331日、東京都渋谷区で同性カップルの「パートナー証明書」を発行することが条例で決まった。これは、直ちに同性婚を認めるものではないけれど、それでも同性婚へとつながる第一歩として新聞では報じられている。具体的には、家族向け区営住宅への入居が可能になる。

 

今回紹介する映画『パレードへようこそ』は権利のために闘うLGBTと炭鉱夫の人びとの物語だ。2014年のカンヌ国際映画祭でクィア・パルム賞を受賞した作品である。原題は『PRIDE』であるが、最後の大団円を見ると、邦題の『パレードへようこそ』もしっくりくるように感じた。

 

時は1984年。サッチャー政権下のイギリス。経済不況に閉塞感の高まる中、20ヶ所の炭鉱を閉鎖するという政策に反対する炭鉱組合がストライキを始める。ストライキが始まり4ヶ月、長期化するストライキをテレビで知った主人公の一人、マークはゲイの権利運動に参加している自分たちと同様に、サッチャー政権と闘おうとする彼らに対して援助試みようと立ち上がる。マークは炭鉱夫たちを支援するためにLGSM(炭鉱夫を支援する同性愛者の会)を立ち上げるが、炭鉱組合にかけあってもすぐさま電話を切られてしまうばかり。ゲイとレズビアンからの協力を受け入れてくれる団体は皆無だった。そんな中、ウェールズの炭鉱を中心とした町ディライスに話をもちかける。自ら寄付金を渡すため、マークたちはミニバスでディライスまで向かうことに。ウェールズの田舎まで寄付金を持ってきたはいいものの、保守的な雰囲気の中、あまり歓迎されないマークたち。しかし、クラブミュージックとダンスで打ち解けて、次第に運動は盛り上がりを見せていき…。

 

あらすじはこんな感じである。物語は実話をベースにしており、LGBTの権利が今よりも認めてられていなかった時代の炭鉱夫と同性愛者の連帯を、軽快で胸の弾む80’s の音楽とダンスとともに描いている。

 

『パレードへようこそ』を見て思ったのは、年齢、性別、セクシュアリティといった違いを超えて、僕らは手を取り合い連帯することができるということだ。ウェールズのおばちゃんおじちゃんたちがLGSMの若者たちに負けず劣らず、クラブで踊ってはしゃいで抱き合って、キスしている姿は祝祭的で心打たれた。連帯とはこういうことなのかと思い知らされる。とても楽しそうで、高揚するひとときなのである。

 

罵り言葉を逆に利用するという方法もおもしろい。クィアという言葉が当初侮蔑の言葉であったように、劇中ではタブロイド紙が煽動のために用いた文句「pervert(ヘンタイ)」という言葉を、逆手に取ってそれを全面に押し出し、LIVEイベントを成功させる。LGSMの強さを感じた場面だ。

 

家族にゲイであることを隠してLGSMの活動に参加していたジョーという人物についても書いておきたい。彼は両親の反発を押し切ってありのままの自分であることを貫く。とはいえ、ありのままの自分であることは誰にとっても難しい。ときには主張をねじ曲げて黙ってしまうほうが楽に思える時もあるだろう。しかし、それでも自分らしくあるということ。存在を認めさせるということ。それが自分たちのプライドを守るための当然の権利であるということをこの映画は身をもって体験させてくれる。そして、これはLGBTの人びとだけの問題ではなく、誰もが、ありのままの自分らしくこの社会で生きるためには話し合わなくてはならないことだ。そこには熟議民主主義の萌芽が眠っているようにも思える。もう一度『パレードへようこそ』を見ながら、ゆっくり考えてみよう。

 

〈作品情報〉

『パレードへようこそ』

44()シネスイッチ銀座ほか

配給:セテラ・インターナショナル

公式サイト:http://www.cetera.co.jp/pride/

 

(文/渡辺拓)