今日はツルムラサキとわさび菜のおひたし。直売所「ゆうきの里」(仙台市泉区)では、1袋が各100円という安さ。さっと湯がいてから、だし汁に漬けて冷蔵すれば1週間近くいただけます。写真のように、食べるときに削り節を乗せるだけ。しょうゆもいらず、野菜の味そのものが濃くておいしいのです。

■じゃぶじゃぶで食べる
 おひたしは、い朝食 (25)まや完全に形骸化してしまったメニューだと思います。和風ファミレスや居酒屋のサイドメニューには必ずありますが、例外なくゆで過ぎ。野菜の味が完全に抜け、葉はぐちゃぐちゃになっていて、そこに化学調味料たっぷりの強いだし汁がかかっています。

 大量に作って効率を上げようとすると、おひたしはどうしてもそうなります。若い世代の「おひたし離れ」は、おいしいおひたしを食べた経験がないからでしょうし、高齢者のおひたし好きは単なる郷愁。自分で作らず、総菜コーナーでありがたがって買い、「味が薄い」などと言って、しょうゆをどぼどぼかけて食べています。

 おひたしは、私たちの手で本物を復元させるべきだとカラスヒコは思います。かつて丸元淑生さんが提唱したように、グラグラ煮立ったお湯に葉野菜を2、3秒浸して、すぐに冷やしてだし汁に漬ければ、味も、サクサク食感も素晴らしいおひたしができるのですから。レシピ詳細はこちらを参照。

 この、わずか2、3秒の湯通しという点が、カラスヒコにも初めは全く信じられませんでした。太い葉脈や茎の部分には、それでは熱が十分に通らないだろうと思ったのです。ところが大丈夫。生臭さが消え、ちょうどよい歯応えで野菜本来の味が残る絶妙の頃合い。昔の人の経験知のすごさに目を見張る思いでした。

 おひたしは、忙しい私たちの常備菜という意味でも重要です。例えばホウレン草と小松菜を1袋ずつ、まとめておひたしに加工してしまえば、ほぼ1週間は食べられます。だし汁に浸っているので空気に触れず、しかも味がよく染みて、しょうゆなどかけなくても素朴で感動的な味になっています。

 小鉢に盛り付けるときは、だし汁を搾らず、じゃぶじゃぶの状態で食べます。だから「お浸し」なので、そのだし汁も最後にぐいっと飲んでしまう。野菜のエキスが染み出していて、これがまたうまいのです。決して上品ではないけれども、そんな質実で無添加な食べ方を見付けて、拡散していきたいとカラスヒコは考えます。

■作られた内食志向
 おひたしに限らず、和食のいろんなメニューが激しく形骸化しています。総菜コーナーに並ぶパックのおかず、あるいは幕の内弁当に詰まった、例えば筑前煮などの煮物、あんかけ、卵焼きなど本来素朴な伝統メニューも、こう言ってはなんですが、ほとんど偽物。つまり、化学調味料や複数の添加物が多用され、味と食感と見た目だけを昔風に取り繕っています。

 今は「内食志向」がトレンドなのだと、経済新聞ではもてはやされています。けれども、内食志向の実態は中食、つまり外食のテイクアウトに限りなく近い。素材から調理する時間や頻度が増えたわけでは決してありません。

 東急デパートが来春、弁当・総菜に特化した小型店を武蔵小杉に出すそうです(日本経済新聞6月23日)。売場面積600平方㍍といいますから、デパ地下の総菜フロアがそっくり繰り出す規模で、それを多店舗展開するとのこと。ますます中食型「内食志向」があおられてしまいそうですね。

 健康を自衛したい人なら、ここらで自炊の献立を見直しましょう。例えば、ひき肉と玉ネギを手ごねしてハンバーグを作る時間がないから冷凍ハンバーグを使う、あるいは野菜の皮むき・アク抜き・下煮が大変だから冷凍や水煮の野菜で筑前煮を作るとして、その結果、自分や子どもの体を添加物にさらすことになるのなら、そもそもハンバーグや筑前煮というメニューを作らない選択をすべき、とカラスヒコは考えます。

 ポピュラーな献立とはきっぱり決別して、素材を低加工・無添加で食べるオリジナルメニューを、忙しくて調理する暇のない私たち自身が開発していきたい。おひたしも、まとめ作りで常備菜化します。作られた内食ブームで加工食品に誘導されない食べ方を貫きましょう。

 ではまた。