「包丁が苦手だから自炊はしない」という割り切り方はアウトだと思います。不器用な人でも包丁使いを覚えないと栄養バランスをキープするのが難しい時代ですから。板前さんのような鮮やかな包丁さばきを目指す必要はありません。遅くて不細工でも、毎日ナマの素材を切り続ける習慣が健康への投資になるのです。

■外食より高くても自炊する
 写真はみそ汁みそ汁 (13)の具材です。長ネギ、小松菜、ニンジン、ゴボウ、ショウガ、えのき、油揚げの7アイテム。
 こんな具だくさんみそ汁を食べていけば、ほぼ絶対に生活習慣病にはなりません。昆布とカツオ節でだしを取り、7アイテムの具材を煮てみそを溶く。

 外食や中食ではこんなに高栄養のみそ汁にはありつけません。お金をたくさん払うつもりでも、こういうみそ汁を提供してくれる店がないからです。材料費や人件費がかかり過ぎ、たぶん一杯300円以上の値付けになって買う人がいないでしょうから。

 ここ、超大事なポイント。「安く上げるために自炊する」というコンセプトは間違いなのです。今は外食のほうが安い。けれども、外食では栄養が十分に摂れないから高くついても自炊をやる。それが中長期を見据えた自分の健康戦略の柱になります。

 みそ汁なら簡単です。だし汁で煮るだけで何でもおいしくなりますから。野菜なら大根・ニンジンなどの根菜、小松菜・ホウレン草などの青菜もうまい。豆腐や油揚げなど大豆由来食品、ワカメ、ふのりなどの海藻系までミックス煮でおいしく、飽きずに毎日いただけます。

 そのために必要な技能が包丁の使いこなしなのですが、これまで包丁とは無縁だった人には心理的なハードルが高いのかもしれません。仕事や子育てに追われる今、包丁使いを一から覚えるのは大変過ぎてコスパも悪い。そう感じる方も多いでしょう。

 でも大丈夫。職人のような早くてカッコいい包丁さばきを目指さなければいいのです。私たちはアマチュアで、お客さまからお金を頂くわけではありません。自分の健康のために野菜を切るだけですから遅くても不細工でも全然オッケーなのです。

 それでも毎日切り続けていると徐々に手際がよくなってきます。語学の勉強や車の運転とも似た慣れの効用です。プロの包丁さばきには遠く及ばなくても鼻歌混じりに皮むきや千切りができるレベルで十分。それが自衛自炊的包丁ワザのゴールです。

■アマチュア調理を目指せ
 さて、素人の包丁使いにとって大きなネックになるのが「砥ぎ」でしょう。包丁の刃は使えばなまって切れなくなりますから、しょっちゅう砥石でシェイプしないと気持ちよく使えません。
 ただ、砥ぎ方をネット検索すると「砥石は荒砥、中砥、仕上げ砥の三種類をそろえて・・・」みたいな話ばかりで、見た途端にビビってしまいがち。
 
 けれども、それはプロの職人がプロを目指す人向けに書いた本格的なノウハウだからです。粗食・健食が目的の私たち素人は、ホームセンターで安い中砥を一本買ってくれば十分。
 正しい角度さえ守って包丁の刃を当てれば鋭い切れ味がすぐに戻るのが分かります(詳しくはこちらをご参照)。

 砥石の使い方と同様に昨今は、私たちを自炊から遠ざけてしまう情報が多いのは困りものです。
 例えば天然だしの取り方がそう。プロが雑味のない澄んだ味を追求するあまり大変面倒な説明になり、結果的に素人を化学調味料に追いやっていると思うのです。

 カラスヒコは江上料理学院さんが提唱するだしの取り方をお薦めしています。少々の雑味があっても濃厚なうま味が簡単に出せる、まさに私たち向きの実践的プロセスだからです。これを覚えると自炊モチベーションが一気に上がるのが実感できますよ。

 なぜなら、だし汁が「うまい」と感じるのは、昆布やカツオ節からにじみ出るミネラルを体が喜んで受け入れるからです。
 化学浅漬け調味料は、おいしくても体が吸収できない成分なので排出されてしまいますから、たとえ無害でも摂り続けると体はミネラル不足に陥ってしまいます。

 さて、包丁に慣れておくと、写真の浅漬けも気軽に作れます。みそ汁具材に適さないキュウリやパプリカ、セロリなどの野菜を一口サイズに切り、ボウルに取って塩を振ってよく混ぜて冷蔵するだけ。
 みそ汁と併せて毎日7、8種類の野菜を摂り続けることは案外簡単なのです!

 ではまた。