「一人鍋」は自炊の自主トレメニューとして効果的です。ずぼらな学生でも、忙しいワーママでも冷蔵庫にある野菜・肉など、何でも少量ずつ切り出して自製のだしで煮る。そして味を見ぃ見ぃ、しょうゆとみりんで調味すれば、3回くらいで自信がつきます。

■専用つゆを使わない鍋

 味付けは、具材のアイテムや量によって日々変わるのが自然。設計図通りに材料を計量して決まった手順で組み立てる工業的な視点では上達しません。毎日その日の自分の味を作る。そこへ発想転換してしまえば、自炊は案外簡単に軌道に乗ってきます。


 最一人鍋近とても興味深い記事を見付けました。一人鍋には、ややもすると寂しげなイメージが付きまといがちですが、昨今は主婦が昼食時に一人鍋を積極的に作っているらしいと(北海道新聞1月31)。個食時代の頼れる武器として一人鍋を見直すスタンス。


 カラスヒコは、この考え方に基本的には賛成。ただ、この記事では一人鍋専用のだし(つゆ)パックが多数売り出されているので、それを使うと簡単ですよという文脈になっていて、そこに引っ掛かりを覚えます。エバラ食品「プチッと鍋」、味の素「鍋キューブ」、ヤマサ「お鍋にポンパ」など。


 それら市販品が悪いという話ではなく、どうせ作るなら、昆布とカツオ節のだしを自分で取り、野菜などを煮ながら、しょうゆとみりんで「その日の味」を付けたほうが絶対においしく、かつ自炊トレーニングにもなる点を強調したいのです。


 もう一つ、重要な発想転換は「鍋用野菜パック」などのアソート品を使わないこと。これもアソートパックの野菜が駄目という意味ではありません。たまに使うのは構わないのですが、毎度頼っていると自炊エクササイズにならないからです。


 つまり、外食店で鍋を注文して、一人前の具材が皿に載って出てくるのと同じ状態ですから。だしパックも野菜パックも便利なように見えますが、結局私たち自身の素材の見立て力、調理力、生活の段取り能力を奪うものです。


 食品メーカーやスーパーが新商品を次々に開発するのは売上を伸ばすためで、お客さまに奉仕するためではありません。便利なサービスに頼るほど自分が劣化していく。それが、残念ながら今の社会の真実ですから、利用の限度を自己責任で線引きすべきだとカラスヒコは考えます。


■毎日味見を繰り返す

 一人鍋に初挑戦する人なら、まず基本のだし汁(もちろん、これ)を作り、そこへ手持ちの野菜を適当に、あまり深く考えずに入れていけばいいのです。まあ、煮えにくい具材、例えば肉やイモなら先に入れる、あるいは薄目にカットして野菜と同じタイミングで煮えるようにするとか。鍋はその程度の素人感覚でやっても大きな失敗はしません。


 料理初心者でも、例えば生シイタケの6個パックを1個ずつ入れて6日で食べる。白菜を表面から1、2枚ずつ剥がして6日、長ネギも1本を6分の1ずつ食べるとか。メーンとなる肉や魚がない日でも豆腐、あるいは乾物の車麩やしみ豆腐などタンパク食材を入れれば結構ゴージャスになります。


 煮ながら、しょうゆとみりんを少量ずつ入れてスープの味見を繰り返す、そのプロセスを楽しむのが大事。「適量」は日々違うのが当たり前で、自分の舌で調味する経験こそが自炊技能として積み上がっていくからです。情報処理的な学習とは真逆の自主トレ。


 自炊の鍋には本格的な土鍋などいりません。フタさえあればアルミのぺらぺらの鍋でもフライパンでもOK。売っているポン酢やみそダレなどを付けずに、だしの味だけでそのまま食べても十分においしいのが分かります。最後に残った汁で残飯を煮て、生卵でも落とせばもう極楽です。


 単身赴任のお父さんなら一人鍋で最高の一杯がやれますし、ワーママさんにとっては素材を使い切るエコ&チープな健康食。食べ盛りの学生ならイモやもちを入れてボリュームアップすれば満足度も高まります。

煮物 (4)
 自製の天然だしスープなら毎日食べ続けても全然飽きないのが実感できますが、その一方で、そばつゆで煮たり、豆乳で煮たり、あるいはマギーブイヨンで洋風味にするなどの変化球もカラスヒコ的にはお薦めです。


 たぶん、鍋はいろんな料理の原点なのでしょう。汁メーンでみそを溶けばみそ汁になり、汁を少なめにして、だしの味を具材に煮含めるように仕上げれば、左写真のような煮物になる。一緒にご飯を煮込めばニャンコめし。天然だしで煮れば何でもうまいというわけです。


 ではまた。