人力雪かき→除雪車→ロードヒーティング。これが文明進歩の常識でしたが、これからは逆戻りになりそう。エネルギーコストが高い時代を迎えても仕事にありつけるように、寒さやハードワークにも耐えられる体をつくっておきましょう。手先の器用さも大事。自炊食への取り組みが全ての入り口です。

■雪かき作業は誰がする?
 正月に北海道の実家で久しぶりの雪かき作業をしながら考えたことです。原子力が当分駄目だということが分かり、途上国が経済発展すれば石油も当然高くなるでしょうから、ロードヒーティングのようなぜいたく三昧は消えていくのでしょう。

 雪国の自治体が、当たり前のように税金で運営していた除雪車のような行政サービスも、石油が人件費より高くなれば大幅に縮小されるはずです。バス路線だけは除雪車で行い、あとは各自が家の周りを除雪しましょうねとなるでしょう。

 車の交通量もめっきり減って、皆がバスや電車など公共交通機関で動くようになれば、それで済んでしまう社会になるのです。郊外の自然豊かな住宅地から街なかに戻って職住接近の生活をする、いわゆるコンパクトシティーが実現すれば、除雪エリアは狭まり、暖房効率、物流効率が上がり、公的な支出も下がるはずです。下げない自治体は破たんするだけ。

 さて、そうなったときに、人力で雪かきをするのは一体誰なのだろうかと、カラスヒコは雪かきをしながら考えていました。その答えは、中国をはじめとするアジア各国からやってくる移民だろうと思うのです。ほかに考えられません。

 移民の受け入れはこの国にはなじまないという考え方をする人が非常に多いのですが、おそらく、残念ながら、そんなぜいたくは言っていられなくなると思います。例えば、この国で大量に余っている団塊から上の高齢者労働力の大半は体が思うように動きません。

 中年以下の労働力も、生活習慣病が進んでいる上、ボタン1つのデジタル生活に慣れ、マニュアルで処理できない面倒なことは何でも外注してきたせいで、手先の技術や段取り能力をかなり失っているからです。

 昨日書いたような肉体的な「退化」が少ない人でも、知能や習慣の「劣化」がはなはだしい人は結構多いのです。まあ、カラスヒコ本人もあまり自信はありませんが。

■途上国的生活を想定
 ただ、仮に輸出型の企業が全部出て行ってしまっても、この国には勤め口はちゃんとあるのです。徳川家広さんが『自分を守る経済学』(ちくま新書2010年)という本で述べているように、少子化で生産人口が減り、相対的に消費ばかりする高齢人口が増えるのですから。もちろん、非マニュアル的でアナログ主体の肉体労働が多くなりますが。

 また、社会の省エネ性を高めるための産業、例えば、武田邦彦さんが『放射能列島日本でこれから起きること』(朝日新書2011年)という本で提唱する都市ドームの建設などによって、幅広い関連産業が活性化する可能性もあります。20世紀型の消費と成長ありきの活性化ではなく、消費を抑え、成長しなくてもやっていける経済モデルです。

 国内に残った企業は、そんな社会建設を担う有能で健康な労働者を多数必要とするのですが、日本人が不甲斐なければ移民を受け入れるよう政府に圧力をかけるでしょう。安くて優秀な労働力が近場にたくさんあって、しかもその国では人口が多すぎて困っているのですから。

 だから、私たちは彼らと競合・共存する覚悟を固めないといけません。バブル時代の延長のようなきらびやかな未来をイメージしていると穴に落ちます。おととい書いたように、私たちの頭はまだ「竜宮城」にあって目覚め切っていない。それが非常にまずいのです。

 腰の痛い思いをしながら雪かきに精を出し、自転車通勤をしたり、夏に生ぬるい水を飲み、眠い目をこすりながらおにぎりを作って暗いうちに出掛けたり、そんな「途上国的な」生活も想定した肉体づくりが必要なのだろうと、カラスヒコはマジに考えています。

 そういう説教くさいことを言い出す候補者がいれば喜んで投票しようとも思います。「廃炉」の後の生活はきっと肉体ベースです。耳にやさしいだけの選挙公約はもう結構。心と体をサムライ化して乗り切っていくのみです。

 ではまた。