著者の一人 佐藤哲也氏(宮城教育大学教育学部幼児教育講座教授)は、今年の全国教会幼稚園連絡会園長・設置者会 講演者でした。
 キリスト者として、現代の教育の課題に応答する有効な提言と考えます。
編者の田中昌世氏もキリスト者(故人)です。

家庭団欒の教育学 鈴木昌世編著_ページ_001

『家庭団欒の教育学』田中昌世編著 福村出版 
「はじめに」より
「孤食」「個食」など、いま日本の子どもの食をめぐる環境は著しく悪化しています。その影響は教育の現場にも広がり、高校では「自宅から弁当を持参する生徒が減るにしたがい、クラスの雰囲気が次第に荒れてくる」と報告されています。また、保育現場からは、家庭団槃の時間が不足すると園児の情緒が不安定になりやすいという報告もあります。これらの報告は、これまでほぼ常識と考えられていた「子どもの健全な成長には家庭団槃が不可欠である」ことを裏付けるもののように思えます。しかし、私たちが子どもの頃の昭和の家庭団槃と現代では、その様相が大きく変化していることは想像に難くありません。そのため、現代の日本において家庭団槃とはどのようなものなのかを見直したうえで、子どもの健全な成長のための家庭団槃を考える必要があります。


第1章「理想の父親像をめぐる歴史的断章」
(1)父親になること、父親であること
(2)〈厳父〉〈頑固親父〉〈賢父〉の原像
(3)〈育児なしの父親〉の登場
(4)父親たちの現代史

第2章「母親の役割――子どもを成熟した大人に育てるために」
(1)人間は母に何を求めているのか――母なるものとの出会い
(2)母親役割が果たされるために必要なもの
(3)重要な他者――かかわりのうちに自分を知る
(4)愛する技術――あなたと接する人があなたの愛を感じられるように愛する
(5)受け止める心、そして待つ心――佐藤初女の「母の心」
(6)世界平和のキーワードとしての母性原理――聖母信心という現象からみる母性への希求

第3章「家庭団欒における母性の役割――対話における「共感的理解」を中心として」
(1)母性とは何か?
(2)母性と子どもとのかかわり
(3)家庭団欒における親子のコミュニケーション

第4章「子どもの物語からみた家庭団欒」
(1)家庭での温かなことばのやりとり
(2)家庭のなかでの絵本
(3)子どもに寄り添う物語

《コラム1》「思春期を生きる」子どもへのかかわり――今日的な「子育ての課題」に関する臨床教育学的考察

第5章「伝統的な食事という価値――和食文化の食卓」
(1)健康的な食事を子どもに
(2)自然と地域の恵み
(3)和食と食卓

《コラム2》「算数苦手? 家庭団欒を通して算数好きな子どもに育てよう」

第6章「宴としての家庭団欒――音楽のある家」
(1)音楽のある家
(2)わらべうたと子育て
(3)音楽は家族をつなぐ
(4)音楽は家庭を超えて

第7章「障がい児によって育てられる家族――不朽の価値を伝えるもの」
(1)わが子の障がいを受容するまで――ダウン症のWちゃん
(2)障がい児の兄弟姉妹から学ぶ――「父、母、姉、弟の四人家族」
(3)地域みんなで子育て――「地育教育」という形
(4)羊水診断について――女子高校生との対話
(5)価値をきめるものは、命? 形?――保育現場からの報告
(6)障がい受容から家族の再構築へ

《コラム3》「受験社会と子育て」

第8章「価値を伝える場としての家庭団欒」
(1)なぜ家庭は価値を伝える場なのか
(2)家庭団欒の条件 1
(3)家庭団欒の条件 2
(4)家庭団欒の結果

第9章「家庭団欒を維持するための知恵――地縁に支えられ、新しい息吹(風)を家族に」
(1)家族の多様と団欒の変化
(2)地域と家族の新しい関係へ
(3)地域の祭りと家庭団欒
(4)世代を超えた子育てと相互理解への取り組み

第10章「日本の伝統や文化の伝承者としての保育者」
(1)子育ては「文化」
(2)文化の伝承が途絶えてしまった「家庭」
(3)子育て文化が残存している「保育現場」と伝承者としての「保育者」

終章「ゆるしの場としての家庭――イタリアの家族の事例から」