一般社団法人日本心エコー図学会理事長のブログです。理事長という職にはありますが、ここに書かれることは心エコー図学会の公的意見ではありません。私個人が経験したこと、感じたことを自由に書いてみたいと思います。少しでも心エコーを身近に感じてもらえれば幸いです。なおご意見、ご批判等は一切受け付けませんのでご了解ください。

 17日は第8回血流会に参加しました。血流会って何?と言われる方が多いと思いますが、4年前に当時北里におられた板谷先生と心臓血管研究所の上嶋先生が、渦流イメージングが世に出てきたのをきっかけに多分野の知識を結集してもっと血流についての理解を深めよう、医工連携を図ろう、という趣旨で作られた会です。今回は私が当番世話人を拝命し阪大医学部の講堂で行いました。血流だけで半日、かなりマニアックでした。しかもディスカッションが長く、演者の先生方もお疲れになったのではないでしょうか。もちろんそれだけに学ぶことが多く、ことに最後の医工連携についてのディスカッションは興味深いものがありました。確かに医と工(あるいは産と学)の間には隔たりがあります。工からすれば、医のことを知らないので医が具体的要望を出さないと何が必要かわからない、ということでしょうし、医から言えば、工の中の誰がどんなことを得意分野にしているかわからない、どんなことが技術的に可能かわからない、となります。これを解決するには、お互いが気軽に知識を交換する場を作るしかないのではないかと思います。世の中には既にいろいろとそういう場もあるやに聞いていますが、まだまだ一般的ではありません。今回、当番世話人をさせていただいて、血流会がそのような場として機能するのではないかという感想を抱きました。

 ところで心エコーこそは医と工の連携の賜ですね。竹中先生がご挨拶の中でお話されていましたが、心エコー図の元々の創始者はスウェーデンの循環器内科医のエドラー先生と物理学者のハーツ先生(ヘルツという単位を作った方の息子さんです)です。またドプラ法の創始者は阪大内科の仁村先生(循環器内科医、その後国立循環器病センター研究所名誉所長)と阪大工学部の里村先生です。この先生方のたいへんなご努力の末に、今私達が日常普通に使っている心エコー装置ができあがったのです。ありがたいことです。ドプラ法が日本発の技術であるということを私達はもっと誇りに思ってもいいのではないでしょうか。結局、エドラー先生もハーツ先生も、仁村先生も里村先生も、ノーベル賞は取られませんでしたが(エドラー先生とハーツ先生はラスカー賞は取られました)、この先生方のご業績は個人的には十分ノーベル賞に値する発明だったと思います。仁村先生には私も国循時代に学会抄録や論文の添削等をしていただいたことがあります。生データを自身でご覧になり説明を聞いて納得された後に、ディスカッションをしながら几帳面に赤鉛筆で英文を直していかれました。たいへん貴重な経験でした。仁村先生が亡くなられて2年。草場の陰から、きっと日本の若い人達にエールを送っておられるのではないかと思います。

先週土曜日10日は大阪の中之島で開催された第3回負荷心エコー図研究会に参加しました。初参加です。そもそもこの会は負荷心エコー図の普及を目的に2015年に聖マリアンナ医科大学の鈴木先生達が立ち上げられたものです。もともと関東地方をベースに行ってこられましたが、今回近大の平野先生が当番世話人とのことで初めて関西での開催となりました。一般演題4題、運動負荷エコーのデモ、産業医大の竹内先生による特別講演からなっていました。演題数が少ないのでディスカッションの時間が十分にあり、なかなか学ぶところの多い一日でした。負荷エコーのデモではメーカーのご協力により最新の負荷エコー用ベッドを目の当たりすることができましたが、その多機能ぶりには驚くばかりでした。また竹内先生の特別講演では負荷エコーだからといって大そうな器械を導入しなくても手持ちの器械で十分施行可能であることを教えていただき、これから新たに始めようとする施設も勇気づけられたのではなかったでしょうか。

欧米では負荷エコーが当たり前の検査として行われていますが、日本ではなかなか普及が進まないのが現状です。面倒である、時間的・人的余裕がない、診断能に自信がない等々いろいろな理由があるかと思いますが、核医学検査よりも安価ですし何といってもエコー検査なので非侵襲的であるということは大きな強みだと思います。もともと負荷エコーは虚血の診断、viabilityの評価に使われていましたが、今では弁膜症や肺高血圧の重症度評価、さらには拡張不全の診断にも使われはじめています。他のmodalityで判定困難なことがわかるというメリットは大きいですね。この会の目的は研究会の開催を通じて負荷エコーの普及を目指すということだと聞いています。決して大きな会ではありませんが、こういう努力を地道に積み重ねて是非日本でも負荷エコーを行う施設がたくさん増えてくれることを望みます。

(最近、このような会でふと気が付くと私がその場で一番年寄りだということに気づき愕然とすることが増えてきました。以前は一番年下のことが多かったのに。。。)

で、感想。非常に個人的かつ独善的な感想で恐縮ですが、ASEは再び元気になってきたのではないでしょうか。個人的には今まで、ASEは出席しても教育講演ばかりでわざわざアメリカに行かなくても同じような内容なら日本で聞けるしなあ、と思ってあまりワクワク感がなかったのですが、今回はテーマの選択もよく聴講しがいのあったものが多かったように思いました。SHD関連のネタが多かったせいかも知れません。この分野ではやはり欧米の方が進んでいますし、それ以外の分野でもnの多さでは日本は敵いません。とはいうものの留学時代からの友人に聞いたところアメリカではどんどん研究費が削減されていてやりにくくなっているそうです。少ない研究費で研究することに慣れている日本はその点今後有利かも知れませんね。頑張れ、日本。また例年よりも少しだけですがオーラルプレゼンが増えたのもいい点だと思いました。若い先生方は是非チャレンジしてみてください。

第二の感想:お金が重要。企業からの寄付が少なくなってきているのはいずこも同じで、そうなると個人からの寄付が重要になってきます。ASEのプログラムブックには毎年個人寄付者のリストが載っているのですが、あらためてじっくり見てみると今までの累積寄付額のトップはなんと計10万ドル以上を寄付されているJamil Tajik先生でした。すごい!!!まあ、アメリカの循環器医は高額所得者だそうですからこんなことが可能なのかもしれませんが、日本ではちょっとありえないでしょう。前回書いたResearch Awards Galaもお金集めの手法ですが、キリスト教的考え方(多分)に基づいて、チャリティとかフィランソロピーといった考え方が発達しているアメリカだからこそ実現可能な手法で、日本では難しいでしょうね。では日本ではどうするか?いい考えはありません。規制、規制、で却って自分で自分の首を絞めているという愚をエラい人たちに早く気づいてもらいたいものです。

第三の感想:みんな頑張っているなあ、です。今回のYIAにノミネートされた4題のうち何と2題が韓国からの演題でした。惜しくも1位にはなりませんでしたが、そのアクティビティの高さに驚きました。頑張れ、日本。しかし日本の若い先生方も頑張っています。ベストポスター賞に選ばれた先生、トップ・アブストラクトに選ばれた先生などなど。来年はもっとたくさんの先生がASEに応募され、他流試合に挑まれることを期待しています。

余談。何が余談で何が本談かわかりませんが、往路の機内で観た「ラ・ラ・ランド」、よかったです。監督が、鬼気迫る演奏シーンが印象に残っている「セッション」の監督だと知って納得。いやあ、映画って本当に良いもんですよね~(と書いても何のことかわからない人が大半でしょうが)。サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ(益々わからないでしょうね)。

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