玉ネギを包丁でみじん切りにするのは、難しそうに見えても実は簡単。根っこ部分をつないだまま縦に切り込みを入れ、押し広げるように押さえながら横に刻んでいく(写真参照)。超ブキを自認していたカラスヒコでも、3回目には完璧にできました。

■包丁離れは食の他人任せ
 写真は玉ネギ玉ネギ8分の1個。まず、左下の根っこ部分を残して、放射状に包丁を入れます。バナナの房を作るような感じといえばいいでしょうか。その後、左半分を手で押さえながら右側から刻んでいけば、包丁の扱いに不慣れな素人にも面白いほどうまく刻めます。

 この刻み方は、料理本やクッキングサイトには必ず載っているポピュラーなノウハウなのですが、実際に自炊で活用している人は珍しい。というより、最近では包丁離れが進んでしまって、玉ネギはカット野菜に入っているのを食べているとか、生玉ネギ入りのドレッシングでたっぷり摂っているから大丈夫的な考え方がメジャーなようです。

 実は、ところが、そういう割り切り方は食品メーカーやスーパーの宣伝コピーの受け売りである場合が多いというのが、カラスヒコがとても心配している点。消費者が自分の意思で玉ネギの食べ方を変えたのではなく、時短のために加工食品にあっさりと飛び付いて、その理由付けまでも、用意されたコピーを拝借してしまうような他人任せなトレンドだからです。

 左の記事は、内食は手抜き味の素クックドゥなど「合わせ調味料」(総菜調味料ともいいます)の1箱に必要な分量の肉を、あらかじめ切り分けたパックが売れていると(日本経済新聞3月12日)。
 棚の上段にクックドゥ各種が並び、下段に対応する肉パックが並びます。野菜のカット済みパックも併せて買えば、フライパンで混ぜるだけで出来上がりというわけ。

 これらキット化された食材を買った主婦のコメントは、「包丁を使わなくて済む手軽さが助かる」です。売る側も、「包丁は面倒」が消費者ニーズなのだからと真剣に商品開発に取り組み、ときにはフェイスブックなどSNSを通じた双方向のやり取りまでしながら新製品を続々と生み出しているようです。

 これは、ある意味ですごいことです。作り手・売り手・買い手の3者が直接(バーチャルとはいえ、face to face に近い環境で)意見交換しながら、より良い暮らしづくりにまい進する理想的な形にも見えます。ただ、唯一の疑問は、それが本当により良い暮らしなのでしょうかという点。

■キットは内食じゃない
 肉も野菜も皮や骨や筋が取り去ってあり、必要なサイズにカットされていて、調味料を混ぜて加熱するだけで出来上がるわけですから、これは安いチェーン外食店の厨房でアルバイトがやっていることと同じです。解凍・加熱と盛り付け。調理免許・経験一切不問。

 しかも、材料の見立ても味付けもオール他人任せで、都度食べ切りですから、弁当や調理済み総菜を買ってきてチンする食事とほとんど変わらない。つまり、キット化されたカット食材と「合わせ調味料」とで作る食事は、外食・中食の最終工程を自分でやっているだけ。すでに内食(自炊)とは呼べないでしょう。

 20年以上続いたデフレで収入が減り、大震災もあって消費マインドが変わって「内食志向が強まった」などといわれていますが、実態はこれ。内食領域への外食・中食による侵攻です。消費者の側には、内食を本気で立て直す意思も能力もなくなっているのかもしれません。

 学生さんや若いお母さんたちにカラスヒコが呼び掛けたいのは、まさにここです。このまま包丁を使うスキルを失い、漬け物、焼き魚、みそ汁などの作り方を継承できなかったら輸入が激減したとき、あるいは輸入価格が暴騰したときには食べるものがなくなります。

 まあ、それほどの極限状況を想定しなくても、調理力を失った消費者には、平時でも出来合い食品の買い食いしか選択肢がなくなるのが問題。産地も調理法も不明なものを食べ続ける羽目になるからです。添加物についても、日本式の詳細な表示義務は、TPP参加以後は「非関税障壁」とみなされてグローバル標準にまで「緩和」されてしまうはず。

 結局、生の素材を見立てて、その日に手に入った材料や冷蔵庫の残り物をささっと加工して、取りあえずおいしく、栄養バランスもそこそこに食べられる応用力。出来合いやキットに頼らず、自分流にアレンジを利かせる食べ方を身に付けたほうが有利です。自衛のための自炊。

 難しく考える必要はありません。地場の玉ネギを自分で刻み、例えばご飯に載せて、その上からレトルトカレーをかけて食べる。その程度から入って毎日続ければ、包丁の使い方などすぐにうまくなるからです。超ブキだったカラスヒコが太鼓判を押しますよ。

 包丁は研ぐのが大変とびびっている方は、ぜひこちらをご参照ください。切り方も研ぎ方も我流で構わないのです。プロの調理師を目指す人以外は、自己流の慣れに、いかに磨きをかけるかが勝負だと思います。

 ではまた。