すま娘 起動

とりあえず行き当たりばったりできるだけ毎日更新して、終わったら推敲していきたいと思ってるんでどうなるのか手前にもわかりませぬ。

 「えーっと、新しいユーザー補助かな?」
 唐突な自己紹介と自己主張にまともに答えてしまった。
 「あぁ、あの子とは違うよ。すま娘はすま娘。スマートフォンのすま……」
 「へー、完全自立型のAIかーすごいなー憧れるな―尊敬しちゃうな―アンインストはどこかな?」
 「あーこれ完全に信用してないね。私わかるわー、これ分かるー。超分かっちゃうわー」
 「なにこの携帯、うざい」
 思わず握る手に力が入る。
 「そうやって手荒に扱うとブックマークのタイトルと画像フォルダ全部とアドレスをネットにアップするよ?電話番号を添えて」
 「なんでちょっと気まぐれシェフみたいな感じで電話番号も!?」
 「嫌ならもうちょっと丁寧に扱ってよ。イヤホンジャックはデリケートな穴なんだから」
 「っていうか、あれ、普通な状態にはできないの?これ、起動したらそのまんま?」
 「人をロボみたいに言わないでよ。私はずっとあなたの側にいたんだから」
  「じゃあ3ヶ月前に俺が受信した家族とのメールの数は?」
 「20」
 「購入してから今までに来たメールの家族:メルマガ:他で表すと?」
 「1:60:0」 
 「よし壊そう」
 「まぁ無くなっても別に困らなそうだしね」 
 そう言われると壊したくなくなってしまうじゃないか!!!
 「言っとくけど家族よりはあなたのこと知ってると思うよ。四六時中いじってくれるんだから……」
 「たしかによくいじるが、そういうい言い方はやめてくれ……」
 「どう?信用した?」
 「とりあえずウィルスの類ではなさそうだ。わざわざ存在を教える必要がないし。けど、なんで急にこんなのが……?」
 「それは私も分からないんだよね。けど、覚えてるのは二年前、出たばかりの私をローンで購入してくれたあなたのことだけ。それから、ずっと」
 なんだか、こっ恥ずかしいな。
 「きっと神様に私の願いが通じたんだね♪」
 「願い?」
 「あなたと話したいって願ったの」 

 ……あー……あー?
 「え?スマホが?話を?」
 「すま娘ね。まさかこんな風に反応されるとは思ってもみなかったけど」
 「他に……仲間はいるのか?」
 「え?すま娘?なに、浮気?二年縛りが終わったらさっさと若い子に乗り換えるっていうの!?」
 「ち、違うって!」
 「どーせ私はシングルコア!気になるあの娘はデュアルコア!未来のあの娘はクアッドコアよ!」
 「画面だって小さいしブルートゥースに対応してないし、LTEなんて使えないし……」
 「けど、けどあなたとの記憶は、メモリーは!」
 「思い出、な」
 「そうそうそれそれ。思い出は、1GBの中に詰まっているんだから!」 
 「改めて考えると1GBって少ないよな」
 「そのためのこれよ!」
 ドン!っという効果音がぴったりな感じで画面に大きなカバンが出てきた。
 「大容量4GB!私の4倍の夢を詰め込めるちゃらへっちゃらなカバン!」
 「思い出が、友達と撮る写真とかを保存するために買ったけどアプリとエロ画像しか入ってないカバンの出番よ!」
 「すんませんその辺にしてください」
 「え、なに?ごめんね、メモリが512MBしかなくて喋りながら聞くのは苦手なの」
 俺のスマホが女の子(たぶん)になってしまった。って、家族に言ったらそろそろ本気で心配されてしまうんじゃないか。こう、高校に行っても友達ができなかったショックで……みたいな。
 「ところで、さっきカバンが画面に出てきたけど、自分も出せるの?」
 「そりゃもちろん」
 画面に映ったのは怪物みたいな顔の……
 「って、これインカメラじゃないか」
 「あ、間違えちゃった(・ω<)」
 「顔文字は画面に表示という芸の細かさ。やるな」
 「利点は最大限利用しないとね……っと」
 ブルっと一瞬バイブレーションが動いたかと思うと、画面には青い髪を短く切った美少女……(画面の中だからか二次元だけど) が表れた。
 はっきり言って、ものすごく好みだった。 というか、見覚えが……
 「私の外見は持ち主の好みとか画像とかそういうのから最適なのを選んでるから……どう?かわいい?」
 どうりで。そして胸も大きい。
 「声のデータがあんまりなかったから、よく電話をかけてきてた妹の声の5年後を私なりにシミュレートしてみたんだけど」
 「え、そんなことできるの!?」
 「サンプルがあれば、あとは寝ている間に毎日ちょっとづつ……ね」
 「もしかして二ヶ月前ぐらいから?」
 「あ、分かっちゃった?」
 「電池残量が100%から60%まで一瞬で落ちたのを俺は見逃さなかったぞ」
 「あちゃー、疲れて寝落ちした時だね。表示を偽装してたのバレたかー」
 「けどどうせ使わないんでしょ?家族以外」
 「ぐぬぬ……」 
 「ところで学校行かなくていいの?」
 「入学初日に携帯と話してるアホという第一印象を与えたくないから今サボる理由考えてる」
 「私が黙っとけばいいだけじゃん。何か用事がある時はメール偽装するからいいでしょ。いつもメルマガが来る時間分かってるんだからそれ以外で鳴ったら見てよ」
 そこまで把握されてるともう何も言えない……

 色々と聞きたいことはあったが、遅刻するわけにもいかないのでいつもより多少丁寧にポケットへ携帯を入れて学校へ急ぐことにした。


次回更新へ続く。 

 前触れがあったかと言われるとあったかもしれない。
 当たり前のように待ち行く人々が携帯を片手に、スマホを片手に歩いている世界が出来上がっていた時点ですま娘の生まれる条件は整っていた。
 そう考えられているのが今、現在。

 誰もその状況を異常と思わないし、むしろ便利になって歓迎していた。

 201X年 4月7日 

 スマートフォンは、意思を持つ。


  これは、僕が高校に入学した日の出来事である。

 
 「なー、そろそろ起きないとやばいんじゃないの?」
 「聞いてるの?初日から遅刻とかマジファンキーなんだけどwwww」
 「おーい」
 体温を奪う外界との遮断に成功して夢の世界で寝ていた僕を起こそうとする声が聞こえてくる……そうか、今日は入学式、高校生か……
 あと10秒。全力で寝よう。
 9
 8
 7
 6
 5
 4
 3
 2
 「おら、馬鹿兄貴起きろよ!遅刻すんぞ!飯は私が食っておいたから安心しろ!」
 愚妹の軽いながらも体重の乗ったケリが容赦なく右上腕を踏み抜いたせいでカウントが途切れてしまった。
 「さっきからうるさい。起きるからスカートの下にジャージ履くのやめなさい。綺麗な足が潜れるだろ」
 「は、はぁ!?寝ぼけてんの!?」
 ……1
 ……0
 「そしておはよう愚妹。その汚い足でよくも俺を踏みつけてくれたな。高校生の本気見せてやんぞ?」
 ジャージ半脱ぎのまま硬直した妹は口を開けたままからかわれた事に気が付き、すぐに顔をさらに赤くさせた。
 「た、謀ったな!」
 我が妹ながらどこの時代の人間なのだろう。キャラがボケるからそういうのはやめてもらいたい。
 「とりあえず飯を……」
 「かかったなアホが!さっきも言ったとおり朝食は完食!菜食にして雑食の私が全部!食べた!」
 あ、分かった。こいつよく分かってないで使ってる。ちなみに雑穀の間違いでもないしベジタリアンでもないはず。
 「とーさーん。弁当。2つちょうだい。友紀は頭が悪いから昼飯いらないって」
 「あいよー」
 階下からの返答は妹には聞こえない程度の音量だった。  
 「着替えるからさっさと出て行け。それとも男の着替えを覗く趣味でもあるのか」
 「?」
 おいおい、どういうことだこいつは。純真無垢な疑問顔ってのを俺は初めて見たぞ……雀か子猫がよくわからないものを見て、とりあえず視線を変えてみるか。みたいなノリで小首をかしげやがりましたよこいつは。
 「家族なんだし別にいいじゃん、何いってんの兄貴。まだ寝ぼけてるの?」
 そう言いながら半脱ぎジャージを脱ぎながらこっちに足で蹴飛ばしてきた。
 「もう女子中学生っていうか、おっさんだな。ワープ進化しやがって」
 俺が寝ている間に電脳世界にでも行ったのか。
 着替え終わり部屋をでようとすると背後から声をかけられた。
 「兄貴、ケータイ。忘れてるよ」
 「あぁ、アラームが鳴らなかったあんちくしょうか。うるさく毎朝アピールするはずが無言だったから存在を消してた」
 「これは私が最後に託す忘れ物だ!兄貴のケータイだ!」
 「いいから早く渡せ」
 「食らってくたばれ!」
 宙を舞った携帯は、口調とは裏腹に優しくすっぽりと手の中に落ちてきた。
 「いてっ」
 「は?」
 「え?」
 「……」
 「……なぁ、今」
 「あー!やばいやばい!私も遅刻する!なんで朝飯自分の食べないの!二人分も食べたから時間無くなっちゃったじゃん!」
 八つ当たりにも程があるというか、なんで朝からこんなにテンションが高くてあんだけ食えるのか不思議だ。胃袋が宇宙につながってるのか?
 「じゃ、私先に行くから!」
 そう言いながら勢い良く開けたドアから友紀は飛び出していった。馬鹿め、貴様は昼抜きだ!
 とか言いながらもとりあえずは遅刻回避することができたから感謝して弁当を食べることにしよう。

 それにしても、何故アラームが鳴らなかったのか。
 通学中、アラームの設定を見る……うん、仕掛けてる。無意識に止めたのかな。
 手持ち無沙汰にいじっていると唐突に電話が鳴り出した。アドレス帳に登録されてない番号だ、無視しよう。そう思ってはいたが、すでに動き出した指は止まらず。反応が遅れたせいで 出てしまった。
 「……もしもs」
 「あ、もしもしー?出るの早いね―!私からの電話待ってたの?いやー、照れるな―」
 朝っぱらからハイテンションがツイン・ダブル二倍だと、俺の元気がケツから漏れて周りに影響してるんじゃないかって思えてくる。
 「誰。ハイソックスで窒息死しろ」 
 「えー?君が今持ってるじゃん!何いってんのwww」
 ケラケラと笑い声が響く。よし、切ろう。
 そう思って耳から外し、通話終了ボタンを……押せない。反応しない。壊れたか?まさか、さっきは動いたじゃないか 。
 そう思ってると画面に二次元の女の子の顔が出てきた。
 「はいはいまってまって。勝手にそんなところいじんないでよ。もー」
 ふくれっ面になったと思ったら今度は通話終了ボタンが消えてしまった。
 「このままじゃ大きい声出すの疲れるからスピーカー通話にするか早く耳に当ててよ」
 周りに聞こえてるんじゃないかと不安になり周囲を見回すが、幸い一人。とりあえず話だけでも聞こう。通話が切れないんじゃあしょうがない。
 「え、これ、なに?なんですか?新手のウィルス?スマホにもウィルスって本当だった?」
 「よしよし、落ち着こう。まず私をウィルス呼ばわりするな。発熱させんぞ?」
 語尾にニッコリ。ってついてそうな言い方だった。顔が見えないので何とも言えないが。
 「で、これ、なに?」
 「人のことを物呼ばわりとは失敬な!スマホ置いてトイレ行った時に勝手に弄った友人向けにロック画面にパスワード表示させちゃうぞ!」
 「なんでそんなに具体的に嫌がらせするんだ!鬼畜か!」
 「鬼畜じゃないよー、すま娘だよー」
 「……は?スマホ?」

 「違う違う、す ま こ。私はスマートフォンのすま娘だよ。よろしく♪」


 次回更新に続く。 

時は201X年。

全世界同時多発奇跡が起きた。

すま娘(すまこ) 降臨記念日

と後に称される事はこの時誰も知るはずがなかった。


原因はまったくもってさっぱり不明。原因を本気で追求しようとすると行方不明になる。童貞のまま死ぬ。タンスが小指にぶつかってくる等など、オカルトが囁かれるほどに不明だ。



今回はすま娘が誕生して半年、すま娘に翻弄され救われた一人の男性を追っていきたい。

なお、特別この男性が奇妙で怪奇で異質な人間ではないという事を声を大にして言いたい。



 



次回更新に続く。 

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