一般社団法人日本心エコー図学会理事長のブログです。理事長という職にはありますが、ここに書かれることは心エコー図学会の公的意見ではありません。私個人が経験したこと、感じたことを自由に書いてみたいと思います。少しでも心エコーを身近に感じてもらえれば幸いです。なおご意見、ご批判等は一切受け付けませんのでご了解ください。

 たいそうなタイトルですが、哲学の話をするわけではありません。ちょっと必要があって非心臓手術の術前管理について調べています。以前の非心臓手術ガイドラインでは確かβ遮断薬の術前投与が積極的に勧められ、そしてその根拠になったのが、エラスムス大学のPoldermans先生が発表された一連のDECREASE試験だったように記憶しています。しかしなんとPoldermans先生は捏造等の疑いで内部告発を受け、今はエラスムス大学も去っておられるのですね。それとともに一連のDECREASE試験も削除され、ガイドラインでのβ遮断薬投与も、新規投与の場合は高用量はダメ、低リスク症例には不要、など以前より慎重になっているようです。以前のガイドラインを覚えていないので、間違っていたらすみません。その昔、ある講演で演者の先生がさかんに術前β遮断薬使用を強調されており、でもβ遮断薬は低血圧等で使いにくいこともあるのになあ、と違和感を感じたのを覚えているので、多分昔のガイドラインではもっと強調されていたのだろうと思います。で、何が言いたいかというと、今まで真実と思っていたことが、コロッと変わることが時々あるなあ、ということです。

 バチスタ手術というのがありました。Batista先生はブラジルの心臓外科医でDCMなどの拡大左室を一部切り取って縫縮することにより心機能を改善させるという手術を初めて行った方です。一時たいへんな話題になり、日本にも来られましたし、ブラジルまで行ってその手術を学ばれた先生もおられました。しかし、長期成績は?と聞かれると、手術後の患者さんはジャングル奥地に帰っていく人が多いのでわからない、など今から思うとちょっと怪しい所もありました。そんな中でクリーブランドクリニックのMcCarthy先生がこの手術を始められ、テレビの報道で素晴らしい成績を示されたのでたいへんな注目を集めるようになりました。当時、国循にいた私も外科の先生と一緒にクリーブランドクリニックまで見学に行ったものです。が、しかしその後しばらくしてMcCarthy先生は、いやあれはやっぱりダメだ、と言い出され、いつの間にかブームが終わってしまったのです。あれだけ宣伝していたのに一体何?と思いましたが、さすがアメリカ、ダメなときにはさっと転換する変わり身の早さはすごいな、と思うとともに、真実はわからないものだなと思いました。(ちなみにバチスタ手術は日本の素晴らしい先生方のご努力で、形を変え、適応を厳密にして生き残っています。)

 CRTの適応決定の際のYu Indexもそうですね。香港のYu先生がご自身で作られた指標を用いて立て続けに素晴らしい論文を発表され、このときも大変話題になりました。結局、PROSPECT試験で、Yu Indexが再現性を持って計測するのが難しいことが明らかになって、今は誰も使っていないのではないでしょうか。

 ことほどさように、真実と思われたことがひっくり返ることがよくあります。何が真実かはEBMに基づいた研究で明らかにされるのでしょうが、捏造されたらどうしようもないですね。私としては、experience based medicineも忘れず、ある“真実”が報告されたときには自分の中の違和感にも注意を払いつつ向かい合っていくしかないのかな、と思っている次第です。

 このたび一般の方々に、心エコー図検査とはどんなもの?を知っていただくべくポスターを作りました。心エコー図検査室の前にでも貼っていただけると待ち時間に患者さんにお読みいただけるのではないかと思います。代議員の先生方にはお送りしましたが、心エコー図学会ホームページ(http://www.jse.gr.jp/)のOther Informationからダウンロードもできますので是非お使いください。

 ポスター作成時には何度も見直したにもかかわらず、こうやってできあがってみるとちょっとした気になる点が幾つかあります。たとえば、検者の手がドラえもんの手になっている、モニターの中の画像がずれている(オリジナルではこんなことなかったのに)、画像ではVSDがあるように見える、です。他にもあるかも知れません。しかし、これで心エコー図検査啓発という目的は十分達成していると思うし、たまたまVSDの人の検査をしているところだと考えればいいし、物事には完璧ということはないし、ということで納得しています。もしも、これは致命的な間違いだぞ、という所があればこっそりと事務局までお知らせください。次のバージョンでこっそりと改訂しておきます。

ポスター

 エコーハワイに行ってきました。会期は123日~27日でしたが、冬期講習会が22日まであったのと29日に東京で所用のあった私は25日の晩に日本を出て、27日の昼間に現地を発つという二泊四日の弾丸旅行でした。今回で多分5回目の参加になります。ハワイに二泊?もったいない、と言われるかも知れませんが、たいがい一人での参加なので5回目ともなれば一人で行けるところも大体行き尽くし、二泊でもそれほど残念感はありません。ところでハワイと言うと皆さんはサングラスをかけて浜辺に寝そべる美女を想像されるかも知れませんが、エコーハワイの開催地はハワイ島です。ホノルルのあるオアフ島ではありません。芸能人が出没するとか、何かとキラキラ感満載のオアフ島と全く違って、島のあちこちが黒い溶岩で覆われておりその中を道路が延びている、そんな感じの場所です。エコーハワイ開催地はハプナビーチというコナ国際空港から車で30分くらい北上したところにあるリゾートです。韓国のHa先生に聞いた話ですが、以前韓国からの出席者がハワイだからということでホノルルにホテルを取り、さてレンタカーで会場に行こうとGPSに入力したら、You cannot go to this place by a car.と出てきたそうです。海で隔てられているのですから当然ですがGPSの真面目さに笑いました。

 エコーハワイは元々メイヨークリニックが主催するエコーコースだったのですが、最近はASEに管轄が移っており、今回のコースディレクターはThomas Ryan先生とNeil Weissman先生でした。今回の参加者は350名を超えており、過去最高とのことでした。内訳は多い順からアメリカ206名、カナダ43名、オーストラリア28名、韓国26名で日本からは4名のみでした。毎回、日本からももっと参加してよね、と言われるのですが、国民性でしょうか、あまり増えません。来年はもっと増えるといいのですが。中にはエコーハワイが終わったあともさらに1週間くらい滞在してバケーション三昧の方もおられるようですが、なかなかねえ。プログラムは大体午前中に終わります。午後は遊んでください、ということで参加者はゴルフをしたり、海に行ったり、山に行ったり、、、家族連れも多いです。講習会のレベルは中級前後と言うところでしょうか。興味ある方はhttp://asecho.org/echohawaii/からプログラムが覗けますので見てください。ちなみに今回の私の発表は、Complications of Myocardial Infarction: Critical Role of Echo.と、Role of Stress Echo in Valvular Heart Disease.の二演題でした。

 ところでエコーハワイに行くといろいろな国の人と話すことになります。今回アメリカの先生からよく聞かれたのは、トランプ大統領、どう思う?でした。政治経済的なことがよくわからない私は、まあ、興味津々で見ていますよ、くらいしか答えられませんでしたが。メイヨークリニックのOh先生からは前述の日本人参加者数のことに絡んで、日本では年間どのくらいバケーションを取るの?と言われ、う~ん、他の人のことはよく知りませんが、私は45日からせいぜい1週間位ですかねえ、と言うとあきれられました。メイヨークリニックでは年間7週間のバケーションを取ることになっているそうです。さらに学会絡みであれば4週間の休みが取れるそうです。それでもあれだけのアウトプットが出るわけですから、やはりただ者ではありませんね。

 

 ハワイよいとこ、一度はおいで。来年は是非皆さんも。


こんな所で

こんな所で勉強しているのかと思われるかも知れませんが、勉強しているのです。

会場風景

会場風景

夕陽

会場から夕陽を望む。


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