ラグビーライター菊地紀満のアーカイブ

学生時代にラグビーウォッチャーとなり20余年。04年からMSNスポーツに、07年からJSPORTSラグビーにコラムを寄稿していますが、そのすべてを本ブログに残していきます。

試験的実施ルール(ELV)摘要にあたって変更点【モール】

◆変更点1=「モールに参加するプレーヤーは、頭と肩を腰よりも低くしてはならない」を削除
現実の試合では「頭と肩が腰より低くなる」シチュエーションはよく起こり得ることであり、危険性も低いということでルールが変更されました。ただし、頭を下げてモールに参加することは従来通りペナルティとなります。

◆変更点2=「プレーヤーはモールを下方にひいて防御してもよい」
モールに関する最大の変更点がこれです。世界に先駆けて新ルールが適用された今年のスーパー14ではこの変更点は採用されず、先に行われたトライネイションズ(南半球3カ国対抗戦)で採用されています。

今回の変更では「正しいモールの引き倒し方」が定義されています。
ディフェンス側は
1) 相手の前進するモールを下方に引くことによって止めることができる。
2) その際プレーヤーは相手の肩から腰までのいずれかをつかまなければならない。
3) ただしつかむ相手はボールキャリアーに限定されない。
4) これ以外の他の方法でモールが崩された場合はコラプシングのペナルティが課せられる。

ここで注意したいのは、コラプシングという反則は依然として残っているということです。つまり、モールを「引き倒す=プルダウンする」ことはOKですが、「つぶす=コラプスする」ことは認められていません。上記の「正しい引き倒し方」にあるように、相手の肩から腰までの間をつかむことが重要になります。足を取ったり、ジャージの襟をつかんで倒すことは認められません。反則となります。

また、ラインアウトからのモール形成を防ぐべく、モールが形成される前にボールキャリアーの下半身めがけてタックルすることは危険なプレーとしてペナルティが課せられます。正しくはボールキャリアーが空中から完全に着地した後に肩から腰までの間をつかんで引き倒すことになります。

夏の北海道合宿でトップリーグ各チームにこの変更点について尋ねてみたところ、もともとモールを得意とし、得点源でもある東芝ブレイブルーパスやサントリーサンゴリアスの面々はそれほど気にしていませんでした。曰く「これまでも引き倒されていましたから」。またディフェンスについて尋ねてみた際も、NECグリーンロケッツのLO熊谷主将が語っていたように、「引き倒すことは相手の前進を許すことでもありリスクが大きい」という考えが主流であったように感じました。実際、第3節までのトップリーグも観る限りでは、大きな変化は起こっていないように見受けられます。

ワラビーズ 北半球遠征のスコッドを発表!

トライネイションズでは惜しくも準優勝に終わったが、復活への足取りが確かなものであることを示したワラビーズが11月に予定されている北半球遠征(Spring Tour:南半球では春シーズンになるため)のスコッドと試合のスケジュールを発表した。

トライネイションズから大きな変更はない。逆に言えば今ツアーのスコッドが新生ワラビーズの主軸メンバーであることが明らかになった。CTBモートロック主将、SOギタウ、FLスミスらおなじみの顔触れはもちろんのこと、好調のCTBクロスやWTBターナーらも選出されている。

新顔は4人。注目されるのはオコナーの選出だ。今年のスーパー14で彗星の如く現れた期待の若手だ。18歳80日の選出となったが、今回のツアーでキャップを獲得するとワラビーズ史上2位の若さとなる。一方で20歳のSOビールの選出は見送られた。

ワラビーズは初めて第三国での対戦となるブレディスローカップ(オールブラックスとの定期戦)を皮切りに、毎週末6試合を戦うという強行日程でチーム強化を図る。なお主将にはモートロックが任命された。

【2008 Wallabies Spring Tour Squad】 ○は初選出
Forwards :
Ben Alexander(Brumbies)Al Baxter )(Waratahs)Richard Brown(Force)Mark Chisholm(Brumbies)Matt Dunning(Waratahs)Adam Freier(Waratahs)James Horwill(Reds)○Sekope Kepu (Waratahs)Hugh McMeniman(Reds)Stephen Moore(Reds)Dean Mumm (Waratahs)Wycliff Palu(Waratahs)○David Pocock(Force)Tatafu Polota-Nau(Waratahs)Benn Robinson(Waratahs)Nathan Sharpe(Force)George Smith(Brumbies)Phil Waugh(Waratahs)

Backs:
Adam Ashley Cooper (Brumbies)Berrick Barnes(Reds)Luke Burgess(Waratahs)○Quade Cooper (Reds)Sam Cordingley(Reds)Ryan Cross(Force)Matt Giteau(Force) Peter Hynes(Reds)Digby Ioane(Reds)Drew Mitchell(Force)Stirling Mortlock [Captain](Brumbies)○James O'Connor(Force)Brett Sheehan (Waratahs)Timana Tahu(Waratahs)Lote Tuqiri(Waratahs)Lachie Turner (Waratahs)

Head Coach:
Robbie Deans

【2008 Wallabies Spring Tour Schedule】
11月1日(土) vs. New Zealand (Hong Kong Stadium, Hong Kong)
11月8日(土) vs. Italy (Stadio Euganeo, Padova)
11月15日(土) vs. England (Twickenham, London)
11月22日(土) vs. France (Stade de France, Paris)
11月29日(土) vs.Wale (Millennium Stadium, Cardiff)
12月3日(水) vs. Barbarians (Wembley Stadium, London)

試験的実施ルール(ELV)摘要にあたって変更点【スクラムその2】

◆◆ 変更点=スクラムハーフのオフサイドラインは現行どおりとするが、スクラム近辺にいない場合は5m背後に下がる。
この変更点において注意すべきは以下の3点になります。対象となるプレーヤーはもちろんディフェンス側のSHですが、
(1)(スクラム内の)ボールを越えない範囲で前に進むこと…従来通りで変わりなし
(2)他のBKプレーヤーと同じようにスクラム後方に5メートル下がること
(3)スクラムを離れない範囲で自陣側に下がること

ここでは(2)と(3)について説明します。

(2)について、このプレーを選択した場合、SHが一度スクラムの後方5メートルに下がってしまったらスクラムが終了するまで戻ることはできません。要するに、一度下がった時点で他のBKプレーヤーと同じようにSHのオフサイドラインもスクラム最後尾の5メートル後方となってしまうのです。

(3)の場合、スクラムの周囲から離れない範囲で「ボールと自陣スクラム最後尾の間」を行き来できるとされていますが、この“スクラム最後尾”の解釈がクセものです。
正確な解釈としては「スクラムを離れなければNo.8を越えてもOK」ということになったため、SHはNo.8の真後ろに立つことが許されるようになっています。したがって、ブラインドサイドのディフェンスの場合、「No.8より後方」かつ「スクラム周囲から離れない」範囲でブラインドサイド側にポジショニングすることが可能となったのです。
一方でSHが「スクラム周囲」からどの程度離れるとペナルティとなるのかは明確なガイドラインが示されていません。つまりレフェリーの判断によるということになります。筆者はトップリーグで混乱が起こるのでは、と予想していましたが、第3節を終わった時点ではそれほどの混乱を招いてはいないようです。
また、(3)についてはアタック側がスクラムからサイドアタックを仕掛ける場合、相手SHのオフサイドを誘発するような行為は反則を取られるとされていました。想定される場面としては、8-9(ハチキュー:スクラムからNo.8がボールを持ち出し、SHとコンビで崩すサインプレー)で、アタック側のSHが早く開くことが挙げられ、トップリーグのSH何名かは非常に神経質になっていましたが、ここまでを見ているとNo.8との動きがしっかりと連係していれば OKとなっており、昨シーズンまでとそれほど変わっていないように見受けられます。

いずれにせよ、レフェリーの判断に委ねられる部分が大きいため、コミュニケーションを十分に取ることが肝要になるでしょう。

【第3節プレビュー】クボタ、台風の目となるか。千葉ダービーにも注目!

第3節もナイトゲームが中心ではあるが、土日に集中開催する従来のパターンに戻る。地方開催のゲームでは恒例となりつつある長野県松本市でのゲームが行われることになっている。

さて今節の見どころだが、早くも好調のチームといまひとつ波に乗ることができないチームが見えてきた。前者でいえば首位の東芝ブレイブルーパスと三洋電機ワイルドナイツは、頭ひとつ抜け出た強さを見せている。まず東芝は2試合で97点、13トライを挙げるなどアタック面で強烈な印象を残している。昨季は開幕戦で敗れたことから調子をつかめず、最後には自信を失いかけたように見えたが、今季はすっかり元の“常勝・東芝”に戻った。新外国人のSOヒル、FLベイツがすっかりチームに溶け込んでおり、現時点での完成度はナンバーワンだろう。HO猪口、LO大野、SH吉田朋、WTB吉田大らジャパン組も好調だ。今節は九州電力キューデンヴォルテクスと対戦。トップリーグいちのタックル数を誇るチームだが、いまの東芝のアタック力を持ってすれば優位は動かない。九州電力では小兵のFL松本の運動量に注目。

もうひとつの好調チームである三洋電機はコカ・コーラウエストレッドスパークスと対戦する。相変わらず冴えわたるSOブラウンのキックが目立つが、見逃していただきたくないのがインサイドCTB入江の活躍だ。現在ジャッカル数でリーグトップ、タックル数で8位とまるでバックローのような数値を残している。負傷により欠場中の榎本主将の代役として起用されているが、飯島監督はこのまま入江を起用するかどうか頭を悩ませるだろう。コカ・コーラは持ち前のしぶといディフェンスで得意の“ジャイアント・キリング”を起こしたいところだ。

そして今節で最も注目すべきカードがクボタスピーアズとサントリーサンゴリアスのカードだ。クボタは開幕戦で苦手のヤマハに勝って勢いに乗った。新加入のSOドゥラームという頼りになるキッカーの存在がチームに安定感をもたらし、「敵陣でプレーすること」に集中している。サントリーは2年目のHBコンビ、SH成田とSO曽我部が面白い。成田のスピード、曽我部のパスとセンスはリーグの華になりつつある。

奮起を期待したいのがトヨタ自動車ヴェルブリッツとヤマハ発動機ジュビロだ。ともに先手を奪われ、強引に攻めたところでミスを犯してまた失点という、悪いパターンに陥っている。トヨタは中堅から若手に元気がなく、ヤマハも溌剌としたプレーを見せているプレーヤーがいない。トヨタは麻田主将、ヤマハは山村新主将のリーダーシップが問われる。トヨタは神戸製鋼コベルコスティーラズと、ヤマハは近鉄ライナーズと、いわばアウェイでの対戦となるが、なんとか浮上のきっかけをつかみたいところだ。

また、千葉県・柏の葉ではNECグリーンロケッツと日本IBMビッグブルーの千葉ダービーが行われる。注目はIBMに加わったアメリカ代表SOハーカスのプレーだ。アメリカ生まれの豪州育ちで、キック、パス、ランの三拍子揃ったプレーヤー。前節でIBMは神戸製鋼に惜敗(9-12)したが、ハーカスのリーダーシップは際立っていた。同じく新加入のCTBキニキニラウ(元ニュージーランド7人制代表)の異次元ステップとともにお見逃しなく。

【トップリーグ・記録集】大西(ヤマハ)の連続出場はどうなる!?

第2節が終わって、5チームが連勝。目立つのは東芝ブレイブルーパスの圧倒的な攻撃力である。2試合合計97得点のうち新加入のSOヒルが正確なキックで32得点。また、すでに7人がトライを挙げており、どこからでも得点できることを証明している。ルーキーのWTBロアマヌが4トライでトライ王争いと新人王レースで首位に立っているが、どこまで記録が伸びるのか。6年目を迎えたトップリーグ。ここまでの5年間を様々な記録から振り返り、観戦の一助としていただきたい。
注)記録はすべて昨シーズン終了時のもの。

◆通算得点数
1位 廣瀬(トヨタ自動車ヴェルブリッツ:引退) 507得点
2位 ブラウン(三洋電機ワイルドナイツ) 380得点
3位 伊藤宏明(クボタスピアーズ) 299得点
4位 ウィリアムス(ヤマハ発動機ジュビロ:引退) 297得点
5位 池田(三洋電機ワイルドナイツ:現リコーブラックラムズ) 292得点

日本が世界に誇ったスーパーブーツ、廣瀬佳司氏がダントツで首位に立っている。しかもトップリーグ初年度は下部リーグでプレーしたため記録なし。昨シーズンは出場機会が少なくなったため、ほぼ3シーズンで500点以上をその右足で叩き出したことになる。
廣瀬氏を筆頭に、上位には好キッカーがズラリと並ぶが注目は2位のブラウンだ。首位の廣瀬氏との差は127。昨年は137得点を挙げ、今シーズンもすでに 29得点を摘み重ね、廣瀬氏に次いで二人目の通算400得点を達成。チームの好調さも加わって、今シーズン終了時には首位に立っている可能性が高そうだ。

◆通算トライ数
1位 小野澤(サントリーサンゴリアス) 46トライ
2位 侍バツベイ(近鉄ライナーズ) 44トライ
3位 マーシュ(NECグリーンロケッツ) 35トライ
4位 窪田(NECグリーンロケッツ) 34トライ
5位 北川(三洋電機ワイルドナイツ) 33トライ

30 歳を迎えてさらに進化する小野澤が通算トライ数でトップに立っている。過去5シーズンでは一度もトライ王に輝いていないが今シーズンはすでに3トライを挙げており、初の栄誉を勝ち取るチャンスだ。2位の侍バツベイは昨シーズンを下部のトップリーグウエストで送ったにも関わらずトップの小野澤にわずか2トライ差。出場時間が長くなるとトライ王レースに絡んでくるだろう。5位の北川はデビュー以来2シーズン連続でトライ王となり、今シーズンは前人未到の3シーズン連続を狙う。今シーズンは各チームのマークがさらに厳しくなっており、ここまでノートライだが、そろそろ爆発しそうだ。

<参考>過去のトライ王
2003-4 マーシュ(NECグリーンロケッツ) 11トライ
2004-5 バツベイ(東芝府中ブレイブルーパス) 18トライ
2005-6 マクイナリ(クボタスピアーズ)/タアラ(セコムラガッツ) 10トライ
2006-7 北川(三洋電機ワイルドナイツ) 19トライ
2007-8 北川(三洋電機ワイルドナイツ) 14トライ

◆通算出場試合数
1位 大西(ヤマハ発動機ジュビロ) 59試合
2位 中居(東芝ブレイブルーパス) 58試合
2位 久富(NECグリーンロケッツ)
4位 辻(NECグリーンロケッツ) 57試合
4位 相馬(三洋電機ワイルドナイツ)
6位 小野澤(サントリーサンゴリアス) 56試合
6位 伊藤(神戸製鋼コベルコスティーラーズ)
6位 大野(東芝ブレイブルーパス)

開幕節と第2節に出場した大西が、トップリーグ初の通算60試合出場を達成し、現時点では首位を守っている。が、第2節の三洋電機戦でアキレス腱を部分断裂した模様で、次節以降の出場が危ぶまれている。大西が凄いのはわずか1試合を除いて昨シーズンまでの59試合にフル出場していることだ。その1試合も出血治療で残り1分で退場していた間にノーサイドとなったため、実質フルタイムと言っていいだろう。前節の怪我さえなければまだまだ記録を伸ばしていたと思われるが、大変残念だ。
2位以下はズラリと各チームの顔が並んだ。そして全員が今シーズン2試合に出場し、順調に記録を伸ばしている。「無事是名馬」というが、彼らのためにあるような言葉である。名馬のなかでも驚異的なのは伊藤(神戸製鋼)だ。37歳となった今シーズンも先頭に立ってチームを引っ張る元気の良さ。もちろんパフォーマンスに陰りはなく、若々しい限り。いつまでもトップリーグの顔としてプレーを見せてもらいたいプレーヤーのひとりである。
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