一般社団法人日本心エコー図学会理事長のブログです。理事長という職にはありますが、ここに書かれることは心エコー図学会の公的意見ではありません。私個人が経験したこと、感じたことを自由に書いてみたいと思います。少しでも心エコーを身近に感じてもらえれば幸いです。なおご意見、ご批判等は一切受け付けませんのでご了解ください。

 317日(金)~20日(日)に金沢で日本循環器学会が開催されました。例年どおり盛りだくさんな内容でしたが、日本心エコー図学会関連でいいますと、今回初めて日循とのジョイントセッションが行われ私はその座長を務めさせていただきました。「心エコーはSHDカテーテル治療にどこまで貢献できるか」というセッションでしたが、最終日の午後という時間帯にもかかわらず立ち見まで出るほどの盛況ぶりで、SHDに対する関心の高さがうかがえました。これを機会に心エコーが臨床にいかに役立つかということを一人でも多くの先生に知ってもらえれば嬉しく思います。

 さて皆さんは「脳卒中と循環器病克服5カ年計画 ストップCVD(脳心血管病) 健康長寿を達成するために」という計画があるのをご存じでしょうか。国も国民もどうしてもがんという疾患に目を向けがちで、国のお金もがん診療に投資されがちですが、実は心疾患と脳血管疾患をあわせた死亡者数は後期高齢者ではがんによる死亡者数を上回っており、超高齢化社会を迎えた日本で健康長寿を考えると、もっと脳卒中と循環器病に目を向けてもらってもいいのではないか、ということで日本脳卒中学会と日本循環器学会が共同で策定した計画です。脳・心血管病に関係した学会も多数連携しており、日本心エコー図学会も関連学会のひとつとなっています。今後広くあちこちに働きかけようということで、18日夕方に計画の成立した背景や内容を紹介したシンポジウムがあり聴講しました。なお日本心エコー図学会もホームページでこのことに関する法律が成立するよう応援するという声明文を出していますので、よろしければご覧ください(http://www.jse.gr.jp/nosocchu_seimeibun.pdf)。確かにテレビ等でもがんを取り上げた番組は多くありますが、脳・心血管疾患はそれほどでもありませんね。われわれの想像以上に一般の方には知られていないものと思います。そのような中で昨日最終回を迎えた某連続テレビ番組では某人気俳優が、難しいとされる脳・心血管疾患をバンバン手術していくので、毎回突っ込みを入れながら見てしまっていました。医学的に、えっ?ということもないではないですが、このような番組で一般の方に脳・心血管疾患についての関心を持ってもらえればいいかも知れません。ただしせっかくならテレビの健康番組に煽られるこなく正しい知識を持ってもらいたいものですね。

 ここから考えた(というのもおこがましい。感じたというべきか)ことについて少し書きたいと思います。

1 貧富の差が激しい

 ほんの一瞬でしたが外出時に街で見た情景はホテル内のそれとは全く違ったものでした。こういう所にいる人達は、道を隔てたすぐそばで暮らしているにもかかわらず、一生ホテルに足を踏み入れることはないのだろうなと思いました。インドではアメリカンドリームのようなことは起こらないのでしょうね。スラムドッグ$ミリオネアも現実的とは思えませんし。私達は恵まれているということを実感しました。

2 衛生状態が悪い

 既に述べたように水については随分気を遣いました。(よりによってマイクル・クライトンの「アンドロメダ病原体」をキンドルに入れて持って行っていた私もよくなかったのですが。)おかげで体調を崩すことなく帰国できましたが、旅行者にこれほど気を遣わせるのはよろしくないでしょう。以前、ガンジス川に誤って落ち水を一口飲んでしまった日本人が、帰国後某病院に入院したところ血液からアメーバ赤痢などあらゆる種類の病原体が検出されたと聞いたこともあります。(「ガンジス河でバタフライ」に主演した長澤まさみさんは大丈夫だったのでしょうか。)核実験をするお金があるのなら、是非衛生状態改善に使ってほしいと思いました。水道水をガブ飲みできる国、日本。日本死ね、と言われる方もおられるようですが、私達は恵まれているということをまたまた実感しました。

3 英語について

 英語のヒアリングに難があるのは前からですが、インド人の英語はとりわけ聞き取れません。中でもホテルの部屋掃除の人とか、空港まで乗ったタクシーの運転手とかの一般の人の英語は全くわかりませんでした。英語であるのかどうかすらわからないという有様です。それでも彼らは堂々としゃべります。医師の中にもわからない英語を話す人がたくさんいます。心不全に対する外科治療の話をしたアメリカ人外科医に、座長(インド人医師)がCRTについてどう思うかを質問したのですが、どうやら彼がよく聞き取れなかったようで間が空きました。すると、ああそうか、彼は外科医だからCRTについてはわからないんだな、と(多分)言って質問を納めたということがありました。自分の英語が通じていないとは思わずに相手の責任にする、すばらしい根性です。

4 画像診断について

 今回はWorld Congress on Cardiac Imaging and Clinical Cardiology ということでCTMRIPETの話が多くありました。最近、EuroEchoをはじめとして、このように画像診断をトータルに扱う学会が増えてきているように思います。しかし自分達の最先端の研究をsubmitして深くディスカッションするにはやはり領域別学会でないと十分ではないでしょう。とは言え、各手法のレビューを中心とした教育講演は勉強になります。心エコー図学会でもSHDのための心エコー図研修会ではCTの話などを入れていますが、今後は機会を選んでたとえば、PETと心エコーの使い分け、というような教育講演を企画しても視野が広がっていいかも知れませんね。

 

 ということでいろいろ考えました。インドはインパクトが強かったので計3回にわたって書いてしまいました。これで帰国して4日が発ちましたが、心配した下痢にもならず熱発も起こらず順調に経過しています。

で、学会の話です。会場はムンバイの空港から車で15分程度で着く一流ホテルで、4日間でおそらく1500名程度参加されていたのではないでしょうか。基本的に教育講演ばかりで成り立っており、私は三つの講演(Cardiovascular Risk Prediction Using Myocardial Strain Imaging. Echocardiography of Heart Failure: How to Use it in Diagnostic Routine Clinical Practice. How to Integrate Imaging to Assess Prosthetic Valve Dysfunction.)と二つの座長が当たっていました。この座長二つのうち一つはあらかじめ知らされておらず、現地でプログラムを見て初めて自分の名前を見つけて知ったものです。学会レベルは割と高めかと思いましたが、この座長のことからもわかるように運営は雑。時間がおしていても座長自ら喋りまくって一向に次に進まないという場面を何度も目撃しました。基本的に自己主張が強いお国柄なのでしょうね。心エコー関連の講演はそれほど多くなく、あまり新しい発見はありませんでした。今回が第一回ということもあって力がはいっていたのか、セレモニーも何度かあり夜は余興の一環でボリウッド・ナイトなどというものも見せてくれました。残念ながらボリウッドダンスのレベルはいまいちでしたが。

困ったのは英語です。もともとインド人の英語は私には聞き取れないのですが、今回インド人の英語でも、全く聞き取れない、少し聞き取れる、かなり聞き取れる、の三種類があることがわかりました。方言のせいもあるのかも知れません。(座長席で隣になった先生に、今度インドに呼ぶよ、と言われたように思うのですが、聞き違えであるように。)インド英語を聞き続けていると、たまにはいるアメリカ人の講演が非常に耳に優しく聞こえました。インド英語はアメリカ人にも聞き取れないとの話を聞いたことがありますが、Narula先生もVannan先生ももともとインドのご出身ですし、今回はそれを聞く機会はありませんでした。また何かの折に誰かに聞いてみたいと思っています。

ムンバイはインド最大の都市だそうで、観光も考えたのですが座長を余分に一つ当てられフリーの日がなくなったこと、会場が街の中心部からずいぶん離れていること、などで今回はあきらめました。その代りホテルの近辺を散歩してみようと思って出てみたのですが、少し歩くとあまり広くない道のわきにボロボロの店が並んでいるところにはいってしまい、何をすることもなくたむろしている人や、やせ衰えた犬がいたり(狂犬病が頭をかすめた)、後ろからクラクションを鳴らしながら迫ってくるリクシャーやタクシーに身の危険を感じて15分ほどでホテルに戻りました。以後、ホテルから一歩も出ずでした。(さらに続く)

学会場入り口
                  学会会場入り口

広い会場
                  広い立派な会場


リクシャー

 リクシャー 日本の人力車を真似したというオート三輪タクシー


ボリウッドダンス

ボリウッドナイト ダンサーの動きがずれていることがこの写真からもわかります。


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