一般社団法人日本心エコー図学会理事長のブログです。理事長という職にはありますが、ここに書かれることは心エコー図学会の公的意見ではありません。私個人が経験したこと、感じたことを自由に書いてみたいと思います。少しでも心エコーを身近に感じてもらえれば幸いです。なおご意見、ご批判等は一切受け付けませんのでご了解ください。

 先週は、ブラジルから帰国した翌々日から秋田で開催された日本心不全学会に出席していました。私は「最近の弁膜症治療における進歩と問題点」というシンポジウムと「急性非代償性心不全治療における心エコーの役割を極める」という日本心不全学会・日本心エコー図学会ジョイントシンポジウムの座長を務めさせていただきました。ジョイントシンポジウムで演者の先生の発表を聞いて驚いたことは、ヨーロッパでは急性心不全の現場での心エコーの役割は肺エコー(コメットサイン)と下大静脈計測のみを推奨しているということでした(Recommendations on pre-hospital & early hospital management of acute heart failure: a consensus paper from the Heart Failure Association of the European Society of Cardiology, the European Society of Emergency Medicine and the Society of Academic Emergency Medicine. Eur Heart J Heart Fail 2015;17:544.

 自分が今まで救急現場で使ってきた心エコーの使い方とあまりにもかけ離れているので、帰って早速現物を読んでみました。確かに本文中に、臨床所見をとった後の追加検査の一つとして、経胸壁心エコーで肺うっ血のサインや下大静脈径をみる(専門家がいる場合というただし書きつき)と書いてありました。さらに、最初の評価としては血行動態が不安定な場合を除いて多くの場合急性期心エコーは必要ない、しかし心エコーは、特に新患では、状態が落ち着いてからの評価には必要であるとも書いてありました。驚きました。何という過小評価。心エコーは急性呼吸困難の患者さんが入ってこられたときに、その症状が心原性なのか、血管なのか、それ以外か、心原性とすればHFPEFなのかHFREFなのか、冠動脈疾患か、弁膜症か、すぐにオペ場に行くべきか、水を引くべきか、カテコラミンを使うべきか、血管拡張薬を使うべきか・・・・・いろいろな情報が瞬時にわかるわけで(瞬時は言い過ぎですが数十秒以内にはわかります。急性期にはフルスタディをする必要はありません)、必須不可欠の検査だと思っていたのですがどうもヨーロッパでは違うようです。察するにヨーロッパでは心エコーを救急現場でルーチンにとる習慣がなく、随分と大層な検査とされているのではないでしょうか。翻って、日本では心エコーは少なくとも心原性かそうでないかぐらいは循環器内科医なら誰でも判断できるような手軽な検査であり、救急外来でもすぐに実施できる環境にあるところが多いのではと思います。(もしもそうでない循環器医や施設があれば至急に改善していただければと思います。)ひょっとして医学やデバイス治療面ではともかく、医療では日本はヨーロッパより良質ではないかと思った次第でした。なおヨーロッパのコンセンサスの著者にはEuropean Association of Cardiovascular Imagingがはいっていません。はいっていれば少し心エコーに対するトーンが変わったかも知れませんね。

 観光の終わった日の晩(正確にはその翌日の午前25分の飛行機)に現地を出発し、帰りも28時間35分かけて帰ってきました。現地実質3泊でしたが道中が長いので結局自分としては結構長い1週間の旅行となりました。2月に行ったインドもインパクトがありましたが、ブラジルもなかなかのものでした。会場自体が比較的治安のいいところで、しかもホテルからほとんど出なかったので怖い目にも遭わずよかったです。出発前に見たYouTubeのおかげで心配し過ぎていたのかもわかりません。もちろん治安の善し悪しは場所にもよると思います。ファベーラという貧民街はマジで危ないとフアン君も言っていました。またインドでは衛生面にたいへん気を遣いましたが、ブラジルではそこまででもなく、当初は“地球の歩き方”に従って控えていた水道水も最後の方ではゴクゴクいっていました。あとはジカ熱ですが、潜伏期間が数日から1週間ということなのでもう少し様子を見ないといけないでしょうが、まあ大丈夫でしょう。他にもここに書いていない小さいトラブルはいろいろあったのですが、何につけても今回はいつもの単独行動とは違って筑波大学の先生方が一緒で、いろいろと心強かったです。

 WSEは基本的にEACVIのカラーが強いです。会場でも12月のリスボンでのEuroEchoの宣伝をあちこちでしていましたし、セッションの合間のスライドでも繰り返し繰り返し流していました。今回のブログその1でWSEというのは「エコーの後進国に最先端のエコーを届けようという高邁な発想の下に」行われている事業で「奉仕精神の発達した欧米人の考えることらしく、旅費もホテル代も先方から出ない」と書きましたが、案外EACVIの人たちはこういう宣伝効果を狙っているのかも知れません。もしそうなら世界中に植民地を築いてきたヨーロッパ人はやはりしたたかですね。もちろんASEもいろいろと世界戦略を練っています。JSEも、いい人ね、で終わらないように、いろいろな機会をとらえて存在感を高めていかなければと思った今回の旅でした。

 翌日からは学会です。かなりたくさんの人が参加していて(2000人くらいいたかも)どこの会場もしっかり埋まっていました。女性も多く(ひょっとして半分近く?)、中にはスタイルもよく、服装も顔立ちもド派手でモデルさんか?と思うような方もたくさんおられましたが、なんと全員医師と聞いてびっくりしました。(ちなみにブラジルにはエコー技師さんはおられないそうです。)教育講演が主体で欧米の有名な先生方が話す内容はさすがによくまとまっていて勉強になりましたが、地元の先生方が話される内容は玉石混淆という印象でした。私は3日間で座長が3つ(”Diastolic Function””Aortic Stenosis””Challenges in TAVI”)、講演演者が二つ(”Athletes heart vs subclinical LV systolic dysfunction””Longitudinal strain – why, when, how”)あたっていて、あまりホテルの外に出ることもなく会期中を過ごしました。食事ですが6日の夜はホテルから歩いて数分の所にある「OK, Google」で教えてもらったレストランへ石津先生と山本先生と行き、シュハスコとワインを堪能しました。シュハスコ(またはシュラスコとも言うそうです)というのはWikipediaによれば「鉄串に牛肉や豚肉、鶏肉を刺し通し、荒塩(岩塩)をふって炭火でじっくり焼く、ブラジルをはじめとする南アメリカの肉料理」です。何の予備知識もなくたまたま行ったお店だったのですが、たいへんおいしく満足しました。7日の夜はバスに20分ほど乗ってRibalta Eventosという宴会場で開かれた全体懇親会に行きました。DJがずっとロックを流していて、おつまみと飲み物だけで延々数時間過ごしました。さすがに飽きて途中で帰りましたが、その後にサンバタイムがあったそうです。きっと現地の人は踊りまくっておられたことでしょう。

 で、観光です。最終日の午前中にすべてのデューティが終わった後、夜のチェックアウトまでの空き時間に石津先生と山本先生と一緒に市内観光に行きました。学会にブースを出していた旅行業者で予約したのですが、その際Japanese speaking driverはいるか?と尋ねたところ、いるよ、とのことだったので頼みました。こちらに住んでいる日本人か、日系人が案内してくれるのか、と思っていたところ現れたのがめっちゃファンキーなお兄さんで度肝を抜かれました。聞くと大学で言語学を学んでいるフアン君という22才の学生さんで、ポルトガル語以外にスペイン語、英語、イタリア語、フランス語、日本語の5カ国語を話せるとのことでした。日本語はどうやって勉強しているの?と聞くと、おばあさんが日本にいるし、自分も日本に滞在したことがある、普段はKumonで勉強している、とのことでした。結局英語でのガイドとなって日本語の実力の程は不明のままでしたが、たいへんきれいな英語をしゃべっていたので、ひょっとして日本語もそこそこしゃべれたのかも知れません。フアン君の案内でリオデジャネイロ観光の定番のポン・ジ・アスーカル(丸くとんがった形の一枚岩)とコルコバードの丘(709mの丘の頂上にある手を広げたキリスト像が有名)に行き満足して帰ってきました。
シュハスコ
シュハスコ~~~。店員さんがまわってきて目の前で肉をカットしてくれます。しかも定額料金で食べ放題!
懇親会にて
懇親会にて。香港のAlex先生、石津先生と
懇親会にて2
懇親会にて。ブラジルのSamira先生、アメリカのRicardo先生、ASE理事長のRigolin先生、ASE事務局のRhondaさんも一緒です。Rigolin先生は来年4月の盛岡での日本心エコー図学会学術集会にも来られる予定です。
ポンジアスーカル3人で
ポン・ジ・アスーカルにて、石津先生、山本先生と記念写真
フアン君
ポン・ジ・アスーカルにてJuan(フアンと発音します)君とツーショット。チャラく見えますが、なかなかのしっかり者でした。
キリスト像
コルコバードの丘のキリスト像

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