映画『11.25自決の日・三島由紀夫と若者たち』の面白さは、自分の頭で考えろと言い切っている点にあります。思想的立場に関係なく、社会に流されるのが最低の生き方なのだと。カラスヒコ的には、食べるものをはじめ、何でも自分の意思で決めていくことの大切さを再認識。まさに今必要な映画です。

■指示待ち社会への批判
 カラスヒコ25自決の日は三島ファンではなく、若松孝二監督が好きで見に行きました。4年前の『実録・連合赤軍あさま山荘への道程』とほぼ同じ時代を扱い、今回は正反対の右翼サイドの青年たちの実録物語。思った通り、気持ちのいい映画でした。

 一番爽やかだったセリフは、三島由紀夫(井浦新)が自衛隊の幹部に向かって吐き捨てるように言う、「あなた方は武士だろう。誰かの命令がなければ自分の血も流せないのか。それではサラリーマンと同じだ」。

 これはもう、右とか左とか思想的立場に関係なく、自分では何も決められず、組織内で指示を待つだけの私たちへの痛烈な批判。あの時代に限らず、むしろ今に当てはまる言葉でしょう。かなりグサッときますね。

 カラスヒコは、楯の会のクーデター計画も、連合赤軍の武装革命計画も決して支持するものではありませんが、「決起」したいと思う気持ちは大変よく分かります。このままではこの国が駄目になるという危機感は、たぶん正しいはず。

 「自炊自炊」と叫んでいるカラスヒコには、この国を立て直そうという立派な志は全然ありませんが、悪食習慣によって人がみんな駄目になっては困るなという思いはあります。

 最近ですと、子どもや親を虐待する人が増え、知らない人を刺殺しておいて、「誰でもよかったのです」みたいなことを言う人が次々に出てくるような、そういう社会では困るわけです。かと言って、それを厳罰化で抑え込もうとか、監視カメラで追い掛け回せばすぐに犯人を捕まえられるからいいでしょう、みたいな技術的な解決策ばかりが出てくる社会も、ちょっと許せない。

■翼賛会にくみしない
 今の政権は、こんなことを言っては失礼かもしれませんが、すでに与野党結託の大政翼賛会のようなところがあって、国民の意向に沿わないことを次々と、まるで、本当に失礼ですが、関東軍並みの独断専横で押し切ろうとしているようには見えませんか。

 この映画によれば三島は、自衛隊に期待を託していました。70年安保をめぐる暴動鎮圧に自衛隊が治安出動する機会があることを想定して、それをアジってクーデターに持ち込み、天皇親政を実現するイメージを抱いていたようです。

 ところが、警察がデモ鎮圧に騒乱罪適用を乱発して一気に抑え込み、自衛隊の出番がなくなって、三島たちはあわてます。自衛隊幹部に先のセリフでけしかけても、「われわれは公務員ですから」とかわされてしまいます。

 武士ではなくて公務員。ここがポイントだとカラスヒコは思います。自分で判断して行動することはあり得ませんよと、この幹部は明言しているのです。現代は、皆がここでいう公務員に、つまり三島がいうサラリーマンに成り果てた社会。

 だから例えば、学校給食が添加物だらけであるとか、炭酸飲料に1㍑当たり角砂糖50個分の砂糖が使われているとか、子どものおやつの寒天ゼリーがカロリーゼロなのは、アスパルテームやアセスルファムKなど複数の人工甘味料が使われているからとか、みんなが知っていても、誰も自らの判断で反対表明や不買行動をしないわけです。

 三島は結局そこでキレて、幹部の説得を諦めて、末端の自衛官を集めて、「お前たちが立ち上がらないと、アメリカの軍隊にされてしまうんだ。それでもいいのか!」と懸命にアジるわけです。しかし聞いているほうは、ぽかーんとしたり、うるさいオヤジ引っ込め、みたいな反応。その後、ハラキリでした。

 私たちはまだキレるわけにはいきません。大政翼賛会にはくみせず、自分の意思で正しい食習慣を守り、粘り強く周囲を説得していくだけ。決起もしない代わりに流される気もありませんよ。

 ではまた。

※『11.25自決の日・三島由紀夫と若者たち』 2011年/日本/カラー/119分/若松孝二監督
※『実録・連合赤軍あさま山荘への道程』 2008年/日本/カラー/190分/若松孝二監督