儒灯

【温故知新】儒学の普及に力を注いでおります真儒協会 会長、高根秀人年の個人ブログです。 『論語』、『易経』を中心に、経書の言葉を活学して紹介して参ります。 私個人の自由随筆、研究発表などのほか、真儒協会が毎月行っております定例講習についても掲載しております。

2010年08月

第30回 定例講習 (2010年5月30日) その2

前の記事の続きです。


本学  【 高根ブログの解説 】

 平成22年度 “真儒の集い” 特別講演 
 “『グリム童話』 と 儒学   ―― 現代日本を“中す”一つの試論 ―― ”。 (高根秀人年)
レジュメを欠席者・新参加者のために要説いたしました。

 また、ブログ 【儒灯】 (儒学からの言霊) 
―― 黄門さまの“虎変” と 「伯夷伝」 ―― を解説いたしました。



易経  ( 『易経』 64卦暗記法 ― 卦の順番/卦の番号 ― )


『易経』 64卦暗記法

――― 卦の順番/卦の番号 ―――

高根 秀人年      


『易経』 は、乾・坤に始まり、既済・未済に至る、64卦の循環で、世界・人生を象〔かたどっ〕ています。したがって、その順番には、一定の理〔ことわり〕にもとずく順序があります。それを説いたものが、『十翼』 の「序卦伝」 です。

  例えば、始まりは“乾・坤” 2卦のペアです。 
NO.1 が“乾=天”で、次にNO.2 “坤=地” があります。

『聖書』 の「天地創造」でも、『古事記』などの神話でも同じですね。

終わりは、“既済・未済” 2卦のペアです。
NO.63 “既済=完成”があって最終卦NO.64 “未済=未完成”があります。

この順番によってこそ、無限に循環いたします。無始無終・無終の道が実現するのです。


  さて、『易経』 の配列は、この順番に定まっているわけですから、
NO.1 〜 NO.64 の序列・順番を理解し、暗記すると同時に、何番の卦かということも暗記するのがベストです

そこで、その順番と何番の卦であるかの暗記法を、先人のアイデアも参考にしながら考案し、まとめあげました。

   ――― がんばって、口ずさみながら覚えましょう。コツコツと、努力あるのみです!


 §.64卦暗記法―― (1)卦の順番 

20100530_image1
20100530_image2




 §.64卦暗記法 ―― (2)卦の番号 

《 上 経 》
                                                                    
1. 乾  ※  乾 「元亨利貞(げんこうりてい)」 ・ 「自強不息(じきょうふそく)」
2. 坤  ※  坤 「厚徳載物(こうとくたいぶつ)」
3. 屯  「お」の苦しみ、水雷屯
4. 蒙  「界(海)」もうろう、山水蒙
5. 需  「本」の指折り数え求め待つ、水天需
6. 訟  「法全書」片手に“訴えてやる!”、天水訟
7. 師  「転八倒(起)」戦〔いくさ〕の卦、地水師
8. 比  「方美人」みんなに親しむ、水地比
9. 小畜  「労」して少しく蓄〔たくわ〕える、風天小畜
10. 履  「テン(10)」で、天〔テン〕沢履
11. 泰  「イイ感じ」で男女和合し、地天泰
12. 否  「十二ケ月」で一年塞〔ふさ〕がり終わる、天地否
13. 同人  「勇ん遺産)」で集まる、天火同人
14. 大有  「意志」が天に通じて天祐あり、火天大有
15. 謙  「以後もよろしくお願いします」とお辞儀する、地山謙
16. 予  「いろんな」準備楽しく、雷地予
17. 随  「柔軟」に随〔したが〕う、沢雷随
18. 蠱  「娘十八」“虫”が三匹、山風蠱
19. 臨  「行くぞ」船出だ咸臨丸〔かんりんまる〕、地沢臨
20. 観  「二十面観音」人生の洞察/「二十〔はたち〕」で観光旅行、風地観
21. 噬コウ  「フイ」に歯にはさまる、火雷噬コウ
22. 賁  「夫婦」仲良く高齢社会、山火賁
23. 剥  「ふさぎ込む」身心の剥がれ、山地剥
24. 復  「西」からもどる太陽、地雷復
25. 无妄  “おんにこにこ 腹立つまいぞや そはか”、天雷无妄
     ( 腹を立てぬ呪文/ )
26. 大畜  「二郎」は大いに蓄え、山天大畜
27. 頤  「フナ寿司」食べて食養生、山雷頤
28. 大過  「双葉」も大いに過ぎて棟木〔むなぎ〕となる、沢風大過
29. 坎  「まれ者」の三難卦、坎為水
30. 離  「三十女」・中女で、離為火 



《 下 経 》

31. 咸  「さあ いこう!」船出だ、/ 「先よし」、沢山咸
32. 恒  親子「三人」でいつも変らぬ愛情、雷風恒
33. 遯  「ミミっちくなく」・「サッサと」引退、天山遯
34. 大壮  「ミシミシ」と音立てたいそう〔体操〕、雷天大壮
35. 晋  「三十五」は人生のまっ盛り、火地晋
36. 明夷  「三浪」は “暗黒時代”、地火明夷
37. 家人  「み(ん)な」そろって家庭円満、風火家人
38. ケイ  「見渡せば」女同士の反目、火沢ケイ
39. 蹇  「惨苦〔ざんく・さんく〕/残酷」な足止め、水山蹇
40. 解  「四十」にして惑わずで解決、雷水解
41. 損  「よい投資」で “損して得とれ”、山沢損
42. 益  利益は「世に」還元すべし、風雷益 
43. 夬  しっかり「試算」して大決心/「予算」オーバー、沢天夬
44. コウ  「夜夜〔よよ〕」の思わぬ出合い、天風コウ
45. 萃  「しごいた」網に魚がいっぱい、沢地萃
46. 升  「丸」つづきでスピード昇進、地風升 
47. 困  「至難」だ困った/赤穂〔あこう〕「四十七士」、沢水困
48. 井  「世渡りじょうず」が集まる井戸端会議、水風井
49. 革  「良くなれ」と改革、沢火革
50. 鼎  「五十」にして安定・三角関係、火風鼎  
51. 震  「強引ごういん〕」な地震・雷、震為雷
52. 艮  「ゴンに山」は、艮為山
53. 漸  「イッツ ミー (It‘s me:それが私です)」、縁談 OK!、風山漸
54. 帰妹  「御用」があれば、と妹もいっしょ、雷沢帰妹
55. 豊  「GOGO!(ゴーゴー!)」/「午後」の豊かな太陽、雷火豊
56. 旅  「ころあい」をはかって一人旅に出る、火山旅
57. 巽  「」が風にしたがって舞う、巽為風  cf. 白粉〔おしろい〕
58. 兌  「こわ〜い」のは口の災い、兌為沢
59. 渙  「ゴクン」と飲んだ水汗と散る、風水渙
60. 節  「六十」の還暦(耳順〔じじゅん〕)は人生の節目、水沢節
61. 中孚  「無為自然」でからっぽ、風沢中孚
62. 小過  「」やらぬこと、雷山小過
63. 既済  ※  「既済は定まるなり。」
64. 未済  ※  「未済は男の窮まるなり。 




【 卦の番号 暗記法 / 解 説 】

《 上 経 》
                                                                    
1. 乾  ※  乾 「元亨利貞(げんこうりてい)」 ・ 「自強不息(じきょうふそく)」

2. 坤  ※  坤 「厚徳載物(こうとくたいぶつ)」
  ( は、全陽〔純陽・老陽・男性〕 ・・・ 分化発展の原則、乾=健の意、
  天の運行・剛健、龍(ドラゴン) ・「元亨利貞」(卦辞)  
  ※ 乾の四徳 ・・・ 循環連続性 ・「自強不息」(大象); 
  「天行は健なり。君子以て自ら強〔つと〕めて息〔や〕まず。」 )
  ( は、全陰〔純陰・老陰・女性〕 ・・・ 統一含蓄の原則、母なる大地、
  牝牛横たわり草を喰むイメージ、“柔順の貞”・“女性の貞”、 ・ 「厚徳載物」(大象)
  ;「地勢は坤、君子以て徳を厚くし以てものを戴〔の/たい〕す。」 )

3. 屯  「お」の苦しみ、水雷屯
  (*4難卦; 創造・生み=産み の苦しみ、天下草創 )

4. 蒙  「界(海)」もうろう、山水蒙
  ( 頭の中が蒙〔くら〕い、山の下に水でモヤ → 視界がモヤ〜としている )

5. 需  「本」の指折り数え求め待つ、水天需
  ( 需〔もと〕め待つ、“密雲すれども雨ふらず” 、5は東洋の代表数 )

6. 訟  「法全書」片手に“訴えてやる!”、天水訟
  ( 訴える・訴訟、男性同士・表立った〔陽と陽〕背反、「行列のできる相談室」 )

7. 師  「転八倒(起)」戦〔いくさ〕の卦、地水師
  ( 戦〔いくさ〕・苦しい時、戦の軍師 → 先生 )

8. 比  「方美人」みんなに親しむ、水地比
  ( したしむ、「八方美人」 は誰にでも愛想が良い人、
  *「八頭身美人」と間違えないように )

9. 小畜  「労」して少しく蓄〔たくわ〕える、風天小畜
  ( 畜=蓄、1)留〔とど〕め・ 2)貯〔たくわ〕え・ 3)養う )

10. 履  「テン(10)」で、天〔テン〕沢履
  ( ふみ行う、英語のテンと天のゴロ合わせ・・・10番目のくくりで覚えましょう )

11. 泰  「イイ感じ」で男女和合し、地天泰
  ( “泰否の基本ペア卦”。天地交流・男女和合、
  地は下に天は上に行こうとして交流、合体融合の象 )

12. 否  「十二ケ月」で一年塞〔ふさ〕がり終わる、天地否
  ( 泰と反対に八方塞がり、天地交流せず男女和合せず )

13. 同人  「勇ん遺産)」で人が集まる、天火同人
  ( 志を同じくして多くの人が集まる、同士が勇んで /遺産相続をアテにして )

14. 大有  「意志」が天に通じて天祐あり、火天大有
  (*3大上爻;高根 日の4〔5〕卦;大いに有〔たも〕つ、中天の太陽、天佑あり ) 

15. 謙  「以後もよろしくお願いします」とお辞儀する、地山謙
  ( へりくだる、謙虚・謙遜、“稔ほど頭をたれる稲穂かな” )

16. 予  「いろんな」準備楽しく、雷地予
  (*“時”・時宜5卦; 1.あらかじめ  2.遊び楽しむ  3.怠る )

17. 随  「柔軟」に随〔したが〕う、沢雷随
  (*“時”・時宜5卦; つきしたがう、“時にしたがい、事にしたがい、人にしたがう”、
  「臨機応変」、柔軟な姿勢が大切・・・ )

18. 蠱  「娘十八」“虫”が三匹、山風蠱
  ( 皿の上に虫が3匹〔木皿の中の虫〕、蛇も 18はお年頃 悪い虫に要注意 )

19. 臨  「行くぞ」船出だ咸臨丸〔かんりんまる〕、地沢臨
  ( 春たけなわ・スタート、1860 勝海舟 「咸臨丸」にて太平洋をわたる )

20. 観  「二十面観音」人生の洞察/「二十〔はたち〕」で観光旅行、風地観
  (*精神性3卦; 精神性重視、観世音(観音・観自在)菩薩・・・精神の高められた心でみる
  /心眼で深く観る、“観光”の語源・4爻辞 「国の光を観る」 )

21. 噬コウ  「フイ」に歯にはさまる、火雷噬コウ
  ( 噛〔か〕み合わせる。口の中の障害物・・・口中に4爻の1陽があるのがこの象。
  好事〔こうず〕魔多し )

22. 賁  「夫婦」仲良く高齢社会、山火賁
  (*高根 日の4〔5〕卦;かざる・あや。沈みゆく太陽・晩年・夕日・高齢社会の卦 )

23. 剥  「ふさぎ込む」身心の剥がれ、山地剥
  ( 身心のはがれ、“退勢の極致”、1陽崩壊寸前にて男性苦労の象 )

24. 復  「西」からもどる太陽、地雷復
  ( 「復」=ルネサンス (仏・英) Renaissance 、再生・復活、
  “復は反〔もど〕るなり”(雑卦伝) ・・・ 西に沈んだ太陽が戻る )

25. 无妄  “おんにこにこ 腹立つまいぞや そはか”、天雷无妄
  (*精神性3卦; うそ・いつわりのないこと。无は無で 妄〔みだ〕り無いの意。至誠。
  “おんにこにこ ・・・ ”は腹を立てぬ呪文との連想 )

26. 大畜  「二郎」は大いに蓄え、山天大畜
  (*3大上爻; 大いにとどめ・蓄えること。「二郎」は単なるゴロあわせ )

27. 頤  「フナ寿司」食べて食養生、山雷頤
  ( あご・おとがい。身心ともに養う。 
   琵琶湖の「フナ寿司」伝統的珍味で単なるゴロあわせ )

28.大過  「双葉」も大いに過ぎて棟木〔むなぎ〕となる、沢風大過
  (*4(3)難卦; 大(陽)が過ぎる。
  「棟撓〔むなぎたわ〕む」(卦辞)・・・棟木は屋根を支える横木 )
 
29.坎  「まれ者」の三難卦、坎為水
  (*4(3)難卦; 習坎・水また水、水はなやみ、険難重なる象。 )

30.離  「三十女」・中女で、離為火 
  ( 離為火 は、麗〔り〕。中女・・少女と大女の間、魅力的な「三十女」を連想 )



《 下 経 》

31.咸  「さあ こう!」船出だ、/ 「先よし」、沢山咸
  (*愛情 4卦; 「咸臨丸」スタート;咸卦と臨卦から名づけました。感応の卦、
  恋愛・愛情の始まり )

32.恒  親子「三人」でいつも変らぬ愛情、雷風恒
  (*愛情 4卦; 恒は、恒常・久しい。夫婦・親子の幾久しく変らぬ愛情 )

33.遯  「ミミっちくなく」・「サッサと」引退、天山遯 
  (*精神性3卦;“時”・時宜5卦; 遯は、逃れ退く。隠居・引退の卦。
  解脱・達観。 ・・・  人は引き際が大切です )

34・大壮  「ミシミシ」と音立てたいそう〔体操〕、雷天大壮
  ( 大壮は、陽(大)気 壮〔さかん〕なりです。「体操」 と“かけ”ました )

35.晋  「三十五」は人生のまっ盛り、火地晋
  (*3吉卦; 高根 日の4〔5〕卦; 晋=進ですすむ、地上(真上)の太陽。
  人生でいえば中年壮年、まっ盛りです )

36.明夷  「三浪」は “暗黒時代”、地火明夷
  (*高根 日の4〔5〕卦; 地中の太陽、明らかなもの・明るいもののやぶれること。真っ暗 )

37.家人  「み(ん)な」そろって家庭円満、風火家人
  ( 家庭の平和・調和、家を斉〔ととの〕える道 )

38.ケイ  「見渡せば」女同士の反目、火沢�露 
  ( そむく・異なる。 火=離女・中女 と 沢=兌女・少女の二女反目 )

39.蹇  「惨苦〔ざんく・さんく〕/残酷」な足止め、水山蹇
  (*4(3)難卦;  寒さに足が凍えて進めない字義、足止めストップ )

40.解  「四十」にして惑わずで解決、雷水解
  ( とける・ちらす、問題解決、氷解。「四十」不惑は『論語』からの連想 )

41.損  「よい投資」で “損して得とれ”、山沢損
  ( “損益のペア卦” “ Give and Take ” 正しい投資は利益を生む )

42.益  利益は「世に」還元すべし、風雷益 
  ( 損(正しい投資)があって益あり、益=易のあるべき姿は社会貢献 )

43.夬  しっかり「試算」して大決心/「予算」オーバー、沢天夬
  ( 夬=決。よほどの決心・決定〔勇断果決〕、堤防決壊〔ぶちこわし〕 )

44.コウ 「夜夜〔よよ〕」の思わぬ出合い、天風コウ 
  (*“時”・時宜5卦;愛情 5卦; 男性は夜の仕事の女性との出会い、
  女性は玉の輿、女性との出会いで発展〔男女とも〕 )

45.萃  「しごいた」網に魚がいっぱい、沢地萃
  ( あつまる。人やモノがあつまる、 選挙吉 )

46.升  「丸」つづきでスピード昇進、地風升
  (*3吉卦; 高根 日の4〔5〕卦; 順を追って昇り進む、高位に昇る〔出世〕 )

47.困  「至難」だ困った/赤穂〔あこう〕「四十七士」、沢水困
  (*4〔3〕難卦; 行き詰まって困り、苦しく悩む。/赤穂浪士「四十七士」の打ち入りも
  至難・困難と連想 )

48.井  「世渡りじょうず」が集まる井戸端会議、水風井
  ( 恵みの井戸、「世渡りじょうず」な“オピニオン・リーダー”を連想 )

49.革  「良くなれ」と改革、沢火革
  ( あらたまる、かわる。改革・革新・革命 Revolution の革 )

50.鼎  「五十」にして安定・三角関係、火風鼎 
  ( 鼎は、かなえ、古代中国の三本足の煮炊きする器。 
  三脚で安定。『論語』にいう知命「五十」は人生安定、三角関係も安定の時? )

51.震  「強引ごういん〕」な地震・雷、震為雷
  ( 震は激しく・「強引」に動く。天にあっては雷、地にあっては地雷。)

52.艮  「ゴンに山」は、艮為山
  ( 艮は坤と区別して「ゴン」と発音、その象意は「山」、
  ゴンイザン ⇒ ゴン ニ サン のゴロあわせ )

53.漸  「イッツ ミー (It‘s me:それが私です)」、縁談 OK!、風山漸
  (*3大上爻;3吉卦;愛情 4卦; 正婚・結婚の卦。 
  ※お見合いの場面の連想で、見合い写真をみて「それは、私です!」 )

54.帰妹  「御用」があれば、と妹もいっしょ、雷沢帰妹
  ( 自由恋愛・副妻・愛人、恋愛ご注意の卦。 
  ※古代中国では、姉の貴人との結婚には妹を伴いました )

55.豊  「GOGO!(ゴーゴー!)」/「午後」の豊かな太陽、雷火豊
  (豊かに盛大の意「いけ!いけ! どんどん」/「午後」太陽と豊大の連想 )

56.旅  「ころあい」をはかって一人旅に出る、火山旅
  (*“時”・時宜5卦; 旅卦は孤独な一人旅、修行の旅、行かねばならぬ旅。
    ―― 「ころあい」をはかって出発しよう )

57.巽  「」が風にしたがって舞う、巽為風  cf. 白粉〔おしろい〕
  ( 巽は 風、風にただよう。風のように従い従って〔巽順〕吉。 )

58.兌  「こわ〜い」のは口の災い、兌為沢
  ( 兌の象意は、口。口禍・失言には要注意 )

59.渙  「ゴクン」と飲んだ水汗と散る、風水渙
  ( 水上の風、風により水が散ってしまうの象意 )

60.節  「六十」の還暦(耳順〔じじゅん〕)は人生の節目、水沢節
  ( 竹のふし、人生の節目。還暦〔『論語』でいう耳順〕は、
  満60〔数え61〕歳で干支〔えと/かんし〕の暦が一巡して
  生まれた時の干支に戻ることです )

61.中孚  「無為自然」でからっぽ、風沢中孚
  ( まこと・愛情・、また中がからっぽ〔空虚〕・タマゴの殻。 
  風と水という自然の相応は 人の虚心な信〔まこと〕で、
  老荘思想の「無為自然」を連想 )

62.小過  「」やらぬこと、雷山小過
  ( 少しく〔陰に〕過ぎる。「」やること=大禍 は禁物というもの )

63.既済  ※  「既済は定まるなり。」
64.未済  ※  「未済は男の窮まるなり。」
  ( 既済は、すでに成る、ととのう。64卦 最終卦のひとつ前の卦。
   “有終の道(美)”、成就・完成、ジ・エンド 〔THE  END〕、 不良。 )
  ※ 既済は、1)すべてが、完成・成就したの意。それで安定している。
     2) 3陰3陽 の 6つの爻すべてが正位を得ているから安定している。

(未済は、未完成。 64卦 最終の卦=人生に完成はない、 無終の道=循環・無始無終。 )
※ 未済は、1)未完成、いまだことが成就しないの意。つまり、男の道=君子の道がいまだ定まっていないの意。
2) 3陰3陽 の 6つの爻すべてが不正位。3つの陽爻(男)が位を得ていないので、男の身の行き詰まりです。 3陰爻が、それぞれ陽爻の下にあって陽爻を承〔う〕けています。女(陰)が行き詰まることはないので、男(陽)の行き詰まりといえます。
3)全爻、不正位に加えて、2爻が坎険の中から出られないので、「男の窮する」の意。

  ● 人類の歴史は行き詰まることなく、再び始まります。 「終始」 = 終りて始まる
     という悠なる易学の循環の理がここに示されているのです。
    
                                              ( 完 )

                                             


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第30回 定例講習 (2010年5月30日) その1        

photo_20100530

※「孝経」講座終了に伴い、今年度より、「論語」・「老子」・「本学」・「易経」となります。

論語  ( 孔子の弟子たち ―― 子 貢 〔3〕 )

1) 大器量人子貢 ・・・・ “女〔なんじ〕は器なり”、君子とは? 君子

○ “子貢、問うて曰く、「賜〔し〕や何如〔いかん〕。」子曰く、「女〔なんじ〕は器なり。」 曰く、「何の器ぞや。」 曰く、「瑚レン〔これん〕なり。」” (公冶長第5−4)

《大意》
 子貢が、「賜(この私)は、いかなる人物でございましょうか。」とお尋ねしました。孔先生は、「お前は、器物だ。」とおっしゃいました。子貢は、「それでは、一体どのような器物でございましょうか。」と(重ねて)お尋ねしました。孔先生は、「瑚レンだね。」とおっしゃいました。

 ※何如(=何若・何奈)は、“いかん”と読み“どうなるか”・“どんなか(状態を表す)”の意。 如何(=若何・奈何)は、“いかん(せん)”と読み“どうしましょうか”の意。

 ※「女器也」「何器也」:孔子は、子貢の材は用に適する(有用)ものなので、“器〔うつわ〕”と言いました。器には、器物としての限界があります。「君子不器」を、おそらく子貢は知っていると思います。それで、少々不満で、「どのような器物でございましょうか?」と重ねてお尋ねしたわけでしょう。 ―― 子貢、大才・大材なれど君子には及ばぬということです!

 ※「瑚レン也」:瑚レン(夏代に瑚、殷代にレンといい、周代にはホキ〔ほき〕といいます)は、宗廟〔おたまや〕のお供えを盛る貴重で美しいもの。 ―― 子貢は、君子には達していないが、器の中で最高に貴いものであろうかということです! (孔子は、少々子貢に気を使ってタテテいるのかもしれませんね?)


 ○ “子曰く、「君子は器ならず。」 ”  (為政第2−12)

《大意》
  孔先生がおっしゃるには、「君子は、器物のように用途が限定されて他に通用しないようなものではないよ。」

 ※君子は、一芸一能に止まらず、窮まることなく何事にも応じることができる人です。


 ○ “子貢、君子を問う。子曰く、「先〔ま〕ず其の言を行い、而〔しか〕して後にこれに従う。」 ”  (為政第2−13)

《大意》
  子貢が、君子とはどのようなものかお尋ねしました。孔先生がおっしゃるには、「まず、言わんとすることを実行して、行ってから後にものを言うものである。」

 ※子貢は、言語の科で知られるように弁才の人です。時に、言行不一致、口達者のきらいがあるのを含んでたしなめた孔子の言葉でしょう。 「君子は、言に訥〔とつ〕にして、行に敏ならんと欲す。」(里仁第4−24) ともあります。
  “不言実行”・“雄弁は銀、沈黙は金”という古諺〔こげん〕がありますね。また、“黙養”という修行もあります。騒がしく口うるさいのを感じる時世です。口舌の徒多い時勢です。 ――想いますに、男子はもの(口)静かなのが善いと思います。

 ◎ “君子は器〔き〕を身に蔵し、時を待ちて動く” (『易経』)


◆ 孔子は、君子というものは用途の決まった器物のようなものでなく、器物を使う働きのある人であると言っています。東洋思想にいう君子は、徳を修めた者で、小人は技芸を修めた者という意味です。(後述・小考参照)

cf.「大器晩成」 (『老子』): 大きな器は、作るのに時間がかかる → 大人物は速成できない
 *「大器免成」 : 大いなる器は、完成しない → 大人物には到達点がない
 (『易経』・・・未済は、未完成。 64卦 最終の卦=人生に完成はない、 
 無終の道=循環・無始無終。「終始」 = 終りて始まる、という悠なる易学の循環の理。 )


※ 高根小考

  「君子」 ――  “クンシ”は、専ら男性に用いられます。“聖人君子”と四字熟語で用いたりもします。私が思いますに、現代に近い人間像で平たく擬〔なぞら〕えれば、英国におけるジェントルマン〔gentleman: 伸士〕、日本における武士〔ぶし/もののふ〕像が近いかと思います
 君子は、東洋思想においての理想的人間像、理想的リーダー〔指導者・為政者〕像として、要〔かなめ/モメント〕の概念だと思います。西洋思想においては、(古代)ギリシアの理想的指導者像、“哲人”・“哲人政治”が相当するかと思います。今世〔いま〕は、男女同権ですので、女性も含めての君子像・指導者像を創ってゆかなければなりません。

cf.理想的人間像 : 古代ギリシア → (智・徳・体)調和のとれた人、「調和の美」 / ルネサンス → 普遍的人間・万能人 / 現代 → スペシャリスト〔専門家・一芸一能〕


《 東洋の人物五類型 》 → 《 聖人―君子―(大人)―小人―愚人 》

※ “人が良い・お人よし(御人好)” と“良い人”は意味が違います。知恵はないが人が良いのはいいものです。(善良にすぎる、好人物)  cf.「天雷无妄」卦

※ 聖人―君子―(大人)― 〔素人―〕 小人―愚人 で聖人は才徳兼備・完備、愚人は才徳兼亡・兼無。君子―小人は共に才あり、その才(才の用い方)に善し悪しがある、徳が相対的に勝っているか劣っているか、と考えています。(現実的に聖人はいません。)
私は、才は無いが徳はあるという人物を、“素人・朴訥〔ぼくとつ〕人”とでも名付けて君子・小人の間に類型してはどうかと考えています。



老子 【1】

§.プロローグ : 序 ―― 「諸子百家」の中の 道家(老荘)と儒家

 皮肉なこと逆説的なことですが、洋の東西を問わず、科学技術も学術文化(思想)も戦争によって、急速かつ飛躍的に創造発展いたします。 兵器の開発、富国強兵のためにです。

古代中国において、なんと 500年 以上にわたり戦乱の時代が続きます。
(BC.770 春秋時代 〜 BC.403 戦国時代 〜 BC.221 秦による全国統一)

この間、“百家繚乱〔りょうらん〕”・“百家争鳴”などという言葉があるように、多くの学術文化が華やかに花開きました。―― 諸子百家と総称いたします。


 さて、世界の“3〔4〕大聖人”の一人、孔子(BC.551〔552〕〜BC.479)が中国に生まれたのはそんな戦乱の時代、春秋時代の終わりごろです。

インドでは、シャカ族の王子、ゴータマ・シッダールタ〔Gautama Siddhartha  BC.463〜BC.383?/BC.563〜BC.483?〕が、苦行・修養の後、大悟しブッダ (仏陀 Buddha: 覚者)となり仏教の教えを説き始めた頃です。

仏教は、やがて中国に伝わり花開き、朝鮮・日本・・・とアジア全域に決定的な影響を与えていくことになります。


 西洋は、と目を向けてみますと。ローマ帝国による、地中海世界統一よりはるか昔のころ。古代ギリシアのポリス〔都市国家〕がおこり、アテネを中心に古代民主制が華やかに盛期を迎え(BC.5世紀頃)ていました。

ここに、古代ギリシア哲学(= ヨーロッパ学術)の祖 ソクラテス〔Sokrates  BC.469頃〜BC.399〕が歴史の舞台に登場します。

「ソクラテスより賢い者はいない」との信託をうけ、自らは己の無知を自覚し(無知の知)哲学の出発点としました。

「善〔よ〕く生きること」を追求します。

“問答法〔ディアレクティケー〕”により語り、誤解され民衆裁判で死刑になります。
が、その思想哲学は弟子の プラトン〔Platon〕 → アリストテレス〔Aristoteles〕 へと受け継がれギリシア哲学として発展大成し、西洋思想の礎となっていきます。


 なお、ちなみに、「日の出づる処の国」わが国は、まだ“倭〔わ〕”の国とも呼ばれず、邪馬台国よりはるか大昔、縄文の原始時代です。


 以上 3人の聖人が、あたかも何らかの意思が働いたかのように、時をほぼ同じくして世界史上に登場します。

そして、500年ほど遅れて、紀元の頃、イエス・キリスト〔Jesus Christ  BC.4頃〜AD.30頃 〕 が誕生し、(ユダヤ教に対して)世界宗教キリスト教の開祖となります。―― 4大聖人です。


 では、中国・「諸子百家」に再び目を戻しましょう。群雄割拠も7大国に淘汰されます(戦国の七雄)。

「秦」は、法家思想を取り入れ富国強兵策を推し進め、強力な軍事国家を創り上げます。
そして、政(せい:後の始皇帝)が中国統一の偉業を達成します。
しかし、信じ難いことですが、この法家思想にもとづく秦は、わずか15年ほどで崩壊します。


 法家思想の源は儒家思想といえますが、孔子は、平たく今時〔いま〕の言葉でいえば、(あくまで当時は)“負け組”だったのです。

後の漢代(武帝)に、国教(国の教え)となります。儒学は、本質的に、平和・安泰の時代の思想だと思います。


 そして、ここに聖人孔子と並称しても良いような哲人がいます(もし、実在するならですが)。 

老子です。

老子は人物を特定することも、実際いたのかどうかも分かりません。が、少なくとも『老子』という本を著わし道家思想を唱えた人(人々?)がいたことは事実です。

老子を祖とする道家思想(老荘思想)は、以後、儒学と並ぶ中国(東洋) 2大潮流を形成していくこととなります。


 「諸子百家」の思想・教えが、その時代背景からして実践的・実学的であったのに対して、道家思想(老荘思想)は、宇宙論(形而上学)を持つ唯一優れた特異なもの、哲学的に最も優れた思想であった、と私は感じています。


 私は、「諸子百家」の幾数多〔いくあまた〕の哲人・学派の中で、その後世・歴史への影響力という点で、“孔子・儒家”と“老子・道家”が双璧といっても良いと思うのです
                                            ( 続 く )


諸子百家(百家争鳴)

*(おさらい)

 戦争の時代に科学・学術文化は、大きく発展します。
古代中国、春秋戦国時代(BC.770〜BC.221)に、政治・経済・社会・文化あらゆる分野から思想家・学派が百花繚乱〔りょうらん〕」のごとくに現れました。

これを諸子百家〔しょしひゃっか:子は先生、家は学派の意〕と総称します。
華やかに競い合うさまを「百家争鳴」ともいいます。
戦乱の世にあって“離〔り〕=文飾”の時代のエポック〔画期〕となりました。

 諸子百家は、『漢書〔かんじょ〕』・芸文志〔げいもんし〕によれば、
儒家・道家・墨家・兵家・陰陽家・縦横家・名家・農家・雑家・小説家の十家に分類されています。
小説家を除いて 九流とし、それに法家を加えて 十流としています。

 この中で、後世、現代に到るまで多大な影響を与え続け、東洋源流思想の2大潮流を形成するのが、儒家と道家です。


◎ 【儒家】: 周王朝初期の社会を理想、当時は用いられないが後(漢代〜)
中国の国教・正統的思想となります

*孔子・『論語』・、―― 曽子・『孝経』、―― 子思・『中庸』

*孟子・『孟子〔もうじ〕』・仁義・性善説、 *荀子・『荀子』・性悪説
( 後世の展開 ・・・→ 朱子≪朱子学≫、 王 陽明≪陽明学≫ )

◎ 【道家】: “老荘思想”・“黄老の学”として広まった。
儒家と対峙〔たいじ〕、対極にあるともされています。
宇宙の原理である「道」、「無為自然

*老子・『老子』(『老子道徳経』); 「有」と「無」と「道」/「無為にしてなさざるなし」/「小国寡民」/「柔弱謙下〔じゅうじゃくけんか〕」/道(上篇)と徳(下篇)

*荘子・『荘子〔そうじ〕』; 「無用の用」/「逍遥遊〔しょうようゆう〕」/ 「包丁〔ほうてい〕」/「朝三暮四」/「渾沌〔こんとん〕の死」/「蝴蝶〔こちょう〕の夢」/「井の中の蛙〔かわず〕」/「邯鄲の歩 (ものまね)」/「泥の中の亀」/「蝸牛〔かぎゅう〕角上の争い」/「万物斉同」

*列子・『列子』; 「杞憂〔きゆう〕」/「愚公、山を移す」/「知音〔ちいん〕」(友人知己)

◎ 【墨家】: 兼愛・博愛(無差別愛)と倹約を説く、「非攻」(自衛のための戦闘的集団の結成)、「墨守」、 戦国期に儒家と双璧をなしましたが秦の統一とともに消えていきます

*墨子を開祖とする、*告子

◎ 【法家】: 礼や道徳ではなく、君主の法や刑罰によって国を統治しようとする、君主権の絶対と官僚制度の確立を説く、「信賞必罰」
(古くは管仲〔かんちゅう〕に始まり晏嬰〔あんえい〕・)商鞅〔しょうおう〕・李斯〔りし〕 ・・・→ 秦に登用され秦による天下統一に寄与

*韓非・『韓非子』; 「濫吹〔らんすい〕」(実力がないのにその位にいることのたとえ)/「宋襄〔そうじょう〕の仁」(行きすぎた親切心)/「矛〔ほこ〕と盾〔たて〕」(矛盾:つじつまが合わないこと) /「守株〔しゅしゅ・くいぜを守る〕」(待ちぼうけ)

◎ 【兵家】: 兵法(用兵・戦略)を研究、孫子〔孫武/そんぶ〕、呉子〔呉起/ごき〕

*孫武の『孫子』 ・・・ 「彼を知り、己を知れば百戦殆〔あやう〕からず」、
「百戦百勝は善の善なるものにあらず」  →  戦わずして勝つ、 
「常山の蛇」、 “風林火山”  → 「その疾〔はや/と〕きことの如く、その徐〔しず〕かなることの如く、侵掠〔しんりゃく〕することの如く、動かざることの如く、知り難きこと陰の如く、動くこと雷霆〔らいてい〕の如し。」(cf.武田信玄の旗印)

◎ 【陰陽家】: 陰陽五行説(「陰陽」は光と影)・木火土金〔ごん〕水、*鄒衍〔すうえん〕   
cf.西洋「四元素説」

◎ 【縦横家】: 外交術、*蘇秦の「合従〔がっしょう/縦〕」策 と *張儀の「連衡〔れんこう/横〕」策

◎ 【名家】: 論理学・詭弁、*公孫龍・「白馬非馬論」、*恵施(子)

◎ 【農家】: 重農主義、神農を本尊とする、*許行〔きょこう〕

◎ 【雑家】: その他学派

◎ 【小説家】: つまらぬ小話を説く、思想希薄 

 
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