一般社団法人日本心エコー図学会理事長のブログです。理事長という職にはありますが、ここに書かれることは心エコー図学会の公的意見ではありません。私個人が経験したこと、感じたことを自由に書いてみたいと思います。少しでも心エコーを身近に感じてもらえれば幸いです。なおご意見、ご批判等は一切受け付けませんのでご了解ください。

 20日、21日は大阪国際会議場で日本心エコー図学会第22回冬期講習会に参加していました。今年は例年にもましてたくさんの参加希望者がおられ、心エコー図学会としてはありがたい限りです。また今回から私に代わって泉先生が担当理事になられたので、運営のことに気を遣わなくともよくなり少しゆったりした気分で聴講できました。講師の先生方も与えられたテーマに対してよく勉強され、工夫されたいへんわかりやすいご講演ばかりだったと思います。教科書に載っていないコツやピットフォールも惜しげなく披露され、「なるほど、なるほど」と思えることも多く本当に勉強になりました。冬期講習会に参加された方は25日から49日までの期間限定ですが録画された講演を視聴できます。復習にお役立てください。また冬期講習会に参加しなかったけれど心エコー図学会会員の方は、後日講習会の講演の中から選りすぐりのものを3つ、4つ選んでオンデマンド教育プログラムにのせますのでそれで勉強してください。心エコー図学会会員でない方、教育プログラムでは冬期以外にも夏期、秋期の講習会の中の選りすぐりの講演を視聴できます。この機会に是非会員になってください。

 今回のプログラムを見ていて、心エコーは多方面にわたるツールだなとつくづく思いました。講演のタイトルを見ただけでも、心機能、心不全、肺高血圧、虚血、心筋症、弁膜症、先天性、不整脈、血管、透析、膠原病、抗がん剤、脳梗塞等々が取り上げられており、他科疾患も含めて、こと循環器に関するありとあらゆる状況が心エコーで評価され、病態を理解し、かつ治療に役立っていることがよくわかりました。吉川純一先生がよく「心エコーこそ臨床だ」と言っておられましたが、まさにその通りだと思います。こう考えてくると心エコーに造詣の深い先生は、ひょっとして他領域を専門とされている先生よりも広い視野をお持ちかも知れません。たとえば冠動脈インターベンションを専門とされている先生のところに拘束型心筋症の方が来られてもちょっとお困りになるかも知れませんね。一方、心エコー医のところに来られたら、根治療法を見つけるのは難しいかも知れませんが、診断と病態把握、管理はできます。そういう意味では心エコー医は、他科の先生も含めていろいろな先生方からもっともっと頼りにしていただくべき存在であるべきなのでしょう。もちろん私たちも名実ともに頼りにしていただくためには日々勉強していく必要がありますが。若い先生方の中にはインターベンション手技習得にばかり目がいっている人もおられるようですが、それだけでなく是非心エコーも勉強していただきたいと思いました。かりに私が老後にわけのわからん病気になっても、ちゃんと診断していただき安心して正しい医療が受けられますように。

 ASEから、学会誌であるJournal of the American Society of EchocardiographyJASE)のeditorAlan Pearlman先生からMichael Picard先生に変わったという通知をJASEEditor’s PagePDFとともにいただきました。Pearlman先生は10年間editorを務めてこられたそうですが、その間の彼の雑誌への献身ぶりはたいへんなもので、JASEに投稿されたことのある方はご存知だと思いますが、投稿論文の隅々まで読み込んできわめて詳細な意見を返してこられたものです。時にはreviewerからよりも応えるのに苦労するようなことを指摘され辟易することもないではなかったですが。しかしそんな努力の甲斐あってか、JASEimpact factorは今や6.82となってしまいました。創設当時は通りやすい雑誌だったのに。日本心エコー図学会の学会誌であるJournal of Echocardiographyにも早くimpact factorがつくように皆さまのご協力の下、頑張りたいと思います。

JASE Picard

 論文を書くのはたいへんしんどい仕事です。大袈裟に聞こえるかも知れませんが、わが身を削る思いがします。もっと簡単にひょいひょいと書く人はいるでしょうが、私にはできません。学会抄録もそうです。昔々、AHAの締め切りは5月の連休明けでした。当時国立循環器病センターにいた私はレジデントの先生達が作ってくれた10数本の抄録を直すのに連休は毎年完璧に潰れていました。その頃はAHAに通るということが一つのステイタスで、いまいちのネタでもなんとか通るように知力体力を絞り切る感じで直していました。ずっとこんなことをしていたら早死にするのではないか、と思ったものです。しかしこれは私の能力の無さ故であって、世の中にはすごい人がいます。私が留学していたクリーブランドクリニックの循環器内科のトップは当時Eric Topolという先生でしたが、この先生はフェロー達が書く200本以上あるAHAの抄録を一晩でチェックし、しかもすべてに的確なコメントを付けて返してこられたものです。もちろんあらかじめグループ内でチェックを受けある程度完成した後の抄録とは言うものの、ご自身の専門領域でないものにもちゃんとコメントを書かれるのはやはり只者ではないと思いました。そう言えば私の直接の上司だったJames Thomas先生も私が書いた論文をチェックして一晩で返してこられました。本当にできる人は本当にできます。(余談ですが、私の論文が一晩で返ってきたことを知った同僚の中国人に、自分の論文はずっと前に出したのに一か月たってもまだ返ってこない、と文句を言われました。こっそりThomas先生に聞いてみると、あの論文は英語と筋がなっておらずスッと読めないのだ、とのことでした。)論文書きでもう一つ思い出したことですが、やはり留学中に同僚に、君らは英語国民だから英語論文を書くのに何のストレスも感じなくていいね、と言ったところ、居合わせた全員に猛反対をくらいました。曰く「何言うてんねん、話している英語と論文にする英語とは全然別物で、自分たちもめっちゃ苦労してるねん」とのことでした。まあ、そうは言いながら英語国民の方がやっぱり有利ですよね。JASEeditor変更通知から論文執筆について思い出したことをつらつら書いてみました。


 皆さま、お正月はいかが過ごされたでしょうか。今日は7日ですから松の内も終わりということで、もう明日からは正月気分を抜かないといけないのでしょう。私はと言えば、体重が増加の一途をたどる3日、これではいかんと自転車に乗っていたところまさかの場所で転倒。寒いので分厚いスキー用手袋をしていてブレーキに十分に手が届かず恥ずかしいことになりました。近場といってもなめたらいかんです。軽い打撲で済みましたが、正月早々健康の有難みをひしひしと感じているところです。

 さて心エコー図学会の今年の活動目標です。去年の19日のこのブログでは希望的目標として、1)日本心エコー図学会は医学の発展に寄与します。2)日本心エコー図学会は学会員のメリットを尊重します。3)日本心エコー図学会は国内、国外の他学会との交流を深めます。と書いています(http://blog.livedoor.jp/jsepr/archives/2017-01-09.html)。今年も基本的にこれと変わるものではありません。1)で示していたように、インパクトファクターを獲得するのは最大目標の一つです。過去にも何度か書いていますが(http://blog.livedoor.jp/jsepr/archives/2017-12-25.html)、皆さまにおかれましては論文を投稿される際には是非Journal of Echocardiographyの過去2年以内の論文を引用いただきたくお願いします。2)の学会員のメリットですが、これがあってこその学会ですから今年もいろいろなことを実行していきたいと思います。昨年実施した会員アンケートの結果は大いに参考にさせていただいていますが(会員の方は会員専用ページから結果を見ることができます)、もし他にも“これは言っておきたい”ということがあれば私に直接でも代議員の方を介してでもいいので教えてください。ちなみに昨年書いていたeラーニングはオンデマンド教育プログラムの形で実現しました(http://www.jse.gr.jp/contents/ondemand/index.html)。学会員の方はどんどんご利用ください。3)は学会間の交流についてですが、今年も積極的に展開します。たとえば4月の盛岡での学術集会ではたくさんの他学会とのジョイントを計画していただいています。またASEEACVIKSEから著名な先生方が来られ講演やディスカッサントを務められます。皆さまも積極的に参加して是非視野を広げていただければと思います。

 軽い打撲とは言いながら、体動で痛みを感じるたびに、自分のアホさと年齢を思い知ります。健康第一で今年も頑張りたいと思います。

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