一般社団法人日本心エコー図学会理事長のブログです。理事長という職にはありますが、ここに書かれることは心エコー図学会の公的意見ではありません。私個人が経験したこと、感じたことを自由に書いてみたいと思います。少しでも心エコーを身近に感じてもらえれば幸いです。なおご意見、ご批判等は一切受け付けませんのでご了解ください。

 理事長になってやりたかったことの一つにwebベースの教育プログラムがありました。というのも心エコー図学会は出産、育児等で仕事を一時的に離れる方が多いのですが、復職されるときには、数年のブランクがとても気になる、という声を聞いていたからです。(余談ですが、私も今まで臨床を離れたことが二度ありました。一度は国循研究所で研究生活をしていた三年間、二度目は留学していた二年間です。どちらも臨床に戻るときには不安で、他の先生の処方内容なんかをこっそり勉強したなあ。今となっては懐かしい初々しい時代です。)休職の間でも学術集会や講習会等に足を運んでもらえればいいのですが、たとえ数日でも家を空けることがままならない方もおられるでしょう。ということでこのたび9月1日よりオンデマンド教育プログラムを始めます。内容は、既に終わった講習会のプレゼンテーションの中で教育効果が高いと考えられるコンテンツです。日本心エコー図学会のホームページ、右のカラムの「オンデマンド教育プログラム」から入れます(http://www.jse.gr.jp/contents/ondemand/index.html)。ただし会員限定なので、休会中の方は復会手続きをお取りください。(非会員の方はこの機会に是非入会を!)とりあえず第一弾として今年1月に開催した冬期講習会の中から三本選んでいます。今後各講習会ごとにコンテンツを数本選んでアップしていく予定です。

 講習会の内容がアップされるならわざわざ講習会に参加しなくてもいいのでは、と思われる方がおられるかも知れませんが、そんなことはありません。現在は講習会終了後、講習会参加者だけのために数ヶ月間すべてのプレゼンテーションを視聴可能としています。このたび開始するオンデマンド教育プログラムでは、その期間終了後、さらに数ヶ月して講習会コンテンツのうち数本程度(今回は三本)をオンデマンド教育プログラム用にアップするわけです。ですから本当に勉強しようと思えば講習会に参加してもらうに越したことはありません。講演は生で聴くのが一番頭にはいりますしね。

 講習会、オンデマンド教育プログラムともにしっかり活用して自己学習に役立ててください。

 

 しばらく学会も講習会も行っていないし、世間は夏休み気分なので、心エコーに関係ないことを気楽に書いてみます。もとよりこのブログは私的なものなのでお許しを。

 先日、女優の宮沢りえさんが出演しておられたNHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」を見ていたところ(正確に言うと、私は宮沢りえさんのファンなのでわざわざビデオに撮って後日見ていたのですが)、気になる言葉が出てきました。それは演出家の故・蜷川幸雄さんが稽古場で他の俳優さんに向かって言われたという「もっと、自分を疑えよ」という言葉でした。宮沢さんは、演技をしながらいつも自分はこれでいいのか、と自問しておられたそうですが、これを聞いて自分が肯定された思いがしたそうです。世の中では、しばしば「自分を信じろ」という言葉を聞きますが、「自分を疑え」という真反対の言葉で救われることもあるのですね。確かに自信満々で自分はそこそこイケてる、自分は間違いない、と考えている人にとっては、自分を疑うことによって自分の未熟さを知らなければさらなる進歩はないわけです。こんな言葉をすらっと出す蜷川さんもすごいですが、この言葉に反応する宮沢さんもさすがプロフェッショナルだと思いました。

 「自分を疑う」のは確かに大事なことでしょうが、それも時と場合によるわけで、しょっちゅう自分を疑ってばかりでも困ります。もうそろそろ高校野球本番ですが、甲子園で熱投を繰り広げるピッチャーが、あと一人コールの中「自分を疑え」と言っているようでは打たれます。ここはやはり「自分を信じろ」と言い聞かせるべきところなのでしょう。要は、一生懸命努力している人が、その成果を発揮したいときには「自分を信じろ」で、時間的余裕があってさらに高みを目指そうとするときには「自分を疑え」となるのでしょう。われわれの世界で考えると、研究発表の準備中は「自分を疑え」で、発表当日は「自分を信じろ」とでもなるのでしょうか。今度機会があって、もし準備不足なのに自信満々の人がいれば、「もっと、自分を疑えよ」と言ってみましょうか。結構かっこいいですね。うぜぇ、と返されて終わるかもわかりませんが。

 22日と23日はエコー神戸(日本心エコー図学会第26回夏期講習会)でした。毎年うだるような暑さの中で涼しい会場にいられて幸せです。症例が大事という尾辻担当理事のお考えで、今回は16本の教育講演に加えて、1 Case, 1 Lessonという症例ベースのレクチャーが16本、計32本の発表という盛りだくさんな内容でした。やはり症例呈示はいいですね。自分がその場にいたら、という気持ちで聞いてしまうので、頭にはいってきやすいです。臨床を離れた最近は、現場でドキドキしながらエコーを見ることがとんとなくなってしまったのですが、昔を思い出しつつ楽しめました。外国からのゲストスピーカーはマサチューセッツ総合病院のMary Etta King先生とソウル大学のYong-Jin Kim先生で、King先生は先天性心疾患について、Kim先生はASD closureについて、お二方ともにいろいろな症例を提示いただきながらお話されたいへん勉強になりました。勉強になったとは言え、私はすぐに忘れてしまうので、繰り返し学ぶ必要があります。その点、心エコー図学会の講習会参加者は、webで講演スライドを視聴することができるので便利です。利用したいと思います。

 今回、締めの挨拶の中で、吉川先生のお言葉、「心エコーは臨床そのものだ」、を紹介させていただきました。これは本当にそのとおりで心エコーを自分で行い、診断をつけ、病態を理解し、それに応じて治療を行うということでどれだけ効率的に医療ができるか、自ら実行している人はよくおわかりと思います。こんな有益なツールを自分のものにしていない人はものすごく損をしているのではないでしょうか。自分だけでなく、患者さんも損をしているわけで、斯界のエラい先生方には是非心エコーの重要性をわかっていただき、専門家が実施した心エコーには保険点数上乗せなど考えていただけたらなあ、と思います。そのためには心エコー図専門医を作りなさいという声が上がってくるかも知れませんね。日超医との棲み分け、制度構築、関連学会や厚労省との折衝、云々、云々。日暮れて道遠し。

 ところで私は役目柄、心エコー図学会の講習会にはすべて参加しているのですが、最近講習会の講師の先生方が若返ってきたように思います。着実に若手が育っていると言うことであり嬉しい限りです。若い先生方におかれては国内での講演だけでなく論文もたくさん書いて、是非世界に打って出ていただきたいと思います。(こういうことを言うので私は煙たがられるのでしょうね。老いの繰り言。)

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