(こちらは、前のブログ記事の続きです。)
《 干支の易学的考察 / 【雷火豊☳☲】・【火天大有☲☰】卦 》
次に(やや専門的になりますが)、今年の干支を易の64卦になおして(翻訳して)
解釈・検討してみたいと思います。
昨年の干支、癸・巳は【水火既済】卦でした。
今年の「甲・午」は【雷火豊☳☲】卦、先天卦は【火天大有☲☰】となります。
【雷火豊】卦は、中天に輝く太陽、豊大に富むの意です。
先天卦の【火天大有】も太陽が天上に輝く象〔しょう・かたち〕で、
“大いに有〔たも〕つ”・豊かで盛運の意です。 ※(→資料参照のこと)
【豊】卦大象伝には、「君子以て獄を折〔さだ〕め、刑を致す。」
(君子は、まず下卦の明徳・明知をもって〔訴訟の〕正邪曲直を正し裁定し、
上卦震の行動をもって罪有る者には刑罰を執行するのです。)とあります。
【大有】大象伝には、「順天休命」;
「君子以て悪を遏〔とど〕め善を揚げて、天の休〔おお〕いなる命に順う。」
(君子は、悪に対しては刑罰をもってこれを防ぎ止め、
善に対してこれを称〔たた〕え揚げ賞し登用するのです。
このようにして、※ 天の真に善にして美しい命に順うようにつとめるのです。
〔為政の道ばかりでなく、修身の道もまた然りです。〕)
≪参考資料:高根 「『易経』64卦奥義・要説版」 pp.46・15 引用≫
55. 豊 【雷火ほう】 は、大。
● 豊大に富む、人生のまっさかり
※ 「豐」の字義 : 豆の字は 神前に供物を捧げる器具、
上部は 山に木がたくさん茂っている象で、山のようにお供えを盛っている形です
■ 卦象は下卦離火・上卦震雷。
1)雷がとどろき、稲妻が光る象。 (音と光で豊大の極)
2)十分に出来た女性(離の中女)が立派に出来上がった男性(震の長男)に寄り添った象。
3)卦徳では、離は文(明徳・明知)、震は武(活動・行動)にて“文武両道”・盛大。
○ 大象伝 ;「雷電みな至るは豊なり。君子以て獄を折〔さだ〕め、刑を致す。」
(雷鳴と電光が共に至るのが豊の卦象です。
このように、君子は、まず下卦の明徳・明知をもって〔訴訟の〕正邪曲直を正し裁定し、
上卦震の行動をもって罪有る者には刑罰を執行するのです。)
14. 大有 【火天たいゆう】 は、大いに有〔たも〕つ。
3大上爻〔大有・大畜・漸〕、帰魂8卦
● 中天の太陽、天佑あり、※「順天休命」 (大象)
易は、陰を小 陽を大とする。大有は、陽を有つ意(=盛大)。
(大いに有つと、大いなるものを有つの意)
・2爻:「大車以て載〔の〕す。」 ・・・
A)ロールスロイスに財宝を山と積むように ── 。
B)重荷を積んでゆくようにすれば ── 。 「積中不敗」(象伝)
cf.「人の一生は、重荷を負うて遠き道を行くが如し。・・・ 」(徳川家康)
・上爻:「天よりこれを祐く。」 ・・・ 天の配剤、384爻中の最良
■ 下卦 乾天の上に、上卦 離火(=太陽)。
1)日、天上に輝く象。
2)1陰 5陽卦 :5爻の1陰の天子は、大有の主爻。また、離の主爻。
陽位に陰爻あるは柔和な徳。離の明徳と中庸の徳を兼備し、正応・正比。
他の 5陽の剛健な賢臣たちが随従している象。心を1つに集めている象。
※ 離の中爻の陰は、離の主爻であり中徳を持つ。
なぞらえれば、離=炎 の中心は、虚にして暗く燃えていない、陰です。
○ 大象伝 ;「火の天上に在るは大有なり。君子以て悪を遏〔とど〕め善を揚げて、
天の休〔おお〕いなる命に順う。」
(離火が、乾天の上にあるのが大有です。離の明知・明徳と乾の断行です。
この象にのっとって、君子は、悪に対しては 刑罰をもってこれを防ぎ止め、
善に対してこれを称〔たた〕え揚げ賞し登用するのです。
このようにして、※ 天の真に善にして美しい命に順うようにつとめるのです。
〔為政の道ばかりでなく、修身の道もまた然りです。〕)
私、想いますに、平成の今わが国は、真の“豊かさ”とは何か?
“豊かな社会”とは何か? を省みる必要があります。
まず、一般にいわれている“経済的豊かさ”についても、
ほんとうに豊かな社会といえるのか疑問です。
例えば、(900兆円を超す)借金大国、少子(超)高齢社会の進展、
少子なのに父の収入だけでは生活できない、
ワーキングプアー・ニート・フリーターの増大、
(年間3万人を超す)自殺者、(経済的)格差社会 ・・・ etc.
そして、何よりも“心の貧しい国”〔マリア・テレサ〕です。
例えば、拝金主義・利益至上主義・利己主義の蔓延、
道徳の忘却、思いやり(=“仁”・“恕”・“愛”・“慈悲”)のなさ、
いじめの日常化、親子・家庭関係の崩壊、教育の形骸・貧困化 ・・・ etc.
─── こころ・精神の“豊かさ”の再生が確かに望まれています。
英語の“RICH/リッチ”にも、
(1) たんに“貨幣〔かね〕持ち”という意味と
(2) “(精神的・智的)豊かさ”の二つの意味がありましたね。
(“POOR/プアー”にも同様に、(1)たんに“貨幣〔かね〕がない”という意味と
(2)“(精神的・智的)貧しさ”の二つの意味があります。)
易象〔えきしょう〕の【離・火☲】
(【雷火豊☳☲】卦の【離・火☲】、【火天大有☲☰】卦の【離・火☲】)も、
明知・文化文明であると同時に
中身が(“陰”で)空虚・虚偽・見かけ倒しの二つの意味があります。
心しておきたいことだと想います。
( 以上 )