儒灯

【温故知新】儒学の普及に力を注いでおります真儒協会 会長、高根秀人年の個人ブログです。 『論語』、『易経』を中心に、経書の言葉を活学して紹介して参ります。 私個人の自由随筆、研究発表などのほか、真儒協会が毎月行っております定例講習についても掲載しております。

2011年12月

むかしの中国から学ぶ 第4講 「五行〔ごぎょう〕(中国医学)」 (その4)

(こちらは、前のブログ記事の続きです。)

§.付説   ───  貝原益(損)軒の『養生訓』  ───

*《序》
 名前はご存知の方も多いでしょう。
『養生訓』 は、江戸時代 (元禄) の大学者 ・ 貝原益軒 〔かいばらえきけん〕 の、
最晩年・84歳のときの著作です。

「益軒」 は、最晩年の号〔ごう〕で、実は 「損軒」 ともうします
漢方・本草学〔ほんぞうがく〕の大家でもあります。

(少子)高齢社会が急速に進展する現在。
(cf.満65歳以上の高齢者の占める割合23.1%、平均寿命:女子86.39、男子79.64) 

善き晩年の養心・養生のために(また自分自身のためにも)講じたいと思って、
長年この『養生訓』について研究準備しておりました。

今回、「五行(中国医学)」を講じることとなり、
また受講者にこれから晩年を生きる方が多いことを踏まえまして、
付説・補論として加えました。

今回、直接の原教材としては、
安岡正篤・『易と健康 下 /養心養生をたのしむ』(所収の付録)を用いました。

これは、かつて(S.39.8/私が10歳のころ!)
安岡先生が講演されたものが講演録として編集・出版されているものです。

簡にして要を得たものです。

それを更に、抜粋して紹介させていただきました。
以下、少々、教材を引用しておきましょう。


─── 抜 粋 ───

 “ なぜ損軒を益軒と直したか。これまた面白い問題であります。
損益というのは易の卦〔け〕である。
損の卦、山沢損の卦は「忿〔いかり〕を懲〔こ〕らし、欲を塞〔ふさ〕ぐ」という
つまり克己修養、克己努力だ。
損の卦の上九爻辞〔こうじ〕をみますと「損せずして之を益す」とある。
すなわち自由に到達する。
克己修養の結果、到達するところの自由の境地、
その自由と委任の道を明らかにしたのが益の卦です。
それで損軒先生、克己修養の努力を積んでだ、
八十近くなって、ようやく自由という境地に自信を得たんでしょうね。
そこで損軒よりも益軒を用いた。”


 “ 世間が考えておるような単純、あるいは頑固な人ではなくて、
自由闊達〔かったつ〕、非常に豊かな生き生きした大人〔たいじん〕であります。
そうして医学にも本草学〔ほんぞうがく〕にも長じた人が、
これだけの体験と勉強を積んで、八十を過ぎて半生を省みて、
後進の人々のために著してくれた『養生訓』であるから、
これは世間でいうような簡単な養生学問とは違う。”

人生五十にいたらざれば、血気いまだ定まらず。知恵いまだ開けず。 古今にうとくして、世変〔せへん: 世の移り変わり〕になれず。 言〔げん〕あやまり多く、行〔こう〕悔多し。 人生の理〔ことわり〕も楽しみもいまだ知らず。 五十にいたらずして死するを夭〔よう〕という。 是れ亦た不幸短命と云うべし。 長生すれば楽しみ多く益多し。 日々にいまだ知らざることを知り、日々にいまだ能〔よ〕くせざることを能くす。 この故に学問の長進することも、知識の明達なることも、長生せざれば得がたし。 之を以て養生の術を行い、いかにもして天年をたもち、・・・・・ 。

 “ 道教の一派になりますと、人間の全〔まった〕き寿というものを百六十としています、
八十一を半寿という、八十と一を組み合わせると、半分の半という字になりますから
八十にいたらずして死するを夭という。
ということは、我々はまだ死ねんわけで、死んだら夭折になってしまいます。
ともかく、長生すれば楽しみ多く益多し。
我々もやっぱり年をとってみて、まさにごもっともであるとつくづく考えさせられる。”

人の元気は、もと是〔こ〕れ天地の万物を生ずる気なり。 是れ人身の根本なり。 人此の気にあらざれば生ぜず。 生じて後は飲食衣服居処〔きょしょ〕の外物〔がいぶつ〕の助によりて、元気養われて命をたもつ。

 “ (「摩訶〔まか〕不思議」の「摩訶」と) 同じように
元という文字も、時間的にいえば、発生的にいえば「始め」という意味である。
ものの始めという意味。形態的にいえば「根本」という意味である。
末に対して元という意味。
それから、限定的なものに対して、部分的、限られたるものに対していうならば、
これは「全体」という意味だ。
だからこれを「大いに」と読む。
そのいずれの意味にも限ることができませんから、「元」というのである。”

凡〔およ〕そ人の楽しむべきこと三〔みつ〕あり。 一〔ひとつ〕には道を行い、ひが事なくして善を楽しむにあり。 二には身に病なくして快く楽しむにあり。 三には命ながくして久しく楽しむにあり。 富貴にしても、此の三の楽なければ真の楽なし。 故に富貴は此の三楽の内にあらず。

 “ つまり、一つは宿罪、宿業、宿悪をなくすること。
第二には疫病をなくすること。
三つには長生きして久しく楽しむ。
富とか出世するとかいうことは、この三楽の中には入らん。
孟子は「君子に三楽あり」 (尽心章句・上) といっておる。
「而〔しこう〕して天下に王たるは与〔あずか〕り存せず」。
皇帝になることは、三楽に関係ない。
まず第一に、 「父母倶〔とも〕に存し、兄弟〔けいてい〕故〔こ〕なきは、一の楽しみなり」。
それから 「仰いで天に愧〔は〕じず」、良心的にやましくない。
第三には、「天下の英才を得て之を教育す」ということで、
「天下に王たるは与〔あずか〕り存せず」と、孟子らしい気炎をあげておりますが、
益軒先生も、富貴はこの三楽の中にはないという。
読めば、もっともなことである。”

夕食は朝食より滞りやすく、消化しがたし。 晩食は少きがよし。かろく淡きものをくらうべし。 晩食にテイ〔てい〕の数多きは宜しからず、テイ多く食うべからず。 魚鳥などの味濃く、あぶらありて重き物、夕食にあしし。 菜類も薯蕷〔やまのいも〕、胡蘿蔔〔にんじん〕、菘菜〔はくさい〕、芋根〔さといも〕、慈姑〔くわい〕 ※注) などの如き、滞りやすく、気をふさぐ物、晩食に多く食〔くら〕うべからず

 “ これは専門家に聞かないとわかりませんが、
山の芋、人参なんていうものが「滞りやすく、気をふさぐ」なんて書いてある。
これはもう非常な本草の大家ですから、よほどの研究の結果の解説でしょう。
ちょっと私どもの常識とは違っておる。
 なるほど確かにいわれてみれば、里芋や慈姑〔くわい〕なんてものは、
ちょっと確かに重いですね。
白菜が滞りやすく、気をふさぐなんて思わないが、
菜類の中ではそういう中に入るんでしょうかね。
しかし本草学に基づいて、益軒先生はいうておる。”


※高根 注) 「クワイ」は、吹田市の特産物でもあり
(ご受講の皆さまには)お馴染みですね。
「秋茄子は嫁に食わすな」
(秋茄子は陰気が強く体を冷やすから、と姑が嫁の体を気づかった言葉)
ということわざがあります。
「慈悲」の「慈〔じ/いつくしみ=〕」と「姑〔しゅうとめ〕」をあてているのが、
興味深いと思っています。

四時〔しじ/=四季〕、老幼ともに、あたたかなる物くらうべし。 殊に夏月〔かげつ〕は*伏陰・内にあり。 若く盛んなる人もあたたかなる物くらうべし。 生冷を食すべからず。 滞りやすく泄瀉〔せっしゃ〕しやすし。 冷水多く飲むべからず

*伏陰 ・・・ 陽の中に隠れて有る陰 
(ex.バナナ・パイナップルなど熱帯の果物は陰性にて食すると体を冷やします。)

 “ これはもう大事なことです。
ことに夏は、外が陽ですから、中はみな陰になっている。
だから夏の季節にできる食物は、みんな中が陰です。
胡瓜〔きゅうり〕でも茄子〔なす〕でも、
みな非常に陰性のものであります。
白菜などもそういう意味においては、やはりそうでしょうね。
これは伏陰というやつです。”


      ─── 中略 ───


 “ まあ、こういうところが益軒先生の『養生訓』の抜粋、
すなわち精粋の存するところであります。”

 “ 元気を養うということは、「真気を養う」ということである。
肉体の鍛錬・陶冶〔とうや〕だけでは、どうしても元気にならんですね。
やっぱり真気、精神力というものを養わんというと、
本当の意味の生命力・体力というものはわからん。”

 “ まあ養生というものも、学問も政〔まつりごと〕も、みな同じことだ。
これが根柢〔こんてい〕の養生の道であり、術である。
どうぞ一つみなさんも、貝原益軒先生、損軒先生に負けずに健康で、
学問もして、長生きしていただきたいと思います。” (終)

  ─── 私(高根)も、まったく同感でございます。

                     ( 以 上 )


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(この続き、“むかしの中国から学ぶ” 第5講 「英語でABC論語カルタ 」 は
次のブログ記事に掲載の予定です。)


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むかしの中国から学ぶ 第4講 「五行〔ごぎょう〕(中国医学)」 (その3)

(こちらは、前のブログ記事の続きです。)

《 3.私たちの 養生 と 養心 》
   ── 日用心法・【五医】/【七養】 ── 

    (以下主に、安岡正篤・『易と健康 下/易学と養心養生 』 参考・引用)

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 A 五 医   
-----------------------------------------------------------------
 費を省いて貧を医〔い〕す。    
 静座して躁を医す。
 縁に随〔したが〕って愁〔うれい〕を医す。
 茶を煎じて倦〔けん〕を医す。   
 書を読みて俗を医す。

         (*金纓〔きんえい〕・『格言聯璧〔れんぺき〕』)
------------------------------------------------------------------
 *金纓 : 清朝末期、咸豊〔かんぽう〕、道光の時代の哲人・長者。
        字〔あざな〕は蘭生〔らんせい〕。

◆ ・ 今時、「静座」は椅子でもよいでしょうし、「茶」はコーヒー・紅茶でもよいでしょう。

  ・ 【起/承/転/結】、「結」が大切。人生もまた然〔しか〕りです
   最後の「書を読みて俗を医す。」が決まっていますね。
   書は、経書〔けいしょ〕・史書など立派なものを読みましょう。
   (新聞・雑誌の類はダメ!)

 cf.晩年を“輝かせる” ・・・ ある老婆の話 : むかし、ある老婆
    が(学問の)入門を相談して言うには。
    「わたしは、もう歳をとってしまっております。
    いまさら勉強して、いったい何になりますでしょうか?」 
    偉い先生がおっしゃいました。
    「それで(勉強して)、あなたの人生(晩年)が輝いたものになりますよ。
    (それが最も貴いことですよ。)」 ── その老婆は、納得しました。

 (【少子高齢社会の進展】: 日本人女性の2010の平均寿命は、86.39。
  26年連続で長寿世界一。男性は、79.64 で世界第4位です。)


 B 七 養   ・・・ 陰陽五行思想・相生相剋の説で、興味深いのがこの「七養」です。

-----------------------------------------------------------------
《 七養 》  毛筆清書 (by高根) ─ 略 ─ 

*時令に順うて以て元気を養う  /  *思慮を少うして以て心気を養う 
*言語を省いて以て神気を養う  /  *肉欲を寡うして以て腎気を養う 
*瞋怒を戒めて以て肝気を養う  /  *滋味を薄うして以て以て胃気を養う
*多く史を読みて以て胆気を養う
                         (金纓・『格言聯璧』)

-----------------------------------------------------------------


◆ 一. 時令に順 (したが) うて以て元気を養う 

    ・  (時ならざるは食らわず)  (『論語』・郷党第10)
     季節はずれ(旬〔しゅん〕でない)ものは食べない 
         → “時中〔じちゅう〕” = 時の重視
     ex. 鳥は、果物の“熟しごろ”を的確に見計らって、ついばみますね。

    ・「乾・元亨利貞〔げんこうりてい〕 / 乾〔けん〕は元〔おお〕いに亨〔とお〕る、
      貞〔ただ〕しきに利ろし。」
   (『易経』・【乾】)
 
    ・「キョ〔きょ〕伯玉、行年 五十にして四十九年の。 六十にして六十化す。」
                                (『淮南子〔えなんじ〕』)

      50歳 → 「知命」(孔子) & 「知非 
      ※今代は70化す。80化す。90化す。・・・

    ・文明の害  交通の発達・冷蔵庫/季節のもの・旬のもの/春には春の元気あり


二. 思慮を少 (すくの) うして 以て心気を養う 

    ・思慮を多くする=枝葉末節にわたること/思慮を省けば言語も省ける/根源的な心気

    ・「過陽」 → 中和 ・ 中庸 を目指せ !


三. 言語を省いて以て神気を養う 
 
    ・〔しん〕」は、根源的なもの・本質的なもの/都会ではしゃべりが多すぎる、
     電車でもFF店でもウルサイ!

    cf.「黙養〔もくよう〕」: 明の李ニ曲「三年軽々しく一語を発せず」 / 
        先生(私たち)は、講義はしないと、“話にならない”から仕方ない!


四. 肉欲を寡 (すくの) うして以て腎気を養う 

    ・腎臓の血液浄化作用 一日一トン以上 !

     ex.ウナギ・ブタ肉・牛肉・・・/
     cf.焼き肉店集団食中毒事件“ユッケ”、生レバー(’11.5〜)


五. 瞋〔シン〕 怒 (ど) を戒 (いまし) めて以て肝気を養う 

    ・肝臓と怒りとは非常に関連あり


六. 滋味を薄うして以て以て胃気を養う 

    ・イヌのごはんはウス味 → 

     cf.私は好んで 「M」ハンバーガーショップやギョウザの「○○」を利用しています。
        とてもおいしいのですが、味付けが「濃い」と感じます。
        外食料理の味付けはコイ目の味付けです。/ 
        味付けの“濃さ加減”は → 家庭の主婦の責任大 / 
        料理の “味の決め手”は、塩かげん。→ ex. 「塩梅〔あんばい〕」


七. 多く史を読みて以て胆気を養う

    ── よく “押え” が効いています。

    ・知識 →  見識  →  胆識 〔たんしき〕  

    ex. 『史記』 ・司馬 遷〔せん〕 ・・・ 正史(歴史書)であり文学性も持つ/cf.司馬遼太郎  /
      『貞観〔じょうがん〕政要』・『資治通鑑〔しじつがん〕』・『十八史略』 etc./ 
      私は『三国志』(吉川英治)を愛読しました。/
      『古事記』 ・・・ 歴史書であり神話でもあります。/ 
      『大日本史』(水戸光圀・1657-1906)  cf.『大日本史』は、わが国における『史記』です。
      当時“不良少年”だった徳川光圀公(後の水戸黄門さま)が、『史記』を読み、
      とりわけ冒頭の「伯夷列伝」に感動し自身さとります。
      江戸藩邸に彰考館〔しょうこうかん〕を建ての編纂を開始します。
      そして、 『大日本史』 402巻 は、光圀とその遺志を継いだ子孫によって、
      驚くなかれ262年余りの歳月をかけて完成します。
      わが国の誇るべき大文化事業ではありませんか。

※ これらの貴重な箴言〔しんげん〕を、父・祖父は、子・孫への善き教育に使いたいものです。
  “親の背中を観て”(生きざまを見習って) 子は育ちます。孫もそうです。
  今時〔いま〕、親・家庭の教育力を取り戻さねばなりません。




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むかしの中国から学ぶ 第4講 「五行〔ごぎょう〕(中国医学)」 (その2)

(こちらは、前のブログ記事の続きです。)


《 2.五行思想とその活用 》

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A 陰陽五行思想(風水) と 色
 

◆ 風水・四神相応

      風水・四神相応 図 ── 略 ── 

  ex. 玄武(玄冬)/青龍(青春)/朱雀〔すざく〕(朱夏)/
      白虎(白秋) /中央=黄竜

◆ 五色〔ごしき〕=正色〔せいしょく〕 = 赤・青・黄・白・黒

  “色料の 3原色” = 赤・青・黄  + 白・黒 → *すべての色がつくれる

  (詳しくは、【第3講】の“五色〔ごしき〕”の思想 と イッテンの“ペンタード”参照のこと)
  → http://blog.livedoor.jp/jugaku_net/archives/51304333.html


「コギト(我想う)」 ── 【孔子と色】 エピソード

 1) 「 紫の朱 〔しゅ〕 を奪うを悪 〔にく〕 む。── 」 (『論語』・陽貨第17)
   と紫色(服装)を嫌いました。
   紫が濃艶〔のうえん〕で俗人から好まれ、
   正色である朱色がその地位を奪われてしまったということでしょう。

  ( cf.紫は赤味が失われているからではないか? 孔子が単に嫌いだったからではないか?)

 2) 孔子自ら易を立て、 【 山火賁 〔さんかひ〕 】 卦を得てふさぎ込みました。
   雑色の卦であって正色ではないからです。(『孔子家語〔こうしけご〕』)
   今では考えられないことですが、孔子の時代 2次色(中間色)は嫌われたのです。


◆ 風水 都づくり (都市計画)

 ・ 平安京の造営(794)

   「この国、山河襟帯〔さんがきんたい〕、自然に城を作〔な〕す。」 (桓武天皇・詔勅)
    (東に川、西に道、南に湖、北に山 → 三方が山に囲まれ一方に川が流れる。)
   鬼門(艮〔ごん〕=東北)封じ :比叡山延暦寺 / cf.江戸= 上野寛永寺



B 五行思想 と 中医 

      カット − 略 − 


 「宮廷女官・チャングムの誓い」 ・・・ 宮廷女官(料理人)から 医女(=女医へ)


【参考1】 《 (易道) と 医学 》  cf.“医は仁術なり”

● 「チャングムの誓い (大長今)」 ‘06.6.10 放送 ・ NHK

 少年     「人を傷つける相ではなく、人を助ける相がでております。信じてみたいのです。」
         「この人が、私を治す人なのです。」

        ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─

 チャングム 「なぜ、私なら病気を治せると思われたのですか?」
 少年     「恩人が来ることは、わかっていた。 どんな人かまではわからなかったが。
         あの場所が縁となって恩人と出合うことはわかっていたのだ。」
 少年の父  「この子は、十歳で四書三経をすべて修め、『易経』を読破した。
         ものの見方が並外れていてな 注1)、皆、この子の意見を無視できんのだ。」

        ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─

 チャングム 「ぼっちゃま、 お世話になりました。」
 少年     「ありがとう。 名は何という?」
 チャングム 「チャングムです。」
 少年     『易経』を学ぶといい。おまえは、多くの人達を助ける相をしているから。 注2)
 チャングム    ── 微笑(ほほえ)み ──

注1) 『易経』は、円通自在・窮することがありません。
注2) 『易経』は、帝王学、君子(リーダー)の学です。


【参考2】 《 (中医) 五色診 》

● 「チャングムの誓い (大長今)」 ‘06.5.27 放送 ・ NHK

 先生(=チャンドク) 「顔色を病状で分けると大きく分けて、 
            青・赤・黄・白・黒 の五つに分類される。 これを、五色診というの・・・ 」
 先生        「顔色は? 意見を言ってごらん。」
 チャングム    「赤み がかって います。 赤みが強いので実熱でしょうか?
            熱が体にこもってしまう病かと思います。」
 先生        「次をみて! 」
 チャングム    「患者の顔と目が黄色み がかって います。
            これは、キョ症やシツ症・黄疸〔おうだん〕が考えられます。」
 先生        「この患者は黄疸よ。 黄疸とはどういう病気? 」
 チャングム    「黄疸とは、肝臓と胆のうが、侵され、
            胆汁〔たんじゅう〕が正常に分泌されないために起こる病状で、
            あざやかな黄色は “陽黄” といい、
            それほどあざやかでない くすんだ黄色みは “陰黄” といいます。」
 先生        「次。診断して! 」
 チャングム    「患者の顔が青いので、癇性・痛症・汚血・引きつけ が考えられます。
            この患者は、鼻と眉の間と唇のまわりが青く、これは気と血液の流れが正常でなく、
            風邪〔かぜ〕や脳卒中〔そっちゅう〕の前兆だと思います。」


◎  五 色 診  

    五行/臓腑/色の相生・相剋 関係図 

        ─ 図略 ─


◆ “色に出る” → 色=顔色
    ・・・ 漢方・中医で重視 (『論語』にもよく登場しています)

ex. 
 ・ 木性:肝臓・胆嚢 =  青  : 良くても悪くても「あおみ」
      知力・若々しく健康的な青み VS 青白い・青びょうたん
      (血の気がひいて顔色が悪いこと/= pale  )  
      cf.【若々しい青年時代 + 季節の春 → 「青春」 】 

 ・ 火性:心臓・小腸 =  : 心臓(循環器系)、血圧。「あかみ」
      快い・きれいな赤み・ピンク、紅潮(顔・頬に血がのぼって赤味をおびること)、
      ほんのり桜色 VS 不快な赤み、赤ら顔、赤黒い 

      cf.(「何かこう、顴骨〔かんこつ/=頬骨〕なんかに
       不自然にポーッと赤みがでてくると、だいたい心臓病患者が多いね。」)

 ・ 土性:脾臓・ 胃 =  黄  : 「きみ」・「きいろみ」
      あざやかな黄色・“陽黄” VS くすんだ黄色みは “陰黄” 、黄疸〔おうだん〕

 ・ 金性:肺臓・大腸 =   : 健康的な「白さ」 と不健康な「白さ」 cf.「白」=「素」
      「色の白いのは七難隠す」、生き生きとした白、肺病の婦人に美人が多い  
                           VS  生気のない白・「白っちゃける」

 ・ 水性:腎臓・膀胱 =  : 健康的な「黒さ」 と不健康な「黒さ」 cf.「黒」=「玄」
      小麦色の肌、赤銅色〔しゃくどういろ〕の肌  VS  どす黒い肌色、うっ血・汚血



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むかしの中国から学ぶ 第4講 「五行〔ごぎょう〕(中国医学)」 (その1)

●吹田市立博物館・講演 『 むかしの中国に学ぶ /【全6講】 』

【第4講】 §.「 五行〔ごぎょう〕 (中国医学) 」   (‘11.6.12 )


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《 §. 元〔はじめ〕に 》

 「むかしの中国の思想」の “みなもと” は、(儒学)易学の思想であり、
「陰陽」と「中」の思想
になります。

中国「戦国時代」ころから、しだいに発展・普及してまいりました。

やがて、この「陰陽」に「五行〔ごぎょう〕」の説が結び付き、
「陰陽五行思想」へと結実してまいります。

この思想が、しっかりと東洋思想のベースを作って行きます。

 「五行」といいますのは、すべて万物を【木・火・土・金〔ごん〕・水】という、
五つの要素で捉え類型だてるものです。

「5」 という数は、とりわけ、東洋においてはこの“五行〔ごぎょう〕思想”の「五」、
易の“生数”の「5」で神秘的にして重要な霊数です。

 一方、西洋では、むかしのギリシア思想以来、重要な霊数は「4」です。
西洋の「四元素説」 注) がすべてのベースとなっています。

西洋の「四元素説」 と東洋の「五行説」とは、
遥〔はる〕かむかしからよき対照をなしているのです。

 注) 土・水・空気・火 → 物質の4態 : 固体・液体・気体・プラズマ
     cf.プラズマ = 第4物質形態。宇宙の99.9%以上がプラズマ状態

    ○ 中華民国・(五色=五大民族)   (国旗 略)

    ○ 中華人民共和国・“五星紅旗”
      (五行と黄色、赤は共産主義)   (国旗 略)


《 1.(陰陽)五行思想とは何か? 》

A 陰陽(中)思想の再考・復権 

 “むかしの中国の思想=儒学/易学” の中心・ベースは、
要すれば、「陰・陽」と「中」です。

陰陽相対〔相待〕論については、
本講座 「第3講・陰陽相対(待)」 で詳しくみてまいりました。
  → http://blog.livedoor.jp/jugaku_net/archives/51304268.html


B 陰陽五行・相生相剋の説  ・・・ 相生/相剋/比和

○ 「これ(陰陽思想)はもとより西洋思想、西洋の学問が普及するとともに、
 保守、すなわち非科学的という考え方がだんだん通俗になって、
 五行思想というようなものは最も東洋独特の、
 非科学的通俗思想というふうにいわれてきたのでありますが、
 だんだん近世になり最近 注) になるにつれて、
 改めてこれは考察し直されて、陰陽五行説というものが
 非常にデリケートなものである、深遠なものであるということが、
 
いわゆる思想家とか哲学者とかいう者よりも
 科学者の中から起こってきておる
ということが、
 大変面白い事実であり
進歩です。」 
 (安岡正篤・『易と健康 下/易学と養心養生』 引用 )

注) 昭和38年の安岡先生の講演です。
   明治期に捨てられた陰陽思想が、(他の古き善き文化と共に)
   大東亜戦争後復活しつつあるということです。

1) 「五行」 と 「徳/ 臓・腑 /方/時/  /音/臭/味」 ・・・ 

    ( 一覧   ─ 略 ─ )


2) 相生〔そうしょう〕/相剋〔そうこく〕/比和〔ひわ〕 ・・・

    ( 関係図   ─ 略 ─ )


3) 「臓・腑」 の相生・相剋  ・・・ 

    ( 関係図   ─ 略 ─ )


ex. 肝胆砕く/肝胆相照らす/肝腎(心)要〔かなめ〕/
   腰ぬけ/腰砕け/ 見識 → 胆識



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