調理のプロを目指すのではなく、健康目的で自炊する人なら、包丁は「三徳包丁」が1本あれば十分です。プロのように本格的な研ぎ方を学ぶ必要はありません。写真のように軽く手を当てて、向こう側へ7、8回。包丁を裏返してこちらへ2、3回。これで十分切れ味が戻ります。

■砥石アレルギーを捨てる
 三徳包丁とは、出刃包丁や刺し身包丁とは違って、何にでも使えるスタンダードモデルですから、プロを目指す人からは「邪道」扱いされることがあります。でも、私たちはしょせんアマチュア。毎日のおかずさえ切れればいいと割り切って、これ1本でいきましょう。

 問題は、切れ味が落ちたときにどうするかです。やはり砥石で研ぐのです。お手軽な「研ぎ器」、つまり刃に沿って包丁の根本から先へススーッと滑らせて研ぐ道具がありますが、あれはかえって難しいです。角度や力が一定に保てないからで包丁とぎす。

 また、スーパーの店頭などで、「研ぎの日」と銘打って、業者が来て研いでくれるサービスがありますが、あれは昼間だけ。忙しい私たちにはちょっと利用しづらい。仮に休みの日だったとしても、包丁を持って外出するのも、なんとなく嫌ですよね。やはり普通の砥石を使うべきなのです。

 しかし、「砥石なんか使えないよ」と思う人がほとんどです。カラスヒコもそうでした。砥石はプロが使うもので、荒砥・中砥・仕上げ砥の3種類を順番に使いこなす高度なテクニックがいると思っていました。

 でも、プロはプロ。私たちの素人自炊には「中砥」が1個あれば用は足りるのです。ホームセンターなどで千数百円程度で売っています。写真のように、指で刃を押さえ付けるようにして、向こう側へ7、8回押し、次に刃を裏返してこちら側に2、3回引く。これだけで断然切れ味がよくなるのを実感できます。

 刃と砥石の角度は20~30°くらい。事前に砥石をたっぷり濡らしましょう。砥石の表面は水をよく吸いますから、乾かないうちにさっさと研ぐのがコツ。7、8回こすりつけると、刃の下側から削り取られた金属のくずが、目には見えませんが刃の上側にはみ出してきます。裏返して2、3回引くのは、そのくずを取り去るためなのです。

■マスコミにあおられて
 たったこれしきの作業(時間にすれば30~45秒くらい)を、2週間に1度くらい、食器洗いの後にでもやれば効果は十分です。刃の先端寄りのアールのついた部分ばかりではなく、根本に近い直線部分までしっかり研いでおけば、リンゴやニンジンの皮むきも快適になります。三徳包丁が1本あれば、実はフルーツナイフもいらないとカラスヒコは思っています。

 私たちの包丁離れの原因は、マスコミにあおられている部分が大きいと思います。プロの板前の包丁さばきを華々しく持ち上げ過ぎるので、素人がびびってしまうのです。プロにとっての包丁が神聖で美しい日本刀のようなアートだとしても、私たちが毎日ネギを刻み、アスパラの皮をむく地味な調理にも、マスコミはもっと光を当てるべきなのです。

 豆ごはんにも同じことがいえます。料理のプロは、豆は一晩水に浸けて、翌朝30分もかけて差し水をしながら甘く煮込むのが本物だと言い、テレビの料理番組もそれを「正統」として紹介しますが、みんな忙しいから、結局豆離れを起こしてしまいます。

 それなら、たとえ我流でも邪道でも、包丁離れ、豆離れを起こさずに、ゲリラ的に日常の素朴な調理を継承するほうが、少なくとも体にはいいだろうというのが「サムライごはん」の考え方。プロの華麗なワザや繊細な味とは目指すところが違うのです。

 「包丁は危ないから子どもには使わせない」というのは完全な間違いです。正解は、包丁の正しい使い方を教えて、カット野菜や冷凍食品を「危ないから子どもには使わせない」です。

 ではまた。