自炊の味付けはコンサバ調味料だけで十分なのです。塩、しょうゆ、みそ、酢、みりんなど。味付け方法が分からないからと「○○の素」を使うのは、味付けという技能のアウトソーシングですから自分が空洞化してしまう。自分への先行投資にならないのです。

■ギョーザは家で食べない
 プロの調理人になる気がない人は、味付けワザを覚える必要がないのかどうかという話。答を先に言えば、ある、です。なにもプロ並みの、繊細かつ絶妙で人をあっと言わせる味付けではなくても、そこそこおいしく、飽きずに日々食べ続けられる味付けノウハウ。

 例えばギョーザが食べたいと思ったとき、学生さんやワーママさんならどうしますか。ネギやニラを刻み、ひき肉と合わせてギョーザの皮にくるんで焼きますか。まさか。おそらく冷凍ギョーザかチルドの生ギョーザを買ってきて焼く。あるいは焼き上がった総菜ギョーザをチンする人が9割でしょう。

 それが駄目という話では全然ありません。ギョーザはハレ食だからそれでOK。むしろ自分では何もせず、ギョーザがうまいと評判の中華店に食べに行くのがもっといいかもです。家族や友人とビールや紹興酒でも飲みながらわいわいいただくのが最高。

 では自分一人、あるいは自分と幼な子だけの家庭食シーンではどうか。そのシチュエーションでギョーザを食べようと考えるのが大きな間違いだとカラスヒコは思います。ギョーザのような手の掛かる、つまり下ごしらえのいるメニューは家ではやらない。たまにテイクアウトで名物を買ってくるのはいいとしてもです。

 家ではもっと粗雑なメニューでいいのです。外食店やデパ地下のショーウインドーを飾る華やかなメニューとは真逆の、地味で質実な自炊ワールドをイメージするのが大事。私たちが貴重な時間を割いて作るべき料理とは、○○の素を使った外食メニューの亜流であってはいけないのです。

 勉強になるのは半田屋の食事です。かなりファッション化してしまった大戸屋とは対照的に、半田屋は昔ながらの素朴な定食屋スタイルをしっかり守っていて、自炊の参考になる献立が多いからです。

 いい意味での泥くささ(失礼!)があってカラスヒコは大好き。仙台発祥のチェーンで東北・関東・北海道がドミナントエリアでしたが、最近では近畿をはじめ西日本への出店にも力を入れているようです。

■ハレの外食、ケのごった煮
 写真は、半田屋の焼きザケ、半田屋 1401菜花炒めの蒸し卵載せ、刻み昆布とちくわの煮物。ご飯とみそ汁付きで546円。この献立をまねしましょうという意味ではなく、魚と野菜と海藻の組み合わせを意識すればビタミン、ミネラルが極端に欠乏せずに済む点に注目したいところ。

 薄い塩味、しょうゆ味なら無添加で食べられますし、菜の花は毎日炒めるよりワイン蒸しにしたほうが手が省けます。野菜が1品では物足りなければ、みそ汁にネギや切干大根を入れて補う。海藻も、のりや干しワカメを活用すれば毎日取れる。そんなふうにオリジナル化していきましょう。

 レトルトカレーや半ゆでパスタなどワンディッシュ型の自炊は外食のコピーでしかありません。それも多くは冷凍や半調理品メーンの1回食べ切りメニューですからFF(ファストフード)やB級グルメと大差なし。単においしくて満腹するだけ。調理力が身に付かない自炊ごっこ。自身が空洞化するばかりです。

 極端な言い方をすれニャンコめし (14)ば、自炊のベースは「ごった煮」で構わないのです。こんな感じで、自製だし汁の中に野菜、肉、イモ、キノコ、海藻を放り込んで煮る。最近カルシウムが足りないと感じているなら煮干しもポキポキ折って入れる。

 みりんとしょうゆで味付けすれば煮物になり、みそを溶いてみそ汁にしてもいい。残飯を放り込めばニャンコめし。煮ながらどう食べるかを考えればいいのです。自炊なんてそんなもの。

 おいしくて栄養が摂れて無添加な健康目的の自炊にはレシピは不要です。電子レンジも冷凍食品も使いません。必要なのは生の素材と乾物・干物。調味料はコンサバ系のみで十分。最近人気の合わせ調味料(総菜調味料=○○の素)はいりません。

 複雑な手間の掛かるメニューを食べたくなったら、プロの調理人のいる店へ行けばいいのです。もちろん、本当においしくて安全な店ならいい値段がするのは当然。たまにしか行けませんが、それが普通。普段はニャンコめしや半田屋ベースのアレンジ定食を自製するのが、私たちが立ち返るべき食生活の原点だからです。

 毎日の食事は自分の体への先行投資、あるいは子どもの将来への積立と考えましょう。目先の便利さに幻惑されてそこを見失えば、結果は生活習慣病としてはね返ってきます。サプリやトクホの効果に期待するのは勝手ですが、健康管理を他人任せにしたリスクは自己責任。

 味付けはなんとかなるものです。いま自分が味付けするなんて想像もできない人でも2、3回の失敗は授業料と割り切ってトライすれば必ずできます。身体技能ですから経験がものを言うのです。

 ではまた。