震災後に「内食志向」が強まったという話はよく聞きます。でも家庭の食事を大切にと言いながら、「総菜のもと」を使って豪華なメニューをちゃちゃっと作るのはおかしな話。内食志向ではなく「内食の外食化」です。絆を強めるのならもっと「わびしい」食事を大事にすべき。煮干しと乾物だけのみそ汁とか。

■「ワンランク上」の味の中身
 「総菜のも総菜調味料1112と」「総菜調味料」などいろんな言い方がありますが、要するに味の素「クックドゥー」に始まり、最近ではキッコーマン「うちのごはん」、カゴメ「トマレピ」、永谷園「お肉マジック」などのシリーズ。肉や野菜などを加熱して、袋の中身をちゃちゃっと混ぜれば、あっという間に本格的なメニューが出来上がるというあれ。

 インテージの市場調査によれば、前年比4%増、5年前に比べると実に13%も伸びている加工食品ジャンルです。もともと中華メニューがほとんどを占めていましたが、このところ和風・洋風・韓国・エスニック系の比率が急上昇とのこと(日本経済新聞5月10日)。

 この手の商品紹介記事には、いつも似たような消費者アンケートの結果が載っています。「調理時間が節約できる」「調理の手間が省ける」など。
 これって本当? 例えば「キャベツと豚肉のトマト塩だれ炒め」という豪華なメニューをアンケートの回答者がこれまでは本格的に作っていたのに、「トマレピ」のおかげで4分でできるようになりました? まさかねえ。

 これまでだって4分か5分でお手軽な中華の素を振りかけてフライパンで炒めたり、味付きの冷凍肉野菜をチンして食べていたはず。「総菜のもと」は、味が本格レストラン並みに近づいたとはいえ、時間や手間の節約になっているわけではないでしょう。

 べつに絡んだり、言いがかりを付けるつもりはありません。問題はその本格的な味や食感の中身です。もちろん厚労省が認可した成分しか使われていませんが、私たちは国の基準をクリアしているから安心と納得した上で買っているのかという問題。この種の記事はたいてい「ワンランク上の料理を手間暇かけずに作れるのが魅力」と、能天気な一文で締めくくられています。

■毎日ごちそうが目標か?
 「総菜のもと」の成分表示を一品一品チェックしていくと、無添加のアイテムもごく一部にありますが、ほとんどは毎度おなじみの調味料(アミノ酸等)、増粘多糖類、酸味料、香料、乳化剤、カラメル色素、そして正体不明の○○エキスなどのオンパレードです。

 プロのシェフが10年修行して初めて出せるのと似た味が、工場の量産ラインでパラパラ、どろどろとパックされて常温で出回り、しかも2、3人前200円程度の値段で売っているわけです。合成物質抜きにはあり得ないことです。

 たまに、ハレの食卓で普段作ったことのないゴージャスなおかずで家族や来客を喜ばせるのなら、こういうのもありかなとは思います。しかしカラスヒコが提案したいのは、時間が惜しいのなら、もっとベーシックなおかずに立ち返ることです。

 私たちは毎日、年がら年中、目にも鮮やかな「ごちそう」を食べたいのかと自分に問うべきでしょう。本当はおいしくて栄養があって、無添加で簡単に作れるおかずを望んでいるのではないかと。見た目が豪華で、しかも安い総菜には体に悪い成分がたくさん含まれていることを、実は誰もが十分に知っているはずですし。

 「だって私は料理なんかできないし」。いや、料理以前の乾物、干物などの天然保存食に目を向けるのが解決策だと思います。力んで「総菜」を作ろうと、しかも本格的に取り組むのではなくて、ちゃちゃっとお手軽に作ろうとするから合成食品に付け込まれてしまうのです。

 私たち素人がケの食事を取り戻すには、コメ、豆、乾物、みそ、しょうゆなどベーシックな自炊にいったん回帰する決断が必要。目標は料理技術の向上より素朴な食べ方の発見です。

 ではまた。