これからの時勢 の易学的スケッチ
――― 「易経」 64 卦の活学応用 ―――
その時代を正しく捉え、未来を展望することは とても難しいことです。
“機” を観て、“兆し” を知り、“風〔ふう・かぜ〕” を読む、
これが 君子・賢人、リーダー・エリート〔指導者〕の面目でしょう。
東洋の英知、儒学の源流思想が “易学” です。
生々、円通自在の易64卦に なぞらえて、これからの時勢をスケッチしてみたいと思います。
2003年 5月に、「2003年・これからの時勢の易学的スケッチ」と題して、
大阪において特別講義として講演したものです。
21世紀初頭の現在と近未来の日本社会を、「易経」 64卦に なぞらえて概観したものです。
「易経」・易卦の活学・応用(“易工学”とでも称せましょうか?)への試みです。
不充分な考察ですが、近未来ビジョンへの“よすが”とはなると思います。
なお、現在2009年の視点から、注)として若干 加筆いたしました。
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◆◇◆ 「 2003年 ・ これからの時勢の易学的スケッチ 」 レジュメ ◆◇◆
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1.“カラーの時代”
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・ 「離火」 【離為火・りいか】 (離は文化文明、視覚の重要性、第六感)
● 八卦(小成卦) 「離」 ―― カラーセラピー ・光と照明の時代。
八卦 「震」 ―― サウンドセラピー 、cf.「セロ弾きのゴーシュ」。
八卦 「巽」 ―― アロマセラピー。 リラクゼーション、癒しの時代。
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2.“こころの時代 ”
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・ 「頤」 【山雷頤・さんらいい】 (養う、心身を養う、似離〔にせり〕、空しい)
・ 「中孚」 【風沢中孚・ふうたくちゅうふ】 (大離、まこと)
※ 精神性3卦 ・・・・ 高所をあおぎみる 【風地観・ふうちかん】/
子供にかえる【天雷无妄・てんらいむもう】/
解脱〔げだつ〕達観の 【天山遯・てんざんとん】
(【地火明夷・ちかめいい】は 地中に追いやられ「遯」は高地にいる)
● RICH と POOR。 「衣食足りて礼節を知る」 礼節 = 文化(心を耕すもの)。
生活の質重視〔QOL〕 の時代。 ロボット犬 「アイボ」、鉄腕アトム誕生 2003.4,7 。
注) 医療は発展、寿命は延び、精神はすさんでいる現代社会。
養心・養生を考え直す時期 (cf,貝原 益軒 『養生訓』)
「衣食たりて礼節を知らしめる」、日本の戦後は“モノで栄えココロで滅ぶ”
心の【山水蒙・さんすいもう】の時代、心の蒙〔くら〕きを徳の光で 啓〔てら〕す
――― 照隅啓蒙〔しょうぐうけいもう〕( 真儒協会 )
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3.“個(人の都合)が闊歩〔かっぽ〕する時代”
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・ 「旅」 【火山旅・かざんりょ】 (孤独な旅人)
● 根薄き 浅薄民主主義と個人主義、ジコチュウ。 20世紀のツケ・赤字大国。 リーダーの不在。
『坂の上の雲』(司馬遼太郎) = 日本人の古き良き精神とその時代を描く。
注) 今年(2009)秋より、NHK で「坂の上の雲」が放映されます。
ちなみに、私の郷里は愛媛です。愛媛 松山出身の3人、秋山兄弟と正岡子規が主人公です。
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4.“高齢者の時代”
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・ 「賁」 【山火賁・さんかひ】 (晩節をかざる、人生の たそがれ? 【山風蠱・さんぷうこ】)
・ 「家人」 【風火家人・ふうかかじん】 (在宅介護、バリアフリーリフォーム)
※ たかね流 日の卦 (人生の段階〔ライフエイジ〕) ・・・・・ 朝日・若年の【地風升・ちふうしょう】/
真上・中壮年の【火地晋・かちしん】/ 晩年の夕日の美しさ 【山火賁・さんかひ】/
暗黒時代の【地火明夷・ちかめいい】/中天の太陽【火天大有・かてんたいゆう】
● 少子高齢社会の進展。 ユニバーサルデザイン、バリアフリー。 QOL 。
高齢者とそのボランティア活動。 精神世界の重要さ。
「高い席にいる人は金を出せ、安い席にいる人は 拍手をおくれ。」。
経済的基盤に支えられた福祉・文化国家の必要性
★ 参考 ―― “ かなりや ” ( 1918・大正7・西条 八十 )
「 唄を忘れた 金絲雀〔かなりや〕は
後〔うしろ〕の山に 棄てましょうか いえいえそれはなりませぬ
唄を忘れた 金絲雀〔かなりや〕は
背戸の小藪に 埋〔い〕けましょうか( 埋めましょうか )
いえいえそれも(は)なりませぬ
唄を忘れた 金絲雀〔かなりや〕は
柳の鞭で ぶちましょか いえいえそれはかわいそう
唄を忘れた 金絲雀〔かなりや〕は
象牙の船に 銀の櫂〔かい〕
月夜の海に 浮かべれば 忘れた唄をおもいだす 」
※ 唄を忘れたカナリヤ = 高齢者、在宅介護のあり方を考えさせられます。
注) 現在、介護保険制度の問題、社会保険庁のズサンさ、後期高齢者「冷遇」などが問われています。
日本の、少子高齢社会は着実に 進展し続けています。
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5.“中国の時代”
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● 米と日本との交流(ぺりー来航より)150年〔‘09現在 156年〕目の節目。
5人に一人は中国人、日本人の出生率 1.2人。 SARS。 中国思想・文化の再認識の必要
注) 2005年には(事実上)孔子を中国政府が公認、2008年8月には北京オリンピック開催、
そして今 中国の子供たちは『論語』を学んでいます。
―― 世界はアメリカと中国の時代を迎えつつあります。
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6. おわりに
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● 易の本質は変化。 時代の変化、変化の思想。 アドバイザー(精神面)、易道家の意義。
未来への“兆し”を読む。 「一粒の麦、地に落ちて死なずば・・・・」 (『聖書』)
注) 2009年1月にはオバマ新アメリカ大統領が誕生し、また中国が急速に台頭する世界情勢の中で、
日米関係も変化・節目の時期に来ています。その展望をもてぬ人々が多すぎます。
―― 日本(人)は、これから どこへ行こうとしているのでしょうか?
変わる(「変易」)時勢の中で、変わらないもの「不易」の価値を大切にしなければなりません。
“松に古今の色なし”、それは日本人の「徳」です。よき儒学精神のルネサンスが要請されます。
○ この講演から、はや 6年ほど経ちました。“兆し”は時々刻々変化しています。
近い機会に、改めて、これからの時勢を 易学的にスケッチしてご紹介したいと思っています。
※ 講演の中に登場する 各卦の内容につきましては、資料として 拙著 「易経 64卦解説奥義 の抜粋をつけておきました。 このレジュメをご覧の皆様は、真儒“定例講習” 第14・15回(上経)、第18・19回(下経)の「易経」を ご覧頂ければ、概略が載っております。
(第十八回 定例講習)
→ http://blog.livedoor.jp/jugaku_net/archives/50692222.html
(第十九回 定例講習)
→ http://blog.livedoor.jp/jugaku_net/archives/50699504.html
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