儒灯

【温故知新】儒学の普及に力を注いでおります真儒協会 会長、高根秀人年の個人ブログです。 『論語』、『易経』を中心に、経書の言葉を活学して紹介して参ります。 私個人の自由随筆、研究発表などのほか、真儒協会が毎月行っております定例講習についても掲載しております。

2014年04月

謹賀甲午年  その3

(こちらは、前のブログ記事の続きです。)

《 干支の易学的考察 / 【雷火豊☳☲】・【火天大有☲☰】卦 》

次に(やや専門的になりますが)、今年の干支を易の64卦になおして(翻訳して)
解釈・検討してみたいと思います。


昨年の干支、癸・巳は【水火既済】卦でした。

今年の「甲・午」は【雷火豊☳☲】卦、先天卦は【火天大有☲☰】となります。

【雷火豊】卦は、中天に輝く太陽、豊大に富むの意です。

先天卦の【火天大有】も太陽が天上に輝く象〔しょう・かたち〕で、
“大いに有〔たも〕つ”・豊かで盛運の意です。  ※(→資料参照のこと

【豊】卦大象伝には、「君子以て獄を折〔さだ〕め、刑を致す。」
(君子は、まず下卦の明徳・明知をもって〔訴訟の〕正邪曲直を正し裁定し、
上卦震の行動をもって罪有る者には刑罰を執行するのです。)とあります。

【大有】大象伝には、「順天休命」;
「君子以て悪を遏〔とど〕め善を揚げて、天の休〔おお〕いなる命に順う。」
(君子は、悪に対しては刑罰をもってこれを防ぎ止め、
善に対してこれを称〔たた〕え揚げ賞し登用するのです。

このようにして、 天の真に善にして美しい命に順うようにつとめるのです。
〔為政の道ばかりでなく、修身の道もまた然りです。〕)


≪参考資料:高根 「『易経』64卦奥義・要説版」 pp.46・15 引用≫

55. 豊 【雷火ほう】  は、

 ● 豊大に富む、人生のまっさかり

  ※ 「豐」の字義 : 豆の字は 神前に供物を捧げる器具、
    上部は 山に木がたくさん茂っている象で、山のようにお供えを盛っている形です

 ■ 卦象は下卦離火・上卦震雷。

  1)雷がとどろき、稲妻が光る象。 (音と光で豊大の極)

  2)十分に出来た女性(離の中女)が立派に出来上がった男性(震の長男)に寄り添った象。

  3)卦徳では、離は文(明徳・明知)、震は武(活動・行動)にて“文武両道”・盛大。

  ○ 大象伝 ;「雷電みな至るは豊なり。君子以て獄を折〔さだ〕め、刑を致す。」

     (雷鳴と電光が共に至るのが豊の卦象です。
     このように、君子は、まず下卦の明徳・明知をもって〔訴訟の〕正邪曲直を正し裁定し、
     上卦震の行動をもって罪有る者には刑罰を執行するのです。)


14. 大有 【火天たいゆう】  は、大いに有〔たも〕つ

                      3大上爻〔大有・大畜・漸〕、帰魂8卦

 ● 中天の太陽、天佑あり、順天休命 (大象)

  易は、陰を小 陽を大とする。大有は、陽を有つ意(=盛大)。
  (大いに有つと、大いなるものを有つの意)

  ・2爻:「大車以て載〔の〕す。」 ・・・ 
      A)ロールスロイスに財宝を山と積むように ── 。
      B)重荷を積んでゆくようにすれば ── 。 「積中不敗」(象伝)

       cf.「人の一生は、重荷を負うて遠き道を行くが如し。・・・ 」(徳川家康)

  ・上爻:「天よりこれを祐く。」 ・・・ 天の配剤、384爻中の最良

 ■ 下卦 乾天の上に、上卦 離火(=太陽)。 
   
  1)日、天上に輝く象。

  2)1陰 5陽卦 :5爻の1陰の天子は、大有の主爻。また、離の主爻
    陽位に陰爻あるは柔和な徳。離の明徳と中庸の徳を兼備し、正応・正比。
    他の 5陽の剛健な賢臣たちが随従している象。心を1つに集めている象。

   離の中爻の陰は、離の主爻であり中徳を持つ。
    なぞらえれば、離=炎 の中心は、虚にして暗く燃えていない、陰です

  ○ 大象伝 ;「火の天上に在るは大有なり。君子以て悪を遏〔とど〕め善を揚げて、
         天の休〔おお〕いなる命に順う。」

     (離火が、乾天の上にあるのが大有です。離の明知・明徳と乾の断行です。
     この象にのっとって、君子は、悪に対しては 刑罰をもってこれを防ぎ止め、
     善に対してこれを称〔たた〕え揚げ賞し登用するのです。
     このようにして、 天の真に善にして美しい命に順うようにつとめるのです
     〔為政の道ばかりでなく、修身の道もまた然りです。〕)


私、想いますに、平成の今わが国は、真の“豊かさ”とは何か?
“豊かな社会”とは何か?
 を省みる必要があります。

まず、一般にいわれている“経済的豊かさ”についても、
ほんとうに豊かな社会といえるのか疑問です。

例えば、(900兆円を超す)借金大国、少子(超)高齢社会の進展、
少子なのに父の収入だけでは生活できない、
ワーキングプアー・ニート・フリーターの増大、
(年間3万人を超す)自殺者、(経済的)格差社会 ・・・ etc. 

そして、何よりも“心の貧しい国”〔マリア・テレサ〕です。

例えば、拝金主義・利益至上主義・利己主義の蔓延、
道徳の忘却、思いやり(=“仁”・“恕”・“愛”・“慈悲”)のなさ、
いじめの日常化、親子・家庭関係の崩壊、教育の形骸・貧困化 ・・・ etc.  
─── こころ・精神の“豊かさ”の再生が確かに望まれています。


英語の“RICH/リッチ”にも、
(1) たんに“貨幣〔かね〕持ち”という意味と 
(2) “(精神的・智的)豊かさ”の二つの意味がありましたね。

(“POOR/プアー”にも同様に、(1)たんに“貨幣〔かね〕がない”という意味と 
 (2)“(精神的・智的)貧しさ”の二つの意味があります。)


易象〔えきしょう〕の【離・火
(【雷火豊☳☲】卦の【離・火】、【火天大有☲☰】卦の【離・火】)も、
明知・文化文明であると同時に
中身が(“陰”で)空虚・虚偽・見かけ倒しの二つの意味があります。

心しておきたいことだと想います。


( 以上 )


謹賀甲午年  その2

(こちらは、前のブログ記事の続きです。)

《 甲・午 & 四緑木性 の深意 》

 さて、今年の干支「甲・午」には、どのような深意があり、
どのように方向づけるとよいのでしょうか。


「甲〔きのえ〕」は、“はじまる”と読み、物事のはじめを表します

甲乙丙丁戊己庚辛壬癸〔こう・おつ・へい・てい・ぼ・き・こう・しん・じん・き〕という十干の最初です。

「甲」は、“よろい”・“かぶと”の意味で、
“かいわれ(かいわり)”、すなわち春になって草木の芽(=鱗芽)が
その殻〔から〕を破って頭を少し出したという象形文字です。

その芽がぐんぐんとのびると「申〔伸/のびる〕」です。

人事に適用すると、旧体制が破れて革新の動きがはじまるということになります。

革新の歩〔あゆみ〕を進めなければならないということです。


十二支の「午」は、上部が地表を表し、
下部「十」のヨコ「一」は陽気 タテ「1」は陰気で、
その陰気がまさに地表に出ようと下から突き上げている象形文字です。

ですから、“午は忤なり”で“そむく”・“さからう”という意味で、
対抗・抵抗するという意味をもっているのです


したがって、以上の2つが組み合わされる「甲・午」年は、
“改革により大躍進する(させるべき)年”です。

古い殻を破って革新的に歩〔あゆみ〕を進めようとすると、
内外からの妨害や抵抗があって思うように進展しないという苦労がつきまといます。

とりわけ政治は、内政外政ともに紛糾混乱が起こりやすいのです。

※(以上の干支の解説については、安岡正篤氏干支学によりました。
 『干支新話(安岡正篤先生講録)』・関西師友協会刊。pp.27・213、p.67 参照。)


ところで、私は今年で還暦を迎えます。

したがって、60年前の“甲・午”(昭和29年)年は、
私の生まれた年ということになります。

この年の日本史を一瞥〔いちべつ〕しておきたいと思います。


昭和29(1954)年、政府は教員の偏向教育を正すために、
公立学校教員の政治活動や政治教育を禁止する
“教育二法案”を国会に提出しました。

これに反対する日教組は一斉休暇闘争を行いました。

左翼・野党勢力は、思想偏向を強め、
国内の混乱・革命を求めてストライキを行い、これを煽〔あお〕りました。

(私は、いま教育者として在り、
日本の古き善き“教育・思想の再生”をライフワークとしています。
このような世情の昭和29年に生まれた因縁〔いんねん〕、
機妙なるものを感じています。)


政府は、このような状況下で、防衛庁(現・防衛省)の設置・
自衛隊の発足・新警察法の施行・治安・教育・国防などの正常化へと、
独立後の自主国家体制を着実に整えて行きました。


政界では、野党を巻き込み“日本民主党”が結成されました。

年末、吉田内閣は総辞職し鳩山一郎内閣が発足いたしました。

※(以上の昭和29年の時勢については、
関西師友協会「平成二六年今年の干支に思う」によりました。)


また次に、九性(星)気学で今年は「四緑〔しろく〕木性」にあたります。

陰陽五行思想で“陽”の「三碧〔さんぺき〕木性」に対して
“陰”の木性です。

大木・大樹に対する柔らかい木・植物です。


易の八卦でいえば【巽〔そん〕】が相当します。

【巽】は、“風/木”であり・伏入であり・命令であり・謙〔へりくだ〕りです

私は、“巽〔したが〕う”には二つの意味が考えられると思います。

1.下(一般ピープル)が上(政府・指導者)に従順にしたがうの意。 

2.上が下(世論・民意)に民主的にしたがうの意、です。


さて、四緑木性の年は、往来・交際・迷い・調うなど、
多彩な現象が現われるといわれています。

世の中に気慨が乏しく、従順・妥協の傾向があります。

その良い成果としては、柔軟性に富んで一応の成功をおさめるともいえます。

自然災害として、台風・雪・地すべりや交通機関の事故が
起こりやすいともいわれています。


《 午 → 馬 》

十二支・「午年」は、一般に「馬〔うま〕年」と言われ、
動物の“馬”に擬〔なぞら〕えられます。

私は今年(還暦ですから当然)“とし男”です。

午年生まれの人の数は、丙午〔ひのえうま〕年生まれ(の女性)を嫌うためか、
他の十二支生まれの人の数より少ないといわれています。

若干、他より貴重な存在なのでしょうか?! 

私が幼少の時分〔ころ〕は、(競走馬ではなく)材木などを運んでいた,
脚の太い逞〔たくま〕しい馬を、街中でもよく見かけていました。

私は、子どものころより、“馬年”の人は性格が優しいとか、
足が速いとか聞かされたことをよく覚えています。

尤〔もっと〕も、“優しい”はともかくとして“足が速い”は当たっていないようですが ・・・。


余事はさておき。

以下、馬にちなむ言葉や言い回しを少々研究してみました。


まず、馬の(毛の)色といえば、“アオ(毛)”は黒色のこと
“クリ(毛)”は茶(栗)色のことです。

フォスターの「草競馬」の歌詞(日本語訳)の中に
“アオ”と“クリ”は登場しますね。

また、“白馬”と書いて(白い馬でも)“あおうま”と読みます。

“あおうま〔青馬〕の節会〔せちえ〕”といって、
古〔むかし〕は黒馬だったからといいます。


中国古典の中で、馬の世界での英雄 ── 
名馬としてよく知られているものは、赤毛の「赤兎〔せきと〕(馬)」
葦毛〔あしげ;白い毛に黒色・濃褐色などのさし毛のあるもの〕の「騅〔すい〕」でしょう。

「赤兎(馬)」は、『三国志(演義)』に登場する駿馬で、
最初呂布〔りょふ〕、後名将・関羽〔かんう〕の愛馬となります。

「騅」は、司馬遷・『史記』に登場する駿馬で、
「四面楚歌」・「時利あらずして騅逝〔ゆ〕かず」  注6) 
で有名な項王(羽)の愛馬です。


わが国の慣用句では、「馬が合う」は、よく用いられています。

気が合うこと、意気投合することです。

「馬は馬ずれ」は、同類のものが集まりやすいこと、
似た者同士が集まることです。

易卦の【天火同人】ですね。

仲良く団結することを、言葉から学びたいものです。

また、「馬のはなむけ」・「馬の鼻をたてなおす」があります。

「馬〔むま〕のはなむけ」という古語は、餞別〔せんべつ〕や別れの宴の意味です。

「はなむけ」の語は現代でも祝辞や餞別の社交儀礼の意味で使われていますね。

由来は、旅立ちの時、馬の首を行こうとする方に向けたことによります。 注5) 

リーダー〔指導者〕による方向づけ、という意味で古語に学びたいと想いました。


注5)
「馬〔むま〕のはなむけ」は、本来旅行の出発にあたり、
旅の安全を祈って旅立つ人の乗る馬の鼻面〔はなずら〕を
その旅先の方向へ向けてやったというのが語源です。

cf.「船路〔ふなじ〕なれど、むまのはなむけす」(『土佐日記』・門出)


注6)
「有美人、名虞。常幸従。 駿馬、名騅。常騎之。 於是、項王乃悲歌?慨、自為詩曰、
『 力抜山兮気蓋世  時不利兮騅不逝  騅不逝兮可奈-何  虞兮虞兮奈若何 』」

(司馬遷・『史記』項羽本紀/「四面楚歌」)



《 干支の易学的考察 / 【雷火豊  】・【火天大有  】卦 》

 次に(やや専門的になりますが)、今年の干支を易の64卦になおして(翻訳して)
解釈・検討してみたいと思います。・・・



※ この続きは、次の記事に掲載いたします。


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