第二十一回 定例講習 (2009年7月)

孝経    ( 広要道章 第12 − 《1》 )

  “ 子曰く、民に親愛を教うるは、孝より善きは莫〔な〕し。民に礼順を教うるは、悌〔てい〕より善きは莫し。風〔ふう〕を移し俗を易〔か〕うるは、楽〔がく〕より善きは莫し。”
 
《大意》 孔先生がおっしゃいました。「人々に親愛の情〔みなが親しみ愛すること〕を教えるには、“孝道”を(自ら実践して)教える以上のものはない。また、長上の者に対する礼儀正しく従順なことを教えるには、“悌道”を教える程よいものはない。人々のよくない風俗(ならわし)を変え改め、善良なものとしてゆくには、“音楽(を通じての教化)”が最もよいのだよ。」

要道正しい道 について述べる、明らかにする章。
この章からの3つの章は、第1章・開宗明義章での聖人の教えのキーワードを、詳しく解説したものです。この章は「要道」について。

・ 「移風易俗」=「風」は風習、もとは上からの教化の意。
  「俗」はならわし。「易」は交換するの意。
・ 「楽」=娯楽用の音楽ではなく、儀式の際の“礼楽”との意。
  孔子は「音楽を通じての教化」を重視しました

○ 「君子の徳は風なり。小人の徳は草なり。」(『論語』・顔淵第12)
   “風をおこすものは吏と師”  
             ・・・・・「風」は、風化・教化・感化の教育の意

論語   ( 孔子の弟子たち ―― 顔回 〔1〕 )

顔子・顔回。 は名、 は字。 孔門随一の俊才・偉才です。
(後、「復聖」と尊称されます。が、惜しくも早世(32か42歳)。
20代の頃から髪がまっ白であったといわれています。 
顔回は、孔子が自ら後継ぎと託した偉大なる愛弟子〔まなでし〕だったのです。
  ※ 孔子との年齢差 「30」才

1) あたかも愚物の如し(「如愚」) ・・・孔子の顔回への初印象。

・ 「子曰く、吾回と言うこと終日、違〔たが〕わざること愚の如し。
退いて其の私〔わたくし/し〕を省みれば、亦以て発するに足れり。回や愚ならず。」(為政第2−9)

《大意》
わしは、回と一日中(学問上の)話をしたが、(全く従順で)意見の相違も反問することもなく、まるで何もわからない愚か者のようであった。だが、回が退出した後に、くつろいだ私生活を観てみると、わしが話し教えた道理をしっかりと行いの上に発揮(活か)することができておる。〔大いに啓発するに足るものがある。〕
回は愚かではないよ。


2) 「箪食瓢飲〔たんし ひょういん〕」 ・・・孔子の顔回賛美

・ 「子曰く、賢なるかな回や。一箪〔いったん〕の食〔し〕、一瓢〔いっぴょう〕の飲〔いん〕、陋巷〔ろうこう〕に在り。人は其の憂いに堪えず。回や其の楽しみを改めず。賢なるかな回や。」 (擁也第6−11)

《大意》
回は、ほんとうにえらい〔賢い〕ものだね。食べるものといったら竹のわりご一杯のごはん、飲むものといったら ひさご一杯の飲み物、住む所といったらむさくるしい狭い路地暮らしだ。普通の者ならそんな貧乏の憂い〔辛さ〕にたえられないだろうに。回は、そんな生活の中でも、心に真の道を楽しむことを変えようとしない。〔この修養の高さはとうてい他人の及ぶところではないね。〕まったくえらい〔賢い〕ものだね、回は!

※ 「賢哉回也」 ・・・回也賢哉 というところを語の位置を変えています(倒置)。
              孔子が大いに賛美していることがうかがえます。
   「食」 ・・・動詞の場合は「ショク」、名詞の場合は「シ」と読みます

cf. 「シカゴ大学にクリールという教授がおる。 ・・・・・・ 然しこの人には顔回がわからない。『顔回はあまりにも貧乏であったために、自ずから万事控え目になり、引っ込み思案になったのだ』と言い、最後には『少し馬鹿だったのではなかろうか』とまで疑うておるのでありますが、とんだ誤解です。一寸〔ちょっと〕以外な浅解です。」 (安岡正篤・『論語に学ぶ』)


3) “中庸”の徳

「子曰く、回の人と為りや、中庸を択〔えら〕び、一善を得れば、則ち拳拳服膺〔けんけんふくよう〕して之を失わず。」(『中庸』・第8章) : (孔子が言われた。「顔回の人柄は、過不及をわきまえて中庸の道を選び、もし一善を得れば、謹しみ謹しんで、これを実践して失わないように努めた)と。〔伊譽田覺・『仮名中庸』〕)

cf.「朕、爾〔なんじ〕臣民ト倶〔とも〕ニ拳拳服膺シテ咸〔みな〕其徳ヲ一〔いつ〕ニセンコトヲ庶幾〔こいねが〕フ。」(「教育勅語」) : (わたくしも国民の皆さんと共に、父祖の教えを胸に抱いて、立派な徳性を高めるように、心から願い誓うものであります。 〔杉浦重剛・『教育勅語』〕)

「恭倹〔きょうけん〕己レヲ持シ」 : (自分の言動を慎しみ) ――
‘ bear yourselves in modesty and moderation
恭・・・ Modesty (慎み深いこと・謙遜)
倹・・・ Moderation (節約・中庸・適度) 
     ※中庸=the [golden] mean

本学   ( 『中庸』 3 と 易筮演習 )

A. 『中庸』 1&2 のおさらい  / ・ 『論語』 顔回〔1〕− 3)“中庸”の徳

B. 易筮演習 ――― 時事的テーマで今まで講じた「象」を中心とする解釈の演習。私が代表で立筮(筮竹・略筮法)し、皆で自分の立筮として解釈しました。

イ) 易的 (占的) :
  「 今回の総選挙で、民主党が(自民党に対して)勝つか否か 」 
                        / ‘09.7.26. PM.2:45〜 
※ 略筮法の易的は、YES・NO で答えられる形に絞り込むよう工夫することが大切です。今回は、NO.1の自民党・NO.2の民主党、2大政党に絞り両者の(政権獲得)勝負占としました。現状勢力を基準に、第一党(政権獲得)になれるかどうかが勝つか負けるかということです。
主語をどちらにするかによって、判断は逆になります。今回は、受講者の意向で「民主党が・・・」という形にしました。

ロ) 得卦 :
  「 地雷復 5爻 にて、水雷屯に之〔ゆ〕く 」
※ 筮竹残本数、1回目−4本 ・2回目−0(8)本 ・3回目−5本でした。
    (サイコロなら、8面体赤4・黒2,6面体5の目ということです)
    之卦は、5爻の陰・陽を逆転させます。

ハ) (象による) 解釈例 〔 by 高根、下記解説要点テキスト参照のこと〕

a.得卦 「復」 ・ 5爻   ( cf.易経64卦解説奥義 要説版 P.24 )

・ 「復」 ・・・ “一陽来復(福)”、冬からやっと春の兆し、1陽5陰(初爻・陽) =
民主党勝利し、長い野党の時代を脱しやっと政権を獲ります。が、(生じたばかりで極めて軟弱・微弱。リーダー〔指導者〕のいない民衆(坤地)の中に1陽のリーダーが戻ってきました。新しい局面が拓けていきます。しかし、このリーダーはまだ弱いものです。

・ 5爻(陰) ・・・ 5爻の尊位にて中徳を持っています。柔徳・中徳の(政党)党首総理〔鳩山氏〕です。“陰”の党首・総理であり、本来5爻は陽の位であるのに陰が位しています。そして、「比」してなく(4爻・上爻の身近・身内同士からの応援なく)、「応」じてなく(2爻の遠方・野党同士?の応援もなく)他の力が借りられない弱さをも持っています。


 ※  ―― 要説版テキスト一部ピックアップ (P.24)

24. 復 【地雷ふく】  は、かえる・くり返す

12消長卦 (12月)    (陰暦11月・冬至の卦)

 ● スプリング・ハズ・カム〔 Spring has come./春は来(き)ぬ=春が来た、今は春です〕
一陽来復(福)”・・・冬からやっと春の兆し、出直し、   ルネサンス
明治の維新 ・・・幕府の引退、近代日本の世界史上への躍進

・ 「復はそれ天地の心を見るか。」(彖伝)・・・陰陽の消長・循環、偉大なる天地自然の摂理・営みに対する畏敬の念! ※ 人間社会においてもあるでしょうか?

・ “復は反〔もど〕るなり”(雑卦伝) 
・ “剥すること上に窮まれば下に反〔そ〕る。 故にこれを受くるに復を以てす。”(序卦伝) ・・・ 賁,剥すれば一転して復(“文芸復興)”

■ 下卦 震雷、上卦 坤地。(「剥」の綜卦)

1) “一陽来復”:12消長卦、1陽5陰卦。「剥」の1陽が剥がれ尽くされ、坤地となった大地に1陽が戻ってきた象。

2) リーダー〔指導者〕のいない民衆(坤地)の中に、1陽のリーダー・君子が戻ってきた。復活、新しい局面が拓けていく。

3) “地を掘って宝を得るの象”(白蛾) ・・・地は外卦坤、宝は内卦震の象。掘るは震の動から。


b.之 卦 「屯」    ( cf.同上書 P.7 )

近未来、選挙後(9月〜)の民主党政権のスタートの状況と思えばよいでしょう。
創造・生みの苦しみです。 滞り行きづまることが予想されます。
・ 下卦の震は、動き進もうとする若芽=民主党です。上卦の坎は、坎倹・悩みで、日本の現状の厳しさ、民主党の政権担当能力・人材の悩み、また野に下った自民党勢力かもしれません。
大象伝 ―― 民主党(・党首)は、「創始の大切なことを悟り、天下国家の経綸を行う」ことが肝要です。


※  ―― 要説版テキスト一部ピックアップ (P.7)

3.屯 【水雷ちゅん】  は、なやみ、くるしむ

4 難卦〔坎水・蹇・困・屯〕、「屯難」

● 創造・生みの苦しみ、「駐屯」・「屯〔たむろ〕」、滞り行きづまる、入門は吉、
赤ん坊をそっと(育てる)・幼児教育 ・・・ ※ 父母(乾坤)の間に震(巽)の長子が生まれた時 

・ 「天造草昧〔そうまい〕」(彖辞) ・・・ (草が生い茂っているように)天の時運がまだ明らかでない〔これから開かれようとする時〕 =天下草創・暗黒の時代
・ 「屯とは盈〔み〕つるなり。屯とは物の始めて生ずるなり。」(序卦伝) 
     ・・・ ex. “明治維新”〔幕末から明治政府設立までの動乱・混乱期〕

cf.(通常の日座空亡に対し) 易学空亡 = 屯・蒙の2ヶ月、その後有卦〔うけ〕の3ヶ月

■ 「屯」の字義 :「一」は、地を現わし、下の草木が芽生え地上に出ようとして曲がっている形、から創生の悩みを意味している。
上卦の坎は、坎険・水・川・寒・暗。下卦の震は、動・進む・伸びる・若芽・蕾〔つぼみ〕。

すなわち、
   1)進もうとして前に川があり、 
   2)草木の若芽が伸びようとして、寒気で伸び艱〔なや〕んでいる象。
   3)水=雲 と 雷=雨で雷鳴、雷鳴り雲雨を起こさん。

○ 大象伝 ;「雲雷は屯なり。君子以て経綸す。」
(上卦に坎の〔いまだ雨とならぬ状態の〕雲があり、下卦に震の雷がある。天上に雷鳴り響き、今にも雨が降ろうとする象です。 この天下創草の時、君子は、この象にのっとって、創始の大切なことを悟り、天下国家の経綸〔径は機織の縦糸、綸は横糸から、整える意。転じて平安に治政すること〕を行なうのです。)


c.賓 卦 「剥」    ( cf.同上書 P.23 )

・ 2者の勝負占ですから、相手から見た状況が重要です。相手から見る(自分の立ち位置を変える)代わりに、算木を180度回せば同様の卦が得られます。

・ 自民党の側からすれば、「山地剥」(復とペアの卦)。身心のはがれ、“退勢の極致” ※ 賁が破るといった方向にいった時

・ 12消長卦・1陽5陰 = ■部参照のこと ・・→ 自民党惨敗・崩壊・離反者造反者多し(民主党に合体もする)。


 ※  ―― 要説版テキスト一部ピックアップ (P.23)

23. 剥 【山地はく】  は、はげる・みだれる

準4難卦、12消長卦 (10月)

● 身心のはがれ(「傷官〔しょうかん〕」・・・身心のメス)、“退勢の極致”、ガン・かいよう注意
    ※ 賁が破るといった方向にいった時

■ 上卦 艮山、下卦 坤地。

1) 12消長卦にて、陰が上昇し上爻に1陽だけが踏み止まって残っている象。
下の5陰がせまり、その1陽も剥がれ落とされようとしている象。累卵の危機。

2) “旧を去って新生ずるの意”(白蛾) ・・・12消長卦にて、上爻の1陽は剥がされ尽くされてしまうが、やがて再び1陽生じ“1陽来復”の「地雷復」となる。

3) 陰の小人(達)が勢いと数を増してきて、君子を追い出し、残るはただ一人の君子のみ。

4) 高い山(艮)が崩れて、地(坤)に附着した象。

5) 地に山ある象。坤は陰柔薄弱、風雨により土台が剥落して艮山不安定、崩壊の成り行きを示す。

6) 1陽5陰卦、1陽崩壊寸前にて男性苦労の象。

○ 大象伝 ;「山の地に附くは剥なり。上は以て下を厚くし宅を安んず。」
(艮山が坤地に付いているのが剥の象です。これは、山が崩れて平地になろうとしているのは、地盤が薄くて不安定だからです。地盤が堅固であれば、山もまた安泰なはずです。
君子たるものは、この象にのっとって、上の立場にあるものは、天下万民の生活に厚く恵みを施し豊かにするように努め、そうすることで、自分の居る地位をも安泰にするよう心がけなければなりません。)

d.互 卦 「坤地」    ( cf.同上書 P.5〜 )

・ 2・3・4爻で下卦、3・4・5爻で上卦をつくります。含んでいるもの、蔵しているもの、可能性などと考えればよいでしょう。

・ 全陰、陰の極み、牝牛横たわり草を喰むイメージ、“柔順の貞”・・・。

用六 ・・・ 党首・要人は、「柔順な姿勢を失わず坤徳を永久に正しく貞正に堅持することで利ろしきを得る」。


 ※  ―― 要説版テキスト一部ピックアップ (P.5〜)

2.坤 【こん為地】  は、柔・大地・女性

全陰 ・・・ 統一含蓄の原則、8重卦(純卦)、女性・純陰(老陰)、12消長卦 (11月)

● 母なる大地、牝牛横たわり草を喰むイメージ、“柔順の貞”・“女性の貞”、

・ 「坤はいにる。牝馬〔ひんば/めすうま〕の貞に利し。」(卦辞)、厚徳戴物〔こうとくたいぶつ〕」(大象)、 「積善の家には必ず余慶あり。積不善の家にはかならず余殃〔よおう〕あり。」(文言伝)

・ 初爻辞 「霜を履みて堅氷〔けんぴょう〕至る。」 ・・・陰の気から霜、放置すればやがて堅固な氷。

・ 5爻辞 「黄裳〔こうしょう〕、元吉なり。」 ・・・黄色は五行で土、インペリアルカラー〔高貴な色〕、すなわち坤徳。裳は下着・スカート、謙遜な坤徳の意。

・ 上爻辞 「龍野に戦う。その血玄黄〔げんこう〕なり。」 ・・・陰の勢い極限に達し、陽(真)の龍と陰(偽)の双龍 戦い傷つき血を流している。

「玄」は黒で天=乾の雄龍の血の色、「黄」は土の色で雌龍の血の色、“天地玄黄”(「千字文〔せんじもん〕」)。

※ 爻変じて(之卦)「山地剥」、坤徳を失い自分自身の剥れを意味する。

■ 上卦・下卦とも坤、乾の天に対して一面の地。全て陰爻、乾の“剛健の徳”に対して“柔順の徳”、人事にとれば乾の天子・君子・大人・男性に対して、臣下・庶民・女性

○ 大象伝 ;「地勢は坤、君子以て徳を厚くし以てものを戴〔の/たい〕す。」
(大地の象は坤で、その形勢は柔順にして厚く万物を戴せています。この象にのっとって、君子は、坤徳をますます厚いものとして、万物・万民を包容するように努め徳を施すのです。)

◎ 用六 「永貞に利ろし」 ;陰の道〔臣下・妻の道〕は、柔順な姿勢を失わず坤徳を永久に正しく貞正に堅持することで利ろしきを得るのです。そうして、有終の美を飾る〔陰極まって陽となり、陽の大をもって終る〕ことができるのです。



☆ 今回は専ら象によって、現状を判断しました。算木をさまざまに変化させ、インスピレーションを得るのがコツです。

☆ 重要 : 以上は、現時点での判断です(投票日・投票終了後なら結果は決まっています)。 通俗“占い”や“アテもの”、ではありません。

総選挙告示日 18日、投票日 30日ですから、各政党・各候補が戦いの準備を始めている段階です。戦いはこれからです。状況・状勢は時々刻々動きます。

そして、勝利の傾向・兆しある側はそれをより確かなものに、また更なるよき拡大結果を目指します。逆に敗れる傾向・兆しのある側は、そうならないように現状を一新し、方策を講じなければなりません。更に言えば、選挙後の事々まで“遠慮〔遠くをおもんばかる〕”しなければなりません。―― 以上に、易学・易筮の意義も真面目もあることをお忘れなくなく。

付け加えますと、リーダー・指導者の立場にある人(政治家・政党関係者・ブレーンなど)は、「大象伝」の深意に学んでもらいたいものです。



易経    ( by 『易経』事始 Vol.2 ) & ( by 「十翼」 )

§.易の思想的基盤・背景 (東洋源流思想)  【 ―(2) 】

B. 天の思想 と 天人合一観 (大宇宙マクロコスムと小宇宙ミクロコスム)
   
● 中国思想・儒学思想の背景観念、 天=大=頂上

・ 形而上の概念、モノを作り出すはたらき、「造化」の根源、“声なき声、形なき形” を知る者とそうでない者
    「」〔しん〕 ・・・・ 不可思議で説明できぬものの意
                 天 = 宇宙 = 根源 = 神
            cf.「 0 」(ゼロ・レイ)の発見・認識、 「無物無尽蔵」(禅)

・ 敬天、上帝、天(天帝)の崇拝、ト〔ぼく〕占(亀ト)、天人一如〔てんじんいちにょ〕、
  天と空〔そら〕

・ 崇祖(祖先の霊を崇拝)、“礼”の尊重

太陽信仰 ・・・・ アジアの語源 asu 〔アズ〕 =日の出づるところ
 ―― ユーロープの語源 ereb 〔エレブ〕 =日のない日ざしの薄いところ“おてんとう様”、
 “天晴〔あっぱれ〕”、天照大御神 

ex. 天命・天国・天罰・天誅・天道・天寿・北京の「天壇」 
    「敬天愛人」(西郷隆盛)、「四知」(天知るー地知るー我知るーおまえ知る)
    「天地玄黄」(千字文) ・・→ 地黄玄黒

○ 「天行は健なり、君子以て自強して息〔や〕まず」(『易経』 乾為天・大象)
    ――― “龍(ドラゴン)天に舞う”

○ 「五十にして天命を知る」 孔子の “知命” (『論語』)

○ 「の我を亡ぼすにして戦いの罪にあらず・・・」 (『史記』・「四面楚歌」)

天賦人権論〔てんぷじんけんろん〕
   「は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず・・・」 
                             (福沢諭吉・『学問のすすめ』)

易性革命〔えきせいかくめい〕
   「天子の姓を易〔か〕え天命を革〔あらた〕める」 ・・・ 天命は天の徳によって革る
                                     革命思想・孟子

 ※ 研究 ――― 松下幸之助氏が説く “” (by 伊與田覺先生講義)
 
 ・ 書物によってではなく、自らによって(天によって)学んだ人
 ・ 「真真庵」の “根源さん” の社〔やしろ〕―(中には何も入っていない、無、空)
 ・ 人生は“運”(たまたま)、自分を存在させてくれるものは何か?
   “両親” ・・→ そのまた両親 ・・→ “人間始祖” ・・→ 人間はどこから?
   ――― “宇宙の根源” からその生み出すによって生み出された
   ―― 自然の理法(法則) = 宇宙万物のものを生成発展させる力
 ・ 天と交流し、宇宙根源の働き、天によって生かされていることを悟得した(覚った)
 ・ その感謝のきもちを “” の形で表した
 


 
§. 十 翼  ―― 十 翼〔じゅうよく〕 とは

・ 古代中国の学者達の手による、儒家の易(「易経」本文)についての10の解釈(解説・参考)書のこと。儒学の経典・経書となります。( “四書五経” )

・ 「易経」本文と十翼を合わせて経書・『易経』となります。( 五経の筆頭 )
占筮と思想・哲学の二面性を持つ“東洋の《奇書》”の誕生です。

・ 象辞を文王・周公の作とすることから、十翼を孔子の作とするのは当然の妙案ではありますが、非学的です。孔子及びその門下の数多が、永年にわったって著わしたと考えられます

・ 「伝」とは衍義〔えんぎ〕・解説の意です。                 (by 高根)

● 「易経」本文

A. 〔け・か(小成卦 ・ 64大成卦)、卦の文言が(彖〔たん〕もしくは)卦辞

 ex.「 乾は、元亨利貞〔げんこうりてい〕。 
        ※乾は 元〔おお〕いに亨〔とお〕る、貞〔ただ〕しきに利ろし。 」
    「 坤は、元亨利〔げんこうり〕、(※元いに亨る) 牝馬の貞に利ろし・・・」  

B. 爻〔こう〕(64×6=384の爻、初爻〜上爻、九〔きゅう=陽〕と六〔りく=陰〕)
      爻の文言が(象もしくは)爻辞

ex.【乾】 「初九、 潜龍〔せんりゅう〕なり、用うるなかれ。
          ・・・上九、 亢龍悔〔こうりゅう く〕いあり。」
   【坤】 「初六、 霜を履〔ふ〕みて堅氷〔けんぴょう〕至る。
          ・・・上六、 龍、野に戦う。その血玄黄〔げんこう〕。」

◎ 十 翼

1. 彖〔たん〕伝 (上・下経 2編)

・ 彖伝は、卦辞(彖辞)の意味を解釈したものです。すなわち、その卦名・卦象、成立の意義・特質・動静などを解釈しています。象伝とともに、最も古いものが現在に伝わっています。

ex. 「彖伝に曰く、大いなるかな乾元〔けんげん〕、万物資〔と〕りて始む。すなわ〔及〕ち天を統〔す〕ぶ。 雲行き雨施し、品物〔ひんぶつ〕形を流〔し〕く。大いに終始を明らかにし、六位〔りくい〕時に成る。時に六龍〔りくりゅう〕に乗り以て天を御す。 乾道変化しておのおの性命を正しくし、大和を保合するは、すなわ〔及〕ち利貞なり。庶物に首出〔しゅしつ〕して、万国ことごと〔咸〕く寧〔やす〕し。」 

2. 象〔しょう〕伝 (上・下)

・ 象伝には、「大象」と「小象」の 2つがあります。
大象は、64卦の各卦毎にあります。その卦(大成卦)の八卦(小成卦)からの構成を説いていて、政治的・道徳的教訓から“君子(リーダー・指導者)のあり方”を述べています。簡明にして、結語的。
小象は、卦辞に対する彖伝のようなもので、384爻の 爻辞を解釈して、各爻の意味・位置・他爻との関連を述べています。

ex. 「大象伝に曰く、天行は健、君子以て自強して息〔や〕まず。」
   「初九、 象に曰く、潜龍用いるなかれとは陽にして下に在ればなり。」
   「上九、 象に曰く、亢龍悔ありとは盈〔み〕つれば久しかるべからざるなり。」

たかね研究 : 老子にみる大象  ――  大象無形 ・ 道

大象を執らば、天下往かん。」(大いなる象〔かたち〕=「道」をしっかりと守れば、世の人々は心を寄せるようになります。) 〔『老子』 35章〕

大器晩成し、大声は声希〔かす〕かに、大象は形無し。」(大きな器は仕上がるのに時間がかかり、大きな声はかえって聞き取れず、大いなる象には形がないのです。) 〔『老子』 41章〕

 象〔かたち/すがた/しょう〕は形があってこそ象ですが、「大」には“無限大”の視点があり、大象は形として捉えられないものであるということ。

「無状の状、無物の象〔しょう〕」(すがたのないすがた、かたちのないかたち)
〔14章〕=「道」であるということ。

 

3. 繋辞伝 (上・下)                  cf. 「形而上・形而下」の語

・ 繋〔か〕けられた辞〔ことば〕(卦辞・爻辞)についての解説の意。易学の総論・概論、(私は)形而上学(哲学)として高められていると思われます。

ex. 「天は尊く地は卑〔いやし〕くして、乾坤定まる。卑高〔ひこう〕もって陳〔つら〕なりて貴賎位す。動静常ありて、剛柔断〔わか〕る。 ・・・・・ 」

4. 文言〔ぶんげん〕伝

・ 繋辞伝の各論的なもの。文はあや、飾るの意、言は卦爻の辞のこと。純陽・乾と純陰・坤を重視して詳細を述べたものとも言われています。が、(私は)現代に、乾・坤の2卦だけが伝わっていて、古くは全卦についてあったものだと思っています。

ex. 「 − 乾 − 文言に曰く、元は善の長なり。亨〔こう〕は嘉の会なり。利は義の和なり。貞は事の幹なり。 ・・・・・ 」

5. 説卦〔せっか〕伝

八卦(小成卦)の意義を説明しています。八卦の説明は、とりわけ 象で観るとき、易占上で重要です。この(64卦の)各論にあたるものが、大象といえます(現行易経で、「象に曰く」とあるもの)。
総論的。所々、四書の『大学』と共通の文言があります。

ex. 「昔者〔むかし〕聖人の易を作るや、神明に幽賛〔ゆうさん〕して蓍〔き〕を生ず。天を参〔さん〕にし地を両〔りょう〕にして数〔すう〕を倚〔よ〕す。 ・・・・・ 」

6.※ 序卦〔じょか〕伝    (※序卦・雑卦は占筮家の易説で、いくらか後期の作

・ 64卦全体の流れ・順序・概念などを説いています。上経:1乾・2坤〜29坎・30離、下経:31咸・32恒〜63既済・64未済 ――この順序・序列の意味を説いています。

ex. 「天地有りて然る後に万物生ず。天地の間に盈〔み〕つる者はただ万物なり。故に之を受くるに屯〔ちゅん〕を以てす。 ・・・・・・ 」

7.※ 雑卦〔ざっか〕伝

64卦各卦の Point/傾向を一言〔ひとこと〕で要約したものです。卦の順番はバラバラです。
ワンペアー/“対・つい”でまとめてあり、漢(唐)詩のような平明な短い言葉で表しています。リズム感にあふれ、全体が1つの“韻〔いん〕”をふんで流れていて、(私には)心地よいものがあります。

ex. 「乾は剛にして坤は柔なり。屯見〔ちゅん あら〕われて(而〔しか〕も)、その居を失わず。蒙は雑にして著〔あら〕わる。 ・・・・・・・ 」

                                          

「儒学に学ぶ」ホームページはこちら → http://jugaku.net/

 

にほんブログ村 哲学・思想ブログ 儒教・儒学へ
にほんブログ村