母カラスが喜んでもりもり食べた生タラコと肉野菜の酒蒸し。15分ほど蒸したタラコは、口の中で砂のように崩れて、細かい粒々がぷちぷちと弾けるうまさ。薄めの塩味にしょうゆをタラッと絡めただけのシンプル加工が一番ぜいたく!


■酒の蒸気が均等に回る

 形もボリュームも特大ハンバーグのような生タラコ。こんなものが350円で売っているあたり、さすが北海道。外食チェーンのパスタなどに使われるチューブ入り調味タラコと違って、よく見ると粒の大きさや密度にばらつきがあり、1粒ごとの弾力がすごい。


 色もきれいなピンクではなく、いかにも生き物、ナマものでございますといった風情の、くすんだ肌色である点にも本物感がにじみます。タ酒蒸し (2)ラコを素手で搾りながら、だんだん興奮してきたカラスヒコです。


 厚手フライパンに豚バラ肉、玉ネギ、パプリカ、ブロッコリー、生シイタケ、紫イモ、ニンジン、小松菜、ミニトマトを適当に切って盛り、その上にタラコの半量をべったりと載せて蒸しました。要するに、タラコ以外は冷蔵庫内の在庫一掃セールです。


 豚バラ肉に塩とブラックペッパーを振り、野菜も含めた全体にも塩。量はいい加減でもたいてい大丈夫です。料理酒(料理ワインでもOK)を、フライパンの底いっぱいに辛うじて広がる程度にかけます。


 この酒の量が結構ポイントなのです。たっぷりかけないと焦げる気がして不安になるかもしれませんが、野菜から出てくる水分も考えればこれが適量。多過ぎると煮ることになり、蒸し料理らしいサクサク感が消えてしまいますから。


 あとはフタをして弱火で過熱するだけ。熱の通りにくい素材、ここでは肉やイモを重ならないようにずらして配置すれば、蒸気になった酒が塩を載せて均等に回り、勝手においしくなってくれます。


 酒蒸しは途中で混ぜたり、ひっくり返す手間もいりません。時々フタを取ってつまみ食いを楽しみ、こんなもんでしょうと思ったところで火を止めます。実に横着者向きメニュー。ただし、厚手フライパンは火を止めてからも過熱が進みますから、止めたらすぐに皿に移すのも大事なポイントです。


■呪縛を解けば料理は簡単

 この酒蒸しにご飯とみそ汁で立派な、完成された献立です。酒蒸し自体は薄味ですから、ご飯をかき込むおかずとしては物足りないと感じる、かつてのカラスヒコみたいな人もきっといるでしょう。けれども、それは一種の呪縛なのです。


 自炊を始めると、はっと気付く時が来ます。主菜が濃い味付けで、それを薄めるようにご飯やパンをかき込む食べ方は違うと。主食(穀物)を未精製化し、少量の「ご飯の友」(梅干し、おかかなど)で食べ、主菜は薄味をキープしたほうが、結果的にミネラルが豊富で、余分な塩分や添加物も減らせる。しかもうまい。


 逆に、安い外食や総菜にありがちな、例えばハンバーグを肉の味ではなく強烈なソースの味やオイルのまったり感で食べ、チンジャオロースを塩分やスパイス過多の過激な味で食べる。そんな味覚に慣らされてしまうのが呪縛。


 もう一つ、この在庫消化の酒蒸しで発見できるのは、フライパンの底に残った、やや煮詰まりかけた少量のスープのおいしさです。酒のアルコール分が飛び、肉や野菜からにじみ出た天然だしのエキス。
 塩分が多くてしょっぱいですから、全部は飲まないほうがいいのですが、少量をたらたらと、皿に盛った肉野菜にかけるのがお薦め。これって、実はオリジナルの特製タレそのものです。


 プロの調理師なら、もっといろいろ手間をかけて秘伝のタレを開発しますが、原理は素材から出たエキスを塩、酒、スパイスなど天然調味料でアレンジしたもの。私たち素人も素人なりに、多種類の素材を蒸すなり煮るなりして、ケの特製タレを作れるのです。


 それが他炊食(外食・中食)では、ほぼ全面的に過剰塩分や化学調味料その他添加物に取って代わられているのが今の食環境です。カラスヒコは、10年間の他炊依存で体を壊しかけてようやく目が覚めたのですが、賢明な学生さんやワーママさんなら、もっと早めに手が打てるはず。


 料理なんて、悪食の呪縛を解けば実は簡単なのです。有ものを何でも蒸す、あるいは煮るならマギーブイヨンなどのスープで煮てポトフにする。設計図なしで、手元にある素材でオリジナルな献立を日々作り続ける。トライ&エラーの経験を積むのみです。自炊の先延ばしこそが敵。


 ではまた。