年内での解散を発表した時間堂。その解散公演を前に、自身の演劇観や時間堂という劇団との出会いや思い出、そして最終公演『ローザ』について語った劇団員ロングインタビューです。(聞き手:松本一歩)
第一弾は『ローザ』ではエーベルトを演じる國松卓です。
第一弾は『ローザ』ではエーベルトを演じる國松卓です。
「就活を蹴って演劇の道へ」
ーご自身のプロフィールを、教えてください。
北海道旭川市出身で、1985/1/11生まれの31歳です。高校まで北海道にいて、大学進学を機に東京へ出てきて、大学の時には映像を作っている教授のゼミにいて映画を撮ったりしていました。たまたま大学の先輩に文学座の研究生の人がいて、その人が出ている発表会を観に行ったりもしてました。ちょうど通っていた学科でも芸術系の「演劇鑑賞講座」みたいな講義が増設され始めた時期で、そこに文学座の演出家の人が来て、「おもしろそうだな」と思って。それで就職活動中に文学座の研究所の試験を受けたら受かっちゃったので、就活を蹴って文学座の研究所に入った、という感じです。


ー就職活動を蹴っちゃったんですか?
親からも電話で反対されたけど、「いや、就職やめるから」って言ってぶっちしちゃいましたね。役員面接まで進んでたんですけど結局行かずに、そのまま就活からフェードアウトしました。
ーちなみに就活されてた時はどんな業種を目指されてたんですか?
当時は人材コンサル系が盛り上がっていたので、そっち系をずっと受けてましたね。派遣の元締めをやっているような会社とか、どちらかと言えば人材ベンチャー系ですかね。説明会でも社員の人が「激務で寝れない」って言ったりしてたんですけど、でも人や人材を扱うのなら面白そうだなと思ってました。
ーそれで大学を卒業されて、文学座の研究所へ?
そうですね、でも文学座は一年でクビになったので、その後青年座の研究所へ入りました。文学座の卒業公演では『上野動物園再々々襲撃』をやって、結構主役みたいな役だったんですけど(笑)。
それで一年フリーターをやってお金を貯めて、今度は青年座の研究所へ入りました。青年座には2年通って、また座員への昇格には落ちて、そのままフリーになったという感じです。
ー文学座と青年座というといわゆる新劇の養成所ですが、二つ通ってみて違いなどはありましたか?
文学座の一年間は台詞ばかりやっていたけど、青年座だと一年目はほぼ台詞の授業はなくて、基礎訓練ばっかりやってましたね。ミュージカルの『ウェストサイド・ストーリー』の発表があったり、地歌舞とか、狂言とか、ハンドボールの日本代表のオフィシャルトレーナーの方に筋トレを習ったりもしていました。あとは発声と声楽もそれぞれ専門の先生がきて教えてくれました。
あと鍬田かおるさん(演技指導者)の授業でアレクサンダーテクニークを教わったり。鍬田さんからは主にからだの使い方を教わってましたね。F.M.アレクサンダーさんご本人が書かれた『自分のつかい方』という本も鍬田かおるさんが翻訳して出されていて、僕は二冊持っています。鍬田さんはすごくストイックで、厳しい人です。ワークショップに行ったりするとただただ辛いです(笑)。
ー話が少し戻りますが、大学の頃は本格的に演劇をやられていた訳ではなかったんですか?
そうですね、大学の頃は自分や同期が撮った映画に出演したりとかはしてましたけど、本格的に役者をやっていたわけではなかったです。
ーそれでも大学の就活の時期に研究所を受けられたりしたというのは、やっぱり俳優をやってみたかったんですか?
元々大学の頃にマスコミ系のナレーションを勉強するような養成所に通ったりしていて、お芝居に完全に興味がなかったという訳じゃなかったんです。その養成所というのも一応声優さんの学校みたいな感じだったんですけど、声優やナレーションの訓練をするというよりは、なぜかお芝居をやらされる感じのところだったので、やっぱりお芝居への興味はずっとありましたね。
時間堂について 「書類で落ちると思っていた」
ーそうして時間堂に2015年に入団される訳ですが、初めて時間堂の作品をご覧になったのはいつですか?
実は僕入る前に(舞台で)時間堂を観たことがなくって、実際にちゃんと生で観たのは入団してからです。入団の最終面接の時に、『テヘランでロリータを読む』(2013)のDVDを借りて初めて観ました。だから実は一度も観たことがない劇団に、「それでもいいですか?」といって入れてもらったような形です(笑)。
というのは僕、書類で落ちると思っていたので。書類の「時間堂の作品を観たことがありますか?」という欄にも「観たことありません」って書いてたし。作品を観たことはないけど時間堂のワークショップは受けていたので、それで時間堂に入ればいろんなことが学べるんじゃないかと思います、ということを志望動機にしてた気がします。
というのは僕、書類で落ちると思っていたので。書類の「時間堂の作品を観たことがありますか?」という欄にも「観たことありません」って書いてたし。作品を観たことはないけど時間堂のワークショップは受けていたので、それで時間堂に入ればいろんなことが学べるんじゃないかと思います、ということを志望動機にしてた気がします。
ーワークショップの方が先だったんですか?
そう、ワークショップは受けたことがあって。もとはマイズナーを勉強したくて受けに来ました。元々アクターズワークス(※)のワークショップが受けたかったんですけど、なかなか日程が合わなくて。
それでいろいろ調べていた時に、時間堂のワークショップに行き着いた感じです。
(※注・黒澤世莉さんの師匠にあたる柚木佑美さんが、サンフォード・マイズナーシステムにのっとった、演劇のワークショップを行うための団体)
ー時間堂のワークショップはいつ頃通われてたんですか?
たしか2014年に通い始めて、それで2015年には入団したので、知ってから入団までのスパンがめっちゃ早いんですよね(笑)。
「なんか凄そう」
ーワークショップに通い出した当初の時間堂や黒澤世莉さんのイメージはいかがでしたか?
世莉さんに対するイメージは、「なんか凄そうなやつ」みたいな。「なんか、すごそうだなぁ」って思ってました(笑)。それはたぶん「時間堂」っていうネームバリューに対するイメージっていう部分もあって。時間堂って結構ガンガンやっている劇団、というイメージだったから、「あれがやり手の演出家、黒澤世莉か…!」っていうのはありましたね。
ーそれで時間堂の劇団員募集があって、「受けてみよう」と思った決め手はなんですか?
30歳になって、もともと30歳で演劇を辞める予定だったんだけど、いざ30歳になった時に親父に相談した時に「今さら辞めるな、演劇を続けろ」と言われて。それで30歳になった時に、これまでと同じようにフリーで演劇を続けていてもいかんな、と思うようになって。その時に環境を変えるしかないなと思いました。それまで事務所や劇団に所属したことがなかったので、どこかに所属してみよう、と思って。舞台が好きだから劇団がいいな、って思った時にちょうど劇団員の募集をしていたのが時間堂でした。
でもほんとに作品を観たことがないから無理だろうなと思ったんですけど、どうにか最終面接まで行って。世莉さんと晴香さんとの面接を受けて、入りました。
ーいざ入団されてみた実感としてはいかがですか?
今となってはすごく入ってよかったなと思います。入った当初は時間堂のふわっとした空気感に馴染むまで苦労したりもしたんですけど。僕自身時間堂の長期のワークショップを受けてはいたんですけど、世莉さんがどういう演劇を作りたいのかというのもなかなかつかめなくて。
それがやっと「こういうことか!」ってやっと分かったのが、今年の5月のレパートリーシアターの『いちごの沈黙。』(2016)に出たときでしたね。それまでは僕このままだと戦力外だって言われていて。言われたときはただただ超腹が立ったんですけど(笑)。でも『いちごの沈黙。』では客演の平佐喜子さん(Theatre Ort)にも助けられたりして、終わってみればやってよかったなと思います。
「世莉さんと演劇をやっていると楽しい」
ー時間堂にいて、一番楽しいのはどんな時ですか?
演劇をやっている時です。べたなことしか答えられないですけど(笑)。世莉さんと演劇をやっていると楽しいな、と思います。
なんていうのか、何が楽しいのかはよくわかんないんだけど、「演劇って楽しいな」って心から思いますね。時間堂に入るまで、ほかのところでやっていた頃にはそんな風に感じたことってあんまりなかったんですけど。
ーそれは時間堂という劇団全体の雰囲気も関係ありますか?
いわゆる厳しい、というか喧々諤々しているような現場と比べて表面的な雰囲気だけ見れば、ふわっとしてたりはするかもしれないですね。けど、本質的に要求されてることは一緒だと思います。
昔の世莉さんは知らないけど、今の世莉さんを見る限りたぶんそもそも俳優が自主的にやらないと意味がないと思ってるから、思っていたとしても言わないのかな。「それやれよ!」とか。
俺とかも、「これ世莉さんは『やれよ!』って思ってるだろうな」と思いながらも、なかなかできてなかったりすることも多いんですけど。色々調べたりとか。そろそろ怒られるかもしれない…。
−これまでの時間堂の活動の中で、一番の思い出はなんですか?
レパートリーの『いちごの沈黙』はやっぱりすごい思い出深いかな。時間堂のレパートリーシアターが始まって、初めて出た公演だったから。まあ出演した作品はすべて思い出深いと言えば思い出深いんですけど。
『いちごの沈黙。』は、それまで自分自身よくわかっていなかった時間堂のお芝居がちょっとわかった公演だったから。「あれ、演劇ってこんな感じだっけ?」って思ったんですけど。
ー「こんな感じだっけ?」というのは?
客演のTheaer Ortの平佐喜子さんが他人にいい意味で壁がない人だったので、「俺舞台上でこんなに人から殴られたり蹴られたりするもんなのかなぁ?」って思ってたんです(笑)。そうやって稽古場で平さんから実際にすごく理不尽に扱われてるんだけど、それを役としても「理不尽だ」と思っていてよくて、それを台詞に乗せてもよかったんだ、ということです。「あ、こういうことか。」とちょっと分かったというか。世莉さんの、時間堂のお芝居がちょっと分かった感じがしました。
−時間堂の一番のお気に入りの作品を教えてください。
やっぱり『いちごの沈黙。』ですかね。『言祝ぎ』も楽しかったのでどっちと言われると微妙な線ではあるんですけど…。『いちごの沈黙。』は話に内容らしい内容がない作品で、俳優がおもしろくしていかないとおもしろくない、という意味で辛くはありましたけど。
「本当に感じて、本当にやる」
ー『いちごの沈黙。』で掴まれた「時間堂のお芝居というのはこういうことか」というのは。
そもそも30歳になって環境を変えようと思ったひとつのきっかけというのが、「どうしても芝居しちゃう」というのが悩みだったというか。演劇への入りが新劇だったというのもあるだろうけど、台本を読んでこう書かれている感情を、こう出さなくてはいけない、とか、読み取ったことをこう表現する、みたいなことが演劇だと思ってたんです、最初。
それで何年かお芝居をやっているうちに、舞台上で実際に感じたことを出すのが大事だということが何となく分かってきたんですけど、じゃあそれを実際にどうやるのかというのは分からなくて。たまたま上手くやれている時があってもそれを意識してやれているわけではなくて、どうしていいのかよくわかんなくて。
それが、『いちごの沈黙。』の時には、舞台の上で本当に感じて、本当にやるっていうのが意識して出来た、ということですかね。理不尽に扱われて「理不尽に扱われて辛いです!」っていうことを、ただ言っただけなんだけど(笑)。でも「こういうことか!」と思う瞬間がちゃんとあった、っていうことですね。
それで何年かお芝居をやっているうちに、舞台上で実際に感じたことを出すのが大事だということが何となく分かってきたんですけど、じゃあそれを実際にどうやるのかというのは分からなくて。たまたま上手くやれている時があってもそれを意識してやれているわけではなくて、どうしていいのかよくわかんなくて。
それが、『いちごの沈黙。』の時には、舞台の上で本当に感じて、本当にやるっていうのが意識して出来た、ということですかね。理不尽に扱われて「理不尽に扱われて辛いです!」っていうことを、ただ言っただけなんだけど(笑)。でも「こういうことか!」と思う瞬間がちゃんとあった、っていうことですね。
ーいま時間堂というものを一言で言い表すとすると、なんですか?
難しい…。なんだろうな。一言かぁ…(笑)。「楽しい」とかっていうのは簡単なんだけど、それだと意味わかんないですよね…。「演劇の楽しさがつまってる。」かな。
「時間堂の劇団員の印象」
ー黒澤 世莉(堂主 / 演出家)
不器用な人だな!と思いますね。世莉さんかっこつけなのに不器用なんですよね。もっとやりようないのかな?って思いますよ(笑)。かっこをつけて、それで自分が苦しくなっていくタイプですね。劇団員的には、もうちょっと自分を高く売ってほしいなと思います。こんなご時世、あんまり安売りしてもいいことないよ、って。
ー菅野 貴夫(俳優)
とても器用でうらやましいです。っていうとなんか悪口みたいに聞こえるかもしれないけど、ストイックな人ですね、お芝居に対して。普段の佇まいはすこし怖いオーラを放っているけど、実際話してみるととても楽しい人です。
ー鈴木 浩司(俳優)
実はあんまり絡んだことがないんですけど、かわいいおじさん、という感じです。
ー直江 里美(俳優)
なんて言ったらいいんだろう、キラキラした人かな。普段もそうなのかもしれないけど、芝居していると特に「この人キラキラしているなあ」と思います。俺は時間堂だと直江さんとばっかり芝居していて共演回数も多いので。もはや直江さんありきみたいな感じです。
ーヒザイ ミズキ(俳優)
最初はただただ怖い人だと思ってたんですけど、そんなことはなかったです。可愛い人なんだなぁと思いますね。ほんとはたぶん弱くて、可愛い人なんだけど、そういう風に見られたくないのかもしれないなって最近思っています。実はすごいやさしいじゃん、って思うんですけど、時々すごい毒舌になることもあったりして(笑)。
ー阿波屋 鮎美(俳優)
鮎美さんは姉御肌、かなぁ。俺の中では肝っ玉母ちゃんみたいなイメージですね。「この人良いお母さんになるんだろうな」という勝手な妄想があります。
ー尾崎 冴子(俳優)
冴子は、バカでずるくて、しっかりしてる(笑)。馬鹿で愛らしいキャラなんですけど、芸能界で生き残っていくためのこずるさみたいのもあって(笑)。
話を聞いていると、人生の中でいいとこばっかり取っていくとこういう考え方になるんだろうな、って思ったりします(笑)。つまり貪欲に生きているということなんだなと思いますね。
ー穂積 凛太朗(俳優 現在福岡県在住)
人間として真っ当になった方が良いと思う。もっと真っ当な社会人になったらいいのに、って(笑)。一緒に働いていたらただただイライラしそうだなって気はしますけど。
ー大森 晴香(プロデューサー)
時間堂のお母さんですね。大黒柱です。はるかさんがいないと結局時間堂もやっていけないから。制作って大変なんだろうな、と思いますね。
『ローザ』について
ー稽古はいかがですか?
こんなペースで進んでいって終わるのか、という不安もちょっとありますけど(11/22時点)。今日からちょっと真面目に作るモードに入るはずなんですけど。今までは実験したりふざけたり試したりしていたので。
こないだの日曜日に通したんですけど、世莉さんのブログにある通り、意図して成立させないようにしているところもあるけど、意図してないところも成立してなくてビビった、みたいな感じでしたね。
「このシーンどうしたらいいんだろう」というところもあって(笑)。「このシーンとシーンのつなぎ絶対お客さんポカーンとするんだろうな」っていうところもあったり。でも楽しくやっています。
ー俳優としては、世莉さんのブログは気になりますか?
そんなに気にはしてないですけど…。読んでいて「これもしかして自分のことかな」って思ったりするけど(笑)。
ー『ローザ』でお気に入りの台詞(あるいはシーン)を教えてください。
一番最後に僕のエーベルトという役の長台詞があるんですけど、それが良い台詞だなって思います。良い台詞っていうか、俺の中で印象に残るな、というか。100年近く前のドイツのことを喋っていながら、今の政治のことを語っているみたいな気がするというか。いつの時代も政治家は同じようなことを考えていたのかもしれないな、と思ったりします。
「たぶん初演は違ったはず」
ー『ローザ』という作品を一言で表すと?
なんだろう…。分かんないな…。「愛」って感じです。今回は結果としてそういう風に、お客さんが「これは愛の話だ」って思えるように作っているんじゃないかと思います。
たぶん初演は違ったはずなんです。世莉さん自身も「初演の時は違った」って言ってたので。この『ローザ』の初演は演出の世莉さんが「観客全員ぶっ殺す(=お前の人生変えてやるからな!)」っていうゴリゴリの「皆殺し時代」の象徴的な作品だったらしくて(笑)。
稽古場で世莉さんが喋ってたのを聞いた感じだと、『ローザ』のひとつ前の『星の結び目』(2011)という作品をやった時に、演出家としてうまくやれなかったこともあったみたいで。それで本当に自分がやりたいことをやってみよう、というので作り始めたのが『ローザ』だって聞きました。稽古も長くやったり、自分で書き下ろしたり。
でも今はその初演の『ローザ』を書いた「作家・黒澤世莉」はもういないらしいんですけど(笑)。だから「これはどういう意図で書いたのか?」って聞いても、「その人はいないから分からない」って答えるしかないって。俳優としては色々教えてほしいんですけど(笑)。
たぶん初演は違ったはずなんです。世莉さん自身も「初演の時は違った」って言ってたので。この『ローザ』の初演は演出の世莉さんが「観客全員ぶっ殺す(=お前の人生変えてやるからな!)」っていうゴリゴリの「皆殺し時代」の象徴的な作品だったらしくて(笑)。
稽古場で世莉さんが喋ってたのを聞いた感じだと、『ローザ』のひとつ前の『星の結び目』(2011)という作品をやった時に、演出家としてうまくやれなかったこともあったみたいで。それで本当に自分がやりたいことをやってみよう、というので作り始めたのが『ローザ』だって聞きました。稽古も長くやったり、自分で書き下ろしたり。
でも今はその初演の『ローザ』を書いた「作家・黒澤世莉」はもういないらしいんですけど(笑)。だから「これはどういう意図で書いたのか?」って聞いても、「その人はいないから分からない」って答えるしかないって。俳優としては色々教えてほしいんですけど(笑)。
−この『ローザ』の稽古場で一番大切にしているのはなんですか?
時間堂に入ってはじめて古典というかバックボーンのある役をやることになったので、そうやって役のバックボーンについて考え始めたときに、いつもの時間堂みたいに柔軟性を失わないことが大切かなって思います。
と言いながらもまだきちんと考えられていないので、そろそろヒザイさんに「いつやるの?」って聞かれそうですね。「役のバックボーン全然考えてないよね」って今日ぐらい怒られるんじゃないかと思います。ほんとに怒られる前に何とかしないと…。ヒザイさんはそういうところきちんとしてるので。
ー「花束で抱きしめるような体験を」という『ローザ』にちなんで、ご自身とご自身の役を花にたとえるとしたら、それぞれどんなお花ですか?
なんだろう、エーベルトだったら、雑草とかって言っちゃいそうなんだけど、そもそもあんまり花を知らないし…。花にたとえると、なんて考えたことないな…。
俺自身はひまわりとかにしようかな。大きなやつ。大きなひまわりですね。
エーベルトは…。(と、携帯電話で調べて、)これにする、ナスタチウムっていう花です。花言葉が「愛国心」ということで。あー、でもこういう答え方するからヒザイさんとかに怒られるんだろうな、「本当に役のこと分かってるの?」って(笑)。

ナスタチウム
「時間堂、『ローザ』にまつわらない、いろいろな質問」
ーこれまで演劇をやってこられて、最も影響を受けているのは誰ですか?
一番影響を受けているのは、やっぱり最近だったら世莉さんって答えるかな。
他にもいくつかターニングポイントはあって。青年座の研究所を卒業してフリーになった最初の27歳くらいの頃に出会ったのが演劇集団砂地の演出の船岩くんです。初めて出た小劇場が砂地の作品だったので。船岩くんに出会わなかったらガジラ(演劇企画集団THE・ガジラ)周りの人達とも知り合わなかったと思います。今の僕の演劇関係の知り合いってほぼその砂地周りで出会った人たちですね。出演のオファーもそういう方たちから頂いたりします。
あとは鍬田かおるさんと出会ったのも、大きなポイントではあると思います。
他にもいくつかターニングポイントはあって。青年座の研究所を卒業してフリーになった最初の27歳くらいの頃に出会ったのが演劇集団砂地の演出の船岩くんです。初めて出た小劇場が砂地の作品だったので。船岩くんに出会わなかったらガジラ(演劇企画集団THE・ガジラ)周りの人達とも知り合わなかったと思います。今の僕の演劇関係の知り合いってほぼその砂地周りで出会った人たちですね。出演のオファーもそういう方たちから頂いたりします。
あとは鍬田かおるさんと出会ったのも、大きなポイントではあると思います。
ー卓さんが稽古場で手放せないものはなんですか?
汗っかきだから絶対タオルは持ってるかな。忘れるとうわっ!てなる。
ー今まで見た中で「これぞ!」という一本のお芝居を教えてください。
最近だと『いま、ここにある武器』(演出:千葉哲也 風姿花伝プロデュースvol.3 2016)ですかね。「うおお、良い演劇を観た!」って思いました。
あと劇場では観てないんですけど、イキウメの『太陽』の再演(演出:前川知大 2016)もすごいよかったです。あれはNHKのプレミアムステージで観て、「うおお、劇場へ観に行けばよかった!!」って一緒に観てた友達と言っていました。「久々に良い演劇をみたな!」と思った作品でした。
新劇系だったら、高瀬久男さん演出の、『カラムとセフィーの物語』(2010)が良かったです。この『カラムとセフィーの物語』はその年イチ面白い作品でした。
ー稽古場でうまくいかなかったり困難な時、どうやって乗り越えますか?
あんまり何もしないんだけど…。最近、時間堂に入ってからはあんまりそういう悩みを抱えていないというか。もしかしたら共演者の人は抱えているのかもしれないけど、俺はそんなに抱えていないなあ、って。もしかしたらいけない状態なのかもしれないけど。あんまりマイナスになるということがないかな。
『ゾーヤ・ペーリツのアパート』(2016)の時は「ほんとにこの演出で行くの?」「えぇ、ほんとに??」というのは、ちょっとあったんですけど(笑)。
ー時間堂解散後の活動のご予定は?
来年に舞台が二本決まっています。あと事務所を探そうとは思ってますね。これから食っていくにはどうしたらいいんだろうということを考えたときに、やっぱり映像とかの仕事もしないといけないのかなあ、って思います。そのために事務所に所属して、そういう仕事を貰っていかないと、というか。どちらかと言えばそれはもちろん舞台の方がおもしろくて好きだし、やりたいんですけど。でもきちんと食わなければならないので。
「人と人との関わり合い」
ー演劇とは結局なんなんでしょうか?
人と人との関わり合い、みたいな感じかなあ。なんていうか、人と人との関わり合い、それも深い関わり合いっていうのがなくなってきているじゃないですか。日本人だからかもしれないけど、どちらかというと相手に影響しないように生きている感じの人が多いから。日本人的な発想として。だけど演劇だと、否が応でも相手にどう影響を与えるかということを考えないといけないので、それが面白いと思いますね。
「『真っ当な演劇』って何なんだろう」
ー最後に一言お願いします。
解散するのがほんとにもったいないな、と思っていて。時間堂のやっているような演劇がもっと売れるような世の中になればもっと幸せなのにって思ったりもするんですけど、どうやらそんなこともないみたいで。この演劇界の中でこういう作品作りをしている劇団ってあんまりないと思うんですけど。だから時間堂みたいな演劇がなくなってしまうのは日本の演劇界にとって損失なんじゃないかな、とも思ったりします。
なんだかなあ、って思います(笑)。「真っ当な演劇」って何なんだろうって考えちゃったりしますね。俳優としても観客としても、時間堂と出会って良かった、という人がたくさんいるのを知っているので、演劇界に貢献してきたんじゃないかな、と思います。
まったくもったいないぜ、日本の演劇界ってやつは!
(2016年11月22日 十色庵にて)
[國松卓扱い 予約フォーム]
https://www.quartet-online.net/ticket/rosa2016?m=0bbcagc
https://www.quartet-online.net/ticket/rosa2016?m=0bbcagc
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