儒灯

【温故知新】儒学の普及に力を注いでおります真儒協会 会長、高根秀人年の個人ブログです。 『論語』、『易経』を中心に、経書の言葉を活学して紹介して参ります。 私個人の自由随筆、研究発表などのほか、真儒協会が毎月行っております定例講習についても掲載しております。

2008年10月

第十四回 定例講習 (2008年10月) vol.3

vol.2の続きです。


《 7 & 8 のペア 》

7. 師 【地水し】  は、戦い・いくさ

帰魂8卦

● 多衆(グループ)、“もろ”・もろもろ の意。戦争の軍師 ・・・ 「先生」の卦

■ ※ 師の字義は、へんは小さい丘・村邑、つくりは周〔めぐ〕るで丘や林をぐるりと囲むこと、そこから衆の意。「周」の制度では500人が旅、師が2500人。

・ “寡をもって衆を伏すの意”(白蛾)・・・2爻の1陽が、5陰を率いて戦場に赴く意。

・ 2爻は、不正位(陽にして陰位にいる)ですが、中徳をもっています。 5爻の天子と応じています。忠臣の象であり、大命を委任されている〔指揮君臨する〕象。

○ 大象伝 ;「地中に水あるは師なり。君子以て民を容れて衆を畜う。」
(坤地の中に、坎水が畜〔たくわ〕えられています。内に坎の悩みがあるともいえますが、坎水はいつか地表に出る勢いを蔵しているともいえます。〔1陽のエネルギーは2爻です〕 この象にのっとって、君子は、坤の大衆を“母なる大地”のように包み込み、〔一朝事ある時のために〕生活を安泰にして養うのです。)

8. 比 【水地ひ】  は、親しみ、輔〔たす〕ける。

帰魂8卦

● “比とは比〔した〕しむなり”(序卦伝)、 人との和・一面で反発派閥、“雨降って地固まる”、女難・房事過多

・ 「元永貞」・「後るる夫は凶」(卦辞) ・・・ 元いに永く貞固=不変に。
元・永・貞の3徳 :元は万民を愛す 仁の意、永は永く不変、貞は正しく固い 知の意。 / 形勢をみて後からのこのこやって来る者には注意。

cf. 「朋党比周」 ・・・好きな者同士、利害を同じくするものが組んで他を排斥すること

・ 「子曰く、君子は周して比せず。小人は比して周せず。」 (『論語』・為政第2)
    周す ・・・普遍で広く衆を愛する    比す ・・・私情に従って人に親しむ

■ ※ 字義 : 「比」は人が 2人並ぶ形、「北」は人が背を向けている形
“衆星北に拱〔むか〕うの象”(白蛾) ・・・上卦の坎を北、下卦の坤を多くも衆・順うとします。 ※ “君子は南面し諸侯は北面して期す”(孟子)

○ 大象伝 ;「地上に水あるは比なり。先王以て万国を建て諸侯を親しむ。」
(下卦の坤地に上卦の坎水があって、地は水を含み、水は地を得て流れ、地と水が相互に輔〔たす〕け合って、すべての生命が楽しみ親しんでいる状態です。この象を観て、古の賢王は、国を区画して諸侯を封じ、参朝させて親密を深めました。〔諸侯も 王の徳を奉じ、民を教化・育みました。このように、水が地に親しむように、天下は上も下も心を一つに家族のようにおさまるのです。〕)


《 9 & 10 のペア 》

9. 小畜 【風天しょうちく】  は、すこしくとどめ、たくわえる

● 少しく蓄える ・・・「小」は少、陰が良いの意。 「畜」は、(1)留〔とど〕め (2)貯〔たくわ〕え (3)養う。( ※ くさかんむりで蓄える、生をつけると畜生で動物の意)、 省察・内省の卦

   「密雲雨ふらず。わが西郊よりす。」(卦辞) ・・・・・ ■ 参照

cf. 「需」は、雨(を待つ現状)をプラスイメージを捉え、「小畜」は、うっとうしく嫌な気分、現状への不満といったマイナスイメージで捉えていると思われる。
  (by 高根)

■ 上卦 巽風、下卦 乾天。  
・ 小畜(少しく畜止)の字義通り、巽の一陰(4爻)が、2陽を背負い、乾の(上に向かってくる)3陽を畜止している象。山天大畜との差は、上卦が「艮山=陽」か「巽風=陰」かの差(陽は大で、陰は小)

「密雲雨ふらず。わが西郊よりす。」(卦辞) ・・・1陰(4爻)だけで弱く(1対5)、陰陽交わらず雨ふらず。 2・3・4爻にて「兌」=天上の雲・西方位

 

【☆参考研究】 易辞の作者・「周の文王」に想いをはせてみると ・・・・
                              ( by 鹿島秀峰 『易経精義』 )

A) 殷の紂王〔ちゅうおう〕にユウ里〔ゆうり〕に囚われている文王が、殷の西方、我が「」の空を眺めて、天下万民に潤いの雨を施すことが出来ない、囚われの身を嘆息して表している。

B) 上卦 巽を紂王の陰(よこしまな)命令とし、それが下卦 乾の天下経綸の理想をストップさせている象。

C) 陰に小なるものが文王で、乾の陽大なるものを紂王ともとれる。陰陽和せず慈雨至らないの意。

D) 4爻 の1陰、また上卦 巽をもって利〔さと〕い女とするので、紂王の妃で、毒婦の異名となった姐己〔だっき〕とも見られる。陰の身で乾の王 = 紂王を畜止し、「月」の身で「太陽」とまごう権勢をほしいままにした。

○ 大象伝 ;「風天上を行くは小畜なり。君子以て文徳を懿〔よ〕くす。」
(上卦 巽風が、下卦 乾天の上を吹いている象。つまり、密雲あれども雨降らずの状態で君徳は天下国家を潤せない状態です。この象をみて、君子は、〔やがて時を得て徳の潤雨が万民に及ぶ時に備えて、武徳の剛に対して〕、柔の文徳を立派なものとし〔“徳の美しさ”を実現するよう〕修養するように専念するのです。)

10. 履 【天沢り】  は、ふむ、ふみ行なう

● 虎の尾を履む危うさ、セーフ。女性裸身・色情の卦、色難注意。

・ 「履とは礼なり。」(序卦伝) ・・・ふみ行う、礼を踏む、礼にかなった行動をする
                        ※ 履は礼と同意同義

・ 「虎の尾を履〔ふ〕むも、人を咥〔くら〕わず。亨る。」(卦辞) :柔よく剛を制する象

■ 1)“虎の尾を履む如き意”(白蛾)  乾天は☆虎・兌は少女
    ☆虎 : A)上卦・剛強な乾の象から虎。上爻が首、5爻が体、4爻が尾。
         B)上卦乾を虎の体、3・4・5爻を巽で“長い”とし揺れる尾の象。
         C)全爻で虎の身体、2・3・4爻の離をもって文様とする象。
  2)“柔よく剛を制す”るの象。
  3)上卦の剛に対し、下卦は柔・柔和に随う象。
  4)女子裸身の象。1陰5陽卦、3爻(腰部)陰にて凹む。
           cf.「地山」 ・・・男子裸身の象(1陽5陰卦)
   ※ 乾天=神  と  兌沢=少女

○ 大象伝 ;「上〔かみ〕天にして、下〔しも〕沢なるは履なり。君子以て上下を辯〔わか〕ち民の志を定む。」
(上卦には最も高いものである天があり、下卦には最も低いものである沢があります。この象をみて、君子は、上下の身分・地位を正しく弁別し、礼儀の道を明らかに定め、強い者・弱い者万民が平穏無事に過ごせるようにして、その志を安心させるのです。)


《 11 & 12 のペア 》

11. 泰 【地天たい】  は、やすらか

3陰3陽の基本卦、 12消長卦 (2月)

● 安泰・泰平、天地交流し男女和合す、賓卦・裏卦とも「否」・先々(近未来=上卦と下卦の入れ替え)も「否」、“治にいて乱を忘れず”、女性上位、房事過多、易者の看板

・ 「小往〔ゆ〕き大来る。吉、亨る。」(卦辞) ・・・A)天地のあるべき位置が逆である
                          B)小は陰で大は陽、陽は上り陰は下る

■ 外卦 坤地は陰(=柔)、内卦 乾天は陽(=剛)
  1) 天地交流 :天は上に地は下に、暖かい陽気は上に冷たい陰気は下に行こうとする 
     ・・→ 交流し、合体融合の象。成就の象。懐妊の象。
  2) “外柔内剛”(と “内柔外剛”=「否」卦)の象。
  3) 女性上位の象。坤地 陰の女性が、乾天 陽の男性の上に位置している。
  4) “健全なる精神は健全なる肉体に宿る”の象。( by 高根 ) 
     ・・・坤の肉体の内に乾の(乾善なる)精神あり。

○ 大象伝 ;「天地交わるは泰なり。后〔きみ〕以て天地の道を財成〔さいせい〕し、天地の宜を輔相〔ほしょう〕し、以て民を左右す。」
(上に位置する天の気は下って地に、下に位置する地の気は上って交流します。この象にのっとって、君主〔 =后・天子、5爻の陰〕は、天地自然の事柄・道をホドよく整え、天地の義〔あるべき道〕を輔け補うようにして、天下万民の生活の安泰を図らなければなりません。)

  ・ 財成=裁政、裁成、素材を整え完成したものとする
  ・ 宜=義、よろしい適するところ
  ・ 輔相=輔も相も助けるの意、左右も同じ

12. 否 【天地ひ】  は、ふさがる

3陰3陽の基本卦、12消長卦 (8月)

● 八方塞がり、天地交流せず男女和合せず、賓卦・裏卦とも「泰」・先々も「泰」

“君子の道塞がって小人はびこる”、冬も極まればやがて春になる

“否泰は其類を反するなり。”(雑卦伝) :「泰」の“外柔内剛”と「否」の“内柔外剛”、先々(近未来)と裏卦(過去)の対応関係

・ 「否はこれ人に匪〔あら〕ず。」・・→ 匪人(罪人の意)に塞がる (by 安岡正篤)
                       「比」の3爻辞も 「比之匪人」

たかね研究 : ・ 韓国旗(テグキ)・太極図 ・・・上部が陽(赤色・乾天・坎水)、
           下部が陰(青色・坤地・離火)
・ 九星気学 ・・・ 中宮〔ちゅうぐう〕に回座している状態の時、“八方塞がり”の語源
※ 今の時代 ・・・「否」・「蒙」のくらい時代 、“暗黒時代”、“心の蒙〔くら〕い時代”
    ・・→ 啓蒙=心の蒙きを啓〔ひら/てら・す〕く “真儒協会”

■ 外卦 乾天は陽(=剛)、内卦 坤地は陰(=柔)
  1) 天地交流せず :天の気は上昇し地の気は下降しようとする 
      ・・→ 天地は交流しない。隔たり、塞がり、通じない象。
  2) “内柔外剛”と“外柔内剛”(「泰」卦)の象。
  3) 男性上位の象。
  4) 「人に匪ず」 :内卦に坤の肉体、外卦に乾の精神 
    (健全なる精神が宿らぬ肉体、精神の宿っていないスポーツマン。 
     スポーツマンシップとは何か?)
  5) “月 霧裏に臓〔かく〕るるの象”(白蛾) :乾を月・君子とし坤を霧・小人とみます。
    「小人の道長じ、君子の道消するなり。」(彖伝)

○ 大象伝 ;「天地交わらざるは否なり。君子以て徳を 倹〔つづまやか(約まやか)/おさメ :つつましくするの意〕にし難を辟〔さ〕く。栄するに禄を以てすべからず。」
(天と地、交流しないのが否です。この象をみて、君子は自分の才知や徳を包み隠して控え目・つつましくすることで小人からの難〔ジェラシー〕を避けるようにしなければなりません。そして、たとえ、名誉や地位に対しても心を動かしてはいけません。「否」は小人が闊歩〔かっぽ〕する時です。目立つ行動や地位にあれば、小人から害されます。時をまって自重すべきです。)

※ 小人の道長じ、君徳行なわれない ―― 小人闊歩する時
              ・・・今の時代・我国のように思われます (by 高根)


《 13 & 14 のペア 》

13. 同人 【天火どうじん】  は、したしむ

帰魂8卦

● 志を同じくし多くの人が集まる、一致団結、大同団結

・ 「同人于野」(卦辞) ・・・広く同士を天下にもとめて、おおいに文明を発揚する象

cf. “食客〔しょっかく〕三千人”(『史記』・孟嘗君〔もうしょうくん〕)
   「四海の内、みな兄弟なり。」(『論語』・顔淵第12)

■ 下卦 離卦、上卦 乾天。 離は文明・知性の明、乾は剛健実行力に富む。すなわち、知性と力を併せ持つ。

・ 1陰 5陽卦。1陰は 2爻の陰位に位し、下卦の中爻を得て中正。そして、5爻の陽位には陽爻が位し中正。2爻と5爻は、正しく応じている。(2爻は、初爻と3爻とそれぞれに比してもいる)


○ 大象伝 ;「天と火とは同人なり。君子以て族を類し物を辨〔べん〕ず。」
(乾天は天にあり、離火は燃え上がる火であり太陽です。両者の性質は、同じようですので、同人と名づけます。天と太陽が一体化しているように、乾の剛健な行動と離の文明な才知は一体化すべきものなのです。それでも、全く同一・一体というわけではありません。人や物も同様です。
これらのことにのっとって、君子は、治にいて乱を忘れず“遠慮”して一族・同族を類集し、長短・相違に応じて、あるいはまとめあるいは分け弁別するのです。)

14. 大有 【火天たいゆう】  は、大いに有〔たも〕つ

3大上爻  〔大有・大畜・漸〕、帰魂8卦

● 中天の太陽、天佑あり、順天休命」(大象)
易は、陰を小 陽を大とする。大有は、陽を有つ意(=盛大)。(大いに有つと、大いなるものを有つの意)

・ 2爻 : 「大車以て載〔の〕す。」・・・A)ロールスロイスに財宝を山と積むようにーー。
            B)重荷を積んでゆくようにすればーー。 「積中不敗」(象伝)
cf. 「人の一生は、重荷を負うて遠き道を行くが如し。・・・ 」(徳川家康)

・ 上爻:「天よりこれを祐く。」・・・天の配剤、384爻中の最良

■ 下卦 乾天の上に、上卦 離火(=太陽)。

1) 日、天上に輝く象。
2) 1陰 5陽卦 :5爻の1陰の天子は、大有の主爻。また、離の主爻。陽位に陰爻あるは柔和な徳。離の明徳と中庸の徳を兼備し、正応・正比。他の 5陽の剛健な賢臣たちが随従している象。心を1つに集めている象。

※ 離の中爻の陰は、離の主爻であり中徳を持つ。なぞらえれば、離=炎 の中心は、虚にして暗く燃えていない、陰です

○ 大象伝 ;「火の天上に在るは大有なり。君子以て悪を遏〔とど〕め善を揚げて、天の休〔おお〕いなる命に順う。」
(離火が、乾天の上にあるのが大有です。離の明知・明徳と乾の断行です。この象にのっとって、君子は、悪に対しては 刑罰をもってこれを防ぎ止め、善に対してこれを称〔たた〕え揚げ賞し登用するのです。このようにして、 天の真に善にして美しい命に順うようにつとめるのです。〔為政の道ばかりでなく、修身の道もまた然りです。〕)

                                          ( 以 上 )


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第十四回 定例講習 (2008年10月) vol.2

易経       ―― 《 象による 64 卦解説 》 ( 其の1 )

はじめに

『 易経 』 64卦奥義

   ☆ 乾・坤にはじまり 既済・未済に至る
       ☆ 龍〔ドラゴン〕にはじまり 小狐に終る

 『易経』 〔“The Book of Changes”〕は、万物の変化とその対応の学。
東洋の源流思想であり、儒学経書(五経)の筆頭であり、帝王(リーダー)の学です。
“東洋のバイブル”が 『論語』なら、“
東洋の奇(跡)と呼びたく思っております。
 『易経』は、世界と人間(人生)の千変万化を、“ 64卦(384爻)”の
シチュエーション〔 situations 〕(シーン〔 scenes 〕) にしたものです。
 「書は言を尽くさず、言は意を尽くさず。」(繋辞上伝) ですので、それ(64卦・384爻)を ものごとを象〔かたど〕る“
〔しょう〕”と、解説する言葉 “”とによって深意・奥義を表示しています。
さらに「易経本文」に、孔子及びその門下の数多が(永年にわたって)著わした「十翼」(10の解説・参考書)が合体します。辞と象の、さらに易本文と十翼の融合合体が、『易経』の真面目〔しんめんもく〕であり “奇書”の“奇書”たるゆえんでありましょう。
『易経』の真義を修めることにより、個々人から国家社会のレベルにいたるまで、“
兆し”・“”を読み取り、生々・円通自在に変化に対応できるのです。
21世紀を迎え、“未来に向かって足早に後ずさりしている”現在こそ、
東洋3000〜2000年の英知の
リナシメント〔再生・復活〕が必要なときです。
                                ( 高根 秀人年 2009 )


 「上・下経 64卦によって理論的・実践的に、我々が無限の進歩向上の原理原則を把握することができる。」
 「この『易経』をみますと、前編つまり上経30卦は、その創造・進化の主として原理を明らかにしたものということができる。それに対する後編、下経34卦は、これは前編の創造・進化の原理をやや人間的に、人間界に適用して ―― 前編を天事を主とすれば、後編のほうはもっぱらこれを人事に応用したもので、前編と後編とで天人統一、天人相関を明らかにしたものということができます。」
                    ( 安岡正篤、『 易と健康(上)  易とはなにか 』)


   

( 編集 注 )
・ 《 》 は、64卦をペアで(序卦伝にのっとり)配列・解説しています。
・ ● は、要点 Pointo です(既習内容を再録しておきました)。
・ ■ は、もっぱら象による解説・検討です。
・ ○ は、大象伝(卦を結語的に要したもの)の全文・解説です。
・ 原則的に、(あえて)歴史かなづかいは現代かなづかいに、
  旧字は新字に、変換出来ない一部の漢字はカタカナ表記にしました。
・ 書き下し文は、原則的に助詞・助動詞はひらがなにしていますが、
  接続詞等も解かり易いと思われるものは、ひらがなにしています。


<主要参考文献>
 ・ 安岡 正篤  『易學入門』 (明徳出版社)
 ・ 安岡 正篤  『易と健康(上) ・ 易とはなにか 』
 ・ 今井宇三郎/他 『新釈漢文大系・易経 上・中・下 』 (明治書院)
 ・ 鹿島 秀峰  『易経精義』 (神宮館)
 ・ 高田真治・後藤基巳  『易経 上・下 』 (岩波書店)
 ・ 本田 済    『中国古典選  易 』 (朝日新聞社)
 ・ 本田 済    『易經講座 上・下 』 (斯文会)
 ・ 平木場泰義  『易学 上・下 』 (秋山書店)
 ・ 新井 白蛾  『易学小筌』 (積善館)
 ・ 新井 白蛾  『古易断時言 1〜4 』
 ・ 高根秀人年  『易経六十四卦解説奥義』


上経

 ※ 「実によく、思索し、把握し、推敲されて極めて自然である。
どちらかというと原理的、従っていくらか、理論的・抽象的。」 ( 前掲書 )


《 1 & 2 のペア 》

陰陽の原理。乾坤 = 

      「 を愛する人は  心強き人
             岩をくだく波のような  ぼくの父親
        を愛する人は  心広き人
             根雪〔ゆき〕をとかす大地のような  ぼくの母親  」
                                      (“四季の歌”より)

◎ 陰陽〔2元論〕相対(待)論 : 宇宙万物の根源を「大極」といい、陰陽に分かれ、陽が乾 陰が坤。乾は天、坤は地。乾は父、坤は母。 我国では、イザナギの命とイザナミの命で万物を産みました。“天地玄黄”(「千字文」の最初)。

・ 「乾坤両卦で天地万物の生成化育の実体と原則、本質というものが要約的表現されている。」 ( 前掲書 )

 

1. 乾 【けん為天】  は、剛・天の運行 。

全陽 ・・・ 分化発展の原則、
8重卦(純卦)、男性・純陽(老陽)、12消長卦 (5月)

● 乾=の意、天の運行・剛健、龍(ドラゴン)、「乾は剛にして坤は柔なり」(雑卦伝)、大人に吉凡人に凶

・ 「元亨利貞〔げんこうりてい〕」(卦辞) と 自強不息〔じきょうふそく〕」(大象)

※ 乾の四徳 ・・・ 循環連続性
   芽生え/「元」 ・・・時間的にいえばはじめ、立体的にいえばもと、大極=「元気」、
               大小の大、季節は春、徳では「仁」
   成長 /「亨」 ・・・通る、通じる、元で生じたものの無限の生成化育、季節は夏、
               徳では「礼」
   結実 /「利」 ・・・利ろし・利益・善きことがある意、 “きく”・成果・結果を生む・
               収穫・実り、季節は秋、徳では「義」
   不変性/「貞」 ・・・正しく堅固に安定、次の生成への基、季節は冬、徳では「智」
    |
   また、芽生えと循環。 季節もまた然り。

(彖伝・全)
「大いなる乾元、万物資〔と〕りて始む。すなわ〔及〕ち天を統〔す〕ぶ。|雲行き雨施し、品物〔ひんぶつ〕形を流〔し〕く。|大いに終始を明らかにし、六位〔りくい〕時に成る。時に六龍〔りくりゅう〕に乗り以て天を御す。|乾道変化しておのおの性命を正しくし、大和を保合するは、すなわ〔及〕ち利貞なり。庶物に首出〔しゅしつ〕して、万国ことごと〔咸〕く寧〔やす〕し。」 

《大意》
乾天の気である元の根源的なパワーは、何と偉大であることよ! 天地〔宇宙〕間に存する万物は、みなこの元の気をもとにして始められているのです。すなわち、天道の全てを統率、治めているのが乾元〔=乾徳〕なのです。(以上 元の解釈)|
 乾のはたらきにより、水気は上って天の気の“雲”となって運行し、雨を施して地上の万物を潤し、万物・万生物(品物)が形を成し現われて活動を始めるのです。(以上 亨の解釈)|
 乾天のはたらきは、物の始まりから終わりまで、そしてまた始まりと間断なく循環するところを大いに明らかにしていて “6つの爻”(もしくは、老陽・老陰の交わって生ずる 震・巽・坎・離・艮・兌)は、その時と場合に応じて成すべきことを示しているのです。(聖人・君子は)その時に応じて、6つの変化の龍の陽気にうち乗って、それを自在に駆使することによって、天の命である 自身が履むべき道を行なうことができるのです。(以上 元亨の解説)|
 天の道は、時々刻々と神妙なる摂理によって変化しますが、その変化に応じて万物もまたそれぞれの性命〔天から与えられた本来のあるべき姿・性質〕を正しく実現して、大いなる自然の調和〔大和=大いに調和した気〕を保って失わないのです。これが利貞の徳であり乾徳なのです。
 (聖人・君子は)天乾の剛健の気にのっとっていることにより、万物万民に抜きん出た地位につくのであり、その乾徳を発揮してこそ万国は、みな感化され安泰安寧を得ることができるのです。これが、聖人の利貞です。(以上 利貞の解釈
 
 「保合大和」・・・ 自然の大調和を持続せしめ〔保〕これに和する

 孔子の作ともいわれる彖伝。乾の卦辞「乾・元亨利貞」の解釈・解説文です。
   まことに比類なき深遠名文と感嘆、ほれぼれいたしております。(高根)

■ ※ ケン〔けん〕と 乙、ケンは太陽が昇り光る意。乙は春の草木が曲がり伸びる形。
   上卦・下卦とも乾、天また天。全て陽爻。
   “龍変化を示すの象”・“万物資〔と〕って始むの意” (新井白蛾・64卦象意)
   ―― 龍は乾の象で陽物、また君子の象徴(人龍)、乾の 6爻は 6龍すべて
   変化しています。( ※ 龍の三棲 ・・・ 陸上・水中・空中)
   天地の Everything 〔森羅万象〕は、この乾の気をもとにして始まり生じたのです。

 初爻 ・・・ 潜龍、 /  2爻 ・・・ 見龍、 /  3爻(:君子終日乾乾)
 4爻 ・・・ 躍龍、  /  5爻 ・・・ 飛龍  /  6爻 亢(高)龍


○ 大象伝  ;「天行は健なり。君子以て自ら強〔つと〕めて息〔や〕まず。」
(天の運行は止むことなく剛健で、うみ疲れることなく、永遠にそのパワーを発揮し続けます。君子は、この象にのっとって、この卦徳を体得するように努め励み、休むことがないのです。)

◎ 用九 「群龍 首なきを見る。」 ;乾の 6爻全て陽剛で勢い盛んです。その剛の権威は頭にあります。その頭を隠すように、謙遜〔けんそん〕であるように注意することが尊いのです。

※ 龍(=リーダー)が、雲(=一般人・人民)に頭を隠すようにする。天徳は、パワー(支配力・圧力)が表面に出ないように。

 

2.坤 【こん為地】  は、柔・大地・女性

全陰 ・・・ 統一含蓄の原則、
8重卦(純卦)、女性・純陰(老陰)、12消長卦 (11月)

● 母なる大地、牝牛横たわり草を喰むイメージ、“柔順の貞”・“女性の貞”、
・ 「坤はいにる。牝馬〔ひんば/めすうま〕の貞に利し。」(卦辞)、
厚徳戴物〔こうとくたいぶつ〕」(大象)、 「積善の家には必ず余慶あり。積不善の家にはかならず余殃〔よおう〕あり。」(文言伝)

・ 初爻辞 「霜を履みて堅氷〔けんぴょう〕至る。」 ・・・陰の気から霜、放置すればやがて堅固な氷。

・ 5爻辞 「黄裳〔こうしょう〕、元吉なり。」 ・・・黄色は五行で土、インペリアルカラー〔高貴な色〕、すなわち坤徳。裳は下着・スカート、謙遜な坤徳の意。

・ 上爻辞 「龍野に戦う。その血玄黄〔げんこう〕なり。」 ・・・陰の勢い極限に達し、陽(真)の龍と陰(偽)の双龍 戦い傷つき血を流している。

「玄」は黒で天=乾の雄龍の血の色、「黄」は土の色で雌龍の血の色、“天地玄黄”(「千字文〔せんじもん〕」)。

※ 爻変じて(之卦)「山地剥」、坤徳を失い自分自身の剥れを意味する。

(彖伝・全)
「至れるかな坤元。万物資〔と〕りて生ず。すなわ〔及〕ち順〔したが〕いて天を承〔う〕く。|坤は厚くして物を載せ、徳は无疆〔むきょう〕に合し、含弘光大にして品物ことごと〔咸〕く亨る。|牝馬は地の類、地を行くこと疆〔かぎ〕りな〔无〕し。柔順利貞は、君子の行うところ〔攸〕なり。|先んずれば迷いて道を失い、後るれば順いて常を得。西南に朋を得とはすなわ〔及〕ち類と行けばなり。東北に朋を喪うとはすなわ〔及〕ち終〔つい〕に慶〔よろこび〕あるなり。貞に安んずるの吉は、地の疆りな〔无〕きに応ず。」

《大意》
「実に至大、坤の元いなる徳は、何と偉大なものであることよ! 万物は、この坤の元の徳をもとにして生成されるのです。すなわち、柔順に乾天の元の気を承け入れることによって、この偉大なはたらきができるのです。これが坤元〔=坤の徳〕なのです。(以上 元の解釈
 そして坤地は、広く厚く〔純陰が 6つ重なり〕 森羅万象〔Everything〕あらゆるものを載せて、その徳は無限であり、天徳の無限と融和合体して、その包含するところは公明正大で、万物全てを成長発展させるのです。(以上 亨の徳
 牝馬は、その柔順さ〔メスである〕から、陰であり坤地の徳〔馬は地を行くので〕の同類といえます。牝馬は地上を柔徳を以て駆ける健脚を持っています。このような、牝馬の柔順にして利貞の徳こそが坤の徳であり君子の行うべき道なのです。(以上 利貞の解釈
 もし、陰がでしゃばって、陽に先んじて行くようなことがあれば、進路に迷い、それは陰本来の道を失うことです。陰が陽の後から、柔順に従っていくなら、それは本来の常道を得ることです。
 陰の方位である西南にいけば友を得るというのは、同類(巽・離・兌の陰卦)と行動を共にするということで、陽の方位である東北に友を失うというのは、〔陽は大で小の陰を包み込めるが、陰は陽を包み込めないので〕孤立します。しかし、陽に柔順に従い陰陽合体することで、最終的には慶であるということです。
 安らかで正しい姿勢が吉を招くというのは、それが坤地の限りない徳に適応しているからなのです。

■ 上卦・下卦とも坤、乾の天に対して一面の地。全て陰爻、乾の“剛健の徳”に対して“柔順の徳”、人事にとれば乾の天子・君子・大人・男性に対して、臣下・庶民・女性

○ 大象伝 ;「地勢は坤、君子以て徳を厚くし以てものを戴〔の/たい〕す。」
(大地の象は坤で、その形勢は柔順にして厚く万物を戴せています。この象にのっとって、君子は、坤徳をますます厚いものとして、万物・万民を包容するように努め徳を施すのです。)

◎ 用六 「永貞に利ろし」 ;陰の道〔臣下・妻の道〕は、柔順な姿勢を失わず坤徳を永久に正しく貞正に堅持することで利ろしきを得るのです。そうして、有終の美を飾る〔陰極まって陽となり、陽の大をもって終る〕ことができるのです。
 


《 3 & 4 のペア 》

3.屯 【水雷ちゅん】  は、なやみ、くるしむ

4 難卦〔坎水・蹇・困・屯〕、「屯難」

● 創造・生みの苦しみ、「駐屯」・「屯〔たむろ〕」、滞り行きづまる、入門は吉、
赤ん坊をそっと(育てる)・幼児教育 ・・・ ※ 父母(乾坤)の間に震(巽)の長子が生まれた時 

・ 「天造草昧〔そうまい〕」(彖辞) ・・・ (草が生い茂っているように)天の時運がまだ明らかでない〔これから開かれようとする時〕 =天下草創・暗黒の時代

・ 「屯とは盈〔み〕つるなり。屯とは物の始めて生ずるなり。」(序卦伝) 
   ・・・ ex. “明治維新”〔幕末から明治政府設立までの動乱・混乱期〕

cf. (通常の日座空亡に対し) 易学空亡 = 屯・蒙の2ヶ月、その後有卦〔うけ〕の3ヶ月

■ 「屯」の字義 : 「一」は、地を現わし、下の草木が芽生え地上に出ようとして曲がっている形、から創生の悩みを意味している。
 上卦の坎は、坎険・水・川・寒・暗。下卦の震は、動・進む・伸びる・若芽・蕾〔つぼみ〕。 すなわち、
   1)進もうとして前に川があり、 
   2)草木の若芽が伸びようとして、寒気で伸び艱〔なや〕んでいる象。
   3)水=雲 と 雷=雨で雷鳴、雷鳴り雲雨を起こさん。

○ 大象伝 ;「雲雷は屯なり。君子以て経綸す。」
(上卦に坎の〔いまだ雨とならぬ状態の〕雲があり、下卦に震の雷がある。天上に雷鳴り響き、今にも雨が降ろうとする象です。 この天下創草の時、君子は、この象にのっとって、創始の大切なことを悟り、天下国家の経綸〔径は機織の縦糸、綸は横糸から、整える意。転じて平安に治政すること〕を行なうのです。)

4.蒙 【山水もう】  は、くらい

準 4難卦〔蒙・蠱・剥・夬〕、
教育(者)の卦〔蒙・需〕

● (頭が)蒙い、教育の卦、「啓蒙」=蒙を啓〔ひら/てら・す〕く、童蒙(児童教育)、
 寺子屋の象、「無知蒙昧〔もうまい〕」、

・ 「童蒙より我に求む。初筮〔ぜい〕は告ぐ。再三すれば涜〔けが〕る。」(卦辞)
  ・・・童蒙=(5爻)、我=(2爻)、占筮も師の教えもあれこれ迷わぬように

 「果行育徳」(大象)  ex.果物の間引き、「果決/果断/摘果」

cf. (1) “啓蒙思想: enlightenment ”・・・理性の光で暗きをてらす。
      ルソー、モンテスキュー 、ボルテール /福沢諭吉・『学問のすすめ』
   (2) “啓発教育” =儒学の教育、 (=能力開発教育
      「憤〔ふん〕せずんば せず。ヒ〔ひ〕せずんば せず。
      一隅を挙げて、三隅を以て反えらざれば、則ち復〔ま〕たせざるなり。」 
                              (『論語』・述而第7)
   (3) “啓蒙照隅” ・・・(心の)蒙きを徳の光で啓〔てら/ひら・く〕す(真儒協会)

■ 外卦 艮山、内卦 坎水。  
1)艮は止め、坎は険〔けわ〕しで方向定まらず、進退迷う。
2)山の下に水で モヤ。 
    cf.レオナルド・ダ・ビンチのスフマート〔煙のごとく〕・ぼかし

※ 涜る=汚す、冒涜する。 下卦の坎水と 3・4・5爻の坤地交わって泥となり涜の象

○ 大象伝 ;「山下に泉出ずるは蒙なり。君子以て行を果し徳を育う。」
(艮山の下に坎水の泉があります。この小さな泉〔 =蒙く穉・おさないもの〕は、やがて大きく育ち流れて大川となります。この山が泰然として、泉を育てる象にのっとって、君子は、正しい行ないを貫き、成すべきことを果たし徳を養ってゆかねばなりません。)


《 5 & 6 のペア 》

5. 需 【水天じゅ】  は、待つ

遊魂8卦、 教育の卦

● 求め待つ、やしない待つ、 “蜜雲すれども雨ふらず”(白蛾、「小畜」の卦辞)

※ 出処進退をわきまえた大人(乾)の“待ち”、 “天水同行”の形

・ 「需とは飲食の道なり。」(序卦伝) ―― 心を養うもの(文化 : culture =心をたがやすものの意)

cf. 「濡〔うるお〕す ・・・サンズイ、人格(品格)と頭脳をうるおす
    「儒」 ・・・ニンベン、儒学・儒者 、(“真儒協会”)

■ 上卦 坎水、下卦 乾天。  

1)乾天上の水=雨雲 、慈雨のふるのを求め待つ象。

2)上卦の水が水蒸気として上へ上がる(雲、天に上る)、乾天は上へ・・天水同行

3)上卦の水(雨)は下へ、下卦の天は上へ、これで(地天泰と同じく)上下循環する象とも考えられる。

4)下卦乾の 3陽は前進の気を持っているが、上卦(先)に険なる坎水があってすぐには進めない象。時を待たねばならない。

・ 「孚あり」 ・・・5爻の陽位に陽爻が位し、中正の象。坤の身体に 1陽の気が貫いているのが坎で心の象とし「孚」とする。全卦からみて坎の中爻は、需卦の主爻であり「孚」とみる。

○ 大象伝 ;「雲の天に上るは需なり。君子以て飲食宴楽す。」
(坎の雲が、乾天上に高く上がっていて「密雲雨ふらず」の象。この象にのっとって、君子は、力量を秘めて、いたずらに進むことなく悠游〔ゆうゆう〕と飲食し、宴楽して英気を養い時期を待って事に処してゆくのです。)

6.訟 【天水しょう】  は、うったえる

遊魂8卦

● 訴訟・矛盾、男性同士(陽と陽)の背反、“天水違行”の形 
    
作事謀始」(大象) ・・・事業は始め、教育は幼少時代を大切に。始めが肝腎

cf. 「訴えてやる!」(TV“行列のできる法律相談室”) ・・・法的良悪と道徳的善悪は必ずしも同じではない。道義的・倫理的責任。“法(法治主義)と道徳(徳治主義)”。

■ 上卦 乾天は上昇の性、下卦 坎水は下降の性 ・・・(天水違行)

1) “天水違い行くの象”(白蛾) ・・・ 水は低きに流れ、天はあくまで高く、背き進む象

2) 乾は剛健にして上にあり、坎は苦しんで下にある象。そして、両者相争う象。

○ 大象伝 ;「天と水と違い行くは訟なり。君子以て事を作〔な〕すに始めを謀る。」
(乾天は上昇し、坎水は下降し、両者は相違った行き方をして争いが起こる。この象に鑑みて、君子は、※ ものごとが行き違い争いとならぬように、事をなすにあたって、始めをよくよく慎重に考慮するのです。)


続きは、次の記事(vol.3)をご覧下さい。

第十四回 定例講習 (2008年10月) vol.1

第十四回 定例講習 (2008年10月)

 

 

 

 

 

 


■孝経/論語 (秀人年)


■本学

  漢文訓読の基本1

■易経

  略筮 [ぜ] の解釈演習




→ 「象 [しょう] 」 による 64卦解説1 は、次の記事(vol.2)をご覧下さい。




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