vol.2の続きです。


《 7 & 8 のペア 》

7. 師 【地水し】  は、戦い・いくさ

帰魂8卦

● 多衆(グループ)、“もろ”・もろもろ の意。戦争の軍師 ・・・ 「先生」の卦

■ ※ 師の字義は、へんは小さい丘・村邑、つくりは周〔めぐ〕るで丘や林をぐるりと囲むこと、そこから衆の意。「周」の制度では500人が旅、師が2500人。

・ “寡をもって衆を伏すの意”(白蛾)・・・2爻の1陽が、5陰を率いて戦場に赴く意。

・ 2爻は、不正位(陽にして陰位にいる)ですが、中徳をもっています。 5爻の天子と応じています。忠臣の象であり、大命を委任されている〔指揮君臨する〕象。

○ 大象伝 ;「地中に水あるは師なり。君子以て民を容れて衆を畜う。」
(坤地の中に、坎水が畜〔たくわ〕えられています。内に坎の悩みがあるともいえますが、坎水はいつか地表に出る勢いを蔵しているともいえます。〔1陽のエネルギーは2爻です〕 この象にのっとって、君子は、坤の大衆を“母なる大地”のように包み込み、〔一朝事ある時のために〕生活を安泰にして養うのです。)

8. 比 【水地ひ】  は、親しみ、輔〔たす〕ける。

帰魂8卦

● “比とは比〔した〕しむなり”(序卦伝)、 人との和・一面で反発派閥、“雨降って地固まる”、女難・房事過多

・ 「元永貞」・「後るる夫は凶」(卦辞) ・・・ 元いに永く貞固=不変に。
元・永・貞の3徳 :元は万民を愛す 仁の意、永は永く不変、貞は正しく固い 知の意。 / 形勢をみて後からのこのこやって来る者には注意。

cf. 「朋党比周」 ・・・好きな者同士、利害を同じくするものが組んで他を排斥すること

・ 「子曰く、君子は周して比せず。小人は比して周せず。」 (『論語』・為政第2)
    周す ・・・普遍で広く衆を愛する    比す ・・・私情に従って人に親しむ

■ ※ 字義 : 「比」は人が 2人並ぶ形、「北」は人が背を向けている形
“衆星北に拱〔むか〕うの象”(白蛾) ・・・上卦の坎を北、下卦の坤を多くも衆・順うとします。 ※ “君子は南面し諸侯は北面して期す”(孟子)

○ 大象伝 ;「地上に水あるは比なり。先王以て万国を建て諸侯を親しむ。」
(下卦の坤地に上卦の坎水があって、地は水を含み、水は地を得て流れ、地と水が相互に輔〔たす〕け合って、すべての生命が楽しみ親しんでいる状態です。この象を観て、古の賢王は、国を区画して諸侯を封じ、参朝させて親密を深めました。〔諸侯も 王の徳を奉じ、民を教化・育みました。このように、水が地に親しむように、天下は上も下も心を一つに家族のようにおさまるのです。〕)


《 9 & 10 のペア 》

9. 小畜 【風天しょうちく】  は、すこしくとどめ、たくわえる

● 少しく蓄える ・・・「小」は少、陰が良いの意。 「畜」は、(1)留〔とど〕め (2)貯〔たくわ〕え (3)養う。( ※ くさかんむりで蓄える、生をつけると畜生で動物の意)、 省察・内省の卦

   「密雲雨ふらず。わが西郊よりす。」(卦辞) ・・・・・ ■ 参照

cf. 「需」は、雨(を待つ現状)をプラスイメージを捉え、「小畜」は、うっとうしく嫌な気分、現状への不満といったマイナスイメージで捉えていると思われる。
  (by 高根)

■ 上卦 巽風、下卦 乾天。  
・ 小畜(少しく畜止)の字義通り、巽の一陰(4爻)が、2陽を背負い、乾の(上に向かってくる)3陽を畜止している象。山天大畜との差は、上卦が「艮山=陽」か「巽風=陰」かの差(陽は大で、陰は小)

「密雲雨ふらず。わが西郊よりす。」(卦辞) ・・・1陰(4爻)だけで弱く(1対5)、陰陽交わらず雨ふらず。 2・3・4爻にて「兌」=天上の雲・西方位

 

【☆参考研究】 易辞の作者・「周の文王」に想いをはせてみると ・・・・
                              ( by 鹿島秀峰 『易経精義』 )

A) 殷の紂王〔ちゅうおう〕にユウ里〔ゆうり〕に囚われている文王が、殷の西方、我が「」の空を眺めて、天下万民に潤いの雨を施すことが出来ない、囚われの身を嘆息して表している。

B) 上卦 巽を紂王の陰(よこしまな)命令とし、それが下卦 乾の天下経綸の理想をストップさせている象。

C) 陰に小なるものが文王で、乾の陽大なるものを紂王ともとれる。陰陽和せず慈雨至らないの意。

D) 4爻 の1陰、また上卦 巽をもって利〔さと〕い女とするので、紂王の妃で、毒婦の異名となった姐己〔だっき〕とも見られる。陰の身で乾の王 = 紂王を畜止し、「月」の身で「太陽」とまごう権勢をほしいままにした。

○ 大象伝 ;「風天上を行くは小畜なり。君子以て文徳を懿〔よ〕くす。」
(上卦 巽風が、下卦 乾天の上を吹いている象。つまり、密雲あれども雨降らずの状態で君徳は天下国家を潤せない状態です。この象をみて、君子は、〔やがて時を得て徳の潤雨が万民に及ぶ時に備えて、武徳の剛に対して〕、柔の文徳を立派なものとし〔“徳の美しさ”を実現するよう〕修養するように専念するのです。)

10. 履 【天沢り】  は、ふむ、ふみ行なう

● 虎の尾を履む危うさ、セーフ。女性裸身・色情の卦、色難注意。

・ 「履とは礼なり。」(序卦伝) ・・・ふみ行う、礼を踏む、礼にかなった行動をする
                        ※ 履は礼と同意同義

・ 「虎の尾を履〔ふ〕むも、人を咥〔くら〕わず。亨る。」(卦辞) :柔よく剛を制する象

■ 1)“虎の尾を履む如き意”(白蛾)  乾天は☆虎・兌は少女
    ☆虎 : A)上卦・剛強な乾の象から虎。上爻が首、5爻が体、4爻が尾。
         B)上卦乾を虎の体、3・4・5爻を巽で“長い”とし揺れる尾の象。
         C)全爻で虎の身体、2・3・4爻の離をもって文様とする象。
  2)“柔よく剛を制す”るの象。
  3)上卦の剛に対し、下卦は柔・柔和に随う象。
  4)女子裸身の象。1陰5陽卦、3爻(腰部)陰にて凹む。
           cf.「地山」 ・・・男子裸身の象(1陽5陰卦)
   ※ 乾天=神  と  兌沢=少女

○ 大象伝 ;「上〔かみ〕天にして、下〔しも〕沢なるは履なり。君子以て上下を辯〔わか〕ち民の志を定む。」
(上卦には最も高いものである天があり、下卦には最も低いものである沢があります。この象をみて、君子は、上下の身分・地位を正しく弁別し、礼儀の道を明らかに定め、強い者・弱い者万民が平穏無事に過ごせるようにして、その志を安心させるのです。)


《 11 & 12 のペア 》

11. 泰 【地天たい】  は、やすらか

3陰3陽の基本卦、 12消長卦 (2月)

● 安泰・泰平、天地交流し男女和合す、賓卦・裏卦とも「否」・先々(近未来=上卦と下卦の入れ替え)も「否」、“治にいて乱を忘れず”、女性上位、房事過多、易者の看板

・ 「小往〔ゆ〕き大来る。吉、亨る。」(卦辞) ・・・A)天地のあるべき位置が逆である
                          B)小は陰で大は陽、陽は上り陰は下る

■ 外卦 坤地は陰(=柔)、内卦 乾天は陽(=剛)
  1) 天地交流 :天は上に地は下に、暖かい陽気は上に冷たい陰気は下に行こうとする 
     ・・→ 交流し、合体融合の象。成就の象。懐妊の象。
  2) “外柔内剛”(と “内柔外剛”=「否」卦)の象。
  3) 女性上位の象。坤地 陰の女性が、乾天 陽の男性の上に位置している。
  4) “健全なる精神は健全なる肉体に宿る”の象。( by 高根 ) 
     ・・・坤の肉体の内に乾の(乾善なる)精神あり。

○ 大象伝 ;「天地交わるは泰なり。后〔きみ〕以て天地の道を財成〔さいせい〕し、天地の宜を輔相〔ほしょう〕し、以て民を左右す。」
(上に位置する天の気は下って地に、下に位置する地の気は上って交流します。この象にのっとって、君主〔 =后・天子、5爻の陰〕は、天地自然の事柄・道をホドよく整え、天地の義〔あるべき道〕を輔け補うようにして、天下万民の生活の安泰を図らなければなりません。)

  ・ 財成=裁政、裁成、素材を整え完成したものとする
  ・ 宜=義、よろしい適するところ
  ・ 輔相=輔も相も助けるの意、左右も同じ

12. 否 【天地ひ】  は、ふさがる

3陰3陽の基本卦、12消長卦 (8月)

● 八方塞がり、天地交流せず男女和合せず、賓卦・裏卦とも「泰」・先々も「泰」

“君子の道塞がって小人はびこる”、冬も極まればやがて春になる

“否泰は其類を反するなり。”(雑卦伝) :「泰」の“外柔内剛”と「否」の“内柔外剛”、先々(近未来)と裏卦(過去)の対応関係

・ 「否はこれ人に匪〔あら〕ず。」・・→ 匪人(罪人の意)に塞がる (by 安岡正篤)
                       「比」の3爻辞も 「比之匪人」

たかね研究 : ・ 韓国旗(テグキ)・太極図 ・・・上部が陽(赤色・乾天・坎水)、
           下部が陰(青色・坤地・離火)
・ 九星気学 ・・・ 中宮〔ちゅうぐう〕に回座している状態の時、“八方塞がり”の語源
※ 今の時代 ・・・「否」・「蒙」のくらい時代 、“暗黒時代”、“心の蒙〔くら〕い時代”
    ・・→ 啓蒙=心の蒙きを啓〔ひら/てら・す〕く “真儒協会”

■ 外卦 乾天は陽(=剛)、内卦 坤地は陰(=柔)
  1) 天地交流せず :天の気は上昇し地の気は下降しようとする 
      ・・→ 天地は交流しない。隔たり、塞がり、通じない象。
  2) “内柔外剛”と“外柔内剛”(「泰」卦)の象。
  3) 男性上位の象。
  4) 「人に匪ず」 :内卦に坤の肉体、外卦に乾の精神 
    (健全なる精神が宿らぬ肉体、精神の宿っていないスポーツマン。 
     スポーツマンシップとは何か?)
  5) “月 霧裏に臓〔かく〕るるの象”(白蛾) :乾を月・君子とし坤を霧・小人とみます。
    「小人の道長じ、君子の道消するなり。」(彖伝)

○ 大象伝 ;「天地交わらざるは否なり。君子以て徳を 倹〔つづまやか(約まやか)/おさメ :つつましくするの意〕にし難を辟〔さ〕く。栄するに禄を以てすべからず。」
(天と地、交流しないのが否です。この象をみて、君子は自分の才知や徳を包み隠して控え目・つつましくすることで小人からの難〔ジェラシー〕を避けるようにしなければなりません。そして、たとえ、名誉や地位に対しても心を動かしてはいけません。「否」は小人が闊歩〔かっぽ〕する時です。目立つ行動や地位にあれば、小人から害されます。時をまって自重すべきです。)

※ 小人の道長じ、君徳行なわれない ―― 小人闊歩する時
              ・・・今の時代・我国のように思われます (by 高根)


《 13 & 14 のペア 》

13. 同人 【天火どうじん】  は、したしむ

帰魂8卦

● 志を同じくし多くの人が集まる、一致団結、大同団結

・ 「同人于野」(卦辞) ・・・広く同士を天下にもとめて、おおいに文明を発揚する象

cf. “食客〔しょっかく〕三千人”(『史記』・孟嘗君〔もうしょうくん〕)
   「四海の内、みな兄弟なり。」(『論語』・顔淵第12)

■ 下卦 離卦、上卦 乾天。 離は文明・知性の明、乾は剛健実行力に富む。すなわち、知性と力を併せ持つ。

・ 1陰 5陽卦。1陰は 2爻の陰位に位し、下卦の中爻を得て中正。そして、5爻の陽位には陽爻が位し中正。2爻と5爻は、正しく応じている。(2爻は、初爻と3爻とそれぞれに比してもいる)


○ 大象伝 ;「天と火とは同人なり。君子以て族を類し物を辨〔べん〕ず。」
(乾天は天にあり、離火は燃え上がる火であり太陽です。両者の性質は、同じようですので、同人と名づけます。天と太陽が一体化しているように、乾の剛健な行動と離の文明な才知は一体化すべきものなのです。それでも、全く同一・一体というわけではありません。人や物も同様です。
これらのことにのっとって、君子は、治にいて乱を忘れず“遠慮”して一族・同族を類集し、長短・相違に応じて、あるいはまとめあるいは分け弁別するのです。)

14. 大有 【火天たいゆう】  は、大いに有〔たも〕つ

3大上爻  〔大有・大畜・漸〕、帰魂8卦

● 中天の太陽、天佑あり、順天休命」(大象)
易は、陰を小 陽を大とする。大有は、陽を有つ意(=盛大)。(大いに有つと、大いなるものを有つの意)

・ 2爻 : 「大車以て載〔の〕す。」・・・A)ロールスロイスに財宝を山と積むようにーー。
            B)重荷を積んでゆくようにすればーー。 「積中不敗」(象伝)
cf. 「人の一生は、重荷を負うて遠き道を行くが如し。・・・ 」(徳川家康)

・ 上爻:「天よりこれを祐く。」・・・天の配剤、384爻中の最良

■ 下卦 乾天の上に、上卦 離火(=太陽)。

1) 日、天上に輝く象。
2) 1陰 5陽卦 :5爻の1陰の天子は、大有の主爻。また、離の主爻。陽位に陰爻あるは柔和な徳。離の明徳と中庸の徳を兼備し、正応・正比。他の 5陽の剛健な賢臣たちが随従している象。心を1つに集めている象。

※ 離の中爻の陰は、離の主爻であり中徳を持つ。なぞらえれば、離=炎 の中心は、虚にして暗く燃えていない、陰です

○ 大象伝 ;「火の天上に在るは大有なり。君子以て悪を遏〔とど〕め善を揚げて、天の休〔おお〕いなる命に順う。」
(離火が、乾天の上にあるのが大有です。離の明知・明徳と乾の断行です。この象にのっとって、君子は、悪に対しては 刑罰をもってこれを防ぎ止め、善に対してこれを称〔たた〕え揚げ賞し登用するのです。このようにして、 天の真に善にして美しい命に順うようにつとめるのです。〔為政の道ばかりでなく、修身の道もまた然りです。〕)

                                          ( 以 上 )


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