一般社団法人日本心エコー図学会理事長のブログです。理事長という職にはありますが、ここに書かれることは心エコー図学会の公的意見ではありません。私個人が経験したこと、感じたことを自由に書いてみたいと思います。少しでも心エコーを身近に感じてもらえれば幸いです。なおご意見、ご批判等は一切受け付けませんのでご了解ください。

 4日(日)は幕張で行われていた日本口腔外科学会総会に参加させていただきました。この3月に日循から感染性心内膜炎のガイドラインを出させていただきましたが、その際お世話になった東海大学口腔外科の坂本春生教授が「感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン2017 循環器医と歯科医・口腔外科医のクロストーク」というシンポジウムを企画され、そこで共同座長と演者を務めさせていただいた次第です。循環器からはやはりガイドライン作成メンバーであった国循の泉先生、東北医科薬科の大原先生が参加され、歯科関連からは兵庫医科大学歯科口腔外科の岸本裕充教授、関戸達哉クリニックの関戸達哉先生が参加されました。シンポではそれぞれの立場から歯科治療前の予防的抗菌薬投与について講演していただいた後、歯科医・口腔外科医におけるガイドラインの認知度、その向上のための方策等についてディスカッションしました。3日間ある会期の最終日、しかも最後のプログラムということでどれだけの先生方が参加されるか危惧していたのですが、おそらくは500名以上ははいる会場がほぼ満席、立ち見も出るくらいの集客で感染性心内膜炎に対する歯科の先生方の関心の強さを知ることができました。途中で、日循ガイドラインを見たことがある先生方はどれくらいおられますか?と挙手いただいたところ、ほとんどの先生方が挙手され驚きました。口腔外科の学会なので一般歯科の先生方とは事情が異なるかも知れませんが、ネットを通じて情報が簡単に手に入る時代だからこそ、われわれの責任が大きいことを痛感しました。

 皆さんは歯科の先生方と普段からコミュニケーションを取っておられますでしょうか?私はこのガイドライン作成に携わるまで歯科の先生方とほとんどお話する機会はありませんでした。しかし感染性心内膜炎診療では歯科の先生方との密な連携は必須です。また昨今は歯周病とさまざまな循環器疾患の関連も言われているところです。今後は歯科の先生方と積極的に連携させていただき、感染性心内膜炎のみならずいろいろな循環器疾患へアプローチしていければ、と思いました。

 ガイドライン作成時に歯科の先生方に執筆をお願いしたことで、思いもよらなかった分野で交流が広がりました。ありがたいことです。

口腔外科学会にて

シンポジウム終了後、皆さんとともに記念撮影


 毎年この時期はエコーハート出雲という島根大学の田邊一明教授が開催される講習会に参加させていただいています(http://blog.livedoor.jp/jsepr/archives/2017-10.html)。今回(1027日)は最近自分が勉強したMRの話をさせていただきました。僧帽弁リモデリングという言葉をご存知でしょうか。心筋梗塞後に左室が拡大してくる心室リモデリングはご存知と思いますが、同時に僧帽弁がストレッチによって長くなり、かつ分厚くなって可動性が低下してくるという現象です。そこにはレニンーアンギオテンシン系が関わっていそうだというお話をさせていただきました(Beaudoin J, Circ CV Img 2017Barkto PE, JACC 2017;70:1232)。またmitral disjunctionの存在下で両尖逸脱やフロッピー弁などで僧帽弁尖の動きが過大になると、それが乳頭筋や心室筋をストレッチして同部位に線維化を起こし不整脈の基になるらしい、突然死の原因になるらしい、という話もさせていただきました(Basso C, Circ 2015;132:556Marra MP, Circ CV Img 2016)。興味深いですね。心筋が弁をストレッチするということと、弁が心筋をストレッチするということが、どちらも悪いことをするのですね。筋肉をストレッチすることはもちろんいいことなのでしょうが、心臓の場合、ストレッチはよろしくなさそうです。そう言えば、その昔麻酔科にいたとき心臓外科の手術で、急激に還流が増えて心臓に容量負荷がかかったりしたときに心臓外科の先生が「心臓を腫らすな」と怒鳴っておられたことを思い出します。

 さて会終了後しばし田邊先生とお話させていただきましたが、共通認識としては、今、心エコーは追い風ですね、ということでした。ひとつにはSHDのカテーテル治療の普及があります。SHD治療では三次元経食道心エコーは必須のアイテムです。また治療ごとに独特の見方が要求されます。もうひとつはCardio-oncologyです。これにはglobal longitudinal strainも要求されますが、何よりも精度のいい計測を求められます。さらには負荷心エコーの保険収載も大きいですね。これらをきっかけとして心エコーの重要性を今まで以上に皆さんに認識していただき、あわせて質の高いレポートを迅速に返せるようなシステム作りが必要になってくるだろうと思います。そのためにはもっとたくさんの若い人に心エコーに興味を持ってもらい、心エコー検査に携わる医師、技師をどんどん増やしたいですね。学会としてもいろいろと考えていますので、ご理解とご協力の程をお願いします。

田邊先生と

会終了後の食事会での一コマ。この時期、ハロウィーンのシーズンなのでいつも変わった格好をさせられます。でも頭の中では二人とも心エコーの将来について考えています。


 先週の土曜、日曜は日本心エコー図学会第15回秋期講習会のため東京でした。役職柄、心エコー図学会関連のあちこちの講習会に参加できて勉強になります。今回も所用の合間を縫ってできるだけ聴講していました。何年もこの業界に身をおいていますが、どんどん新しいことが出てきて新鮮です。また演者も着実に若返ってきていて、彼らの新しい視点に驚かされます。心エコーに携わっていながら、こういう講習会に足を運ばない人は本当に損をしているのではないかと思います。旅費もかかるし、参加費もかかるし、という気持ちもわからないではないですが、最新の知識と技術を勉強する、あるいは復習する、ということは患者さんのメリットにもなるのだということを今一度考えてみてください。もし心エコー図学会の会員でない人は是非会員になってください。入会金要るしなあ、と思われるかも知れませんが、講習会に12度足を運べば、十分、元が取れますので。

 さて今回の講習会、聴講できた中で改めて勉強になったものの一つに聖マリアンナ医科大学の明石先生が講義されたタコツボ心筋症の話がありました。あのなんとも言えないアシナジーに初めて遭遇したのは卒後3年目だったか、警察病院に勤務していたときのことでした。意識消失、心停止で運ばれてきた中年の女性でしたが、蘇生後に冠動脈造影と左室造影をしたとき心基部が過収縮で心尖部が動いていない典型的タコツボ像を目にしたのです。結果的にその方はクモ膜下出血だったのですが、たいへんインパクトが強かったです。蘇生後にはこんな左室造影像になるのか、とも思いました。佐藤光先生がタコツボ心筋症を提唱される以前の話です。当時の部長に、中谷君、蘇生後の左室造影を系統的に調べてみてはどうかね、と言われ、はあ、と生返事で返していましたが、あのとき精力的に研究していたらひょっとして歴史に名前を残せたかも知れません。。。まあ、性格的に無理ですが。そんなことを思い出しながら聴講していました。

 ところで長年秋期講習会の担当理事をお務めいただいていた赤石先生が今回をもって担当から退任されました。来年からは石津先生が担当になられます。赤石先生、長年ありがとうございました。石津先生、これからもよろしくお願いします。

秋期講習会18

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