未精製主食のバリエーションとして、ジャガイモの食べ方も確立しておきましょう。コメを炊けなかった日にも、安直にパンや即席麺に頼らずに済むからです。ゆでたてのジャガイモなら、塩もバターもなしで十分にうまい。自衛自炊の大事なスキルです。

■素朴なイモ味を覚えよう!
 面ジャガイモ (3)倒くさがり屋の私たちにとって、イモ食いの最大のネックは「皮むきがかったるい!」かもしれません。ならば、皮をむかずに丸ごとゆでるのがお薦め。流水で軽くスポンジ洗いして泥を落とし、そのまま水からゆでます。

 もう一つのネックは「ゆで加減が難しい」でしょう。そのベストアンサーは「竹串がスッと通ったタイミングがゆで上がり」です。何分間ゆでるとか、そういう客観的なマニュアル化は無理。竹串がイモの中心部までスッと刺さる感触を指に覚えさせましょう。

 当然、小さなイモから先にゆで上がり、順に鍋から取り出していきますが、あとに残った大きなイモが空中に露出しないよう多めの水でゆで始めるのがコツです。

 ゆで上がったイモはまな板に取り、熱いうちに包丁で四つ割りにします。これは内部の蒸気を早く抜くため。こうすれば冷めてもおいしく食べられるからです。

 さて、皮をむくジャガイモ (4)なら、四つ割りにした直後の熱いうちに指でむくのが早いです。右利きの人なら右手に箸を持って熱いイモを押さえ、左手の親指と人差し指で皮をつまんでベローッとむきます。
 芽があっても、たいていポロッと取れてしまいます。取れないときは箸でほじくる。

 爪の中にイモが詰まるのを嫌がる人もいますが、気にせず最後までむき、終わってから爪ブラシでちゃちゃっと取り除きましょう。爪ブラシがないときは、タワシでも古い歯ブラシでもオッケーです。

 ジャガイモは粉吹きイモにしてもおいしいです。粉吹きイモは、ひと口大に切ってからゆでますが、その場合も竹串が通ったタイミングでお湯を捨て、1分間ほど強火で、木ベラで混ぜながら乾煎りして粉をふかせます。

 そうやって生のジャガイモを自分でゆでて素朴に食べていると、やがて外食のフライドポテトやジャーマンポテトが、いかに化学調味料や塩や、精製油脂やスパイスに依存した不健全な食べ物かが実感として分かってきます。舌がだまされ、体が汚されていることにビビビッと覚醒してくる感じ。

 ポテトチップスなどはもはやイモとは言えません。加工度が極端に高いイモ風味のジャンキースナックですから、ビールのつまみに5、6枚を楽しむ程度に抑えるのが正解。子供がゲームをしながら1袋を食べ切ってしまうのは完全に病的な事態です。

■「うまいのはタレ、肉じゃない」?
 イモばワイン蒸し (26)かりではなく、私たちは肉の食べ方についても、もっと素朴に変えていけるはず。精製油脂で焼き、あるいは炒めて化学調味料や添加物たっぷりのタレやソースで食べる習慣を抜本的に見直しましょう。それが、ジジババ世代にまん延する高血圧、高脂血症から逃げる道。

 例えば、左写真は牛肉のステーキ風ワイン蒸しです。生肉に料理ワインをかけて中弱火で蒸すだけ。途中で一度ひっくり返し、自然塩とブラペだけ、またはしょうゆを垂らしたシンプル味でいただきます。これが意外にうまい。

 もっとも、最初は味がぼやっとしてピンと来ないかもしれません。しかし噛んでいると肉の素の味が感じられる。高い肉と安い肉との味の差がはっきり分かる食べ方なのです。裏を返せば、安い肉をタレやソースでごまかす他炊ビズの正体まで透けてきます。

 最近のCMで「うまいのはタレだ、肉じゃない」という身もふたもないコピーがあり、あれは笑えます。体を壊す人は、まさにそこにハマって品質の悪い肉と怪しい成分の調味料に浸り、依存症的な食べ方に堕ちていく。昔のカラスヒコ青年も明らかにそっち派でした。

 本来、自然材料を生かしたタレやソースは長持ちしません。ショウガ、大根、ニンニク、玉ネギなどをすりおろし、レモンなどフルーツを搾って良質のスパイスで調味した手製のタレやソースは、いいシェフのいるレストランでたまに味わうもの。

 「A級シェフの秘伝の味を家庭でお手軽に」みたいな緩いコピーに乗せられると体が持ちません。やはり普段はシンプル自炊を愚直に守り、合成調味しぐれ煮 (1)料や保存系添加物を体に入れない食べ方を極めるしかないのです。

 さて、自炊で使える素朴な肉の加熱ワザをもう一つ。左は豚肉のしぐれ煮です。フライパンにひと口大に切った肉を入れ、料理酒、みりん、しょうゆを振って中~強火で炒めつつ煮ます。汁気がほぼなくなれば出来上がり。

 安い外食店や調理済み総菜のしぐれ煮では、精製油脂を敷いて炒め、みりんの代わりに精しぐれ煮 (3)製砂糖が使われます。そのほうがローコストで、しかも分かりやすいガツンと来る味になる。それが品質の悪い肉でもおいしいと感じさせてしまう魔法です。

 でも、それは他炊業者が悪いというより、単に強い甘辛味に吸い寄せられてしまう客の嗜好の劣化が原因だとカラスヒコは思います。イモも肉も最少加工で食べること。それが早くてクリーンな自衛自炊を軌道に乗せる秘訣です。

 ではまた。