電脳網庭球寺 僧房

テニスの修行僧如空の修行の日々とテニス観戦記を綴る

ナダル

赤いウェアと黒いラケット 全米四日目

ガスケが不戦勝で終わったって、何が起こったのだろう・・・・他には特に波乱もなく順当な全米四日目である。

WOWOWの進行役ダバディ氏は例によって地元新聞の記事をピックアップして大会関連のニュースを取り上げている。その中でシャラポワのこの大会のウェアは過去のウェアの中でもっとも評判が良いとの話があったが、如空も同感だね。このブログで何度か述べているが体格があってスタイルのいい人はごてごてした衣装ではなく、シンプルな形状のウェアの方が良い。他者との差別化して個性を出すのはカラーリングや素材ですればいいのだ。

ところでこの大会のヒンギスを見て気づいたのだが、彼女のラケットはヨネックスでなくなっているのではないか。ヨネックス特有の六角形フレームではない。ストリングにマーキングしていないだけなく、フレームも真っ黒でメーカーのロゴが写真からは確認できない。ステパネックだけでなくヨネックスとも別れたのかヒンギス。あのラケット、どこのメーカーなのかすごく気になる。

WOWOWアナログの録画中継は杉山とナダルだった。

杉山は予選上がりにフルセットの末敗退した。ミスとウィナーをお互い繰り返す波の激しい試合にだった。一回戦では安定したクレバーなテニスを見せた杉山は二回戦でも予選上がりの格下マカロワが相手となり、順当に三回戦に進出し、そこでのエナンとの対決が期待されていた。だが解説の神尾米氏によると試合前の練習ではぴりぴりしていたらしい。マカロワは左利きだがそれを生かすようないやらしい回転をかけてくるタイプではなく、むしろロシア勢の王道を行く低い弾道のフラットなハードヒットで相手を押し込むタイプであった。一回戦では同じような相手を見事に封じ込んだ杉山であったが、この日は乱調、第二セットで主導権を握ったのだが、最終セットでまた押し戻された。技術や力がどうという前に杉山は精神的にやや不安定であったように思う。彼女らしくない苛立ちの表情と叫び声が何度も見られた。

ナダルは膝の故障を抱えながらの全米参戦となった。他の大会なら棄権していると言っているほどの重症らしい。コーチと話し合って「出来るだけ動かずに勝ちに行く」という方針で臨んだらしいが、動きこそがナダルの生命線だろうに大丈夫だろうか。試合そのものはアナログでは第一セットと最終セットしか放送されなかったが、ナダルの動きのそれほど問題があるとは見えなかった。だがショットの威力に頼っていたのは事実だ。回復してくることを切望しよう。


フェデラーのガリア戦記2007 変わらぬままのコート

フェデラーのファーストサーブは際どくフォールトになった。ナダルはセカンドを厳しい角度にリターンしてフェデラーにミスを誘う。二ポイント目もセカンドになったが、今度はナダルがフォアをふかしてエラーした。お互いの手の内を知り尽くしている、宿命のライバルの対決は、静かに幕を開けた。

2007全仏男子決勝
ナダル 63 46 63 64 フェデラー

フェデラーは予想通り早い展開の攻めを見せる。肩を入れてのスクエアスタンスからの高い打点で叩くフェデラーのフォアの逆クロスが火を噴く。第四ゲームでナダルからブレークポイントを二つ手にした。だがナダルもギアを上げる。体を開いてのオープンスタンスからボールを落として低い打点で打ちぬくナダルのフォアの逆クロスが逆襲する。ディースに押し戻し、サービスゲームをキープした。第六ゲームでもフェデラーにブレークポイントが来た。だが今度はナダルがサーブの力でディースに戻すが、取りきれない。長いラリーが続き、ディースが繰り返される。フェデラーのライジングからの切り返しが冴え渡る。だが、ナダルは奇跡的なランニングショットでそれをさらに切り返し、最後に結局サーブの力で乗り切った。ピンチの後にチャンスあり、3-3でフェデラーのサービスゲームである。フェデラーがここでミスを連発してラブゲームでブレークされた。その後のナダルのサービスゲームで今度はフェデラーが0-40でまたブレークポイントを握る。が、そこからのポイントがフェデラーは取れない。崩れないナダルはまたもやこのピンチを乗り切りサービスゲームをキープした。さらに、フェデラーのミスは続く。第九ゲームでナダルにまたブレークポイントをつかまれてしまう。ナダルはこのチャンスでフォアの逆クロスを鋭く決めて、第一セット、6-3でナダルが先取した。10回あったブレークポイントをミスで潰したフェデラーに対して、たった二回のブレークポイントを二本ともブレークに成功した、ナダルの見事な集中力であった。

ナダルのトップスピンは、縦回転だけでなく、時に横回転も加わり、相手を惑わす。タイミングで打つフェデラーにはその処理が、他の選手より苦手なのかもしれない。この3年間で何度も対戦していながら、相変わらず、ナダルの回転にショットを狂わされて対処できずにいる。第二セットでもフェデラーは先にブレークポイントのピンチを自ら呼び込んでしまった。だが今度はサーブの力で乗り切った。ファーストの入りが悪かった、フェデラーのサーブが入りだした。いいサーブからの連続攻撃が決まり始めた。ネットに出て行く。第七ゲームでも果敢に攻めるフェデラー、ついにフェデラーがブレークに成功した。次のフェデラーのサービスゲームでフェデラーはやや不安定でブレークポイントをナダルに握られる。ファーストがまた入らなくなってきている。だが乗り切った。この日、フェデラーはバックハンドスライスを高い打点からストレートに入れてアプローチする戦術を多く採用している。このピンチも最後はこのバックのストレートへのアプローチがそのままポイントになった。5-3でナダルのサービスゲームをさらにブレークポイントまで追い詰める。だが、最後の一本をフェデラーは決められない。長いディースの末、ナダルに守りきられた。次のサービブインフォーザセットをフェデラーはすごい気合でラブゲームキープにて取った。

第三セット第二ゲーム、フェデラーのサービスゲームをナダルがブレークした。攻め込んだフェデラーが逆襲されて落とした。その後、ナダルはこつこつと自分のテニスをして、自分サービスゲームをキープして、6-3でナダルが第三セットを取った。

第四セット第三ゲームで、ナダルがまたもやブレーク。ここで勝負は決まった。ナダルはそのままサービスゲームをキープし続けた。サーブインフォーザチャンピオンシップス、フォアの逆クロスでマッチポイントをつかんだ。。ナダルのフォアの逆クロスをフェデラーがストレートに切り返したが、その軌跡はラインを割った。6-4でセットを取った。ナダルの全仏三連覇が決まった。

第一・第二セットでブレークポイントを何度もつかみながら、自らのミスで失っていく。第三・第四セットではそのブレークポイントそのものが一度しか来なかった。ラリーがそれほど長くもなく、TBまで競ったわけでもないのに、試合時間が長いのは前半で長いディースがあったからであり、そのディースをほとんどものに出来なかった。ナダルの待ち受ける城塞に攻め込みながら、攻めきれずに、ミスを重ねた。攻めていてもフェデラーは攻めきれなかった。一方でナダルはまったく崩れなかった。それだけでなく、ナダルのトップスピンはフェデラーのストロークを崩し、ネットでもミスさせた。そしてここぞと言う時に出す、サーブとフォアの強打は必要なときにナダルに欲しいポイントを与え続けた。磐石にして鉄壁、不動にして揺るがず、攻めに転ずればその強打は矢のように射抜く、赤土の上の要塞は依然として落ちなかった。

フェデラーが見極めたと言っていた対ナダル対策とは何であったのだろう。全仏に入って多用した、ライジング打法を積極的に使った早い展開のラリーはほとんど使われることがなかった。高い打点からのハードヒットに相変わらず固執していた。変則的回転のかかった高く弾むナダルのスピンボールをうまく処理できずにミスを重ね、主導権を握ないまま試合が進むという、対ナダル戦におけるフェデラーのいつもの負けパターンであった。ナダルのトップスピンがハンブルグ以上で対ナダル対策を出せなかったのか、あるいは対ナダル対策は実行できているのにナダルが崩れなかったのか。敗因は良くわからない。ハッキリしているのは皇帝のガリア制覇はまた持ち越されたということだけであった。

城塞はより高く

2007全仏男子単準決勝
ナダル 75 64 62 ジョコビッチ

第一セット、ナダルが2ブレークで先行した。そこからジョコビッチが盛り返した。ナダルのサーブインフォーザセット破り、5-5にまで戻した。波に乗るジョコビッチ、いや波乗ろうとしたのだが、乗れなかった。ナダルが乗せなかった。ナダルの脚力とカウンターが、ジョコビッチの決まったと思うショットを切り返してウィナーを奪い、ジョコビッチを振り切った。第一セットは7-5で結局ナダルが取る。

第二セット、ジョコビッチはいいテニスをしている。長いラリーでナダルに負けていない。だが勝てない。主導権を握れそうで握れない。ナダルの鉄壁のディフェンスを崩しきれずに、1ブレークを逆に許してしまう。その1ブレークをナダルは守りきり、6-4でナダルが第二セットも取った。

第一・第二セットを連取されてしまい、ジョコビッチの気持ちは挫かれてしまった。第三セット初頭、覇気のないジョコビッチに、ナダルは難なくポイントを積み重ね、4ゲームを連取した。観客からジョコビッチの踏ん張りを期待する応援の拍手と声援が沸き起こる。ジョコビッチは声援にこたえようとして、懸命にボールに食らいつくが、ナダルは動じることなく、ギアを上げて、ジョコビッチを振り切り、第三セット6-2で試合を決めた。3年連続決勝進出である。

実にナダルらしい勝ち方であった。強敵の猛攻をしっかりと受け止めて、守りきり、攻め切れない対戦相手が崩れていく。そこにフォアとサーブの強打を出してとどめを刺す。難攻不落、赤土の上の要塞ナダル城は今日も健在だった。はたしてこの高い城塞を皇帝は攻め崩すことが出来るのだろうか。

今年もまた、天は両雄を決戦の場へと導いた。勝利の行方は何処に。

小さな事からコツコツと

2007全仏準々決勝
ジョコビッチ 63 63 63 アンドレーフ
ナダル 64 63 60 モヤ

淡々とポイントを積み重ね、ピンチになっても揺るがずに強い気持ちで乗り切り、チャンスには恐れず挑んでリードを奪う。そうしてジョコビッチは3セットをまったく同じスコアで取り、フォアの強打を売りとするアンドレーフを退け、自身初のグランドスラムベスト4進出を決めた。一方でナダルも、セットが進むにつれ調子を上げていったが、基本的には黙々とポイントを積み重ねて、親交の深い先輩モヤを下して、3年連続SF進出を決めた。

ジョコビッチとナダル、スコアに若干の勢いの差を感じはするが、基本的にこの二人の試合には同じ印象を受ける。ポイントをこつこつと積み上げていく。ピンチに動じず、チャンスに平常心で挑む。揺るぎない自信に支えられた自分のテニスを貫き通すその姿勢。単調でベストオブ5セットだとやや退屈な印象も受けてしまう。だがそれがテニスというスポーツの本質であろう。一発逆転はない、ポイントを積み重ねていく先にしか勝利はない。地道なその作業を黙々とやり続けるものにしか勝利は訪れない。それが出来たものが勝つ。

SFでナダルとジョコビッチがあたる。去年もこの二人は当たったが、そのときはジョコビッチが体調不調で棄権してしまった。未完の対決に決着をつけるいい機会である。今まではランキング的に格下相手の試合であった。ここにきて両者共に、ようやく強敵といえる相手と相対することになる。その地道なテニスを最後までやり通せるのはどちらか。試合の流れは非常に読みにくい。接戦となるか、一方的な展開となるか、その行方に注目しよう。

Less is more

MSハンブルグでヒューイットがナダルから1セットもぎった事は大きなニュースであるらしい。ネットでもWOWOWの解説でもそのことが盛んに述べられていた。ハンブルグ決勝でのフェデラーによる打倒ナダルは準決勝でのヒューイットの対ナダル戦略がヒントになって達成されたものだという人もいる。それが事実であるかどうかわからないが、ヒューイットがナダルに対して予想以上に高いハードルとなると多くの人が予想していたようだ。だが、ナダルはその予想を裏切った。

2007全仏4回戦
ナダル 63 61 76 ヒューイット

ナダルのバックハンドにボールを集める、長いラリーを避けて早いタイミング・ライジング・高い打点・厳しい角度という組み合わせの強打を打つ。ヒューイットは実に自分の立てた対ナダル戦略を忠実に実行した。一方のナダルは相変わらずフォアの強打と威力のあるサーブは封印して、スピンボールの配球のみでヒューイットに対抗する。恐ろしいもので、今のナダルの戦術家としての力量はヒューイットをもしのぐ。ナダルは見事な配球の妙で淡々とポイントを積み重ねる。一方のヒューイットはリスクを背負っての連続ハードヒットを行っているので、代償として確率の悪いテニスになる。とくにファーストサーブの入りが悪かったのが響いた。ヒューイットがノーミスで打ち続けていらる内は、ヒューイットにもいいポイントがあったのだが、ナダルに落ち着かれて取り組まれると、ヒューイットに無理が出て、ヒューイットのほうが崩れてしまう。第二セットまではナダルの万全のテニスを崩しきれずにヒューイットの方が崩されていた。徐々にナダルのスピンボールにタイミングを合わせ始めたヒューイットは第三セットでようやくナダルを捕まえる。つかまったナダルは、小出しにしていたフォアの強打と強いサーブをここで集中させ、TBでヒューイットを振り切った。21歳の誕生日を迎えたばかりだが、その戦術の老獪さは現在のATPツアー屈指といえよう。今日も赤土の城砦は健在であった。見事な勝利である。

戦いにおける強さとは、武器の種類、攻撃のオプションの多彩さで決まるのではない。持っている武器の効果的な使い方によって決まる。ナダルの持っている武器はたとえばフェデラーなどに比べるとはるかに種類は少ない。だが、ナダルはその少ない武器を駆使して、戦術的駆け引き優れるヒューイットをしのぐほどのテニスを展開して、そして勝った。

建築の世界には「Less is more」という言葉がある。近代建築の巨匠の一人、ミース・ファン・デルローエの言葉でモダニズム建築の本質を語る言葉として知られる。「より少ない事はより豊かなことである。」というこの言葉に機能美の本質が隠されている。ナダルのシンプルにして単調に見えるテニスを人によっては「つまらない」といい、全仏の観客は「美しくない」と時にブーイングを浴びせる。だがその戦術の妙を見よ。あれこそが「Less is more」をコートの上で体現したテニスだ。皇帝フェデラーとは対極にある、だがそれでも、別の種類の「美しいテニス」である。ナダルはそのテニスで全仏三連覇に向け突き進む。

これで男子もベスト8が出揃った。QFは
フェデラー対ロブレド
カナス対ダビデンコ
ジョコビッチ対アンドレーフ
ナダル対モヤ
である。
バクダティスが4回戦で負けてアンドレーフがあがってきた。好調ジョコビッチにどこまで対抗できるか注目である。だがなんとなくSFはフェデラー対カナス、ジョコビッチ対ナダルになりそうな予感がするな。そして、誰しもがフェデラー対ナダルの決勝を確実視する中で、SFが予想外の大激戦になる予感もする。果たして、如空の予感通りに事は運ぶだろうか。あるいは波乱はあるのか。いよいよ全仏はQFである。熱戦を期待しよう。
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