだまだ不安定であるということか。

この様な練習をひたすら続けているとよくわかるのだが、如空たちのレベルでの試合ではストロークをクロスでもストレートでもとにかく左右のコーナーに深く打ち続ければ、相手は技術的にも体力的にも厳しくなって、ミスしてくれたり、チャンスボールをくれるようになる。これがラリーで打ち勝つということなのだろう。ショットの威力ももちろん重要なのだが、コース、深さ、高さ、配球、そして何よりもそれを続ける体力が大事なのだ。それがあれば主導権を握れる。ポイントが取れる。つまり強くなるということなのだろう。

最近シングルクラスの人数が減っていることも原因だが、この一連のドリルをひたすら続けるのは体力的にとても厳しい。9月の頭にシングルスの大会に出てきたのだが、これがまったく動けず二連敗して予選敗退してしまった。まったく動けなかったというのはその試合の前日にこの夏一番のハードなレッスンがあり、そこで両太腿が痙攣する寸前まで走り回された。翌日は筋肉痛、太腿だけでなく、背中と腹筋も痛い。体幹部の筋肉痛というのは体を動かしているうちに治ってくるものだが、この日は疲労も蓄積されていたらしく、体の反応がとても鈍かった。意識だけが先行して体がついてこなかった。その前の週にダブルスの方で予選二連勝して、サーブとフォアに少し自信があったときだっただけにとてもショックだった。後日、コーチにこのことを告げると「筋トレしたわけでもなく、テニスだけで太腿と体幹部が筋肉痛になるというのは、体幹部を使ったショットを打つようになったということ、今までは手打ちだったということです。それはいい変化の前兆ですよ。体幹部でなく手先、つまり脹脛と腕が筋肉痛になるようなテニスをしているといつまでも強くなりませんから。」といわれた。

体力はすぐにはつかない、筋力も体力も成果が出るのは少なくても三ヵ月後以降だろ。だからこの地味だがハードな基本ドリルを毎週続けていくことには意味があると思う。この夏からコート以外でも少し走り出した。仕事の後、帰宅してすぐに数キロだけだが軽く走っている。それだけでだいぶん違うものだ。この夏のこの地道な基礎ドリルの繰り返しを何とか痙攣せずにへばりながらも参加できたのは、毎日少しでも走っていたおかげだろ。実際、如空より体力があると思った人が、嘔吐したり、痙攣したり、途中で練習を抜けたりしてダウンしている。みな社会人だけに限界を超えて運動すると日常生活に支障をきたす怪我をする危険もある。怪我防止も為にも体力をつけなければいけない。しかし、練習が単調だけ続けるのは厳しい。この「修行」の記事もネタ不足である。それでも地味な練習ほどタメになると信じて練習して、後は試合で試すのみ。

修行は続く。

予選で連勝、本選即敗退

夏の終わりにサークル単位で参加しているダブルス大会がある。いつものペアと一緒に毎年恒例のそのダブルス大会に出場してきた。

初戦の相手は学生さん・・・・・というより子供である。高校生ペアだ。部活していろよ、草トーなんかに出てくるな、とつぶやきながら6ゲーム先取の予選リーグ第一戦が始まった。相手はあまり体が大きくない。サーブは回転系が主でよく切れる。リターンが難しかったが、返せば何とかなった。若いだけあってミスが早い。一発の強打があるので結構ウィナーを取られたが、こちらは堅実なテニスで対抗した。最初の4ゲームを1ブレーク3-1で折り返した。中盤でペアのサービスゲームを破られ追い上げられたが、最後には一度破られた如空のペアのサービスゲームをきっちりキープして6-4で勝利した。如空は自分のサービスゲームを二回ともキープに成功した。ダブルフォールトなし、回転系のサーブを深いところに集めることが出来ていい感じだった。またペアのネットプレーも冴えていた。

二試合目の相手はベテランコンビだった。片方はハードヒッター、もう片方はネットにガンガン出てくる。試合展開は同じようにこちらがブレークして先行、途中追い上げられるが、最後はこちらのペアのサービスゲームをキープして6-4でこれまた勝利した。如空のサーブとペアのネットプレーは絶好調である、

予選リーグを二連勝で一位通過し、本選トーナメントに進出した。予選リーグ方式の大会で予選全勝(といっても二勝だが)は今のペアになって初めてのことである。が如空ペアはあまり興奮することなく本選のドローを待っていた。勝っている時と言うのは気持ちは淡々としているものである。

本選トーナメント一回戦の相手は同じ年頃のペア、片方のフォアハンドは強いスピンで、ライン際でラインを割ったとジャッジしたボールがぎりぎりで入ってくる。ボールもつぶして打ってくるので威力もある。試合展開は予選の二試合と途中まで同じだった。こちらが先行、相手が追い上げる。ところが今回は終盤で相手を突き放せなかった。どころか片方の相手のハードヒッターはネットプレーも強気で、後半はガンガンボレーも叩いて来て、押し切られた。本選一回戦は3-6で敗退した。

本選一回戦の途中から好調だった如空のサーブの入りが悪くなった。予選ではなかったダブルフォールトも出た。また如空のペアのネットプレーもキレがなくなっていた。どちらとも疲労の蓄積が原因だろうか。集中するべきところで少しプレーが雑になっていた。体力の問題でもあるが、気持ちの面でもメリハリをつけて終盤にきびきびとプレーできるようにならないと、一日の大会で勝ち続けることは難しい。

修行は続く。

クロスラリーからN字攻撃への展開

涼しいなあ・・・・・完全に冷夏だな。日常生活を送る分には心地良い気候ではあるが、コートの中でテニスをする身には、まだまだ涼しいとはいえない。汗が滴り、握るグリップが汗でグスグスになる。着ているシャツが汗で体にへばりつく、下着まで着替えないと、練習のあと帰宅できない。そんな風に、コートの上では冷夏にもかかわらず、いつもと変わらぬ夏の日々が繰り返されている。

先週のシングルスの練習はクロスコートラリーからの展開だった。
「つまりクロスラリーをしてからN字攻撃に移るパターンですね。」
と涼しくても暑くても元気なコーチは元気に解説する。
「ネットの向こうからコーチが球出しをします。クロスを二本打ってください。その後三本目でストレートに打ちます。ストレートに打った後、逆サイドにボールを出しますので、それを走りこんでまたストレートです。フォア側ならフォアのクロス二本のあとフォアのダウンザライン、そして最後に逆サイドに走りこんで、バックのダウンザラインです。バックサイドなら、バックハンドクロス二本にバックのダウンザライン、最後に逆サイドに走ってフォアのダウンザラインですね。」
「最後のダウンザラインを追いついて上手く切り返せるかが鍵です。先にストレートに打った、相手がクロスに切り返した、それを逆サイドで再びストレートに打つ、つまり上から見るとアルファベットのNの字になるN字攻撃です。何度も説明していますが、オープンコートに打たれたボールというのはストレートよりクロスの方が取るのは難しくなります。距離は長いので時間はストレートよりありますが、何せ、自分からボールが逃げていく方向に飛びますからね、追いつくことが難しいし、追いついても、自分から逃げていく方向のボールをつかまえてネットの方向に打ち返すのは結構高等技術です。」
「N字攻撃を成功させるには相手に十分な威力のあるショットを打たせてはいけないのです。そのためには逆にこちらが威力のあるショットを打ててこその展開です。最初のクロスコートのラリーで、深い球を打ち込んで、浅い球をもらって、それをコートの中に入ってストレートに打ち込むこと、そしてそのストレートに威力があれば、それを切りかしえたクロスは当てるだけのショットになって緩くて浅いクロスになるので、それを追いついて、打点を前にしてストレートに止めのショットを打てることになる。これが最初のクロスラリーで相手を押せずに深い球を打ち返されたら、そこから強引にストレートに打っても相手は十分に追いついて、威力のある深いボールをこちらのオープンコートであるクロスに打ち返してきます。そうなると逆にこちらがピンチになりますね。だから、N字攻撃を仕掛ける前のクロスコートラリーで十分相手を後ろに追いやる、短いボールをもらったら逆コーナーに叩き込む、その前振りがあってのN字攻撃です。そのつなぎと作りをしっかり出来るように、意識してショットを打ってください。」

実際、N字攻撃なんて如空たちのレベルでは仕掛けた方が、最後のストレートを打ち切れずにミスしてしまうことが多い。この最後のストレートを打ち切るために、クロスコートラリーで押し、最初のダウンザラインを的確に打ち込むことが大切なのだ。そのために、それが出来るようになるために、練習、練習。

修行は続く。

始めた事、我慢してみた事

今年の3月にやらかした捻挫の後、バックハンドストロークは片手打ちのスライスを多用し、フォアを主体にラリーを組み立てていくというゲーム展開を練習していた。それは走る距離を少なくしよう、アップテンポな打ち合いは避けよう、という趣旨からそういう方向に自然と向いていった。一方でシングルスのレッスンで最近コーチがスパニッシュ・テニスの理論にかぶれていて、スパニッシュドリルの練習を集中的にこの春に行った。おかげで「クロスの深い球は下がってクロスに深く打ち返す、クロスの浅い球はコート中に入ってダウンザラインに打ち込む。」という基本的なストロークでの展開が身についたように思う。特に「クロスに浅く入ってきたボールを前でストレートに切り返す」というショットは意外と難しく、数年前はこのショットを試合中に打つことが出来ずに、コースを変えることが出来ない現実、自分の力量のなさを思い知らされて愕然とし、とても落ち込んだ時期もあった。しかし、反復練習はやはり効果がある。この数ヶ月、集中して練習したおかげでフォアハンドに関しては確率よく浅いクロスをストレートに切り返すことが出来るようになった。練習ではバックハンドサイドの練習も同じようにしているが、こちらのほうはまだまだである。ストレートに行かずに角度が甘く、センターよりに行きやすい。これはしかし、バックサイドは廻りこんでフォアでストレートに打つという手もある。バックハンドストロークはスライス主体にしていることだし、バックサイドへの短いクロスはフォアに廻りこんで、フォアでストレートに打とう、そういう方針を立てて春のシングルス大会に臨んだ。

初戦は序盤、実に上手く運んだ。ファーストサーブの調子がやや悪いのだが、それでもストローク戦に持ち込める。そして短くなったボールをフォアでストレートに打つ、という方針が生きた。これが効いてウィナーや相手のミスが量産できた。バックハンドスライスもよくつながっている。バックをスライスのつなぎに徹したことで、強引に攻めることがなくなり、落ち着いてラリーをすることが出来た。スライスを打つと展開がゆっくりとするので、せっかちな如空はいらいらしてしまうのだが、この日は自分で言うのもなんだがよく我慢が出来た。相手の調子が上がらないこともあって、最初の三ゲームを連取した。その後もサービスゲームをキープしあって4-1とした。このあたりから相手がネットに出てくるようになった。アプローチするときはこちらのバックを狙ってくる。バックはスライスしか打たないこと見取ってのことである。スライスはバウンドするまではペースのあるボールが直線的に飛ぶ。だからダイレクトではボレーしやすいボールになる。そこを突かれてネットでボレーを決められる。相手の追い上げが始まった。こちらのサーブがブレークされ4-3まで来る。バックでのスライスをやめて打ちに行くか、それともリードしているのだから方針を変更せずに貫くか。悩んだ。悩んでいる間も試合は進行する。バックはスライス、ストレートはフォアで打つ、この方針で心中することに決めた。相手の調子が上がる。やはり序盤リードできたのは相手の不調も手伝ってのコトだったのだ。地力では相手の方がかなり上のようだ。何とかサーブをキープして5-4となった。この大会の予選は6ゲーム先取、TBはない。後一ゲーム取ればいい。逃げ切れるか。一試合目にもかかわらず、かなり疲れていた。スライスを多用したことで長いラリーが多発して、試合時間が長くなっているのだ、そして走る量も当然多くなっている。疲れは足に来る、サーブの入りが悪くなる。フォアの廻りこみが廻りこみきれずにミスが増える。逆に相手はこの競り合いの状況で逆にミスが減ってきている。最後に1ブレーク1キープ、2ゲームを連取され、5-6の逆転負けを喫した。

二試合目の相手はグリグリのスピン兄さんで、サーブもストロークもとにかくこちらのバックにボールを集めて来る。自分の頭を越すほどに跳ねるスピンボールが如空のバックに集められる。如空の俄仕込みのバックハンドスライスではこの高い打点の返球が上手く打てずに、完全に崩された。二試合目は長かった一試合目とは逆にあっという間に終わってしまった。

このシングルス大会の二敗は尾を引いた。負けることには慣れているはずだったが、それでもショックが大きかった。失意のまま出た翌月の別のシングルス大会では完全に自滅モードで0-6 1-6 で二連敗した。試合中何をすればよいのかわからなくなっていた。

それでも、試合中何をすればよいかといえば、練習したことをするしかないのである。試合では練習したことしか出ないのだから。

少しでも体力をつけるために、仕事からの帰宅後、夜の街を少し走るようにした。少しだけなのでろくに体力もつかないだろうが、それでも試合中少しでも足が動いてくれればいいと思って走り始めた。
疲れるとサーブが乱れる。フラットサーブの調子がいいとはいえ、それを打ち続けると長い試合は最後に崩れる。最悪手打ちでも入る回転系サーブが欲しい。緩い縦回転のスピンサーブは危険だ。ファーストから叩かれてしまう。斜め横回転のスライスサーブをあまり下半身を使わずに打てるように練習し始めた。

「ショットの威力を信じることから始めてみるといいんじゃないですかね。」
とシングルスでの如空のテニスをよく知る知人が言う。彼は如空と同じ大人になってからテニスを始めた人だが、如空と違ってとっても強くなり、今では初中級レベル大会ではたまに優勝する。その人が試合の合間の待ち時間に語る。
「駆け引きや展開も大事とは思いますけどね、威力のあるボールを深く打ち続けることが一番効くんですよ。相手コートの深いところに勢いのあるボールを打ち続けるのですよ。出来るなら両コーナーにね。ノータッチのウィナーを取るのでもなく、相手のミスを待つのでもない。相手にミスを強要させるのです。自分のショットの力でね。特に如空さんはシングルスのレッスンでひたすら威力のあるボールを打つ練習をしてきているじゃないですか。それを試合で使わなきゃあ。決めや作りのショットを強く打ってはいけないんです。決めと作りのショットはコントロールショットでいいんですよ。どこに打つかが問題なんで威力は関係ないのですから。つなぎのショットこそ、威力のあるボールを打つのです。強打じゃないですよ、自分でコントロールできずにミスを連発するような球を打っても意味ないですからね。自分がコントロールできる範囲内で、あるいはややリスクのある範囲内の強い球を打ち続けるんですよ。一球ではダメですよ、何球でも続けるのです。相手がミスするまで、或いはこちらにチャンスボールをくれるまで、打ち続けるのです。我慢は守りだけではありません。攻める側にも我慢は必要なのです。いい球を打ったのに相手はなにも変化せずにボールが返ってくる、そこでめげていてはいけないんです。相手が崩れるまで打ち続けるのです。そのストロークでの圧力があって、はじめてそこから、緩急や相手を動かしての展開などの戦術が使えるのです。それまで我慢ですよ、攻めながら我慢ですよ。」
「ポイントだけではなくて、ゲームでもマッチでもいえることです。リードした、一気にここで逃げ切りたい、だが追いつかれた、そこでリードしているほうがぶれてはダメなのです。40-0から40-40に追いつかれた、5-0から5-5に追いつかれた。そこであせってはいけません。追いつかれる可能性を常に考慮して、覚悟をしながら、リードを守るのです。最後に二ポイント、最後に二ゲーム上回れば勝てるですよ。それをリードしていると大量リードをそのまま守ろうとして、少しでも差が詰ると、リードしているにも関わらず、負けている印象を持ってしまう。そりゃ誰でもここで悪い予想をしてしまうものです。そこで我慢です。我慢して攻め続けるのです。リードしたのは自分の幸運、追いつかれたのは相手の幸運、追いつかれてようやくプラスマイナス0なんです。そこで自分のテニスを忘れずに、リードした幸運を呼び戻すのは、リードしている時に自分でしていたテニスをやりきるしかないのです。リードしている方に自分のテニスをやり続ける我慢が出来るか、攻めいている側に我慢が出来るかです。追い上げた側は追いついたところで我慢が切れることが多いのです。そこでリードしている側は我慢を通して、最後に勝つのですよ。これが先行している側の勝ち方だと思うのです。」
語っている内容はよく聞く話だが、強くなった人の口から語られると説得力がある。この話は妙に如空の脳裏に残ることになった。

バックハンドスライスの高い打点を練習したかったが、あいにく如空のコーチや練習相手はフラット系のプレーヤーばかりで、如空のバックにスピンを跳ねさせてくれる練習相手がいない。リターンの練習を集中的にして女の子打ち両手打ちバックハンドがいい感じになってきた。そこで、低い球はスライス、高い球は両手打ちフラットドライブという方針でバックハンドを打つことにして、次なる大会に臨んだ。

一試合目の相手はよく知る相手、シングルスでの対戦も三回目である。過去二回は大差で負けている。この日も大差で負けた。一ゲームしか取れなった。しかし、ひたすら当初立てた方針を貫いてテニスをしていた。試合が終わったあと、対戦者の知人は何か言いたげであったが、次の対戦者がすぐにコートに入って来たので、話をせずじまいに終わった。

二試合目の相手はグリグリのトップスピン男である。これまた、サーブはよく曲がるし、フォアハンドのスピンはこちらの頭を超えるほどによく跳ねる。このトップスピン打法は初中級のシングルス大会ではとても多い。先日の相手もそうだった。このトップスピン打法を攻略しない限り、前には進めない。ショットの威力を信じて、相手を押し返すのだ。相手のトップスピンをベースラインから下がって、高い打点からフォアで深くに打ち返す。フォアはオープンスタンスから肩を腰と逆に回す打ち方で、コーナー深くにボールを集めた。相手も自らのトップスピンで対抗してくる。相手のサーブで始まった試合はキープ合戦で2-2まで来たが第五ゲームで相手のサーブを破ることに如空は成功した。3-2でリードした。ここで二人ともミスが少し増えてブレークを続けてし合い、4-3となった。長いラリーが続く、相手の中ロブを下がって打っているので、動く量が多い。足に疲労が出始めている。だが根性でサーブを入れた。練習した省エネスライスサーブがここで役立った。相手も少し落ち着いて、お互いに自分のサービスをキープした。5-4で如空のサービスゲームである。サーブイングフォーザマッチである。過去にここで何度試合を落としたことだろう。固くなったり、疲れて動けなくなったり、攻め急いでミスを多発したりして、最後の詰めを誤ってきた。この日、集中力を維持するために、ベタな方法だが、一ポイントごとにストリングをいじってなおす行為を意図的に行った。ヒューイットがよくやることで有名だが、このルーチンワークを入れることで精神的に少しでも迷いをなくし、目の前の一ポイントに集中しようと思った。愚直な方法かもしれないが、シングルスのコートではこうでもしないと雑念が生じやすくて、集中力が乱れやすい。省エネスライスサーブを入れて、ストロークをひたすら深く、出来るだけフォアで、相手コート深くに打つことに専念した。ストリングを直すルーチンを入れたこともあったが、やることが絞られていたので、少々緊張しながらも集中してプレーが出来た。最後のポイントを取りきったとき、喜びよりも安堵感の方が大きかった。如空にしては珍しい1ブレーク差6-4という競ったスコアでの勝利だった。

如空は予選リーグで一勝一敗の二位となった。この日、他の予選リーグで予選終了後怪我だの体調不良などで棄権者が続出した。予選リーグ二位で負け試合が1-6などという酷いスコアにも関わらず、しかも勝ち試合も1ブレーク差だったにも関わらず、棄権者続出の結果、ラッキルーザーで本戦に出場することになった。決勝トーナメント一回戦の相手はこれまたよく知る相手。シングルスでも過去に5回ほど対戦したことがある。こちらもまだ一度も勝ったことの相手である。
この日、如空はサーブの調子がイマイチだったが、リターンの調子がよかった。特にシングルスのレッスンで遠いコーナーにリターンするという練習をしたのだが、その練習の成果がこの日はよく発揮されていた。ストロークでもリターンでも相手の遠いほうのコーナーに深くボールを打つ。ただひたすらにそのことに集中してゲームを進めていた。相手も如空と同じくサーブがイマイチでリターンの調子はよいようだった。結果第五ゲーム2-3までブレーク合戦となる。第六ゲームでついに相手がサービスゲームをキープした。こちらは相変わらずキープできない。入れるだけの省エネスライスサーブをたたかれて主導権が相手に移ってしまう。2-5とされて勝負あった。締めの厳しさは相変わらずで、マッチポイントを一発で決められて2-6で負けた。

本戦決勝トーナメントは一回戦敗退であった。一日で三試合して一勝二敗の負け越しでもある。だがそれなりに収穫の多い一日であった。出来るだけフォアで遠い方のコーナーに勢いのあるボールを深く打つ。このことを感情の起伏を作らずに繰り返す。そういうことが一試合を通じて行えた。勝っていても、負けていても同じように淡々とテニスができた。バックも低い打点、短いボールはスライスで、高い打点は両手打ちフラットで返球して、ストロークを安定させ、穴を作らずにすんだ。リターンでも堅実に、かつ攻撃的に、相手の遠い方のコーナーに深く返球できた。相手の深い球は後ろに下がってクロスに深く打ち返す、相手の短くなった球はコートに入ってストレートに打ち込む、というスパニッシュ・テニスの方針をかなり実践できたと思う。省エネスライスサーブはサーブが大きく崩れることを防いでくれた。ランニングの成果と一ポイントごとのストリング直しが効いたのか、体力的にも精神的にも大きく崩れることがなかった。準備してきたことを試合で実践できたことは喜ばしい。一方でネットプレーがまだまだである。短くなったボールをストレートに打ってからアプローチしたとき、返球されると上手く対応できていなかった。フィニッシュワークに具体的な方針が必要だ。ストロークやリターンのようにひたすら貫き通す方針が。またサーブがやはり弱い。効果的なサーブを連続して、最後まで入れ続けて、サービスゲームでの主導権を握らないと、やはり勝てない。ストロークとリターンで今の方針を維持しつつ、サーブとネットプレーの強化、これがこの夏の課題だろうか。

修行は続く。

スマッシュはマイムマイムで下がる

日照時間が足らない、このままだと間違いなく冷夏だな。8月に入っても雨は断続的に降り続け、一度降ると豪雨となって河川を増水させる。山と海の間が短い神戸では六甲山に降った雨がなだれを打って神戸の海岸線へ流れ込む。去年はこれで幼い子供たちが流される災難が起こった。今年は九州や中国地方で被害が出ている。自然災害は恐ろしいな。人間の作り出した技術を過信せず、危ないときは非難することが大事だ。それでも安全であるならば、欲を出して、貴重なテニスの時間だけは潰してくれるなと天に祈ってしまう。現金なものである。

先週のシングルスの練習は珍しくスマッシュだった。下がりながらのジャンピングスマッシュである。
「シングルスはダブルスほどネットにガンガン出るわけではありませんからね、試合で使うシーンもダブルほどには多くないかもしれません。しかし使えなければネットに出ることが出来ません。上が弱いとわかると執拗にロブが上がってきます。ネットにつくたびにロブをあげられます。相手の弱点を突くのがテニスの鉄則です。だから相手に付け入られるような弱点を持ってはいけないのです。そういう意味ではこの下がりながらのジャンピングスマッシュは出来なければならない必須技術ですよ、ネットに出る回数が少なくてもね。」
という訳で、サービスラインからネットへダッシュ、ネットタッチでコーチがロブを球出し、それを下がりながらのジャンピングスマッシュで打ち返すという、ダブルスの練習でも良くやる定番練習を延々繰り返す。人数か少なかったので、休む暇がない。延々と走りながらネットとサービスラインを往復して、走りながらくるくる回り、スマッシュを打ち続ける。息が切れる、腹筋が痛い、足が動かない、ラケットが振り上げられない。足がもつれて転倒する者もでる。さすがにコーチが一旦休憩を入れる。

皆俯いて、コートに倒れこみ、肩で呼吸している。口からはゼーゼーという呼吸音しか聞こえない。水分を補給しようという意欲すら見せられない。夏の練習はハードだ。そんな如空たちにコーチはかまわずに声をかけて解説する。

「疲れてくると横向きになって下がることができなくなってきますね。特に最初に横向きになってから下がれていない。後ろ向きのまま後退し始めて、それで追いつけないと横向きになる。でもそれでは遅いですよ。最初から横向きになって追いかけないといけません。」
「横向きになってもサイドステップだけでは追いつけませんよ、クロスステップで走らないと。下半身は後ろに向けて走るくらいの意識でボールを追ってください。落下点に入ろうとするそのときにはじめてサイドステップで細かく調整するのです。そして落下点に入るのが間に合いそうにない場合は、シーザースジャンプでジャンピングスマッシュです。後ろ足で蹴り上げて、ジャンプした空中で両足を前後に入れ替えるのです。はさみのようにね。だからシーザースジャンプと呼ばれるわけです。」
「横向きになる、クロスステップで後ろに走る。この二つのことを確実にするためには、最初の前足の第一歩で前足を、右利きなら左足ですね、これを体の前、おへその前を通して後ろに送ることです。前足をお尻側、つまり後ろに踵から引いてしまうと、腰は横に向かないし、おへそがネットをむいたまま、後ろに後ずさりすることになります。これでは追いつけませんね、何より無様です。格好悪いです。でも皆さんの多くは疲れてくるとそうなっているのですよ。ロブが上がったらまずラケットを担いで、後ろ足を引くとすぐに前足をおへその前を通して後ろに下げてください。そうすれば両足はクロスしますね、腰は横に向きますね。横向きのままクロスステップで後ろに下がれるのです。さあ、これが自然と身につくまで、練習練習。」
鬼ジャー、再び練習が始まった。心臓がのどから飛び出しそうだ。それでも前足をへその前を通して後ろに引くと自動的に体が横向きになって、クロスステップで後ろに下がれぞ。これマイムマイムのダンスの足の運びのようで面白い。これが試合でも自然とできるようになるまで練習練習。

修行は続く。

遠い方のコーナーへリターン

もう7月も下旬だ。蝉もガンガン鳴き始めた。子供たちも夏休みに入った。なのに梅雨が明けない。それどころか西日本は豪雨に見舞われている。予想では今年は冷夏になるらしい。湿気の多いコートの上に、雨の間を縫ってコートに如空たちは出て行く。

先週のシングルスの練習は遠めのサーブに対するリターンだった。
「ポイントはただ一つ、外足です。外側の足を一歩踏み出して、重心を乗せて、ボールを待つことです。」
蒸し暑いコートの中で、汗だくになりながらコーチが解説する。
「外足を踏み出して、外側に腰も胸も向けます。両手も外側に突き出します。そこから外足で体を前に押し出して、打ちます。サーブが短ければ前に踏み込み、サーブが深ければオープンスタンスのまま、打ちます。」
「肩と腰は回転させるというより、左右を入れ替えるという感じで打つほうが良いです。スイングするというよりつかめる感覚ですかね、打ち返す感じが大事です。」
「狙いは対角線、相手の遠い方のコーナーです。ですからワイドへのサーブならならクロスへリターン、センターへのサーブなら逆クロスへリターンです。これは意味があります。特にファーストサーブでは意味があります。相手はいいサーブを打てばコートの中に入ってきてリターンを待ちます。そこから攻撃しようとしていますから。そこへサーバーのクロス側のコーナー深くにリターンできれば、サーバーから見ると、自分の立ち位置より後ろに来ますから、下がって打たなければなりません。つまり攻撃を防げるということです。特にワイドにサーブを入れた時にサーバーはワイドに向きますからね。ベースラインで斜めに向くと遠いほうのコーナーは自分より後ろに位置するという位置関係を上手く利用するのです。逆にストレートだと、コーナーに深く打っても相手は前に踏み込んで打たれてしまう可能性がありますので、ここは危険な位置になります。」
「スライスやブロックでゆっくり返球するときは相手に角度をつけさせないためにセンターに返球する方がいいかもしれません。またサーブ&ボレーに出てくる相手にはリターンからパスを抜くつもりになっておかないといけない場面もあります。相手がいいサーブを入れて、そこからストロークで攻めていこう、という場面で、これは効きます。」

ワイドとセンターへサーブの球出しが始まり、如空たちはひたすらリターンに専念する。今日の如空のレシーブは調子がいい。フォアだけでなくバックもいい。デュースサイドでセンターに来たサーブも上手く逆クロスにリターンできる。外側の足に体重を乗せ切ってボールを待つという姿勢がリターンの安定を生んでいるようだ。この感じを試合でも使えるように身につけさせよう。何度でも何度でも、体が覚えるまで何度でも。

修行は続く。

オープンスタンスから前へ

蒸し暑いぜ、関西じゃ梅雨がまだ明けないじゃないか、雨も断続的に良く振るし、テニスをする身には辛い日々だ。だが環境が悪くてもコートに出て行くのである。

ウィンブルドンの週に行われたレッスンは「反撃」と「攻撃」、で今日はその「攻撃」の話。
「スパニッシュ・テニスでもそう、アメリカの5ゾーン・システムでもそう、サービスラインより内側にバウンドした球はアタック、攻撃するのです。特にネットより高くバウンドが弾んだ時は叩いて攻めます。フォアサイドはもちろん、バックハンドでもスライスアプローチなどせずにストレートに叩いてネットに出ます叩くときに大事なのはフットワークです。強打は上半身に力が入りやすいですが、大事なのは足です。足で体幹部を回して打つのです。」
「軸足を前に出すくらいのつもりで、オープンスタンスで構えます。サイドステップで前に詰めたとしても。最後に打つ直前に軸足を前に出し、軸足側の腰も前に出し、軸足に体重を乗せて、軸足側の肩は引いて、ボールをヒットする直前にこの体勢になってタメを作ります。アプローチであっても叩くときは一度構えて止まる感覚が大事です。そしてそこから打ち込みます。」
「軸足で地面を捉えて後ろに蹴りだします。体の中心から見ると軸足と軸足側の腰が後ろに下がりますね。そして逆に打撃側の肩を前に出すのです。腰を回して肩を同じ方向に回すのではなく、腰と肩を逆回転させて一気に打つのです。腰を逆回転させるといっても、軸足で体を前に押し出してきますので、重心は前に移動しているのですよ。」
「右利きのフォアなら、右足に体重を乗せてオープンスタンス、あるいは右足をかかとの内側から前に踏み出してしまってもいいです。そこから右足で体を前に押し出して、左足を前に踏み出すのです。同時に上半身は前に突き出した左手を引いてラケットを握る右手を前に振り出します。その過程で、右肩でボールをつかまえて潰す感覚で打ってください体幹部を回転させるというより、右足と左手を前に出して構え、左足と右手を前に振り出して打つという感覚が近いと思います。」
「両手打ちバックハンドでも同じです。腕の力は抜いて、上手くラケットを前に振り出してあげてくださいね。肩を入れ替えたときに上手くラケットを前に出さないと、ラケットも回ってクロスにボールが飛びますから、狙うのはダウンザラインです。問題は片手打ちバックハンドです。グリップの薄い人はスクエアスタンスのまま、腰も肩も回さずに、むしろシッカリと止めて、腕だけ前に振り出した方が上手く打てる人もいると思います。ただそのときも前に重心を乗せこんでいく感覚は必要ですよ。グリップが厚い片手打ちの人はオープンスタンスから体を回してしまって打ってもらって結構です。腰から刀を居合い抜きする感じでかっこよく決めてください。ただラケットを握っていない側の腕は前に出さずに後ろに残してください。そうすればストレートに飛びますから。ではやってみましょう。」

という訳で、コーチからのチャンスボールの球出しを叩く練習を延々とする。フォアハンドはいい感じだ。右肩が右腰を追い越して前に出て行けばボールはつぶれて前に放たれる。ただバックは両手打ちでも難しい。オープンスタンスで構えることも難しければ、そこからストレートに打つのも難しい。「如空さん、フォアよりもボールを引きつけてください。構えるときにもっと肩を入れたほうがいいです。上半身を捻っていないから、球に威力が出ない、まっすぐにも飛ばないのです。オープンスタンスでも上半身は横に向けるのです。」バックもいい感じで打てるようになってきた。みな打てるようになってきたところで今度は連続攻撃、叩いてアプローチの後、ボレーを付けて、更に少ししてスマッシュも追加される。なんかバタバタしてきた。ショットの一打一打が雑になる。丁寧に丁寧に、そして強気で連続攻撃だ。

「ボールが短くなれば、サイドステップで前に詰める。それでサイドステップのままスクエアスタンスで、踏み込んだ足の更に前でスピンを打って前に出る、バックならキャリオカステップからスライスアプローチもあります。これが基本ですね。しかし、相手に追いつかれるとクロスにパスかロブを打たれます。ネットより低い場合はそれでも良いですが、打点がネットより高く取れるときは叩いて前に出てくださいね、一発で決められるかもしれないし、相手が追いついてもミスしてくれるかもしれないし、パスを打たれても、コースが変えられずにこちらの方にボールを返球してきてくれるかもしれません。ウィナーを狙うだけでなく、より確率を高めるためにも叩けるところは叩いて前に出るべきです。」
ゲームでもそうありたいですね、コーチ。

修行は続く。

守備と反撃と戦術眼

蝉の鳴き声がたまに聞こえてくるが、朝から本格的に鳴り響くわけではない。太陽もたまに顔を見せるが、じりじりと照りつけるわけではなく、梅雨もまだ明けていないそうだ。7月に入ったというものの、まだまだ夏本番というわけではない関西地方である。

ウィンブルドンの最中も如空個人のテニスはしていたが如何せんTV観戦記の記事アップに手を取られて修行の記事にまで手が回っていなかった。グランドスラムの週はどうしてもそうなる。その二週間の間にシングルスの練習では一日が「反撃」もう一日が「攻撃」がテーマであった。

「反撃と言ってもつまりカウンターショットのことですけどね。」
と最近シューズを買い換えて「これ履きだすとアディダスなんか履いてられませんわ」と如空に嫌味を言うコーチが解説する。
「過去に何度かやっていますが、ワイドに振られて、相手がこちらのオープンコートに打ってきたと、しかも相手はそのままネットに詰めて来たと、そんなシーンでのカウンターショットです。」
「フォアだろうが両手打ちバックだろうがフットワークは同じです。外足、内足、その入れ替え時にスイングしてヒットです。打点に入るタイミングに足を合わせます。右利きの人のフォアなら、ベースラインに沿って右に走りますね、そしてテイクバックして右足を出す、スイングしながら左足を出す。その過程でヒットです。腰は左腰が前に出る反動で後ろの肩、つまり右肩が前に出る、腰と肩が逆回転する、その反動で打つのですね。両手打ちバックならこの逆です。」
「片手打ちバックはちょっと違いますね。打つほうの肩が前に出ていますから。同じように打つとクロスにしか飛ばなくなります。打つ方向はストレートです。相手がネットに出てきているという想定ですから、パスを抜くのです。片手打ちの人は打つほうの肩をある程度残さないとダウンザラインに飛びませんから、走りぬけるより、軸足で前に踏ん張って腰を回さずに肩を回して一気に振り抜くほうが上手く打てます。」

やってみる。打つ以前にワイドへのボールに追いつけない・・・・・・「ゴー、ゴー、ゴー!走って、走って、走り抜けて、ボールだけを見て走り抜けるんですよ、少しでも止まると追いつけませんよ。」とコーチは厳しい球出しで如空たちを走りまわす。それでも走らされている間に追いつけるようになる。しかし足が合わずにまともに打てない。「外足、内足と最後のフットワークを大きく取って、ステップを大きく取って走りこむのです。」ボールにラケットが当たりはじめたが、ストレートに飛ばない、飛んでも遅くてパスになっていない。「手打ちではいけませんよ、ボレーやブロックリターンをしているわけではないのですから。シッカリと振ってください。腕だけでなく、肩でボールを捕らえて、肩でボールを押し出すのです!」何とかランニングカウンターショットになり始めたぞ、といい感じになった頃には時間が来て練習は終わってしまった。

「どちらにしろ、走り抜けてしまわないと追いつけないし、打てません。打ったストレートのパスが読まれてネットでつかまると、もう終わりです。逆サイドに入れられて相手のポイントになります。つまりそのリスクを背負って打つショットです。反撃にはリスクが付きまとうのです。」
「相手がネットに出てこないようならここは反撃ではなく守備です。ロブを上げるかスライスで返球するかで時間を稼いで、センターに戻るのです。ただ相手はそれをさせまいとしてネットに出てくるのですね。相手のミスを期待してロブかスライスでネットの相手に打たせる手もあります。しかしぎりぎり届いたボールをロブすると短くなりやすく、スライスもバウンドしなければボレーしやすい球ですからね、きっちり決めてくる相手には無力です。オープンコートを作らされた時点で負けということになります。」
「そんな相手にこそ反撃です。ストレートへのカウンターショットです。相手がそれを読むようになればそこでスライスやロブをあげればよいのです。逆に相手がネットに出てこず、あるいはベースラインで次の返球をコートの中で待っているような場面ではストレートに速い球を打ってはいけませんよ。それこそ、次にそのストレートをクロスに切り返されて終わりです。」
「ピンチでは反撃などせずにとりあえず守備に徹することがまず第一です。しかし相手が連続攻撃でリズム良くポイントを取っていくようだと、守り続けることは相手にチャンスボールを与え続けることにもなります。相手の攻めのリズムを崩す、あるいは攻撃を連続させずに断ち切る、という積極的ディフェンスが時には必要です。特にミスをせずに攻めてくる相手には積極的ディフェンスが必要です。そのためにもランニングショットのストレートパスは選択肢として持っておくと良いです。ただし基本はまず守備ですよ、無理はしない。相手に攻撃されているから「守備」であり「反撃」なわけです。守るべきところと、リスクを背負って反撃するところ、その場面はいつか、その相手は誰か、相手と場面を見極める戦術眼が必要です。それは練習では身につきません。実戦を何度も経験して、考えながらプレーして、自らの頭と目で身につけてください。何度も痛い目に逢いながらね。」
如空は痛い目に逢いすぎているのですが、未だに戦術眼なるものが発達しているようには思えません。それは考えてプレーをしていないということでしょうかね。

修行は続く。

クロス攻撃と両手バックのテイクバック

最近のシングルスの練習は地味な練習が多い。ただ地味な練習の反復練習ほど、実は試合では効いてくるものであるのだが。

先週のシングルスの練習はクロス攻撃の練習だった。
「シンプルに二つの球種・二つのコースだけで攻める戦術です。つまり深いコーナーに抜けるクロスとショートクロスの二種類です。」
とショートクロスと深いクロスをまずは球出しでシッカリ打つ練習をする。その後は連続配球、深い球をクロスに、浅い球をショートクロスに交互に打ち分ける。
「スパニッシュドリルはN字攻撃です。短い球はストレートに打つというのが原則です。しかし、クロスに入ってきたボールをストレートに切り返すのは難しいですね。難しいから練習するわけですけど。このクロス攻撃は深い球をクロスに打ち返すところは同じ、違うのは短い球をショートクロスに打ち返すところです。ストレートに切り返すよりは簡単です。スピン系の人でもフラット系の人でも打ちやすいです。N字攻撃より狙うオープンコートの範囲は狭いですが、逆を突き易く、かつショットのリスクも低いです。ストローカーの人はN字攻撃よりクロス攻撃の方が得意だと思います。」
続いてネットへの連続攻撃である。クロスにアプローチ、クロスに返球された球を更にクロスにボレー、ストレートに打たれたら逆サイドにボレー、最後にスマッシュをストレートに打つ。
クロスにアプローチした後、クロスへのパスへの対応で皆逆をつかれてしまう。
「セオリーはクロスにアプローチされたらストレートにパスを切り返すことです。でも難しいですね、クロスをストレートに切り返すのは。だからクロスに意外とパスが来ます。またストレート打ちが甘くなってセンターに来たりします。こういうときは一度しつこくクロスにボレーを打ってしまうことです。そして相手を完全に外に追い出してからオープンコートに切り返すのです。」
「クロスのアプローチもクロスのファーストボレーも甘くなってはいけませんよ。クロスにしか打ち返せないような、角度と深さをもって打たないといけません。深さがあっても角度がないと、振り遅れがストレートに飛んでしまって、パスを不本意に抜かれてしまうことが良くあります。角度をシッカリつけて打ち込んでくださいね。」
とコーチの指導の下、クロスコートを中心とした連続攻撃とゲーム形式の練習が延々と続く。

最近がに股になってネットで動いている。前後左右の動きがスムーズでボレーの調子がよい。やはりネットプレーはボレーのタッチも大事だが、フットワークも大事だと思う。

ところで、最近ゲーム対策でバックハンドは片手のスライスで打つことを心掛けているが、そのためにたまに両手打ちのフラットでバックを打つとよくミスするようになってしまった。バックは全てをスライスで打つという手もあるのだが、高い打点のスライスがやはり上手く打てずに、どうしてもそこは両手打ちに頼らざるをえない。そんな感じで後半のゲーム形式のときに、バックサイドで悩みながらプレーしていると、コーチに呼び出された。
「如空さん、両手打ちのときに肩が入っていませんよ、正面を向いたまま、横から前にラケットを振っている。それでは前の腕が邪魔して鋭く振れないでしょう。」
「フォアハンドは後ろを小さく、前を大きくといいますよね。テイクバックをコンパクトに、横から前にラケットを振り出すのです。しかし、両手打ちバックハンドは前の腕があるので、前は大きくならないのです。そのため振り代を確保するために、後ろに大きくラケットを引いておかなければなりません。ラケットを背中に回すのではなく、後ろに、ベースラインの後ろ側に大きく引くのです。そうすれば前の肩が自然と前に入ります。そこから後ろ腕の肩を上に抜くように振り上げるのです。そうすればヘッドが走って横を抜けていきます。打点は横ですよ。フォアは横から前、両手打ちバックは後ろから横です。バックは意識して打点をフォアよりひきつけないと上手く打てませんよ。」
そうか、如空はスライスを打つとき低いボールを前で捉えて打っている。そのため、両手打ちバックでも打点が前になってしまっていたようだ。打点をひきつけるために、コーチの言うとおり大きくラケットを引いてみた。上手く打てた。こうやって、一つづつ、不具合を直していこう。

修行は続く。

サーブも体重移動

あのマスク騒ぎはなんだったのだろう。あっという間に神戸でも大阪でもインフルエンザ騒ぎが収まった。あんなに大騒ぎする必要があったのだろうか。今振り返るとそう思う。一方でコートの上では何も変わらぬ日常が繰返される。ジュニアたちのレッスンが一時休講になったらしいが、それも一週間で解除された。いつも間にやら世間は六月、すぐに梅雨に突入する。それでもコートの中の日常は変わらない。

最近ストロークの練習の多い中、先週のシングルスの練習はサーブがメインだった。テーマは「体重を乗せてサーブを打ちましょう。」というとてもベーシックな内容である。
「アマチュアのテニス愛好家というのは、特に男性の方はそうですが、スピンサーブ信奉というのがあるようで、スピンサーブが打てるのがかっこいい、スピンサーブを打つことが技術的に上手いということだ。と思い込んでいる人が多いようですね。で、まあセカンドサーブとしてもやはりスピンは打てなければいけませんし、そういうわけでスピンサーブを皆さん練習するし、試合でも使うと思うのですよ。」
と今日のコーチはいやに饒舌である。
「ところがスピンサーブを習得しようとして、スピンサーブの練習ばかりして、スピンサーブばかり打っている間に、前に体重移動をしなくなるんですね。打点が頭の上だとか、後頭部からラケットを出せだとか、体を反らして戻して打つんだとか、隣のコートに目掛けてラケットを振りぬくんだとか、そういうスピンサーブのコツを部分的に取り入れていくうちに、徐々に後ろに下がりながら打つとか、体が横に流れたり倒れたりしながら打つとか、手打ちになって体どころか肩すら回らなくて頭の上でドロップショットを打っているようなカスあたりしか打てないとか、そんなサーブのフォームになってしまっている人が多いのですよ。」
「スピンサーブのトスはフラットサーブよりは手前に上げますが、それでも自分の頭よりは前です。そこに下から潜り込んで斜め下から斜め上に向って振り上げて打ちに行くのです。後ろから前に体重移動しながら打つのです。打つ方向に向かって体を押し出して打つのです。この基本はスピンでも変わらないです。ボールに回転をかけるのが腕から先ならば、ボールを前方向に飛ばす勢いを得るのは腰から下の下半身です。前足一本で立って、そこから前で打てる位置で打ってください。打点が前でも、ボールを下から上に削り上げるイメージで打てばスピンはかかります。こするのではなく削る感じが大事です。スピンこそ、勢いが大事です。勢いのないスピンサーブなんて、レシーバーにチャンスボールを入れているようなものですよ。」
「フラットサーブも同じです。腕力に物言わせてスイングだけで強いサーブを打つ人がいますけど、コントロールが悪いです。面がコースを捉えるのが一瞬だけなので、少しでも打点が狂うとボールがネットしたりラインオーバーしたりするのです。」
「フラットサーブで威力を出したいのであれば、スイングスピードより、頭の上でボールを潰すイメージを持ってください。ストリングの弾力とボールの弾力を利用してボールを潰して前に打ち出すのです。そうすればスイングはもうすこしゆったりとしたものになるはずです。ラケット面も前に押し出し、やや押さえ込む感触になると思います。そうすれば面が同じ方向を向いている時間が長い、つまり点でなくゾーンでボールを捉えられるのサーブになります。打点にも前後の幅が出てきやすくなります。ミスも減ります。背の低い女子のジュニアがスピンサーブも打てずにフラットサーブだけで、コントロールよくサーブを打てるのは、リストを使った、ぱちんと言う、点で打つフラットサーブでなく、体重移動を使ったゾーンで打つフラットサーブを打っているからですよ。皆さんのフラットサーブは、皆さんより背の低い女子のジュニアたちのフラットサーブより、スピードがそれほど変わらないのに確率はとても悪いでしょう。一度体重移動を意識してフラットサーブも打ってみてください。威力も上がりますが、それ以上にコントロールが良くなります。スピンサーブも同じです。体重移動は威力だけでなくコントロールの向上にも役立つのです。」

とまあ、色々といわれて、如空たちも体重移動を意識してサーブしてみるが、体重移動をするとかえって足元がふらついてコントロールが悪くなる。
「トスアップで伸びったまま打ちに行くからです。トスした後、トロフィーポーズをとる体は下に沈みこむ感じになることが大事です。上に伸びきったままではタメがないでしょう。下に沈んで、タメて、そこから前に、そして上に打ちに行くのです。」
なるほどね、確かにトスアップのあと体が伸びきっているわ、これではタメもなければ、体重移動も出来ないね。しかし、タメを作ると、下半身が今度は疲れる。やっぱサーブは体力がいるわ。

修行は続く。

スパニッシュドリル

「水際突破!神戸激震!!」って大げさすぎるだろう、この新聞の見出しは・・・・・・と思ってコートに行ったら、如空以外のほとんどのスクール生がマスクをしてコートに入ってきた。この対応の早さはなんだ。神戸市内で新型インフルエンザの感染者が確認されたというニュースは数時間前に発表されたばかりのことなのに、みんなもう対応しているよ。でもさすがにマスクをしたままテニスはできない。みなマスクを外す。ここで感染しても仕方ないよね。テニスの方が大事だ。それに強毒性のH5N1型インフルエンザでなく弱毒性のH1N1型らしいからね。でも帰りにマスクだけは買っておこう・・・・・と思っていたら薬局もコンビニもマスクが売り切れだ。街からマスクがなくなった。なってこった。「いやあ、今回のインフルエンザのおかげでいい商いが出来たよ。マスクを仕入れてついこの間卸したんだ。1日で120万円も儲けてしまったよ。がははは・・・・・・」なんてコートで自慢している商社マンがいる。それでも、レッスンが始まると皆、テニスのことだけに集中する。

「クレーコートシーズンですからね。今日は久しぶりにスパニッシュドリルをしましょう。」
とコーチはインフルエンザ騒ぎとは無縁で妙に元気である。ついでにプロテニスがクレーシーズンであることと、如空たちのレッスンの内容も特に関係なく無縁であるかのように思うのだが、妙な指摘はやめておいた。
「スペインテニスの特徴は戦術のシンプルスさにあります。アメリカテニスだとコートの深さで5ゾーンに分けて、そこでそれぞれに対応するようなやり方です。しかし、スパニッシュテニスは3ゾーンです。深く入ってきたボールを下がって打つ、浅くなれば叩く。そしてネットに出れば決める。この三つです。このパターンを繰り返し繰り返し、球出しのヒッティングで身につけるのがスパニッシュドリルです。」
「ベースラインの直後、センターマークのすぐ後ろがレディポジションです。ストロークを打つときは必ずここに戻ります。そしてここから深い球が来れば斜め後ろに下がってボールをクロスへ打ち返す。浅いボールが来れば斜め前に出てストレートへ打ち込む。そしてストレートが効果的であるならばそこからネットへ出て、ボールをオープンコートにボレーして決める。この三つです。ストロークではセンターマークを中心にして「×」の字を描くように動きます。横に動くのではなく、斜め後ろか斜め前に動くのです。これがポイントです。では球出しでやってみましょう。」

という訳で久しぶりに球出しの打ち込みである。フォアで前後4球づつの8連打、バックでも同じく8連打。その後はバックの後ろ、フォアの後ろ、フォアの前、そしてネットでボレーの4球セット、そしてその左右逆パターン、更に少し休憩をいれて今度は前出のパターンにボレーが更に一球と下がりながらのスマッシュが1球の6球セットを延々繰返す。
いや久しぶりにやるときついわ。足がもつれる、特に最後の下がりながらのスマッシュなど転倒してしまいそうだ。みなゼーゼー言って肩で息をしながら必死でついていった。


「前への動きは特に特徴があるわけではないと思います。大事なのは下がって打つことです。深い球をベースライン上でライジングで打ち返す手もあるわけですが、それではボールが軽くなるのですね。タイミングが速いので相手から時間を奪えますが、ベースラインからのライジングなどで奪える時間は知れています。それよりも、下がって、ボールを落としてでも、ボールを潰して打つ深いドライブを相手コーナーに向けてしっかりと打ち返そうというところがキモです。威力のある深いボールを相手コーナーに打ち込めれば、そこから浅い球をもらえう可能性が出てきます。そして浅いボールを貰えば、そこから攻めればよいのです。つまり守りながら攻めているわけですよ。下がって打つということはそういうことです。ここがアメリカンテニスと違うところですかね。まあ、色々試してみて、自分にあうプレースタイルを身につけてください。」
とコーチは満足げに言う。だがこのスパニッシュテニスをシングルスの試合でやろうと思うととてつもなく体力がいるぞ。これって如空たち中年プレーヤーが出来るスタイルなのかね。でもやれるようになってみたいね。そのためには一にも二にも体力である。

修行は続く。

ファーストポイント、ファーストサーブ

所属サークルも新しい年度迎え、やめた人、新たに参加した人と人の出入りが少しあった。当然ダブルスのペアの組合せも入れ替えが起こる。という訳で如空は久しぶりに例の左利きのペアとコンビを復活させて男子ダブルスの大会に参加して来た。

予選リーグの第一試合の相手はやたらと体格のよい二人組みだった。二人ともバックハンドが片手打ちだった。しかしスライスを使わない。フラットの厚い当たりを打ってくる。フォアもだ。サーブもいい。とても静かで落ち着いている。最初のサーブとリターンを交互にする試合前練習で「この相手は強い。」と思わせられた。実際試合が始まると強かった。最初のサービスゲームでは彼らのサーブをまともにリターンできなかった。相手に簡単にサービスゲームをキープされた。ところでこちらのサーブも相手につられてか調子がよかった。如空のペアの調子もよかった。相手のリターンもよいので苦労はしたがそれでもこちらのサービスゲームを二つキープした。キープ合戦で2−2、第四ゲームまで終わった。サーブが四人一巡したことになる。だが全体的にこちらが押されていた。

試合が動いたのは次の4つのゲームだった。こちらは相変わらず苦しみながらもキープである。問題は相手のサービスゲーム、つまりこちらのリターンゲームである。「如空さん、足が止まっているよ、リターンのとき。」とコートの横で出番を待ちながら観戦していた同じサークルの仲間が声をかけてくれた。足が止まっている・・・・確かに相手のサーブが強いからといいてレシーブのとき後ろで待っている感じがあった。この日、如空はいつものアドバンテージサイドではなく、デュースサイドでリターンしていた。左利きの相棒がアドサイドでリターンしている。こちらはベースラインでワイド側にフォアを厚く配置していることになる。雁行陣主体ストローク重視の陣形である。相手はあまりセンターにサーブを打ってこない。スライスリターンをやめてファーストサーブでもフォアで強く打っていこうと方針変更した。足が動いていないって・・・・じゃあ足を動かそうではないか。吉田友佳の「テニスは逆転の発想でうまくなる」 の中にある「リターンは歩きながら打つ」という一文が脳裏をよぎった。フォアで厚く打つ、足を動かしてリターンする。そう決めてリターンゲームに臨んだ。これがはまった。自分でもいいリターンだと思える厚い当たりのレシーブが返球され、そのまま後衛同士のストローク戦が展開した。フォアハンドの打ち合いである。相手はハードヒッターなのでかなり強打の応酬になった。ここでいつも頭に血が上って更に強い球を打とうとしてミスをするからいけないのだ。黙々と打ち返すことに専念した。後ろで頑張っていれば前衛がポーチにいつか出てくれるはずだ。しかし両陣営の前衛はポーチに出られなかった。その代りに相手の後衛のボールが先にラインを割ってくれた。グリグリのトップスピンでなく厚い当たりのフラットドライブである。そして深い。だがそれだけにライン際ぎりぎりに低い弾道で打ち返されてくるので、こちらが頑張って打ち返していると、いつかラインを先に割ってくれるのだ。如空のペアもリターンのタイミングを掴んだらしく、ベースラインの打ち合いに持ち込んでいる。こちらは左利きのフォア対右利きのバックになるので俄然如空のペアの方が優位である。相手はサーブ&ボレーも試してきたが、リターンを上手く沈めることができてファーストボレーをミスさせることに成功した。リターンを堅実に、そして力強く打ち返し、ストローク戦では打ち粘る。それをただひたすらしただけだったが、如空ペアは相手ペアのサービスゲームを連続してブレークすることに成功した。

如空のペアのサービスゲームもいい感じでキープできた。一度如空が後ろから前に出て並行陣になったとき、相手がこちらの浮いた球を如空目掛けてフォアで叩き込んで、そのまま相手もネットにアプローチしてきた。如空はその相手の叩き込みフォアにラケットを当てるのが精一杯であった。だがそのラケットにあたったボールは偶然にロブボレーとなって立ちつくす相手並行陣の頭上を抜き去った。「絶妙!」と如空陣営の応援席から声がかかる、「まぐれです。狙っていません。」と大声で言おうかと思ったが、コートの中の相手ペアが二人揃って地面にうずくまって落ち込んでいたのでそのままにしておいた。

5-2となって第八ゲームはサーブイング・フォー・ザ・マッチである。それは如空の二度目のサービスゲームであった。「ひょとすると勝ちビビリがでるかな。」と過去の苦い経験が頭をよぎったが、杞憂に終わった。ファースが入る、ストロークが粘れる。40-15となったマッチポイントも一発で決めて6-2で如空ペアの勝利となった。

「いやあ、強い相手だったからまずいなと思っていたんだけどね。如空さんがよかったね。サーブでファーストが入るし、リラックスしていてストロークで安定しているし。クロスのラリーで負けなかったもんね。最後のゲームも綺麗に一発で決めたもんね。よかったよ。」と勝った如空たちより応援してくれていた同じサークルのメンバーの方が興奮してたたえてくれた。そして最後に言われた。「シングルスの試合でもあれくらい安定してプレーしていればもっと勝てるはずなんだけどねえ・・・・・・・」はい、おっしゃるとおりです。

予選リーグ二試合目の相手はグリグリのトップスピンペアであった。ネットにもガンガン出てくる。特にサーブで先に打つ相手のスライスサーブが切れる切れる。浅く入って更にサイドラインに曲がりながら抜けていく。デ、ユースサイドにいた如空はこのスライスサーブのリターンに苦しんだ。同時にサーブでも苦しんだ。第一試合でほとんど入っていたファーストサーブが入らなくなった。これが効いて如空はサービスゲームをキープできなかった。だが相手のもう一人のサーバーのサービスゲームもこれまたブレークに成功できた。如空のペアのサービスゲームはキープ成功。最初の4ゲームを2ブレーク2キープで2-2で折り返した。

サービス二周目も同じ、如空はキープできず、如空のペアのサービスゲームはキープできた。相手のサービスゲームもスライス使いはキープされたがもう一人はブレークできてまた2キープ2ブレークで-4-4-となった。どのゲームもデュースにもつれる長いゲームになっていた。先ほどの試合よりも今回はネットプレーの回数が多い。そして、ネットプレーでは相手のほうが一枚上手であった。如空たちのペアはスコアでついていっているが、内容は押されていた。

サービス三周目、ようやく相手のスライスサーブに対応できるようになった。長いデュースが繰りかえされる競り合いになった。「壮絶な試合になってきているな。」と観客席からの声が聞こえる。長い試合にいつの間にか観客が集まり始めていた。相手のスマッシュをネットにいた如空がラケットに当てて返球できた。これがまた偶然に絶妙なロブボレーとなり、エースになった。これまたまぐれなのだが相手陣営からも賞賛の上がるほどに見事なロブだった。だが今度のロブボレーの成功は流れを引き戻してくれなかった。最後に相手に押し切られてサービスをキープされた。4-5で相手リードである。今度は如空の相棒のサービスゲームである。またデュースが繰り返される長いゲームになった。だが最後にスマッシュを叩き込まれてブレークされた。4-6で負けた。

「ファーストですよファースト、ファーストサーブを入れるんですよ。最初の試合はファーストが入ったから勝てたのです。さっきの試合はファーストの入りが悪かった、だから負けたんですよ。サービスゲームをキープしてついていけば、強い相手でも何とかなるかもしれない。第一試合のように。そのためには自分たちのサービスゲームで最初のポイントを取ることです。デュースでもまずデュースサイドのポイントを取ることです。ポイントで先行することです。そのためにはサービスゲームの最初のサーブ、あるいはデュースのサーブでファーストサーブを入れることです。ファーストを入れて、ファーストポイントを取ればかなり楽になるんですよ、その後の展開が。そしてサービスゲームをキープし続ければ何とか勝つこともできるわけですよ。それがねえ・・・・できなかったんですよ、さっきはね・・・・」
先ほどの敗戦がよほど悔しかったのか、如空の相棒は試合後昼飯を食いながらまくしたてる。特に最後に自分のサーブを落として負けたのが悔しかったようだ。確かに相棒のファーストの入りは第二試合あまりよろしくなかった。それでも彼のサービスゲームは2キープ1ブレークである。如空は二度とも落とした。相棒は第一試合も第二試合もサーブの確率はそれほど変化がなかった。如空の方は第一試合と第二試合でサーブの確率が大きく違っていた。やはり敗因の最大のものは如空のサービスゲームであるといえよう。
「さっきの相手には失礼な言い方になりますが、第一試合の相手のほうが強かったじゃないですか。あの相手に勝って二試合目の相手に負けるって、これ初戦の相手になんか悪いですよ。」
実は相棒の言う通りなのである。予選リーグの第三試合、初戦で如空たちに敗れたフラットドライブペアは二試合目で如空たちを負かしたトップスピンペアと対戦、これを6-4で破るのである。最初こそもたついたが途中からはハードヒットで押し捲り、相手を圧倒していた。後半の自信に満ちたプレーはスコア以上の差を見せ付けていた。やはり第一試合は途中でメンタルにトラブルが起きていたようだ。自滅ってヤツだね。これで三組は予選リーグを一勝一敗で終え勝率で並んだ。得失ゲーム数差で如空たちのペアがリーグ一位となり、本選トーナメントに進んだ。久しぶりの本選進出だが確かに複雑な心境である。

本選トーナメント一回戦の相手はこれまた体格のいいペアだった。特に背の高いほうはスピンサーブが跳ねる、ストロークは強い、ネットではポーチにガンガン出てくる。そして上が強くてどんな体勢からでもスマッシュを叩き込んでくる。上手くてかつ強い人だ。もう一人は気合の入った大きな声を出す人だ。強気のプレーをしてくる。最初からパワープレーで圧倒してくる。この大会は本当に初中級の大会かよ!まだ一回戦だぞ。と心で恨み言を言いながらも、同時に「サーブをキープしてついていく。そのためにファーストポイントを取る。そのためにファーストサーブを入れる。」と頭で繰り返しながらこちらは冷静に対応した。サービスゲームの一巡目は押されながらもキープ合戦に持ち込み2-2で第四ゲームを終えた。二巡目で相手のサーブを一度ブレークしたが、すぐにブレークバックされて3-3となった。そこで相手が畳み掛けてきた。相手ペアの強い方がポーチとスマッシュの集中砲火を浴びせてきた。そこから3ゲーム連取されて3-6で一回戦敗退が決まった。

1日の通算で見ると三戦一勝二敗である。如空のサービスゲームだけ見るとサービスゲームの機会が6回あり、3回キープに成功し、3回ブレークされた。ダブルスなので如空のサーブの確率だけで分析するのは問題が多いのだが、それでもいえることは、如空の相棒が言うとおり、サービスゲームのファーストポイントを取ればキープ出来ており、ファーストポイントが取れたのはファーストサーブが入っているポイントである。如空はそんなに凄いサーブを打っているわけではない。むしろ並よりは下のレベルだろう。それでもこの「ファーストポイント・ファーストサーブ」の原則は当たっているのかもしれない。特にダブルスではそうだ。あまりにも当たり前すぎることなので意識してこなかったが、これからは少しスコアでタイにしてついていくこと。そのためにサービスゲームのキープ合戦に持ち込みこと。そのためにファーストポイントを取ること。そのためにファーストサーブを入れること。このことを意識してみよう。

修行は続く。

怪我の功名

いやあ、忙しかったぜ、この春は・・・・物件を三つも抱えてしまって、内二つが同時期に竣工するものだから、もう大変でしたよ。と言いながらもまったく休みがなかったわけではないし、その間テニスをしなかったわけではない。むしろストレス発散のためにテニスはしたほうだ。通常の仕事多忙モードの時期よりもコートにいる時間は少なくならなかった。ただパソコンに向かって記事を書く時間が取れなかった。仕事が多忙モードで余暇が少ない上に、その少ない自由時間をテニスのTV観戦とテニスの練習に費やしていたのだから、記事を書く時間がなくなるのは当然か。プロテニス中継のTV観戦記はTVを見ながら(或いはインターネットの情報をチェックしながら)書いているので何と記事を更新していけたのだが、練習日誌は練習が終わって、コートから自宅に戻って風呂に入ってビールを飲んで食事して家族と団欒して、それから書くからねえ・・・・ただでさえテニスをする時間、TV中継を見る時間の確保さえ難しくなっているこの多忙モードの時に、しわ寄せはどうしても「修行」の記事にいってしまう。

如空のテニスの練習日誌である「修行」の記事の最終UPが3月の28日だからかれこれ1ヶ月半近く「修行」の記事をUPしなかったことになる。その間、実は書きたいことが山ほどあったのだが、それはまた、おいおい書き連ねていくとして・・・・・

二ヶ月前の捻挫の具合はそれほど悪くなく、サポーターをしていればほとんど問題なく走れる。シングルスの試合にも一度出てきた。1-6、2-6で予選敗退、コンソレも初戦敗退で終わったが、自滅モードではなかったので、まだましな負け方だったほうだと思う。それよりも右の足首だ。痛みはまったくないのだが、なんと言うか走っている時に右足首にどうしても不安を感じてしまう。これがトラウマというか精神的な枷となって、思いっきり走れないのだね。4月上旬、仕事の帰り道、地下鉄に乗ろうと階段を下りている時に右足首の同じところまた「ぐっき!」とやってしまった。一瞬、立っていられず蹲るほどに痛かった。周りの人々が心配して騒ぎ出したので、「何でもありませんから」と足を引きずりながら列車に乗った。降りるときには普通に歩けるほどに回復していたので問題ないのだが、それ以来、頭から「もう一度やるのではないか」という恐怖心が完全に抜けない。医者からは「サポーターは順次外していってください。づっと装着していると、サポーターなしで走れなくなりますよ。一生サポーターをつけ続けることになります。」といわれている。靭帯断裂にいたるほどの大怪我ではないので、早く回復させることの方が大事らしい。しかし、この「また捻挫をやるのではないか、そして今度は軽症ではすまないのではないか」という恐怖心は簡単にはぬぐえない。基本的に腫れもなく痛みもないのでほぼ完治している状態なのだが、少なくてもコートに出ている間は当分サポーターをつけていようと思う。

「走ることに問題はないのだが、走ることに恐怖心を覚える。」という状態だったので、自然と走る量を減らす方向にテニスは変わっていく。

まず、バックハンドは両手打ちフラットドライブを極力減らして、片手打ちスライスを多用するようになった。リーチが短く打点が狭い両手打ちバックハンドは、その分多く動かなければならない。その点、リーチが長く打点も幅広いスライスはフットワークをサボってもとりあえず返球できるので、つなぎのショットを打ち続けるにはちょうどよい。またスライスを多用しているとよくわかるのだが、スライスのボールをハードヒットするのは難しいらしく、相手もつなぎのショットを使って打ち返してくれる。威力のある球を打つと、それは球威を利用して相手にも楽に威力のある球を打ち返させることになる。深いスライスを返球するとそれがないので、ラリーもゆったりと進む。だからラリーがミスなく続く。スライスの守備的な効果を改めて実感した。

その効果の実感に伴って、リターンの時にもスライスリターンをするようにしてみた。相手のファーストサーブのときは最初からスライスリターンをすると決め手レシーブに入るようにした。バックだけでなくフォアでもスライスリターンをするようにした。するとレシーブミスの確率が驚くほど減った。さらにこちらの弱いリターンを強打で叩き込まれる所謂「三球攻撃」を受けることが少なくなった。スライスリターンの返球は強打が難しいようだ。足の動きが悪いにもかかわらず、ディフェンス力が上がったのである。
サーブのコースを左右・ボディにと散らされて、回転系の大きな変化、フラットの速く伸びてくるボール、そしてそれらの中間にある微妙にタイミングを合わせにくい様々なサーブ・・・・これら予測困難なサーブに対してとにかくボールをラケットに当てることだけ考えてシンプルに行動することで、どんな状態でも何とかサーブを返球することが出来る。そしてリターンの確率が上がると精神的にも自信と余裕を持って対応できるので落ち着いてリターンゲームに臨める。これがテニスの安定に大きく貢献するのである。

さてバックハンドを片手打ちスライスでばかり打っていると、片手のままフラットドライブを打ちたくなってくる。昔からの如空の悪い癖である。フラットドライブを両手で打ったり片手で打ったりしていると「打点が狂う。手のタッチの感覚が不安定になる。腰のキレがどちらとも悪くなる。だからスライス以外は片手か両手かはっきりと決めて打て。併用するな。」とコーチに怒られる。怒られないまでもいい顔をされないので、しないことにしている。が、どうしても打ちたくなって、普段行かないクラスに振り替えに行った時にスライスだけでなくフラットも片手で打てみた。これがいい感じで飛ぶのだわ。また楽だわ、バックサイドで足を動かす量が確実に減る。それに強打したいときは回り込みのフォアを使えばいいのだし、回り込めないようなときはスライスで繋ぐべき場面とすればよいのだ。いい気分でバックハンドを片手で打ってていたのだが、いい気になってレギューラークラスのシングルスの練習でも試してみたがこちらは上手くいかなかった。ボールの深さと勢いがあるボールに対して片手のフラットで対抗すると面がまける。打点が食い込まれるのだね。ゆっくりとしたラリーでないと如空は片手打ちを使えない。ゆっくりしたラリーをするならフラットでなくスライスを打っていたほうが相手の反撃を防げるのでいい。というわけでさらに片手打ちスライスに傾倒していくことになる。

ただスライスを主に時々フラットでも片手で打ってみると、意外な効果がでる。フォアの打点がバックにつられて前になることが一つ。もう一つはタッチがよくなることだ。ストロークのフラットドライブやスピンを両手打ちで打っていて、スライスとボレーを片手で打っているとどうしてもボレーやスライスのタッチが上手くならない。如空は不器用な上に週一の練習だけでやっているのでなおさらだ。バックハンドストロークを片手打ちにしているとバックサイドのグリップのタッチがとてもよくなく。というか、ストロークを両手で打ているときのバックボレーや片手スライスのタッチはとても適切にはグリップを握れいていなかった。タッチがよくなるとは具体的にストリングが撓んでボールの胆力とストリングの弾力が手に感じられ、その飛距離をグリップの握り具合で調整できるような状態になることだ。今まではそれを感じることが出来ている日はほとんどなく、たまに感じられるくらいだった。それが、片手だけでバックを打っているとそれがストロークの時にも感じられるようになる。それはフォアで感じてる感覚と同じなので「これだ」というのがよくわかる。そしてバックサイドのタッチがよくなればフォアサイドのタッチも当然向上するのである。

タッチがよくなると、さらにサーブが強くなった。先日も女性ばかりの集団に混じってダブルスの練習会に参加させてもらった時に、「あまり強いサーブは打たないでくださいね。形式の練習をしていますから。」といわれ、言われたとおり入れるだけのフラット系サーブを入れに行った。スイングをとてもゆったりとして打ったのだ。ただボールを飛ばすために少しだけ、打つ時にグリップを握った。そしたら、予想以上に速いサーブが深いところに入ってエースを量産してしまった。ボールのスピードを落とそうと思って回転系サーブに切り替えたがこれも速い。グリップを握らないままにして振ることでようやくスピードを抑えたボールが打てるようになったが、今度はコントロールに苦労してフォールトを量産することになった。

如空は平均的な日本人男性に比べると背も高く体格のいいほうなので、歴代のコーチたちに「如空さんはすごいサーブが打てるはずだ。速いサーブが打てるはずだ。強いサーブが打てるはずだ」といわれ続けた。そして色々教えてもらった。コントロールはよくなった。だがスピードはいっこうに上がらず、歴代のコーチたちを失望させ続けてきた。ところがこのところ自分でも驚くくらい速いサーブがまぐれで打てるようになった。「まぐれ」であるのは、本人はスピードを落としてコントロール重視で打っている時にその速いサーブが出現するからだ。「まぐれ」の原因はおそらくタッチである。ボレーやスライスだけでなくオーバーヘッドのタッチもよくなったので、打つ瞬間にボールを上手くつぶせているのだ。そういえばサーブだけでなく最近はスマッシュも調子がいい。厚い当たりでスマッシュを打てている。もちろん、フットワークが悪いので、まず打点に入れたときはという限定の調子のよさであるが。

そんなこんなで、怪我のおかげでテニスそのものが安定した。皮肉にも足の動きが悪くなったにも関わらず、いやむしろそのおかげでテニスが安定し始めたのである。これを怪我の功名というのだろう。ただ安定してもそれだけでは試合は勝てない。守備力に比例して攻める力も身につけないと。

修行は続く。

捻挫

やってしまった。先日のシングルスの大会の初戦、最初のゲーム、30-30の時だったと思う。相手がフォアをクロスに打った。センターにいた如空は右に向いてボールを追おうとした。だが右足が前に出ず、そのまま体重が右足に乗って、更に右に重心が出て行こうとした。右足首が内側に折れて、靴底か完全に横に向き、くるぶしに体重が乗った。「グリグリグッキ」と不気味な音が右足首から聞こえたような気がした。足首靭帯損傷、捻挫だ。激痛が走る。右足をかばうために反射的にラケットを放り投げて転んだ。背中とラケットを捨てた手で受け身をして両足を中に浮かす。少しの間立てなかった。

テニスを始めて二三年経ったころ、一度ひどい捻挫をした。ダブルスのレッスンで下がりながらのハイボレーの練習だった。ジャンプしてバックハンドのハイボレーを打って、着地しようとして右の足の裏でなく、右の足首の横、くるぶしの下ので地面に着地してしまったのだ。その日はその後動けなかった。これでもしかしたら一生テニスができなくなるかもしれないと、悲観的な如空はとてもブルーになったことをよく覚えている。翌日、痛みが引かないので、整形外科に行った。散々待たされたが、診察はとても短かった。レントゲンも念のために撮ったが骨に異常はなかった。「靭帯が伸びただけで断裂まではしていないようですね。少し腫れていますが、靭帯断裂ならもっと腫れて動けませんから。ここまで歩いて来たのでしょう。大丈夫ですよ。」と軽いノリで医者は言う。そして「明日からでもテニスしたいですか。それならサポーターを紹介しますよ。保険も使えますから、安く手に入ります。サポーターをつけてくれたら今からでもテニスしていただいて大丈夫ですよ。」という。確かに腫れはあまりないようなきがするが、こんなに痛むのに、そんなに軽症だったのか。半信半疑のまま、別室に移され、医薬品メーカーの人から説明を受けて右足首のサポーターを購入した。サポーターをつけると確かに痛みはほとんど感じることなく、歩くだけでなく、走ることもできた。

あの数年前の捻挫に比べたら今回のはまだ軽症である。歩くことにまったく支障はない。だが痛みはある。走ることが不安だ。痛み以上に、もう一度同じ箇所を捻るのではないかという恐怖心がある。無理をしてやることはできたと思うが、大事をとって棄権した。

この前の全豪オープンでドキッチが足首を同じように捻挫しながらも試合を続行し、見事に勝利している。確か2004年のマスターズシリーズパリ大会の準決勝でもサフィンが足を同じように挫いたが、その後何事もなかったようにプレーして勝利していた。だが2006年の全豪SFではクライシュテルスが足首を捻って転倒してそのまま棄権した。足首が内側に折れた瞬間に体重がかかることから逃げられるかどうかが、重症と軽症の分かれ目になるのだろうか。

帰宅した後、前回の足首の捻挫のときに購入したサポーターを押入れから探し出して装着してみた。これですぐにでも走れそうだ。腫れもない。どうやら軽症ですんようだ。しかし、当分の間、サポーターは装着してテニスをしたほうがよさそうだ。早く回復するためにも。

修行は続く。

スライスがキックしてしまう

やった、今年もオリジナルイヤースプーンを当てたぞ。2005年から毎年、カレーハウスCoCo壱番屋で期間限定メニュー「グランド・マザー・カレー」を食べてクジ当るとオリジナルイヤースプーンがもらえるキャンペーン、今年も当てたぞ、5年連続だ。5種類のオリジナルイヤースプーンを如空はコレクションすることになる。「無駄にスプーンを増やさないでね。」と嫁さんは歓迎してくれないが、なぜか如空は毎年、この企画には熱心になってしまう。凝り性は性分かね。確定申告ももう終わっている。これで今年も気分よく春を迎えることができそうだ。

先週のシングルスの練習はサーブが主体だった。テーマはスライスサーブである。
右利きの人はデュースサイドからサイドラインに抜けていくコースとセンターラインの外側から内側に切れ込んでくるコースの2コースを打ち分ける。アドバンテージサイドからはセンターライン近くをとらえて、外側に逃げていくコースとサイドラインの外側から相手のボディに食い込んでくるコースの2コースである。左利きの人はこの4コースが左右逆転する。スライスサーブを何度も打ってこの4コースのコントロールの精度を上げる練習をする。
後述の3コースはよいのだが、右利きの場合のデュースサイドから左サイドに抜けるコースが甘い。
「右利き対右利きの場面で相手のフォアハンドに甘く入ってしまっているじゃないですか。これではチャンスボールを入れているようなものですよ。コーナーに入れるのではありません、サイドラインに抜けるように入れるのです。そのためには深く打つのではなく、浅く入れるのですよ。」
とコーチは自分でデモンストレーションをしながら説明する。
「ストロークでもアングルショットがあるじゃないですか、ショートクロスです。ボレーでもアングル・ボレーがあるじゃないですか。同じ様にサーブでもアングル・サーブがあるわけです。それがサイドラインに抜けるスライス・サーブですね。アングルショットだから深さは必要ないのです。むしろ浅くて短いほうがよいのです。前に打つのではなく、横に打つのです。右利きなら自分の右側から左側にボールが飛んでいくイメージです。曲がることより横に飛ぶことが大事です。スイングは前に向けて振っても、面は横を向いている状態で打つのです。ボールは面を向いた方向に飛びます。スイングの方向ではありません。だからこのコースを狙うときは横回転をいかにかけるかを意識するより、ヒットの面を横に向けることを意識したほうがよいです。」
「同じトスの位置であらゆる球種を打つことがサーブの理想ですが、それはコースの打ち分けが出来てからの話です。ワイドにアングルのスライスサーブが上手く打てない人はまず始めに前ではなく、右利きなら右側にトスを上げて、右から左へ飛ばすことを意識してみてください。トスでコースがわかっても、それでも対応しづらいほどに切れるサーブを打てばよいのです。ワイドへのスライスサーブは回転よりコースですよ、意識するのは。」
といわれて右にトスを上げて打ってみるが上手くいかない。
それどころか如空のスライスサーブは、他の3コースでもボールがバウンド後曲がっている方向(左)ではなく逆方法(右)に跳ねている。
「如空さん、キックしているよ。それはスライスサーブじゃない。キック・サーブだよ、スピンを打ってしまっているよ。」
と仲間が笑いながら指摘する。
確かにこの軌跡はキックサーブだわ。ボールの頭を左から右に削り上げるように打っているのだけど、ボールが渦を巻いて一度右に飛んでから左に入っていくのだけど、バウンドすると、そのまま左に逃げていくはずか、右に弾んでいく。
「あのコースであのバウンドだと、相手の打ちやすいところに行きますよ。逆に右からセンター、左からはワイドに狙うべきボールですね。」
とコーチも笑いながらあきれている。
横回転をかけようとボールの後ろを叩くとボールがラインオーバーする。ボールの横をとらえるとボールが飛ばずにネットする。今まで回転系サーブと一括りにして打っていたので、スピンとスライスを意識して打ち分けていなかったのだね。少し横回転の練習をしていこう。

修行は続く。

二月の連戦

忙しいぞ。仕事を3件も掛け持ちしている。事務所ビルの工事監理、商業施設の改修設計、そしてホテルの基本設計、どれも手間隙かかる仕事ばかりじゃあ。平日はとても忙しい。おかげでブログを更新している時間がないじゃないか。困ったものだ。今のところ日曜日は休めている。おかげで二月にエントリーしていた4つの大会には全て出場できた。練習不足だがそれなりに楽しめた。だが戦績はよくない。

最初の大会はシングルス大会、予選初戦の相手はぐりぐりのトップスピン打法の相手である。中ロブがライン際深くに入ってくる。如空はコートの外に完全に押し出されていた。0-5まで押し捲られた。そこでようやくトップスピンを打ち返せるようになった。あの手のボールはバウンドにつられて腰が高くなってしまい失敗する。腰を落として、ライジングでも、ボールを落としてでも、自分の打ちやすい位置で打つことを心がけることだ。特にライジングで打つときは踏み込んで踏み込んだ足のさらに前で打つといい。二ゲーム取り返して2-5にしたが、そこまで、最後にデュース合戦の末にサーブをキープされて2-6で負けた。こちらが少々慣れたくらいでは崩れてくれない。

二試合目の相手はフラット・ドライブな人。ハードヒットがためてからドカンと来る。配球など考えている暇もない。無我夢中で打ち返す。最初はキープ合戦、後半はブレーク合戦で最後に1ブレーク差の6-3で負ける。二連敗で予選敗退である。コートを出るとき一戦目の相手であるトップスピン打法さんにスコアを聞かれたので「3-6」と答えると、「3ゲームも取れたの?あの人から?すごいね。俺これからもっとやられると思うよ。」といって予選の最終戦をそのフラット・ドライブ打法さんとやるために小走りにコートに入っていた。後で知ったのだがこのフラット・ドライブ打法さんはこの大会の前回優勝者でこの日も本戦で決勝戦まで勝ちあがる。多分、如空とやった時にはこの日の初戦でまだエンジンがかかっていなかったのだろう。トップスピン打法さんはエンジンのかかったフラット・ドライブ打法さんに一方的にやられていた。

ただね、勝敗は別として、如空の好みとしては、回転系のボールを繋いでくる相手よりも、強くてもフラットなボールを打ち込んできてくれる人の方が相手としてはやりやすい。逆に言えば回転に弱いのだな。あと緩急にも。この大会は4ゲーム先取のコンソレーションがあったのだが、コンソレ一試合目の相手がまさにシコラーさんで緩いボールを入れて来るのだが、それをうまく打ち返せなくて長引いた。4-3で辛勝するも、悩ましい終わり方だった。二戦目は珍しくサーブ&ボレーヤー、リターンからでもネットにダッシュしてくる。如空としてはやりやすい。パスで徹底抗戦である。3-4で負けたが面白かった。だが楽しんでばかりはいられない。終わったあと、「もう少しロブも混ぜればパスがもっと抜けると思うよ。」と観戦していた知人にいわれた。そういえばネットプレーヤー相手に7ゲームもしてロブを一度も使わなかったな。だいたい練習の時にパスばかり打ってロブを打っていないもんな。試合では打てない。少しロブも練習しよう。

次のシングルス大会は少しグレードが高かった。6ゲーム先取ノーアドバンテージ式、コンソレありではなく、5オールTBのデュースあり、コンソレなしの大会である。同じ「初級中級」と名がついていても前者より後者の方が、強い選手が集まる。この大会もなぜか前大会と同じく2-6,3-6というスコアで予選敗退である。如空さんエンジンかかるの遅いわ、最初の試合でミスしすぎである。二試合目の1ブレーク差ももっとアンフォーストエラーを減らさないと、大事なところで相手の方が集中力が勝っているような気がする。

シングルスの大会を二回続けて出たからか、サーブをかなり試合中打ち込んだのでサーブそのもの調子がとてもよかった。次の男子ダブルスの大会でもサーブが好調であった。率先してトスで勝てばサーブを取り、コートサイドに関わらず如空からサーブを打たしてもらった。ダブルフォールトの不安なんぞこれっぽっちも感じずにサーブを打てた。ダブルスだったのでデュースサイドからもアドサイドからも徹底的にセンターへサーブを打ち込んだ。ペアがポーチを決めてくれて如空のサービスゲームは程よくキープできた。だがペアのサービスゲームをキープできず、相手のサービスゲームをブレークできず、結局二連敗で予選敗退した。今度も6-2、6-3だった。ペアのサービスゲームがキープできないのは如空のせいだろう。ポーチを含むネットプレーで攻めることが出来なかった。ストロークとサーブの調子がよくてもネットで仕事できなければダブルスは勝てないのだね。

最後に出場したのは混合ダブルス大会である。先日の男ダブとは違いペースが遅い。サーブもストロークもボレーもこう何というかぽわんぽわんしている。しかし、コントロールは抜群なので長いラリーが続く。緩い球は苦手じゃ。こちらも回転系のボールで対抗しようとするが、試合の序盤でミスをしすぎた。今度は0-6、1-6で負けた。相手ペースにうまくはまってしまった。

緩いボールの処理を確実にすること、サービス・ゲームのキープを確実にすること。二月の間、試合が終わるごとにその二点を考えた。考えたところで答えが見つかったわけではないのだが。

修行は続く。

ハーフボレーの余裕のある時の使い方

突然忙しくなった。別件の仕事を掛け持ちすることになる。この大不況の最中に仕事が二つもあるってある意味幸せなことかもしれないが、忙しさは突然やってくるから厄介だ。いきなり嵐に巻き込まれた小船のように翻弄される。遅くまで仕事するので、午前様で帰宅する。寝不足だ。動きが鈍くなる。コートの上でも鈍くなる。

先週のシングルスの練習は珍しくローボレーとハーフボレーだった。
アプローチの後、沈められたパスをローボレーで返球する練習をある程度してから、今度はアプローチ後、わざとハーフボレーしてネットにつく練習をする。
「ローボレー出来ないパスを緊急避難的にハーフボレーするのではなく、相手のタイミングをずらすためにわざと引き付けてハーフボレーを打つ手もあるわけですよ。」
とコーチは言う。
「ローボレーをするために前に踏み込む・・・・というところで止まるわけです。そしてバウンド直後のボールをハーフボレーして返球する。時間的余裕が少し出来ますよね。相手の出方を見ることが出来ます。相手の位置を確認しておいて、引き付けて、相手の動きを止めて、オープンコートにボールをハーフボレーで運ぶのです。相手が前に出ようとしたら深く打つ、相手が後ろに下がっていれば浅く打つ。右よりなら左へ、左よりなら右へ打つのです。余裕のないローボレーでは突けない相手の逆を、わざと引き付けて打つハーフボレーなら打てます。この余裕を感じて見てくださいね。」

余裕を感じて見ました。ボールがふけます(笑い)。打つだけなら問題ないが、コントロールが問題だ。左右はともかく深さをハーフボレーでコントロールするのは難しい。特に浅い球を打とうとするとボールがふける。寝不足で体の動きが悪い上に、この下半身を低い姿勢で打つハーフボレーのコントロールは難しい。ハーフボレーって滅多に使わないから練習量が圧倒的に不足するわ。普段のアプローチでもっと使っておかないとね。

修行は続く。

クロスをダウンザラインに打ち返す

今年の冬は暖かいなあ・・・・どころではない。暑いぞ。コートでテニスしていると汗まみれになる。みんなジャージを脱ぎ、Tシャツに短パンでテニスをし始めた。如空も上着を脱いで、下も・・・・・しまった、短パンを履いて来る事を忘れた。足元が暑いぞ。気持ち悪いぞー。それでもテニスは続けるぞー。

先週のシングルスの練習はまたN字攻撃の反復練習だった。クロスに短く入ってきたボールをストレートに打つ。ストレートに打った後クロスに返球されたボールをライジングでさらにストレートに打ち返す。ストレートに打った後、センターに帰ってきたボールを回り込みのフォアで逆クロスに打つ。ストレートに打ってアプローチした後、クロスへのパスを逆サイドにボレーで打ち返す。そんなN字攻撃のパターンを延々と繰り返した。

「ストレートがダウンザラインになっていませんよ。ダウンザラインはサイドラインに平行なショットのことです。」
とコーチはNHKの解説者のようなことを言う。
「サイドスピンがかかっていると、ラインの外側に落ちてアウトになります。角度をつけられずにラインと平行に飛ばずにセンターに近づくように打つと、相手に近づくように飛びますから、甘くセンターよりに入り逆襲されます。ストレートを打つときはダウンザライン、ラインに平行に打たないといけません。バックハンドのダウンザラインは難しいと思いますが、フォアはきちんとダウンザラインを打てていなければいけません。そうでないとN字攻撃の最初の一打目が成り立たなくなります。」
「ストレートとクロスの打ち分けには打点を前にしてクロス、ひきつけてストレートというのが一般的ですね。でもこれはストレートに入ってきたボールをクロスとストレートに打つにはよいのですが、コーナー目掛けてクロスにはいてきたボールを打ち分けるには難しいですね。クロスは同じ方向に打ち返すだけでですから、難しいのはストレートですね。クロスに入ってきたボールを引き付けストレートに打とうとすると、どうしてもサイドスピンがかかりやすくなりますし、角度もつけにくくなるためセンターに甘く返ってしまい易くなります。」
「クロスに入ってきたボールをフォアハンドできれいにダウンザラインに打ち返すには、打点を前に取ることです。その上でヘッドだけを遅らせてスイングするのです。」
とデモンストレーションを交えて説明が始まる。
「具体的に右利きを想定して説明するとですね。ストレートを打とうとしてボールを引き付けると、右肩が前に出ず、横向きのまま、手だけでラケットをストレートに押し出してしまうのです。肩が回っていないのにラケットを出すからヘッドがグリップより前に出てしまうのです。これが角度が付かずにセンターに甘く行く原因です。そして横向きのまま押し出すとラケットが横ぶりになる。これがサイドスピンのかかる原因です。」
「打点を前にするというのは腰も肩も回してしまうことです。人によっては「体が開いている」と言うでしょうがそれでいいのです。そして右腕をグリップごと前に押し出してください。ただし、ヘッドだけは遅れて出すのです。手首に角度をつけてグリップから打ちにいくのです。ボールをラケット面の後ろから見て捕らえるような感じなると思います。グリップがボールを追い越してネットの側に出て、遅れて出たラケット面がボールを捕らえている。そんな感じです。そうすれば肩でボールをストレートに押し出せます。足腰をうまく使えば下半身でボールをストレートに押し出せます。下半身をうまく使うとは、オープンスタンスのままで右腰をネット方向に押し出す。あるいはスクエアスタンスでストレート方向でなくクロス方向に踏み出して、右腰はストレートに押し出すのです。その押し出しで振り切れば、ボールはドライブが縦にかかったまま真っ直ぐ飛びます。ラインに平行に、クロスから入ってきた角度に対して大きく角度を付けながら、しかし厚い当たりのドライブが打てるです。これを短くなったクロスに対して早いタイミングで打つとそれだけで相手には取りにくい、威力のある攻撃的ショットになるのです。」

これは効くわ。フォアのダウンザラインに皆ナイスショットを連発するようになってきた。ダウンザラインに厚い当たりのボールを正確に打てるようになるとテニスが楽しいね。バックハンドも同じ原理を利用してストレートが打ちやすくなった。打点を前にすることが大事だが、それ以上に大事なのは前にしてもグリップ先行でヘッドを遅らせて打つことのような気がするな。コースの打ち分けが苦手だったが、よき解決方法のヒントをもらったような気がする。安定のために更なる研究に励もう。

修行は続く。

N字攻撃

ORANGE RANGEの「おしゃれ番長」が去年から頭にこびりついて離れないことは、前にも書いた。実はもう一曲、去年から頭から離れず、頭の中で何度も何度も繰り返し再生されて頭から離れない曲がある。矢島美容室の「ニホンノミカタ」である。始めはまたとんねるずがしょーもない曲をだしてからに・・・・と思っていたが、結構いいメロディなんだな、これが。何度でも聞きたくなる。この年末年始の忘年会・新年会でもかなり歌われたらしいからTVを見ない人も結構聴いたかもしれない。歌詞もふざけているように聞こえてよく読むと実は奥深い。三人とも歌が上手いし。それよりなにより、聴いていて元気になるわこの曲。いつの間にかはまってしまった。車の中で、今日もこの曲をiPodからカーナビに飛ばして、ガンガン鳴らしてコートに向う。

最近のシングルスの練習は、ストロークでのコースの打ち分けと配球の練習が多い。コースと言ってもストレートとクロス、そしてフォアの逆クロスしかないわけだが、それをいつ打つかによって「攻め」と「守り」が分かれるという。今日は「攻め」の部分の練習である。
「俗にN字攻撃といわれるパターンです。」
とコーチは練習前に軽く解説を入れる。
「深くクロスに打ち返すのが基本です。その上で相手ボールが短くなる、あるいは勢いのないボールが来る、となったときにストレートに威力のあるボールを打ちます。威力がなければいけません。オープンコートに走りこんでくるとき、クロスからの配球は相手から逃げていくボールですから追いつきにくいのです。逆にストレートはクロスよりも追いつきやすいボールになるということです。だからストレートに打つボールには追いつきやすさを補うために威力が必要なのです。ショットのスピードを上げるか、ライジングでタイミングを早くするかです。」
「その上で、ストレートを打たれたら、とにかく追いついてクロスに切り返すことです。オープンコートに相手から逃げ行くボールであるクロスを打てるわけですからチャンスなんです。それを何度もしていると、相手が予測してクロスに走ってくれますから、逆を突いて、ストレートをストレートで切り替えしてエースも取れるわけです。でもそれは応用、基本はあくまでストレートはすかさずクロスに切り返すことです。それが先週まで練習してきたことですね。」
と長い前置きをした上でようやくコーチは本題に入った。
「その先の戦術の話です。この配球の基本は相手とっても同じことですね。だから相手が基本通りに動けば、こちらがストレートを打てば相手はクロスに切り返してくる可能性が高いということです。つまり相手の配球が予測しやすいということです。ならば予測して動くにこしたことはないのです。相手がワイドからクロスに打ち返してくることがわかっていれば、何も自分からオープンコートである反対側のコーナーに、逃げていくボールを追ってベースラインの後ろに走っていって、それをクロスに打ち返すという「守り」をする必要はないですね。コートの中に入って、クロスをライジングでストレートに切り返す、「攻める」のです。」
「前に出られるようなら出てもかまいません。ワイドからクロスに打たれる球はネット上ではセンターを通りますからそれをダブルスのポーチのように逆クロスにボレーで流すのです。」
「ストレートを打つ、相手がワイドからクロスを打つ、その逃げていくボールを追わずに前に出てストレート、あるいは逆クロスにすばやく切り返してウィナーを狙う、という攻撃パターンです。コートの上から見るとストレート・クロス・ストレートとボールの軌跡がアルファベットの大文字の「N」の字に似ているのでN字攻撃と呼ばれます。」
というわけでN字攻撃のパターン練習が始まった。

まずはストレートのフォアバック四連打、コーチの球出しがワイドからのクロスを想定して打たれているので、角度が厳しい。「下がっていては攻撃になりませんよ、コートに入ってライジングで切り返さないといけません。威力よりタイミングの早さが大事です。」
次はサイドからストレートにアプローチ、ワイドからのクロスの返球をセンターでボレーである。「ボレーはクロスの方が打ちやすいですね。でもそこには相手が待っていますよ。苦しくても飛びついてでも、反対側のコートに入れないといけませんよ。」
最後はリターンからの展開、コーチがワイドにサーブを打つ。それをダウンザラインにリターンする。ボールが甘くセンターに返る。それを回り込みほフォアで反対サイドに打つ。「リターンはブロックでも構いませんから、次のフォアの回り込みのフットワークを早くしてください。できれば肩を入れて構えて、相手の動きを止めてからオープンコートに打つのが理想です。」と言われても如空たちの足では回りこむのに精一杯で、肩を入れて構えて止めるところまで行かないわ。

攻撃は連続攻撃、二の矢、三の矢をついで放たなければいけない、そのためにはその連続攻撃のパターンを体で身につけなければいけない。練習練習。

修行は続く。

ストローク戦の基本配球

オシャレバンチョー、カナリつぼ、はにかみポリスマン、あこがれバイナポ・・・・・

ああ、ORANGE RANGEの「おしゃれ番長 feat.ソイソース」が頭から離れない。去年の年末から何度もの何度も頭の中で鳴り響く。あのポッキーのCMが目に焼きついて離れない。夢にまで出てくる。取り付かれてしまったみたいだ。どうしよう。せめてテニスをしている間は忘れていたいが・・・・・・あ、また頭の中で鳴り始めた。

最近のシングルスの練習はストロークのチェンジオブコースを重点的にしている。たとえばフォアバック交互に4球づつ計8連打の左右振り回しも、コースを指定してくる。最初はデュースコートに二球、次にアドコートに二球である。つまりフォアのクロスから始まれば次はバックのストレート、次にフォアのストレート、次にバックのクロス、これで4連打、それをもう一回りして計8連打である。左右に走らされて打つこの「振り回し」と呼ばれる練習は走ってボールに追いつくだけでもしんどいのに、そこにコースの指定が来るともうパニックである。
「この8連打が確実にできるようになればストロークは確実に向上します。コントロールも威力も向上します。この確実性が試合での強みになるのです。守りにおいても攻めにおいてもね。」
と走りまわされてへたばっている如空たちにコーチは涼しい顔してそんなことを言う。

この日は更にストロークのチェンジオブコースの練習を集中的にした。

今度はストロークでラリーである。一方はクロスとストレートを交互に打つ。相手はクロスのみを打つ。それを繰り返すとどうなるか。フォアのクロスから始まるとそれがクロスに返る。それをフォアでストレートに打つ。それがクロスに切り返される。それをバックでクロスに打ち返す。またクロスで返ってくる、これをバックのストレートで打つ。それがまたフォアのクロスに切り返され・・・・と延々と続く。
「ストレートをクロスに切り返すのは比較的簡単ですね。打点を前に取ればよいだけですから。問題はクロスに入ってきたボールをストレートに打つ場合です。振り遅れを強引にストレートにもっていくとサイドスピンがかかってボールがサイドに切れてしまいます。しかしひきつけないとストレートに行かない、打点を前に取るとクロスに甘く行ってしまう。難しいですね。」
「体の向きをクロスに向けたりストレートに向けたりして打ち分けようとすると上手くいきません。ネットに向ってボールの後ろを叩けばクロスに行く、ネットに向ってボールの内側を叩けばストレートに行く。この原則をよく覚えてください。その上で、クロスに打つときは後ろから前に、ストレートに打つときはイントゥザアウト、内側から外側に打つのです。体はネットに向けたままですよ。そうすればコースを打ち分けられます。」
「やってみると、クロスを打ち続ける方が楽でしょう。クロスをストレートに切り返すより、ストレートをクロスに切り返すほうが、技術的に簡単だし、らっランニングショットになってもまずライジングのつもりで打てば入ります。」
ストレートをクロスに返す方が楽、ということを頭に入れれば、安易にストレートに打ってはいけないということが分かりますね。威力のあるショットでないと追いつかれて自分のオープンコートに打ち返される。しかもスロスだから追っていくほうから外に逃げていくクロスになります。これを反対側から追いかけるのは苦しいですね。だからストレートは勝負の球なのです。リスクを背負って打つ攻撃的ショットなのです。コントロールショットしか打てないのであれば、そのときはストレートに打つべきではありません。クロスに返球するべきです。」
わかっちゃいるけど打ち込めない。力のないストレートでピンチを招きながら、練習は続く。走りまわされて、へとへとである。

練習後、コーチは言う。
「これはシングルスももっとも基本的な配球です。クロスに打ち返すのが基本、その上で相手のクロスが甘いときはストレートに強打です。逆に相手にストレートを先に打たれても慌ててはいけません。走りこんでクロスに返球です。特に相手のストレートに威力がないときは逆にチャンスです。クロスにすばやく切り返して相手をコートの外から、逆の外に走らせましょう。シングルスのストローク戦で配球に迷ったときはとりあえずこの配球を繰り返すことです。そうすればストローク力で上のほうが打ち勝ちます。打ち負けたほうが戦術を変えるのです。勝っている方は同じ戦術を使い続けるのです。勝っている限りは勝っている方は戦術を変えてはいけません。戦術を変えるのは負けている側の選択肢です。」

この単純な配球を繰り返し、ストローク力を比較する。その上で、ストローク力で劣る方が戦術を変えていく。これがストローク戦の基本だという。しかし、如空はその基本の展開にまで試合でいたっていない。まずはこの配球を展開できるようになることだ。

修行は続く。

打ち粘るための意識から

今年最初のシングルスの大会はこの冬一番の寒波が訪れた寒い日だった。手が悴んでグリップがまともに握れない。特にサーブのヒット時グリップがしっかり握れない。アップの時間も十分にとれずに試合に突入した。

予選第一試合の相手は若い学生さん、子供は風の子といわんばかりに元気に打ちまくる。少しふてくされているような表情だが、テニスは極めてきれいだ。ショットの威力があるだけでなくコントロールもいい。特にサーブとフォアが強い。一ゲームを取るのがやっとだった。1-6で負けた。

このところシングルスでは年上の選手と当たることはめったにない。予選第二試合の相手は過去に一度対戦したことのある30代の選手だった。こちらはサーブがやや不安定、ストロークはあまり威力がない。背が高く、ネットによく出てくるが、サーブ&ボレーはしてこない。平均的なオールラウンダーだ。如空のサーブがようやく入りだした。フォアもバックも程よく安定してきた。試合は競り合いになった。最初相手のサービスゲームを如空はブレークに成功し、その後一ゲームづつキープしあって2-1とした。今度はブレークしあって3-2となる。次の第六・第七ゲームを相手に連取された。3-4とされて、ブレークしあい、4-5となった。最後に如空のサービスゲームがまたもブレークされ4-6で負けた。サーブの調子がよかったにも関わらず、如空は5つあった自分のサービスゲームの内、一つしかキープできず、4つブレークされた。相手は6回あったサービスゲームの内、半分の3回キープしたことになる。お互いにリターンがよかったこともあり、ブレーク合戦が展開されたのだ。また勝負どころでは相手のネット対如空のパスを軸に展開された。序盤、如空のパスの方が優位だった。しかし終盤は相手のネットプレーの方がよくなり、きれいに決められてしまった。

二連敗で予選敗退でだった。

先月の大会や先日の初打ちダブルス大会でよかったのは自分のストロークに粘りがあったところだ。アンフォーストエラーの不安をほとんど持たずにラリーができた。だがこの日はそれほど粘りがなかった。ショットの技術や威力がどうと言うわけでなく、心構えが少し違っていたように思う。粘れているときは「ボールがネットを越えるように、そして相手コートの中に入るように」と意識して打ち続け、そのためにスイングを振り切ることに専念した。その上で、狙えるならばコースを狙い、相手を動かし、オープンコートを作って、そこにボールを入れる。その過程で相手にミスさせる。という展開であったように思う。これがストローク戦で「粘れた」と思う部分だった。
この日は先に「あそこに打つ」「威力のある球を打つ」「ポイントをとる」ということが意識の大部分を占めてしまい、「ネットを越えて相手コートにボールを入れる」という意識がやや希薄であったようだ。これがラリーで「粘れていない」と試合後感じた原因ではないだろうか。

これを試合中に気づかなければいけない。そしてラリーで粘れるようにならなければいけない。ストロークで「打ち粘れる」状態になれば、精神的に落ち着き、かつ気合が入る。メンタルがいい意味で安定し、かつ集中していられるのだ。そうなって、初めて余裕のある場面を作り出して、そこから戦術的展開に持ち込むことができる。その状態でようやく普段シングルスのレッスンで練習している技を使うことができるようになるのだろう。

打ち粘れるようなる。そのためにボールをミスせず打ち返すことにまずは専念する。試合中にそういう意識を作り上げるのだ。それが歩みを一歩進めてくれような気がする。如空の歩みを。

修行は続く。

ホップジャンプを使ったアプローチショット

朝起て出勤しようと外に出たら、屋外に駐車している愛車が朝露の水滴でびっしりと覆われていた。きれいな粒だったので、思わず触れて見たくなり、手を伸ばした。水滴は硬かった。凍っているのだ。露じゃない、霜だ。初霜が降りたのだ。道路も凍結している。風がとても冷たい。ほんとにここ神戸は大阪と同じ関西なのか。大気そのものが凍てつく寒空に、それでもテニスに行かねばならない。さすがにこの寒さの中で屋外コートは厳しいなあ。

この日のシングルスの練習はアプローチショットだった。
「ネットより低い打点で、スライスでなくドライブやスピンを打って前にでたい場合ってありますよね。特に普段スライスを使わない方はそうでしょう。短いボールを低い打点で、ネットを越え、かつ短くコートの中に納めるには、スピンも悪くはありません。特にフォアの時はスピンの方がうまく場合もあると思います。」
とコーチは自分でボールを出して、それを自分で打ちながら説明する。
「ただ、止まって打ってしまう人が多いのですね。これはいけません。高い打点なら止まって打って、叩けばよいでしょう。しかし、低い球は叩けませんから、ネットに出るための手段として、文字通りアプローチショットとして打つのです。そのためには、スムーズにネットに付くためにも前に体重移動しながら打ちたいところです。」
「スライスならキャリオカステップですね。横向きを維持しながら前に移動します。スピンならホップジャンプですね。スタンスをスクエアで維持しながら体を回転させてボールを打ちます。打ち終わってフォロースルーしたときに、上体の回転にねじ切られるように、両足が地面を離れるのです。スクエアスタンスを維持しながら。こうすることで上体の回転と体重移動をさせるのです。」

フェデラーがよくやるフットワークである。2003年のウィンブルドン準決勝対ロディック戦、第二セットのセットポイントで放ったフォアハンドアプローチショットのフットワークとして有名である。フェデラーになった気でやってみる。しかし、フェデラーにはなれない。
「飛びながら打つんじゃありません。打ってから飛ぶのです。体重を後ろや真ん中に残したまま打っても意味ないです。前足に体重を乗せ切って、打って、それより前にさらに腰が出ようとするので、体が腰に引かれて前に浮いてしまった、そんな感じで打ってみてください。」
「腰は回すのですよ。細かく言うと前の腰は外に逃がして、後ろの腰を前に出すのです。それをスタンスを変えずに、スクエアスタンスのままで行うのです。そうすれば嫌でも脚は腰に振り切られて中に浮きます。ジャンプしてしまいます。ホップジャンプのフットワークは意識的にするものというよりは自然発生的に起きるのもです。」
スクエアスタンスを維持しながら、前に体重移動する。前の腰を外に逃がして、後ろの腰を前に出す。おお、だんだんそれらしくなってきた。気分だけでもフェデラーになれるような気がする。あくまで気がするだけだが。

修行は続く。

雁行陣のみのダブルスもいいものだ。

今年の初打ちはスクールのレッスンでもなく、サークルの練習会でもなく、スクール生大会だった。レッスン生間の親睦を深めるために行われるダブルス大会でコーチも参加して行われる。如空はその日男子ダブルスを5試合して、ミックスダブルスを1試合した。スクール生大会のダブルスとはいえ、1日に6試合もするとさすがに疲れる。日が暮れて、大会が終わった頃にはヘロヘロになっていた。

この日、午前中はサーブの調子がよく、珍しくサーブポイントを量産して自分のサービスゲームを気分よくキープできた。例の鈴木貴男の本で目覚めた回内の前の回外のモーションのおかげである。またこの日如空はリターンではデュース(フォア)サイドに入った。いつもはアドバンテージ(バック)サイドに入る。初めてペアを組む方に「どちらでも」といわれると必ずアドに入っていた。センターに入ってきたサーブをフォアの逆クロスに打つのが好きだったし、前衛の時はセンターに来たボールをフォアボレーでポーチに出られるからだ。なぜかバックハンドボレーでのポーチは苦手で、如空は雁行陣でバックサイドの前衛になるとまったく機能しなくなる。しかしこの日はデュースサイドでフォアハンドのストロークをひたすら打った。日々のシングルスの試合でフォアハンドの安定を目標にしている如空はネットプレーよりもストロークをひたすら打ちたかった。特にフォアのクロスを打ち合いたかった。そこでフォアサイドのベースラインにへばりついて、黙々とラリーした。ポーチも警戒しつつ、深いボールを安定して打ち返すことに専念した。そうすると男子ダブルスで二連勝した。まったく如空はネットに出なかった。如空が後衛の時は完全な雁行陣のみでテニスして、ガンガン前に出てくる相手に勝った。雁行陣ペアにも勝った。ストロークで打ち負けなかった。とても充実していた。

ミックスダブルスを一試合した。ここはさすがに後ろにばかりいられないと思って前に出ようとした。だが、相手のおじさんの方にいいようにいなされて負かされた。まだまだ動きが甘いようだ。

その後3試合連続で男子ダブルスをした。団体戦だったので、対戦チームが変わったのだが、こちらはかなりうまかった。一勝したが、二敗した。途中からアドサイドのサーブがおかしくなった。それでも振り切れば入るフォアハンドに気をよくして、ストローク戦に徹した。負けた試合もそれなりに面白かった。

ネットに出なければ男子ダブルスは負ける。雁行陣は平行陣に対して本質的には不利だ。といわれる。事実、レベルの高いテニスではそうだろう。だが如空らが趣味でするテニスのレベルではストロークが強ければラリーに持ち込んでもそれなりに通用する。雁行陣のみのダブルスも面白いものだ。とても充実した初打ち会であった。

今年も修行が始まる。

回内の前に回外

去年まで週二回テニスをする日常であったが、諸事情により、去年の後半からテニスの回数は週一回に減っていた。その反動か、あるいは禁断症状が出たのか、去年の12月後半は珍しく予定通りに休みが取れたので、テニスの回数を増やした。週に二度も三度もテニスするとさすがに色々と気付くことがある。

12月のシングルス大会で散々ストローク戦をして良く分かったのだが、フォアハンドストロークの安定のためにはスピン・ドライブをボールにシッカリかけること。そのためにはまず、スイングを止めずに振り切ること。そのためにはヒットの瞬間でなく、打ち初めの構えでグリップエンドを打点に向けること、打ち終わりの面を左の外側に向けることを意識することが効果的であるということ。またその威力を増すためには右肩を後ろから前に押し出すことを意識する、そうすれば無意識に膝が送られ、腰が回る。そして打つ瞬間にグリップをぎゅっと握るのではなく、ラケットを握る右腕の脇をぎゅっと締めて、ラケットをグリップから前に引き抜くような感覚で打つと鋭く振れて、力を入れなくても厚い当たりが打てる。この感じで12月はフォアハンドストロークを徹底的に鍛えた。ダブルスの練習に参加したときも極力リターンではデュースサイドに入り、フォアを打つことに専念した。おかげでフォアハンドはかなり良くなったと思う。

逆に12月のシングルス大会で散々な目にあったバックハンドはヒューイット打ちバックハンドの基本を忘れていた。まず構える。ラケットを前に出す。それから引く。相手ボールが速くて引く余裕がなければ構えてそのままラケットを引かずに当てて押す。リターンなどはこれで十分だ。そして左肩を前に出す。これでラケットを前に押し出す。そのためには、左肩をテイクバックのときの引いておくことが大事だ。また左手首を柔らかくしてラケットヘッドを後ろに向けてテイクバックし、グリップエンドから打点にむけて打ちに行くことが大事だ。特にストレートや逆クロスに打つときはラケット面がベースラインの後方に向いて、その結果背中がボールに向くぐらい引いておくことが必要だ。如空の場合、こうしないと打点を引きつけて打てない。そう、そして打点をひきつけること。フォアよりもひきつけないとやはりいいバックは打てない。振り子打法で上に振り上げれば自然とドライブはかかるのでネットの上までラケットは振り上げることが安定につながる。

サーブはちょっとしたコツで大きく変わった。サーブのスイングにおいて、リストはインパクトで回内が起こる。団扇を仰ぐ動作の内側に回す方向の動作である。如空はこればかりに注目していたのだが、回内を起こすためにはその前にリストを回外させておく必要があるということに気がついた。気がついたというより再認識した。指導書等にはそのことが散々書いてあるのだが、ヒットの前の回内のことばかりに意識が行って、その前に回外させるこ必要性に意識が向いていなかった。特に回外・回内の動作はサーブのフォームが正しく行われていれば自然に発生するもので意識することではないといわれるので、意識しなかったこともある。回内してヒットするために、その直前に回外、つまり団扇を仰ぐ動作の外側に回す動作する。つまり振り出すときにグリップからボールを打ちに行けば自然とこの回外が発生するはずなのだが、今まではそれができていなかった。グリップから打ちに行っているつもりが甘かったのだ。別の言い方をすれば回内に入るのが早すぎて、打点では既に回内が終わっている状態で打っていたような感じだ。意図的に回外させてからサーブを打ちに行くと、文字通りグリップからボールを打ちに行くことになり、最後にリストが返り、ヘッドが出る、所謂回内が自然に発生して。ボールが後ろから叩かれて前に飛んでいく。フラット系でも回転系でもこの原理は同じだ。このことを意識してサーブするようになってから、サーブが安定した。軽く打っても高い打点からボールが前に飛ぶので、後はコースを考えるだけでいい。試合でもサーブの不安が大幅に減った。

このことを気付かせてくれたのは鈴木貴男が出している本である。「鈴木貴男のサーブ&ボレーレッスン」という本で、この本はサーブとネットプレーに特化して、鈴木貴男が自身で見つけた自分なりのテニスのコツを載せてくれている。自身でも著書の中で語っているが、鈴木貴男のテニスはとても独特で決してオーソドックスなタイプのテニスではなかった。それだけにこの本のコツは鈴木貴男独自のもので、万人に共通して使えるコツではないことを注意している。その上で、鈴木貴男独自のテニス理論に触れることで開眼すること、ひらめくことがあればいい、技術進歩の助けになればと、語っている。「これが絶対無二唯一の正しい方法で、それ以外の全ての方法は間違いだ。」なんて独善に陥ることなく、自分独自のコツを、自分の特殊性を十分意識したうえで、技術を説明してる、とても好感の持てる、かつ有用な良書である。この本のサーブのページで「回外→回内」を何度も写真と説明図で示しているので、回内だけでなくその前の回外の重要性に気付かせてもらった。大変有用な読書であった。




修行は続く。

10years

「空一面、広がった夕焼け見てたら、もう二度と逢えないような、気持ちになった。
二人並んで、笑った写真、届かない、引き出しに、しまわなくっちゃ。」

高校生の頃、渡辺美里が好きだった。彼女の歌っている歌が好きだった。MyRevolutionを聞いて始めてファンになった。それ以来、大学の途中まで良く聞いていた。ただ二十歳を過ぎてから急に聞かなくなった。まあ、若かった頃好きだったアーチストというのはそんなものかもしれない。しかし、もう40歳に手が届こうかというこの時期になっても、時々、頭の中でよぎる曲がある。何か感傷に浸ってしまうときに、なぜか、頭の中で反芻されてしまう曲がある。渡辺美里のあの声が耳に聞こえてくるような錯覚を覚えるときがある。その曲は決まって「10years」だ。

「あの頃は何もかも大きく見えた。あの頃は何でもなれる気がした。
遮断機越しの、ぼやけた景色、気がつけば、母の背を追い越していた。」

試合の記録を延々とブログの「修行」の記事として記録している。どんなかっこ悪い負け方をしても、恥ずかしい負け方をしても、自分に鞭打って記録している。これをやめてしまうと、もうテニスで試合に勝とうという気力がわいてこなくなるかもしれない、そう思ってしまうからだ。
しかし、それでも、去年は辛かった。ほんとに勝てなかった。ダブルスはチームの力、ペアの力が半分なので、あまり勝ち負けで一喜一憂はしない。それに、ペアの力でダブルスは時々勝てている。逆にシングルスの試合というのはテニスだけでなく、自分の全人格を試されているような気になり、それだけに負けるとへこむ。だから負け続けると本当に辛い。一昨年の2007年の9月以降、如空はシングルスで勝ち星に恵まれなかった。4ゲーム先取のコンソレーションや練習でのポイントゲームでは何度も勝った。だが大会の6ゲーム先取、あるいは5-5TBの1セットマッチでの勝利は14ヶ月近くなかった。一年以上シングルスで勝てていなかったのだ。一ヶ月に一度以上、シングルスの大会に出場するようにしている。大会シーズンは一ヶ月に二大会出たときもある。その間記録では16大会に出ている。予選は二試合のリーグ戦がほとんどから、実質32戦全敗したことになる。シングルス32連敗って・・・・・なんで如空はテニスを続けているのだろう。ほんと、修行僧になってしまっていた。

「あれから10年も、この先10年も、
振り向かない、急がない、立ち止まらない。
君だけを、僕だけを、愛したときを、
今も誇りに思うよ。ずっと誇りに思うよ。」

去年の12月、2008年最後の大会もシングルスの大会であった。この日勝てなければ、2008年はシングルスで一度も勝てなかった年になるところだった。少し遅刻した。幸い少しだけだったので、失格にはならなかった。主催者と待っていてくれた対戦相手に何度も頭を下げてお詫びして、試合に臨んだ。
第一試合はこの大会の常連さん、何度か優勝している方、如空などベストの状態でもかなわない相手である。それが遅刻してロクにアップもせずに試合に入ったので、ロクに打ち合えない。特にバックの当たりがおかしくてまともにラリーにならなかった。しかし、思い切って振り切っているせいか、サーブの入りは良かった。またガンガ相手に打たれて、それに対抗してこちらも打ち返しているうちに、フォアに当たりが戻ってきた。肩だ肩、どんなに食い込まれても、テイクバックで引いた右肩をスイングで前に出す。そうすれば体は回る。ラケットは振れる。2-6で負けたが、フォアハンドはある程度打てるようになった。
33連敗目を喫して、今年最後のシングルス予選が続いて行われた。相手は若い学生さん。サーブは不安定、バックも不安定、でもフォアは強い。如空はサーブとフォアハンドが安定、バックが不安定である。この日の如空のバックハンドは最悪で、両手打ちのフラットドライブだけでなく、片手のスライスもなぜかコートに入らなかった。だが幸いサーブは入る、そしてフォアも入る。ストローク戦に持ち込んで全てフォアで打ち合う、というとても作戦とはいえない方針を立てて、2008年最後の試合に臨んだ。6-2で勝った。打ち合いで相手が先にミスしてくれた結果だった。シングルスの連敗は33でストップした。予選で一勝一敗、リーグで二位になった。他の二位通過の選手と得失ゲーム数を比較した結果、最下位で予選を通過した。連敗脱出しただけでなく、数年ぶりに決勝トーナメントに出場することになった。

「今までと違う自分に逢いたくて、前髪を揃えたり、服を着替えても、
君がそばにいない寂しさ、自転車のペダルにも伝わっていくよ。」

決勝トーナメント一回戦の相手はフォアバック共にストロークがスライスというおじさん。このフォアバック両方スライスという選手は結構草トーの世界にいる。如空も過去に三度ほど、こういう選手とシングルスで対戦した経験があるので、それほど驚かなかった。このフォアバック両方ストロークがスライスというタイプは単なるシコラーではない、またガンガンネットに出てくるというタイプでもない。強打はないが、スライスで相手を動かして、オープンコートにボールを落とす、プレースメントでポイントを取りに来る戦術でテニスをするタイプが多い。この選手もそういうタイプだった。この手の選手に初めて対戦した時は頭に血が上って、完全に自滅状態になってしまったものだった。だが、経験でこの手のタイプの情報を既に頭に入っている如空は黙々とネットを挟んだチェスゲームに付き合った。フォアハンドストロークはヒットの瞬間の面を意識すると、スイングが止まって、ネットしたりオーバーしたりする。スイングが止まると回転がかからないのだ。ヒットの瞬間でなく、打ち終わりの面を振り切り後の左側に向けること、そして打つ前はグリップエンドをボールと打点に向けること、これを意識すると、ボールにスピンがかかり、何度も迫撃砲を相手コートに打ち込むような連続トップスピンが打てる。相手のスライスに如空は連続トップスピンで対抗した。長いラリーが続く試合になった。しかし、如空サイドはいかんせん、バックハンドが悪かった。相手もそのことをすぐに見抜き、フォアに深い球の後、バックに浅い球と、如空にバックハンドを打たせるように展開し、見事に完封された。0-6で一回戦敗退。フォアだけでは限界がある。しかし、黙々と試合に取り組めた。

「大きくなったらどんな大人になるの、周りの人にいつも聞かれたけれど、
時の早さについていけずに、夢だけが両手からこぼれおちたよ。」

この日、サーブは威力がなかったが、ダブルフォールトは一度もなかった。リターンミスも少なかった。サービスゲームでもリターンゲームでも、すぐにストローク戦に持ち込めたことが安定につながったようだ。そしてなぜかネットに出て行くこともほとんどなかった。相手のボールが短くなることが少なかったからだ。相手がネットに出てくることもほとんどなかった。両者共に深い球のストローク戦の応酬に終始した。バックハンドは苦しんだが、フォアハンドがようやく安定して使えるようになったのはよかった。たぶん、フォアの調子のよいときは、フォアに引きずられて、バックの打点も前に捕らえてしまっているのだろう。フォアの打点が前になっても、バックは意識して引きつけて打たなければならない。試合後、そう思った。

「あれから10年も、この先10年も、
行きづまり、うずくまり、かけずりまわり、
この街に、この朝に、この掌に、
大切なものは何か、今も見つけられないよ。」

1998年の秋に職場の同僚たちに声をかけられてテニスをした。それが如空のテニス初体験であった。そして翌年の1999年には初めてテニスしたコートにあるスクールの初心者コースに入会していた。それから如空のテニスの日々が始まった。まったくの初心者だった。スコアも数えられない、サーブも入らない、ボレーもスマッシュもできない、バックハンドは打てない、フォアハンドでようやくラリーらしきことができるような状態だった。そんな初心者がその一年後には試合に出ていた。しかもダブルスだけでなくシングルスも。今考えれば身の程知らずだった。恐れを知らぬ若さが背中を後押ししていた。あれから10年がたった。これからの10年はどうなるだろうか。10年後もテニスを続けているだろうか。

「あれから10年も、この先10年も、
振り向かない、急がない、立ち止まらない。
君だけを、僕だけを、愛したときを、」

テニスを始めてから5年目くらいがシングルスもダブルスも一番勝てていた。三年くらい前からぐっと勝てなくなった。体力の衰えだけでなく、6ゲームを相手より先に取りきるという、長い神経戦に精神力がついていけなくなりつつあるような気もする。そんなしんどいことをわざわざ休日にお金を出してやるべきことなのかという自問自答はこの10年間何度も何度も繰り返してきた。そのたびに同じ答えにたどり着く。「やめられない」と。できなかったことができるようになる瞬間を何度でも、これからも体験できるように、ただひたすら修行は続く。

「あれから10年も、この先10年も、
行きづまり、うずくまり、かけずりまわり、
この街に、この朝に、この掌に、
大切なものは何か、今も見つけられないよ。
ラン、ララララン・・・・・・・・・」


ボレーのコース打ち分けシングルス編 

今年も徐々に終わりが近づいている。今年最後の散髪に行き、今年最後の洗車をし、今年最後のカイロを受ける。「来年もよろしくお願いします。よいお年を。」と声をかけられる。やがてテニススクールやコートでも同じことを言い合う日が数日後にせまっている。

「ダブルスと違ってシングルスにはつなぎのボレーはないですよ。」
とシングルスの練習をするようになってこの数年、何度も何度も聞かされたことを、今日もコーチは言う。それが基本中の基本だからだろう。
「この広いコートで一対一なのです。ベースライン側もネット側も穴だらけです。二対二のダブルスでは中々ベースラインでもネットでも穴がありません、だから抜けません、だからつなぎのボレーで相手を動かして穴を作る必要があります。しかし、シングルスではもう既にベースライン側に穴はあるのです。そしてネットに出たほうも穴があります。先に穴を抜いた方が勝つのです。ですから、つなぎのボレーを打って、相手に打たせれば、そこで穴を抜かれて負けるのです。負けたくなければ先に穴を抜くことです。ベースラインにパスを打たせない。ファーストボレーでいきなりオープンコートに打って、ポイントを取る。これが大事です。」
という訳で先週のシングルスのレッスンのテーマはボレーだった。
「ベースラインの相手は基本的にセンターに戻りますから、オープンコートはコーナーにストレートで打つか、サイドにショートクロスボレーを打つか、いずれかになると思います。ところがこの打ち分けが上手くできない人が多いのです。コーナーを狙うストレートのボレーは短くなり、相手に拾われ、サイドを狙うショートクロスのボレーは逆に長くなってアウトする。そんなことが多いですね。」
「ストレートもアングルも同じフォロースルーにしているからそうなるのです。ストレートに打とうと思うとある程度引き付けますよね、コンチネンタルグリップでボレーするなら。そこで当てるだけだと、ボールが深くに運べないのです。踏み込み足を前にスライドさせて、フォロースルーを大きく前にとってください。深くに運べますから。」
「逆にアングルは運んではダメです。フォロースルーは取らない。面でボールのコースを変えるだけ。壁になってラケットを止めてください。タッチだけでボールは十分バシッと決まります。」
ストレートへはフォロースルーを大きくして運ぶ、アングルには壁になってラケットを止めて打つ。ストレートとアングルのボレーを交互に何度も打つ。ミスとナイスショットが繰り返され、なかなか安定しない。
「体の正面でボールを捕らえてはいけませんよ。ボールのコースから体を外してください。肩の外側でボールを捕らえることです。体の正面で取るから、ストレートには窮屈になりフォロースルーが取れず、クロスには逆に振ってしまって、オーバーするのです。」
「ボレーをネットしてしまうのは、ラケットを振り下げているからです。止めるときにも、フォロースルーを大きく取るときにも、打点がネットより上であるときは、ラケットもネットの高さより上で操作してください。ラケットがネットよりも下に行くと、ボールが下に飛んでネットにかかりやすくなります。打点がネットより高いボレーは、ラケットをネットより下に下さないことです。これは鉄則ですよ。」
昔、高校の数学の参考書に鉄則シリーズってあったなあ。テニスも鉄則シリーズとかチャート式とかそんなシリーズがあればいい勉強になるかもね。

修行は続く。

始めと終わりを意識して

大阪の御堂筋のイチョウ並木は毎年12月を過ぎたあたりで、もっとも美しく色付く。神戸ではルミナリエが始まった。今年ももう師走だ。

先週のシングルスの練習は基本に立ち返って、ストロークを深く打とうという取り組みだった。
「フォアと両手打ちバックは打ったら、打った方向に胸もヘソも向けてください。足のつま先も打った方向に最後は向けます。横向きから打ちたい方向へ向くことで体幹部が回転します。これがショットの威力になります。深いところまでボールを運ぶにはこの威力が大事です。片手打ちバックハンドの方はグリップによっては体の開きを抑えたほうがいい場合もあります。これは個別に伝えていきます。しかし、基本は打った後、打った方向に向くことですよ。クロスならクロスへ、ストレートならストレートへ、それぞれ体全体で向かってかから、クロスステップでセンターに戻ってください。」
と寒風に負けじとコーチは大きな声を張り上げる。
「ボールがラケットに接触する時間は本のコンマ数秒です。その時の面を確実に安定して維持しようとしても難しいです。それこそボレーのようなショットでしか出来ません。スイングするなら、打ち始めと打ち終わりの形を意識して、それを同じにしてスイングするのです。そうすれば、コンマ数秒のヒットの瞬間を面の安定した状態で迎えられるのです。そして、振り切ることでボールに威力が出る、振り切ることで回転がかかる。だから深い位置に正確にショットが打てるようになるのです。」
「体幹部だけでなく、ラケットワークも打ち始めと打ち終わりを意識することが大事です。ボレーと違ってストロークのスイングでは面を意識せず、ラケットヘッドとグリップを意識してください。打ち始めはグリップエンドをボールに向ける。打ち終わりはグリップエンドを打つ方向に向ける。肩に担いでね。片手打ちバックハンドの打ち終わりはヘッドを立てて、エンドは下を向いてもいいですよ。」
「とにかく打ち始めと打ち終わりを意識してスイングしてください。ヒットの瞬間はゾーンで捉えることが出来ます。そうすればヒットのポイントが広がります。少々タイミングがずれてもボールを捕らえて運べます。これがストロークの安定につながるのです。」

というわけで、左右にコーンを置いてそれを八の字に廻りながらフォアとバックを交互に打つという、シングルスのストローク練習の定番、八の字回しが始まった。最初はフォアバック共にストレート、次はフォアバック共にクロス、最後はフォアバック共にストレート・クロスの打ち分け。どれも8回転である。8の字に8周廻るだけでへとへとである。脚がもつれて転倒する人もいる。とても打ち始めと打ち終わりを意識するどころではない。
「振られたときこそ、楽に流さないで、打ち始めと打ち終わりを意識することを徹底してください。それが守りを厚くし、反撃の糸口につながるのです。苦しくてもストロークを深くに打ち返す。いや、苦しいからこそ、ボールが短くなって攻め込まれないように、深くに打ち返すのです。そのためには、苦しくても打ち始めと打ち終わりを意識して、しっかりスイングしてストロークを打ってください。」

ああ、脚が攣りそうだ。こういう練習は毎日して体力・筋力のトレーニングとセットにしないと、身に付かんわ。週一だと、走ってついていくのに精一杯になる。

修行は続く。

悪循環を断ち切るためのスピンサーブ

あっという間に年末である。忙しいのは毎年のことだが、今年は忙しさの内容が違う。公私共に一つのことに集中している時間がなく、多方面の問題解決に振り回されている。なんとなく勝手が違う2008年の年末である。

前回のシングルスの練習はセカンドサーブで使うスピンサーブが主題だった。
「皆さん、テイクバックが小さいですよ、引きがない。スイングをもっと大きく取らないと回転はかかりませんよ。」
とクイックサーブ系が多い如空たちレッスン生に向かってコーチは言う。
「胸を開いて、右肘を引いて、グリップを頭の後ろから引き抜くぐらいのつもりでテイクバックしてください。振りが柔軟で大きいほど回転がかかります。振りが小さくて固いほど、ボールはフラットになりやすく、そこを無理に回転をかけよとすると、今度は前に飛ばなくなるのです。」
「理想は同じトスの位置でフラット・スピン・スライスを打ち分けることです。でも理想は理想としておいて、今は現実に回転量の多い、ネットの上を高く通って、サービスラインの内側に必ず落ちるサーブを、確実に打てるようになることが大事です。そのためにはトスの位置をフラットやセカンドと同じではうまくいきません。トスボールが自分の頭を通って、背中の後ろに落ちるようにトスを上げてください。トスは真っ直ぐ上げるのではなく、やや放物線を描くのですよ。そしてそのトスの放物線をなぞるように背中からラケットを振り上げるのです。当たりは薄くてもいいのです。ストロークの中ロブをオーバーヘッドスイングで上げるようなつもりで、ラケットを振り上げてください。そしてボールを打ち上げてください。」
「確実なセカンドサーブは、心の余裕を生み、ファーストサーブを打つときの不安を減らし、結果としてファーストサーブの質の向上にもつながるのです。逆にセカンドサーブが不安定だと、ファーストの入りも悪くなり、そして入っても、サーブの行方に意識が行ってしまい、相手のリターンへの準備が遅れて、ミスしやすくなります。悪循環ですね。その悪循環を断ち切るのは、セカンドサーブの確率の高さです。そのために必ず入るサーブを身につけるのです。それがスピンサーブです。回転系サーブを攻めに使うようにするのはその後ですよ。」

しかし、回転系サーブってコースのコントロールが難しいのだよね。それでもフラットよりは確率が高い。特に試合でプレッシャーのかかる場面ではタッチでコントロールするフラットより、振り切れば入るスピンのほうが頼もしいものだ。それでもね、9割近い確実性を身につけるのは難しいね。ひたすら練習しなくては。サーブは練習量がもっとも少ない。もっともっと、練習しなくては。

修行は続く。

誰と戦っているのか

11月に出場したシングルスの大会は、6ゲーム先取の試合を3試合出来たが、0-6、1-6、4-6ときれいに3連敗だった。緩いボールの処理のとき、気が先に行ってしまい、ショットが雑になっていることに最近気づいた。そこで、この大会ではショットの打点に視線を残すことを意識して打っていた。すると当たりはよくなるが、ネットやらラインアウトやらでコントロールが悪くなった。なんだかなあ。

フォアハンドは振り切れば入る。振り切るとは、具体的に言えば、フォロースルーの最後、ラケットを左にしまいこむときのフォームを意識して、そこまできちんと振ることだ。面が上を向いたり、回転のかかり具合が悪いときはたいてい、そこまでスイングを振っていない。最後まで振る、打点よりも振り切った後の方を意識するようにしたほうが回転が確実にかかり、ヒットの時の面がぶれない。

そんなことを試合中に考えていてはゲームなど取れるわけもない。相手と戦う前に自分と戦っているのだから世話がない。早く相手と戦えるようになりたいものだ。

修行は続く。

守備的リターン、攻撃的サーブ

11月に入ってから「修行」の記事をアップしていなかった。別にテニスをしなかったわけではない。本業が忙しくなって時間ないのは事実だが、テニスをする時間は無理してでも取っている。それが如空にとっての心の糧だから。試合も一試合出場してきた。ただそれを記事にしてブログにアップする時間がなかった。特に「観戦」の方でWTAソニーエリクソン選手権、ATPテニスマスターズカップが二週続けてあり、そのTV観戦記を記事にするだけで貴重な睡眠時間を割いてしまい、修行の記事にまで手を出せなかった。そのツアー選手権もマスターズカップも終わった。デビスカップ決勝は残っているが、TV中継がないのでネットで結果をチェックするだけだ。仕事は相変わらず忙しいが、少しほっとしている。

最近のシングルスの練習はポイントゲームをして組み立てを学ぶ実戦形式が多い。この日もサーブ対リターンからの1対1の練習をひたすらした。
「セカンドサーブを叩いて攻撃するパターンは皆さんよくわかっていますよね。では相手のファーストサーブ、特にいいサーブを打つ相手に対して守備的なリターンをするとき、どこに返球するべきかわかりますか。」
とコーチは聞く。如空たちはクロスだと答える。攻めがストレートで守りはクロスだと。だがコーチは違うという。
「守りのリターンはコーナーに打ってはいけません。センターに緩く返球するのです。」
「ストレートだろうがクロスだろうが、コーナーへ打つと、相手はそのコーナーから返球してきます。コーナーからは角度がついた厳しいショットが打たれます。センターからよりも厳しい角度のボールがね。それがリターン側をコートの外に追い出すショットになってしまいます。そして、リターン側がそれを警戒してワイドを固めると、今度はストレートが空いて、ダウンザラインを打ち込まれてしまうのです。」
「守るときはセンターです。センターに緩く返球すれば、そこからストロークを仕切りなおす訳ですからサーバーの優位はほとんど消滅してしまうのです。」
「ここで大事なのは緩く返球することですよ。特にワイドを打たれたサーブをセンターに早いタイミングで返球すると、角度は緩くてもライジングでオープンコートに切り返されて、あるいはネットでボレーされて、オープンコートに速いタイミングのボールが行きます。このボールは追えません。自分がセンターに帰る時間を稼ぎながら相手もセンター止めるのです。特に相手のフラットサーブに対して、ブロックリターンでナイスリターンを返球できた場合、レシーバーは相手の速いサーブを逆にすばやく打ち返して、その瞬間は気持ちがいいのですが、次の瞬間、サーバーにライジングでさらに速いタイミングで切り返され、オープンコートにウィナーを決められるシーンというのをよく見かけます。これはリターンをスライスリターンか中ロブ気味の深いリターンでセンターに時間をかけて返球すれば防げた場面です。緩くセンターに返球することが守備的リターンの原則です。」
「この理屈は、逆にサーバー側がどうやって攻めるべきかを示してもいます。いいファーストサーブが入った。それがコーナーにリターンされて来た。ならばためらわず、そこでサイドラインに抜けるような厳しい角度のショットをクロスに打つべきです。そこから攻めるのです。そしてその攻めに相手が対応し始めたら今度はコーナーからダウンザラインを狙うのです。また、フラットサーブに自信があって、ノータッチエースを狙って打って入ったのに、リターンされて落ち込んでいる人がいますが、そのリターンがブロックリターンで速いタイミングで返球されてきたら、サーバーもライジングの速いタイミングでオープンコートへ切り返せばいいのです。ストローク戦では抜けないような角度でも、速いリターンに対する更なる早いタイミングの返球なら抜ける可能性があります。逆にいいファーストサーブを打っても、センターに緩く返球されたときはサーバー側のアドバンテージはその時点で消えているのですから、一からストローク戦を始める覚悟をしてください。またそれを防ぐためにサーブ&ボレーをするという選択肢も出てくると思います。そうして自分なりの守りのパターン、攻めのパターンを作っていってください。しゃにむに打っても勝てませんよ。」

しゃにむに打っても勝てませんよ・・・・・なんか如空のことを言われているような気がするなあ。勉強しよう。攻守のパターンを身に着けて、試合で組み立てるのだ。

修行は続く。

意識の集中を身につけるべく

大阪の梅田で地下鉄御堂筋線から阪急のターミナル駅に乗り換えのために移動中、地下街で両替所の前を通過した。三井住友銀行と三菱東京UFJ銀行のそれぞれの両替コーナーが地下道を挟んで向かい合っている。そこはいつも通過するときは「メガバンクの支店があるのだな」と思って通っているだけのところだった。だが先日は違った。どちらの両替所も長蛇の列ができて、地下街の通路にまで人があふれ出ていた。急激な円高に刺激されて、円を売る人と買う人が殺到しているのだ。ちょっとした銀行の取り付け騒ぎの雰囲気にも似て、少し騒然としていた。世界金融危機の実体経済への影響が如空の身の回りにもじわじわと押し寄せているのだろうか。先のことを考えるとすこし怖くなった。

先週のシングルスの練習は一ヶ月前のワイドへの振られたときの対応の復習であった。特に今回はランニングショットからのショートクロスという高度なショットまで取り入れてのレベルの高い練習であった。

ところで如空さんは前回の大会で緩いボールを打つとき、待っている間に相手の予想と自分の展開を先に考えてしまい、それが目の前のボールを打つことに集中できていなくてミスしているのではないかと思った。この日の後半のポイント練習でそのことが再確認できた。先のことを打つ前に考えるとミスする。どれだけ待球時間が長くても打つ瞬間はボールを見る。ボールを打つことに意識を集中させる。あまりにも当たり前のことができていなかった。自覚したこの日でも時々してしまう。ここを直していかなくては。ゲーム形式の練習を今は少しでも多くしたい。そしてこの意識を集中させることを身につけたい。

修行は続く。

緩い球こそ最後まで見て打つ

先月出場したシングルス大会で当たった強い人と、別の大会の予選でまた当たった。例によって0-6で負かされた。「バックハンドよくなったね。」と試合終了後の握手のときに相手に言われた。彼に言われたとおり、ヒューイットもどきバックハンドは良く安定してくれている。最近は少し手首に角度をつけて打つようにしている。そして振り切ったときにヘッドが勢い良く立って終わるように振ると、いい感じでドライブがかかってくれてライン際で良く落ちてくれるようになった。しかしバックハンドが安定しても、ポイントは取れるがゲームは取れない。連続してポイントが取れないのだ。

二試合目の相手はあまりシングルスに慣れていない様子の人、それでもまた0-6で負けた。おいおい、これでこの二ヶ月の1セットマッチは四試合連続団子だぜ。ダブルベーグルならぬフォーベーグル、団子4兄弟だ。

二試合目はこちらのミスが多かった。強い球の打ち合いではミスせず、緩い球をミスした。途中で相手もそのことに気付いて緩急を付け始めた。如空の方は相変わらずミスが出始めると修正できずに自滅した。

「負けた?二試合目も負けた?0-6で負けたの!如空さん、最近テニスの練習サボっているんじゃない。そんな大差がつくような相手には見えなかったよ。」と昔よく如空と練習してくれた人が大きな声で言う。彼は如空と違って順調に成長して、いまやこの大会でも優勝候補の一人である。「打とう打とう、練習しよう、練習不足だよ。身内の大会だし、ちょっとだけなら練習させてもらえるだろう。」と優勝候補は主催者に声をかけて、一番端の空きコートで如空と打ち合ってくれた。いい人だ。けどね、原因は練習不足だけではないのですよ。さっきの二試合目で如空は少しだけ自分のことがわかったような気がしていた。

練習の時には緩急にも対応できているが、試合のときになると緩い球をミスる。冷静に振り返ってみるとこの一年間、ずっとこのパターンでフォアがおかしくなって自滅している。言い訳ではない。如空のことを良く知る人が見ても「試合のときの如空さんと練習のときの如空さんは何かが違う。」といわれる。最初はメンタルの問題かと思っていた。ビビッていたのかと。だが勝ちビビリやギャラリーのいる試合ならわかるが、誰も観客がいない、大差が突いてほぼ試合が終わりかけている状況でもこの変なミスは出る。それも相手の緩い球を打つときに出る。なぜだ。

練習のときは次のことを考えずに、一ショット一ショットを打つ。特別丁寧に打っているわけではないが、そう打っているのだと思う。試合のときはそれが違う。先のことを考えている。打った後のことを打つ前に考えている。そしてボールを見ずに打っている。早い球を打つときはボールに集中しているが、遅い球のときは意識が次の相手と自分のプレーに行ってしまっていて、ボールを打つことに集中していない。ボールは見ていてもボールが見えていないのだ。さっきの二試合目の相手が緩急をわかりやすくつけて如空をミスさせてくれたので、それが良くわかった。試合の最中は漠然とした思いだったが、その後練習で打ち合って、それがはっきりと分かった。遅い球・緩い球を打つときは打つ前の待ち時間が長いので、先のことを考えて、ボールを打つことに集中していなかったのだ。それがその後の練習をして良く分かった。負け試合の後の練習はとても大事だ。

その後、コンソレーションがある大会だったので、そのコンソレに臨んだ。何でこんな強いやつがと思うほど強いサーブと威力のあるフォアを持つ学生さんが相手だった。4ゲーム先取の試合で2-4で負かされたが、強い相手であったがゲームが取れた。緩い球で、意識を先に向けずに、緩くても打ち終わるまでボールに意識を集中させていたから、ミスが少なかったのだ。こういうことは練習をしているだけでは分からない。安易にメンタルの問題だと判断すると本質を見失う。負け続けても試合に出続けることは大事だ。何かを学べる。何かを。

修行は続く。

連続スマッシュもコースを変えろ

先週のシングルスの練習は連続攻撃パターンであった。

まずはストロークからアプローチ、そしてネットの3連打の練習。
深いくコーナーに入った球をクロスへ深く返球する。そこで相手の返球がクロスに来たが短くなったという設定。それをコートの中にはいってダウンザラインに打って、そのままネットへアプローチする。相手にパスを打たれれば、それをクロスに打ち返す。
「相手ボールが短くなれば攻撃です。攻めるときは相手のいないところへ打ちます。だからオープンコートを狙うと深い球をクロス、短い球をストレート、ボレーをクロスという定石パターンが出来るのです。」
「このパターンを使うにはコースのメリハリが大事です。甘くセンターに返球すると相手に逆にオープンコートに切り返されます。右サイドと左サイドのコーナーに丁寧に打ち沸けることです。クロスもストレートもコーナーを狙うという意味では同じです。センターに返球してはいけません。」
「オープンコートにボールを打ち続けるということはコースを変え続けるということです。コースの変更は、同じコースで打ち続けることよりミスしやすくなります。だからこそ、強打するより、コースをしっかりと狙うこと、そのためにコースを変えること、それでもミスしないこと、これらが攻める上で大事なのだということです。威力はその次です。もちろん、威力があるほうがいいのですよ。ただそのためにミスが増えたり、コースが甘くなってセンターに行ったり短くなったりしては意味がないと言うことです。」
コーチのおっしゃるとおり、コースを変えるとミスしやすい。試合の時の如空がまさにそのパターンでミスしている。丁寧に丁寧に、コースを変える、コーナーに深く打つ、とフォア・バックでそれぞれ何度も3球連打のパターンを繰り返す。

次にスマッシュの連打、ストレートに打つ、次にクロスあるいは逆クロスに打つ。それを3回計6連打である。「いいアプローチを打てばパスよりロブを打たれることのほうが多くなりますよ。それを落として打ったり、つなぎのハイボレーで返球したりすれば、相手に楽させるだけです。ネットに出てこられてもロブを上げておけばいいと相手に思われれば、もうネットでの攻撃力はがた落ちです。ロブで粘られてはいけません。スマッシュで叩いておく必要があるのです。」
「スマッシュは一発で決めるつもりで打たなくてはいけません。しかし、意外とスマッシュは返球されてしまうのです。拾う側はヤマを張ってとりあえず当てに来ますからね。ですから打つときは一発で決めるつもりで打ちますが、だからといってスマッシュが返されても驚いていてはいけません。何度でも何でもスマッシュを打つつもりですぐに構えてください。」
「連続スマッシュで大事なことは、二発目は一発目とコースを変えることです。相手の頭を越そうとして無理して叩きつけようとして何度も何度も同じコースで打ち続けて何度でも拾われて、三発目か四発目でスマッシュをミスするという無様なシーンを意外と試合でも見るものです。ダブルスじゃないのです。相手はコートを全てカバーすることは出来ません。一発目を拾われた場所からすぐに動くことなど理屈の上では可能でも、実際には難しいのです。連続スマッシュはコースを変えてください。右、左と打ち分ければ強く打たなくても二発目か三発目で決まります。」
と、ネットにタッチ、ロブを追って後ろにダッシュ、下がりながらのジャンピングスマッシュ、またネットにタッチするために前にダッシュ、というただでさえ疲れるこの連続スマッシュ6連打にさらにコースの打ち分けまだついた高度な、そしてハードな練習が始まった。皆と中から走れなくなる。如空も脚がもつれてオムニに脚を取られて一度転倒してしまった。

へとへとになったところでさらに鬼コーチは追い討ちをかける。右にクロス、左にクロス、左にストレートでアプローチ、右にパスをボレー、そして仕上げはロブをスマッシュで打つ、決まるまで何度もロブが上がり、何度でもスマッシュを打たされる。それを左右交互に何度でも何度でも繰り返される。体がついていかない。それでも気合で走り、打つ。それでもまた如空は転んだ。もっと下半身を鍛えないといかんな、これは。

修行は続く。

セカンドサーブをアプローチ

シングルスの練習で久しぶりにスパニッシュドリルをした。短いボールを前に踏み込んで強打、深いボールを下がって深くに返球、これをひたすら繰り返す。今までこの練習をするときに、短いボールの強打ばかり意識して練習した。だが繋ぐラリーの精度の悪さに自己反省中の今の如空は下がっての深いボールの返球を意識する。下がりきれていないわ。手打ちになると飛ばないし、それでも強く打とうとするとコントロールが乱れてアウトする。「打つ」のなく「運ぶ」感じでボールを深いところへ返球できないかな、などと考えながら練習していると、あっという間に終わってしまう。

先週のレッスンのテーマはリターンだった。
「ファーストサーブに対してはディフェンス、面を作って確実に打ち返すことを最優先にします。セカンドサーブはアタック、仕掛けてください。」
「今日はセカンドサーブに対しては、強いリターンからネットへ出る事を意識してください。強いリターンといっても手打ちで強打するのではありませんよ。体重移動でボールをつぶしてコーナーに打ちこんで、そのボールの後を追うようにネットへ向かうのです。」
「ネットプレーが得意ならスライス・リターンからのチップ&チャージという手もあります。ただ、相手のセカンドサーブが弱いなら、叩いて出たほうがいいです。相手の選択肢を狭めることが出来ます。いいアプローチショットなら、ボールに勢いがありますから、それをコーナーに打たれると、かなり高い確率でストレートへパスが来ます。打点が食い込まれやすいからです。それを予測してネットに出ればポイントを取る確率も上がるというものです。クロスへはロブ気味のボールになりやすいですから、逆を突かれても対応可能な確率が高いです。もちろんこれらは全て確率論であり、相手の技量や運不運でその通りにいかない場合もあります。それを外されても気にしないことです。3回に一度、ポイントが取れればいいと思って前に出てください。3回に一度は相手がミスしてくれます。3回に一度くらいは抜かれてもいいわけです。」
とファーストはコーチの近距離からのフラットサーブの返球、セカンドはネットプローチというドリルを繰り返す。如空の場合、アプローチまではうまくいくのだけどね。その後のボレーの確率が悪いわ。それでも3回に一度の確率で考えるならば、決まっているほうだろうか。これを試合で使うかどうか、悩むところである。

修行は続く。


アプローチは小さく鋭く

連日、新聞の一面に株価下落のニュースが大きな見出しで書き出されている。如空の身の回りにいる人々、毎日チェックしているブログの主たち、そういう人たちが資産運用をしている人なのか、あるいはそういう関係の仕事をしている人なのか、こういう時はそれがよくわかる。実生活や仕事の中では胃に穴が開くほどのストレスにさらされている人も多々いるようである。せめて、この混乱に関わっている人も、今のところは直接には係わり合いのない人も、コートの中ではテニスに没頭していたいものであるが、そうも行きそうにない今の世界情勢である。

先週のシングルスの練習はアプローチショットだった。
「ベースラインの後ろからネットに出てくる人はいませんよね。短くなったボールをコートの中に入って、打って、そしてネットに出てきます。だからアプローチショットは通常のベースラインの後ろから打つストロークよりも短く打たねばならないのです。それを忘れる人が多いのです。」
とコーチは言う。
「遠くに深くストロークを打つには、スイングを大きくします。スイングを大きくするということはテイクバックも大きく、フォロースルーも大きくします。アプローチショットはストロークと違って距離が短いのです。だからスイングも小さくします。そのためにはテイクバックも小さく、フォロースルーも小さくてよいのです。それを忘れてテイクバックを大きく、フォロースルーも大きく取ってアプローチするからボールがアウトするのです。そしてボールの距離をタッチでコントロールしようとして、ショットが弱くなるのです。」
「スイングは小さく、しかし鋭く振る。これが大事です。スライスは別ですよ、今はスピンやフラットドライブで前に出るときの話をしています。スイングを小さく、しかしスイングスピードは緩めない。むしろ小さい分だけ早く振るのです。そうすれば、短くて浅いボールでも鋭くて威力のあるボールが打てます。アプローチの威力があればパスのコースは限定されやすくなり、予測しやすくなります。小さく鋭く、それがアプローチショットで大事な点です。」
という訳でストローク・アプローチ・ボレーという連続プレーの練習を延々と続けた。如空は小さく鋭く打つアプローチショットは結構よかったが、ネットがあまりよろしくない。
「如空さん、ネットに出てスプリットステップをする時に、スタンスをそのままにして膝だけ曲げて腰を落としていますよ。スタンスが狭いので安定しないのです。腰を落とすだけでなく、アプローチしたらネットでスタンスを広げてください。」とコーチがいう。スタッタードステップができていないということか。それを気をつけて練習を続ける。

前回のシングルスの大会ので打ち粘れなかったことのショックがまだ残っている。それを意識して、ラリーでは安定したストロークへ注意を向けている。ライジングで打つのか、落として打つのか、その判断を早くして、打点に早く入ることだ。無理して高い打点で打とうとしてミスになっている。高い打点から打ち込むのはコートの中に入って打つときだ。ベースラインの後ろから高い打点で打っても意味がない。それよりもボールを落としてシッカリとスピンをかけることのほうが大事だ。そう考えるようになった。特にフォア、打点を前に捕らえることを意識する手段として顔のを前に向け、打点を前にして、顔の前でボールを捕らえるように注意している。もう一つ、これはラリーの中で気がついたことだが、フォアはフェデラーのように手首を柔らかく使って、ヒットの後開放してしまうと、如空の場合スピンがかけにくい。ハンマーグリップで手首にやや力を入れ、ヘッドを立てて、立てたまま、手首に角度をつけたまま振るとスピンがかかりやすい。手首も背屈させるのではなく、やや撓屈気味にしてヘッドを立てて打つと上手くいく。背屈だと手首が固まるが、撓屈気味だと手首は折れ曲がっていても固まらずに柔らかい。振り出すときに程よくヘッドが落ちてくれる。それがスピンの源になってくれる。フォアもバックも余裕のあるときはヘッドをテイクバックで軽く振るようにして待つとリストが固まらずに、柔らかく保ててよい。だがあくまで開放はせずに撓屈を保つと、あたりはやや薄いが、どんなときも回転のかかったドライブが打てる。これで打ち粘れるようになるのだ。

修行は続く。

打ち粘れずに

この前のシングルス大会とダブルス大会で色々と考えさせられた。そして、色々と考えたことを実践してみようと再びシングルの大会に出た。が、見事に予選で二試合とも団子・・・・・1ゲームも取れずに0-6、0-6で負けた。

レベルの高い大会だったので、スコアが一方的になることは覚悟をしていた。だがショックだったのは、スコアが一方的であったことでなく、自分のミスで負けたことだ。ミスで自滅と言っても何時もの自滅とはパターンが違う。ショットはそれなりに入った。サーブもリターンも、もちろんストロークも。自分なりには調子よいというほどではないが、ほぼ練習通りのプレーだった。そして相手もガンガン攻めてきてウィナーを量産して圧倒するタイプではなかった。
「スコアでリードするまでは慎重に」と自分に言い聞かせて長いラリーを展開した。が長いラリーの末に最後にミスするのは如空のほうである。打ち粘れていないのだ。特にコースを変えられ、動かされることが多くなると、こちらが我慢しきれなくなる。二試合とも相手は深い球を打ち続けた。打ち合いの中でこちらは完全にコートの外に追い出されていた。逆にこちらから振っても相手は崩れなった。ネットプレーなど一度なく、ストローク戦だけで試合が終わった。

もっと地道にストロークを固めないといけないね。ラリーで相手のボールは深く安定しており、こちらは最初は安定していても、やがて崩れる。そこを我慢できるようにならなければ。戦術も心構えも、それからだ。

修行は続く。

ワイドのボールを追いかけろ

涼しくなってきたなあ・・・・秋だ秋、テニスには一番いい季節がやって来た。なんて、全ての季節でそんな屁理屈つけてコートに出ているような気がするわ。テニスバカは今日もラケットを担いでコートに向う。

先週のシングルスの練習はワイドに振られた時の対応であった。
「まずは追いて、止まって打つこと。これが基本です。ただ、振られているわけですから、実際止まるのは意識の上だけで、踏み込んだ勢いで打つことになることにと思います。」
「ネットに向いて外側の足をボールのコースの後ろに入れるように踏み込みます。オープンスタンスになりますが、腰は外側を向けておいてください。そして踏み込んだ外側の足で踏ん張って、腰を回す、肩を回す、腕を回す、そしてラケットを振ってボールを打ち返すのです。そして、振り切ったあと、踏ん張った外側の足で体をコートの内側に向けて押し出すのです。そしてすぐにセンターに戻る。シングルスはセンターに戻ることを常に意識してプレーするのです。それを体に覚えこませるのです。」
「今の動きはフォアハンドや両手打ちバックハンドで厚い握りの人は問題なくできますよね。基本はオープンスタンスの捻り戻しで打ちますから。問題は片手打ちバックハンドの人、両手打ちバックハンドでも握りの薄い人です。こういう人はバックサイドに振られたときにクローズドスタンスで踏み込んだ方が上手くいく人もいます。自分なりに試してみて、自分なりのスタンスを身につけてください。」
「バックサイドにクローズドで踏み込んでも、腰は順回転させるのですよ。ジャックナイフのように肩と腰を逆に回転させては打てません。打ててもストレートにしか打てません。片手打ちの人は肩を残して打つと思いますが、腰はある程度回転させないと上手く打てません。バックサイドにクローズドで踏み込めば、右利きの場合ですと右足が外側に出ますね。そこで、踏み込んだ右足に重心を乗せきらずに、内側の後足、右利きなら左足で地面を蹴って、腰を回すのです。足は右足が外、左足が内側にありますが、腰は右腰が外から内へ、左腰が内から外に鋭く回すようにして回転させて打つのです。そして打ち切った後、腰の回転に引っ張られるように内側の左足が外側に出て、体全体が打った方向に向くようにフォロースルーです。そしてセンターに戻るのです。ツアーレベルの選手でもこちらの方が一般的ですね。バックもオープンスタンスで拾いにいくのはナダルやジョコビッチなどの最近の選手の傾向です。」
と解説のあと、ワイドに振られての切り返しの練習が始まった。最初はクロス、次はダウンザライン、コースの打ち分けも要求される。
「中途半端にセンターに切り返してはダメですよ。相手にオープンコートに切り返されるではありませんか。クロスに深く打つか、ダウンザラインに厳しく打つか。そうしないと守りきれませんよ。この地味なショットが、固いディフェンスの元となるのです。追いつくだけではダメです。コースを狙ってきっちりと打ち返してください。追いついてもただ漠然と打ち返しているようではいつまでのディフェンスはザルのままですよ。」
走らされて打つので、何度も繰り返して練習しているとさすがに厳しい。皆肩で息をして、足が言う事をきかなくなってくる。その厳しい状況で、さらに厳しい練習が待っていた。

「追いつけない時、止まれない時、ランニングショットになります。基本はロブで逃げて、センターに戻ることです。踏ん張れないし、体の回転も使えないので、手打ちになります。厚い当たりのボールはまず打てません。ボールの下にラケットを入れて、ポンとボールを上に押して上げてあげれば上に上がります。ただですね、口で言うのは簡単ですが、やはり自分から逃げていくボールをロブで打ち返すのは難しいですよ。ロブが短くなって、相手のチャンスボールになったり、スルスルとネットに出てこられてロブカットされたりします。既に不利な状況にあるわけですが、その状況下で、相手に楽に攻めさせないために、時々ランニングショットでもダウンザラインへウィナーを狙うショットを混ぜるのは効果的です。」
「ワイドに向ってボールを追いますね、そのときベースライン側の足を前に出してボールの距離を測り、ネット側の足を踏み出すタイミングでラケットを振り出します。右利きのフォアなら、右足を踏み出してから左足を踏み出す、そのタ左足を踏み出すタイミングで右腕を前に振り出すのです。そしてそのままラインの外側に走り抜けるのです。ダウンザラインというよりラインの外側から内側を狙う感じです。追いつくために、スピードを落とさないために、ラインの外側に走り抜けます。当然センターに戻るには時間がかかります。追いつかれて、あるいは読まれてストレートを待たれるとがら空きのオープンコートに打ち込まれておしまいです。非常にリスクの高いショットです。だから多用してはいけません。相手を牽制するために使います。使うと決めたら一発でウィナーを狙うつもりでおいきりよく打ってください。」
というわけで、先ほどより更に厳しい球を追いかけ、一発逆転のダウンザラインウィナーを狙う如空たち。しかし、ドカン、ドカンと大砲は放たれるが、当たらない。ネットにかかるわ、あらぬ方向に飛んでいくわで大荒れである。
「リスクを背負ってウィナーを狙う、とはいいましたが、バカの乱れ打ちをしろとは言っていませんよ!」
とすかさずコーチの叱責が飛ぶ。
「ウィナー狙いですが、強い球、速い球が要求されているわけではありません。むしろライジングリターンかブロックリターンでするつもりで、ボールの速度はゆっくりでもいいですから、コーナーを狙ってシッカリと打ってください。」
「追いつくことばかりに気を取られていてはいけませんよ。走り高跳びをするようなつもりで足を合わせてください。足が合えば自然とラケットも出ますから。」

その後もへとへとになるまでワイドへのボールの追い込みをしたあと、ゲーム形式でサーブからポイントを取り合う練習をする。如空は相変わらずサーブが不安定である。見かねてコーチが言う。
「セカンドサーブのトスが近すぎです。回転系サーブを打つにしても近すぎです。トスのボールと自分の体との間に余裕というか空間が足らないのです。その足らない空間の中でスイングするからおかしくなるのです。もっと遠くに、トスを上げて、スイングを振り切ったところでボールをとらえるように打たないと回転系のサーブでも安定しませんよ。」
といわれて、よし試してみようと思ったところで時間が来た。サーブの練習が足らないぞー。ちょっとコソ練か影練がサーブにはいるな。

修行は続く。

回内を使ったサーブの練習

「今日は基本に立ち返って、回内を使ったサーブの練習をしましょう。」
とコーチはレッスンの最初に宣言した。回内をやるとサーブがフラットになりやすくなるのだよ、如空は。回転系サーブの練習をしたいのだけどね。この大会シーズンにサーブが崩れちゃってさあ・・・・・などという如空の心の中の呟きなど、コーチの耳に届くはずもなく、回内を使ったサーブの練習が始まった。

「腕を前に突き出して、肘から手首を結ぶラインを軸にして掌を回転させます。手に平を上から下へ、あるいは内側へ回す動作を回内と言います。逆回転は回外です。ラケットをコンチネンタルグリップで握って、団扇を仰ぐように振ってみてください。これが回内と回外を交互に繰り返している動作になります。」
「回内をうまく使ってオーバーヘッドスイングがスムーズに振ってください。このとき、手首が掌屈させるとスムーズに振れなくなります。掌屈とは手招きする動作ですね。手首を折って掌を伏せる動作です。これは勢いの逃げ場がなくてヘッドのスイングが止まることになります。」
「そこでグリップを短くもって、スロートぐらいで握ってください。グリップが小指の下であまっていますよね。その下に余ったグリップが自分の腕に当たらないようにオーバーヘッドスイングしてみてください。そうすると自然と団扇を仰ぐように手首が動くと思います。それが回内ですよ。スイングの勢いを殺さずに下までヘッドが振り切られるでしょう。スムーズでしょう。でも腕のどこにも違和感がないでしょう。それが回内を使ったオーバーヘッドスイングです。さあ、グリップを余させたままでサーブを打ってみてください。」
とコーチの長い解説が終わり、グリップを短くもってサーブを打つ練習をする。グリップを短く持っている分、いつもより腕を伸ばさなければ打点まで届かない。そのせいもあり、スイングがスムーズだ。回内もよい感じ。しかし、如空のサーブはグリップを短く持って、回内で叩いているつもりなのに、ボールには回転がかかっている。
「如空さん、トスが近すぎ、だから打点が近くてヘッドが振られる前にボールを捕らえてしまって回転がかかるのですよ。もっと前で、遠くで打てばフラットサーブになります。」
とコーチが如空を見て言う。打点を遠くにしてみた。するとフラットになった。フラットの場合は回転系よりヘッドが返る分だけ、スイングしてからヒットするまでのタイミングが長いのだね。ヘッドが返りきる前に打つと回転がかかりやすくなるのか。いいことを覚えた。練習してみよう。

この日の練習はインドアであったので、ヒットの時の打球音がとても響いていいショットを打ったような気になる。それがまたスイングを振り切らせる手助けになったのだろう。その後サーブ対リターンからのラリーと、ゲーム形式をしたがフラットサーブの調子がよくてバカスカ打ってしまった。いかんなあ、こういうときこそ、回転系のサーブも練習して、崩れないサーブを身に着けないといけないのに。

修行は続く。

ポイントを取るための方針、ゲームを取るための心構え

サーブに不安を抱えながらも大会シーズンは続く。次はシングルス大会である。忙しくてテニスは練習不足、もちろんサーブも練習不足で崩れたサーブの修正など至らない。サーブが入らなければゲームにならない。回転系サーブの不安定さに見切りをつけた。フラットサーブを慎重にコントロールしてダブルセカンドで入れていこうと方針を立て試合にのぞんだ。

第一試合の相手はよく知る相手、たまに一緒に練習したりする方である。如空のサービス・ゲームではじまった。体がまだ目覚めていないので、ストロークでミスをして相手にいきなりブレークされた。だがサーブは悪くなかった。今日の如空のフラットサーブは、コントロール重視なのでそれほど速くないが、狙ったところにかなり高い確率で入ってくれる。その後第三ゲーム以降、4ゲーム連続でサービス・ゲームをキープした。だが相手のサーブも好調で一度も如空はブレークが出来なかった。結局最初のブレークが効いて4-6で初戦を落とした。

第二試合の相手は強い人、初戦の相手が「あの人時々全国大会とかにも出ている人らしいよ」と教えてくれた。1-6で負けた。相手が本気を出していな状態なのはよくわかった。一ゲーム取れたのは、相手のサービス・ゲームでこちらがたまたまリターンが連続していいのが入ったからだ。ノードバンテージ方式の大会だったので、一発でゲームが取れたりする。それ以降、相手は如空の手の届くところにサーブを打たなくなった。強い人だ。

「早いよ早い!あなた攻めるのが早いよ!」
と試合終了後の握手の後、強い人は突然堰を切ったように如空に語り始めた。
「もっと組み立ててから攻めないと。すぐに攻めようとして強打してミスしているでしょう。相手に楽させすぎですよ。もう少しラリーして打ち合ってから展開しないと。緩いボールがきても、それが深ければ打っても決まらないじゃないですか。チャンスを待たなけりゃ。相手を動かしてオープンコートを作る、ストロークで押して短いボールをもらう、そこから攻めるのですよ。そうすれば無理なく楽にポイントが取れますって。我慢我慢、チャンスが来るまでは打ちたくても我慢ですよ。」
そういい残して、強い人は足早に報告のため大会本部へと去っていった。

二連敗で予選敗退である。如空は一体何連敗しているのだろう。この大会はコンソレーションがあった。4ゲーム先取である。最初の相手は丸坊主で真っ黒に日に焼けた学生さん、指導者らしき人がベンチに座っている。がんがん打ち込まれて1-4で負かされた。何でこんなやつが予選落ちしてコンソレにいるのだ。それでも如空に一ゲーム取られたことを指導者らしき人に怒られている。

二試合目の強い人といい、コンソレの黒い坊主頭といい、こんな強い連中、如空の出るレベルの大会に出すなよ、とぶつぶついいながら帰り支度をしていると、「そんなに悪くなかったんじゃないの、一試合目はキープ合戦だし、強い相手にも団子を阻止したのだから。」と初戦の相手の知り合いが慰めてくれた。でもね、やっぱ勝ちたいよね。一日に一試合だけでも。

翌週、今度は男子ダブルスの大会である。予選第一試合はこれまたよく知る相手、シングルスでもダブルスでも一度も勝ったことのない相手である。朝早くの試合で、相手はまだ体が目覚めていない。それでも1-6で負かされた。

「根本的にゲームの取り方に差があるのだと思うのですよ。」
とこの日如空と初めてペアを組むことになった、如空より10歳ほど年上の彼が試合後言う。
「技術的には相手は朝一で体が動いていなくて、いつもの凄みがなかったでしょう。デモね、ゲームは落とさないのですよ。40を取るまでは無理しない。慎重につないでいく、ミスをしないことが前提なんですね。でも40取ったら少々危険でもガンガンに攻めて来るでしょう。強いサーブにポーチ、サーブ&ボレーに平行陣からの早い展開。あれでゲームを取るわけです。こちらは対照的にスコアを考えずにプレーしていますよね。ゲームの最初の方で雁行陣から後衛が無理してネットに出たり、難しいロブを強引に下がりながらのジャンピングスマッシュで打とうとしたりして、それでミスしたりする。逆に40取ったりデュースでアドバンテージ取ると軽く勝ちビビリが入って慎重になりすぎてポイントが取れない。だからゲームが取れない。さっきの試合はデュースになることの多い、ポイントでは競ったかのように見える試合ですが、ゲームの差は1-6、やはりゲームの取り方を考えて、スコアでプレイを変えていく必要があると思うのでよね我々は。」
とペアは如空に気を使って「我々」と言ってくれるが、実際彼はそれを理解して自分で実践しているわけで、わかっていないのは如空だけである。如空に「スコアを考えてプレーしようよ」と忠告してくれているのである。

予選の第一試合と第二試合では大分時間が空いて待たされた。おかげで体ががちがちに固くなっていた。それは如空だけでなく、ペアも対戦相手も同じだったらしく、予選第二試合はブレーク合戦で3-2まで来た。如空はようやく回転系サーブが安定するようになり、第七ゲームでキープに成功した。相手もようやくエンジンがかかったのか、第八ゲームをラブゲームでキープされた。如空のペアも調子を上げた。サーブをセンターに集めて主導権を握り40-0に追い込む。「40取ったら攻める。」の忠告が頭をよぎる。ペアがサーブをセンターに入れた。相手が角度のないリターンを返した。如空がそれをポーチして第八ゲームをキープした。5-3になった。相手のサーブである。この彼もサーブの調子を上げた。センターにいいサーブが入る。「40取るまでは慎重に」つないで、相手についてく。デュースになった。この大会はアドバンテージ有りの大会である。ここで攻めることが出来なかった。ディースサイドのペアがリターンの時、ポイントが取れずにアドバンテージ・サーバーの時に、如空はいいプレーでポイントを取り返したが、ペアがポイントを取ってアドバンテージ・レシーバーの時に攻めることが出来なかった。勝ちビビリが入って、マッチポイントを決めることが出来ずにミスで逃した。それが何度も何度も繰り返された。そして最後にこのデュースを取りきったのは相手ペアだった。

5-4で如空のサービス・ゲームになった。サービング・フォー・ザ・マッチである。勝ちビビリで長いデュースの中のマッチポイントを落とした直後にこの場面、はっきり言っていやだった。やりたくなかった。でもやらなくてはならない。先日のミックスダブルスも5-3から逆転負けした。ペアの調子がよかったにも関わらず、如空のサーブで負けた。あれはもう嫌だ。ここを乗り切らなくては前には進めない。勝てるようにはならない。そう思った。

プレッシャーのかかる場面でフラットサーブは打ちたくなかった。この一年ばかり練習してきたのは回転系サーブだ。練習したことをして、その技と心中するなら本望、びびっていても振り切れば入る、それが回転系サーブだ。「ファイブ・フォー」とスコアをカウントすると、慎重にトスを上げてサーブを打った。入った。相手のリターンは緩い。が深い。「我慢、我慢、チャンスが来るまで我慢。」と頭の中で声がする。フォアハンドを振り切ることに専念する。相手が先に我慢できずにラインを割った。15-0になった。次もファーストが入った。深いスライスが返球されてくる。このスライスに先ほどの長いデュースで何度もミスさせられた。膝を曲げろ、腰を落とせ、ラケットを下から上に振り上げろ、ヒューイットもどきバックハンドで慎重に返球する。相手が前に出てきて並行陣になった。「40取るまでは慎重に」と頭の中で声がする。強打のパスを打ちたいのを我慢して、センターに沈めた球を返球した。相手は一瞬どちらかとるか躊躇した。あわてて打ったボレーはネットした。30-0になった。ファーストサーブが外れた。悪い想像が頭をよぎる。「びびっていても振り切れば入る」と自分に言い聞かせてサーブを打った。振り切りすぎた、回転がかかりすぎて、ボールが力なく外側に流れた。が、ライン際で落ちて入った。相手のフォアだ、リターンをストレートに叩かれる、と思って意識が左に行った。しかし相手はフォアのリターンをショートクロスに引っ張ってきた。完全に逆をつかれて如空とペアは一歩も動けない。ショートクロスのボールはしかし、ラインの外側に落ちた。40-0になった。マッチポイント3つである。びびっていても振り切れば入る、と心で叫んでサーブを打った。入った。相手のバックハンドリターンは当てるだけで中ロブ気味の短いボールが返ってきた。ヒューイットもどきバックハンドの準備をして前に詰める如空。「40取ったら攻めろ」と心の声が言う。高い打点からサイドラインめがけて、ドフラットのボールを両手で叩き込んだ。ボールは如空の狙った位置よりも遠くに落ちた。「アウトか?」と如空の目の前にいる相手がペアに聞いた。サイドに抜けたボールを拾って返ってきた相手のペアは両手を横に伸ばして「いや、入っていた。」といって握手を求めてきた。ゲームカウント6-4、久しぶりの試合での勝利であった。

相手と握手した後、緊張が解けて力が抜けている如空の手をペアが強く握った。如空にとっては薄氷を踏むような勝利であったが、彼には「勝って当然」ともとれる妙な自信を感じた。予選リーグでは如空たちを第一試合で負かしたペアが連勝しているので、一勝一敗の如空ペアは予選敗退であった。この大会はコンソレーションもなく、二人は試合後すぐにそれぞれの家族の待つ自宅に帰宅する。

帰りの車の中で、如空の頭の中で、言葉が何度も何度も繰り返される。
「攻めが早い、チャンスが来るまで、我慢我慢」
「40取るまでは慎重に、40取ったら攻撃的に」
技術の問題ではない、メンタルの問題ともいえない。ポイントを取るための方針、ゲームを取るための心構えとも言うべきだろうか。これを人は「テニスにおける戦術」と呼ぶのかもしない。戦術を考えるきっかけを与えてくれた「強い人」と「今日のペア」に感謝しなくてはなるまい。

人によって戦術の中身は違うだろう。持っている技術も性格も違うのだから。如空は自分なりの戦術を見つけられるだろうか。今日は頭に血が上った如空をクレバーにしてくれるペアがいてくれた。ペアに感謝。だがシングルスでは一人でこれを克服しなくてはならない。そうなれるだろうか。変わることが出来るならば、そこには更なる成長が待っているだろう。変わることが出来るならば。

修行は続く。

崩れたサーブ

9月だ、秋だ、スポーツの秋だ、テニスの秋だ、というわけでミックスダブルス1大会、男子ダブルス1大会、男子シングルス2大会の計4大会にエントリーして大忙しの如空である。

この半年ばかり、ダブルスの練習はしていない。スクールでレッスンもあまり取らなくなった。ひたすらシングルスの練習とシングルスの試合である。シングルスとダブルスはかなり世界が違う。試合前に練習はしておくべきだろう。というわけでミックスダブルスのペアと一緒にダブルスの練習会に参加してきた。そこで練習の後にゲームもした。勝ち負けは関係なく、ひたすら4ゲームを繰り返して、ペアを変更して続ける、よくあるダブルスの練習試合である。今思い返すと、そこでノータッチのサービスエースを取ってしまったことが、そもそもの間違いの始まりだったように思う。

ヒューイットもどきバックハンドがうまくいっていて、少し機嫌がよかった。そこで満足していればいいものの、何を血迷ったか、サーブもヒューイットを真似てみようと何の脈略もなく、突然思いついた。練習試合だったので、これは練習練習と打ってみた。いつも指で握るハンマーグリップでなく、掌で握るピストル型グリップにして、右肘を深く曲げて、手首とラケットはあまり角度をつけない。左のつま先の上が打点になるように、打つ瞬間足を前後に大きく蹴り広げ、ラケットを前に放り投げるように打つ。さすがに本物のヒューイットのように一度相手に背中を向けるとこまで体をひねることは出来ないが、頭の中はヒューイットをイメージしてサーブを打ってみた。センターに打ったフラットサーブが2本連続でノータッチエースとなった。その後のその練習試合でエースを含むサービスポイントを量産した。

これがいけなかった。

その練習会以後もそのヒューイットもどきサーブを再現しようとした。しかし出来なかった。再現できなかっただけでなく、元の安定していた回転系サーブまでおかしくなった。打点が狂ったのか、グリップが狂ったのか、よくわからないが、プレッシャーのかかる場面のセカンドサーブで慎重に入れに行き、だからといって固くならずに振り切っているにも関わらず、ボールに押さえが利かずに、ラインをオーバーすることが多発しするようになった。

この如空のとりあえず安定していたサーブは無理やりイメージしてみるならば、ナダルのようなフォームだ。実際の見た目は違うだろうが、如空の頭の中でイメージしていたスイングとフォームはTVで見るナダルのサーブに近い。片手打ちのバックハンドストロークが打てるのではないかと思うほどの内側に角度のついたグリップ。トスアップと同時に利き腕も上げる。利き腕の肘はフェデラーみたいに折りたたまない。伸ばし気味で上げて、ラケットをグリップから後方に引く。そしてラケットヘッドを振って肘を折りたたんで前に振り出す。腰はあまり回さない。足のつま先も横向きよりは前方を向いている。肩がねじり戻され、腕が振り出され、ラケットヘッドが返って、ボールの頭を削る。すると斜め上へボールが打ちあがって、そしてコートに落ちてくる。プレッシャーのかかる場面でもこのルーチンワークをこなして、ボールの上をラケットで振り切れれば、ボールはネットを越えてラインの内側に入ってくれた。

それが入らなくなった、振り切ってもラインをオーバーすることが多くなった。面が上を向いているのかと当たる面を意識するとスイングが固くなって振り切れなくなる。トスが近いのかと思って前にあげるとフォームそのものが崩れた。最初のシングルスの大会で、ダブルフォールトを連発した。一ゲームに一回はダブルフォールとしてしまう。入らない現実の前に自信を失い、自信を持って打っていないので、ますますサーブがおかしくなる、そんな負のスパイラルに入っていく。どんどん確率が下がっていく。

ミックスダブルス大会の予選第一試合はそれでも最初のサービスゲームはサーブが入ってくれた。この日は少し自信があった。サーブでなく、それ以外の部分で。一つは例の「フェデラーのフットワーク」の練習を地道に続けたおかげでネットでの動きがよくなって、ネットプレーに自信があった。如空はこれまで上半身に頼ったボレーをしていたようだ。ステップして二歩以上動いて打つ、この単純な動作でネットプレーの精度がかなり上がった。だから自分の守備範囲でのボレーはいつもより自信があった。実際、ネットプレーはうまくいっていいポイントが取れた。もう一つはヒューイットもどきのバックハンドのおかげでバックサイドのリターンとストロークに安定感があった。アドバンテージサイドを担当する如空にとってこれはよき自信になる。サーブから攻め込まれても支える自信につながる。実際バックハンドでのリターンミスはほとんどなかったし、フォアのリターンよりバックから打ったほうが攻めにつながった。また如空のペアのフォアが調子よく、短い球のアプローチで素晴らしいショットを連発して、ポイントを稼いでくれた。相手のミスもあってリードして5-3まで来た。後一つゲームを取れば勝てる。だがその後、如空のサービスゲームでダブルフォールトを二回してキープにいたらず、相手のサービスゲームをブレークできず、3ゲーム連取され、逆転を許した。如空のサーブで負けた。それ以外がいい調子であっただけに悔しかった。
予選二試合目の相手はかなり格上で、一ゲーム取るのが精一杯であった。それでも如空のサーブが入っていればもう少し試合らしくなっただろうと思う。

まだまだ大会は続く、早いところサーブを何とかしなくては。

修行は続く。

ヒューイットもどきバックハンド

8月の中旬から一ヶ月近く「修行」の記事を更新してこなかった。理由はただ単に忙しかったからである。テニスはしていた。練習にも参加しているし、試合にも出ている。だが記事を書いてUPする時間がなかった。特にオリンピックだ、No1交代だ、全米だとイベントが続き、テニスのTV観戦・ネットチェックの頻度が上がり、「観戦」の記事をUPするだけで時間が一杯であった。選手のためだけでなく、観戦する立場からも、もう少しツアーのスケジュールを緩やかにして欲しいのもだと思う。

シングルスの練習ではこの一ヶ月、深い球と浅い球を交互に打つ練習をしている。昔もよくやった。深いボールをクロスにつなぐ、浅いボールはストレートに強打する。それをフォアとバックで交互に打つ4連打だ。2セット連続なら8連打、3セット連続なら12連である。走って、止まって、打って、そして走ってを繰り返すので、見た目よりはるかにハードだ。4連打でもきつい、8連打は限界、12連打になると3セット目はほとんど追いつけて打てなくなる。そんな練習である。

この練習をするとバックハンドが苦しい。打てる打点が狭い上に、如空の場合両手打ちなのでリーチも短い。それゆえにフォアハンド以上に走らなくてはならない。このところ両手バックハンドは肘を曲げて五角形を組み、それをバケツで水を放り投げるように打つ打ち方をしていた。如空がよく「女の子打ち」と呼ぶ打ち方である。でもさすがにリーチが狭くて、このような振り回しをやられると届かない。腕も届かなければ、脚も追いつかない。苦しくなって、両肘を伸ばして腕と胸で三角形を作って打つ打ち方にして打ち返した。この打ち方は、リーチも長くなるし、打点も前に取れるが、準備を早くしないとうまく打てないし、ドライブがかけ難く、ドフラットになりやすい。強打すればフラットのボールが行くので、短い球をストレートに打ちこむのにはいいが、下がりながらの深いクロスへの切り返しは、回転がかからず、無回転の中ロブみたいなボールしか飛ばなくなる。しっかり打つとオーバーしてしまう。まるで初心者だ。
「如空さんのバックは手首ががちがちです。ヘッドが立ったままスイングされていますよ。もっとやわらかく握って、スイングの勢いでヘッドが一度落ちて、そして振り上げられるようにヘッドが立って、そこでヒットするとドライブがかかりますから。」
と、コーチは言う。わかっていてもうまく出来ないのよ、これは昔から。それでも何とか試してみる。立てたヘッドがスイングの勢いで落ちる・・・・ってやると手首がぐらぐらになって、打つ瞬間の面もぐらぐらする。もう少し、両手を前に押し出す形で構えて、握りを緩くして振ってみよう・・・・振り遅れた。準備が遅い。一度前に構えて、そして、引ける分だけラケットを引いて、そして振ってみよう・・・・・げ、上半身が固まって振れない。体幹部が固いわ。無理に体を回すと横振りになる。両肩の入れ替えを意識してみよう・・・・・両腕を突き出して構えて、引いて、右肩を引いて左肩を押し出す・・・・お、いい球。ドライブが打てた。打球感もいい。よしよし、構えて、引いて、両肩を入れ替えて、握りは緩く・・・・いい感じじゃないか。左腕を伸ばして、一度構えてから引いているので、如空の頭の中のイメージはヒューイットのバックハンドのイメージを再現した。見た目はかなり違うのだろうが、自分の頭の中ではヒューイットになりきってバックハンドをせっせと練習した。

帰宅して窓ガラスに映る自分の姿を確認しながらそのヒューイットのつもりバックハンドを素振りしてみた。違う、ヒューイットじゃない。ヒューイットは左肘が伸びているが右肘は曲げている。それに、左の握りはもっと薄くて、手首とラケットにあまり角度がついていない。如空の打ち方だと両肘が伸びているし、握りが厚くて腕とラケットの角度がきつい。打点をかなり前に取らないとこの打ち方では打てない。だがとりあえずドライブがかかる。シングルスでバックハンドラリーをする分にはちょうどよいかもしれない。

8月に一度シングルスの大会に出てきた。見るも無残に二連敗して予選敗退した。相手も強かったが、それ以前に自滅である。フォアも崩れ、サーブも崩れた。相手ががんがん打ってくるタイプだったので、頭に血が上って、練習不足なのに無理して強打しようとして、ミスを多発させた。このところ、フォアの調子が悪くてもサーブだけはダブルフォールとせずに安定させていたのだが、この日はサーブも崩れた。散々だった。

そのシングル大会は予選敗退者用のコンソレーションがあった。4ゲーム先取のお徳版ってやつである。コンソレの相手もがんがん打ってくる相手だった。ネットにもがんがん出てくる人だった。そして如空のバックにボールを集めていた。如空はサーブもフォアも崩れていたが、バックだけは安定していた。例のヒューイットもどきバックだけは崩れなかった。相手がバックにボールを集めてくるので、自然とバックハンド主体のゲームとなった。コンソレも練習と割り切ってフォアをなんとしたかったが、スコアが競っていたので、途中でバックハンドだけでストローク戦をしてやろうと考えた。右コーナーに入ったボールだけフォアのスライスを打つ。左コーナーはもちろん、センターは回りこみのバックハンド、短いボールも出来るだけバックで打ってアプローチ、リターンもバック主体で返球した。そしたら4-3で勝った。ブレーク合戦の末の結果だった。

コンソレ二試合目の相手は左右に振ってくるタイプだったので、バック主体に試合を運べなかった。それどころか、途中から如空のフォアにボールを集めてきた。こちらの弱点はすぐに相手に知られるのだね。2-4で負けて、その日は終わった。

ヒューイットもどきバックは頼もしい。強打は出来ないが、安定してつながる。試合中悩まなくていい。何よりリターンで強い。ブロックリターンも出来るし、余裕があれば、コースを狙って打てる。当分バックをこれで安定させて、フォアとサーブの修正に励むことにしよう。

修行は続く。
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