vol.2の続きです。
《 23 & 24 のペア 》
23. 剥 【山地はく】 は、はげる・みだれる。
準4難卦、 12消長卦 (10月)
● 身心のはがれ(「傷官〔しょうかん〕」・・・身心のメス)、“退勢の極致”、ガン・
かいよう注意 ※ 賁が破るといった方向にいった時
■ 上卦 艮山、下卦 坤地。
1) 12消長卦にて、陰が上昇し上爻に1陽だけが踏み止まって残っている象。
下の5陰がせまり、その1陽も剥がれ落とされようとしている象。累卵の危機。
2) “旧を去って新生ずるの意”(白蛾) ・・・12消長卦にて、
上爻の1陽は剥がされ尽くされてしまうが、やがて再び1陽生じ
“1陽来復”の「地雷復」となる。
3) 陰の小人(達)が勢いと数を増してきて、君子を追い出し、
残るはただ一人の君子のみ。
4) 高い山(艮)が崩れて、地(坤)に附着した象。
5) 地に山ある象。坤は陰柔薄弱、風雨により土台が剥落して艮山不安定、
崩壊の成り行きを示す。
6) 1陽5陰卦、1陽崩壊寸前にて男性苦労の象。
○ 大象伝 ;「山の地に附くは剥なり。上は以て下を厚くし宅を安んず。」
(艮山が坤地に付いているのが剥の象です。これは、山が崩れて平地になろうとしているのは、地盤が薄くて不安定だからです。地盤が堅固であれば、山もまた安泰なはずです。
君子たるものは、この象にのっとって、上の立場にあるものは、天下万民の生活に厚く恵みを施し豊かにするように努め、そうすることで、自分の居る地位をも安泰にするよう心がけなければなりません。)
24. 復 【地雷ふく】 は、かえる・くり返す。
12消長卦 (12月)、 (陰暦11月・冬至の卦)
● スプリング・ハズ・カム〔 Spring has come. /春は来(き)ぬ=春が来た、
今は春です〕
“一陽来復(福)”・・・冬からやっと春の兆し、出直し、 ※ ルネサンス
明治の維新 ・・・幕府の引退、近代日本の世界史上への躍進
・ 「復はそれ天地の心を見るか。」(彖伝)・・・陰陽の消長・循環、
偉大なる天地自然の摂理・営みに対する畏敬の念!
※ 人間社会においてもあるでしょうか?
・ “復は反〔もど〕るなり”(雑卦伝) ・ “剥すること上に窮まれば下に反〔そ〕る。
故にこれを受くるに復を以てす。”(序卦伝) ・・・
賁,剥すれば一転して復(“文芸復興)”
☆ たかね研究 : 「復」=ルネサンス (仏・英) Renaissance
(伊)リナシメント / 再生・文芸復興
・ 西洋(14−16c): “世界と人間の発見”(Burckhard 〔ヤコブ・ブルクハルト〕)
・・・中世“暗黒時代”から復活、近代への幕開け。
ギリシア・ローマ古典文化の再生・復活、
プラス・アルファー(当時の東方文化) =ルネサンス
・ 東洋(21c)の文芸復興〔オリエンタル・リナシメント〕・「温故知新」
・・・日本の現代“蒙の時代”― 準暗黒時代 /
(1)儒学文化のルネサンス
(2)日本的なるモノ(平安・江戸時代の再考)
cf. 理想社会〔ユートピア〕・理想状況を過去にもとめる(温故)のは東洋流
■ 下卦 震雷、上卦 坤地。(「剥」の綜卦)
1) “一陽来復”:12消長卦、1陽5陰卦。「剥」の1陽が剥がれ尽くされ、
坤地となった大地に1陽が戻ってきた象。
2) リーダー〔指導者〕のいない民衆(坤地)の中に、1陽のリーダー・
君子が戻ってきた。復活、新しい局面が拓けていく。
3) “地を掘って宝を得るの象”(白蛾) ・・・地は外卦坤、宝は内卦震の象。
掘るは震の動から。
○ 大象伝 ;「雷の地中に在るは復なり。先王以て至日に関を閉じ、商旅行かず、后〔きみ〕は方を省〔かえり〕みず。」
(震雷が坤地のに在って、雷鳴を発するにいたらぬ象が復卦です。つまり、雷の気・陽の気がまだ生じたばかりで弱いので、これを大切に養い育ててゆかねばなりません。
そこで古のよき王は、一陽来復の日にあたる「冬至」の日〔天文上の年始〕には、天下遍〔あまね〕く安静に活動を休止しました。例えば、関所を閉ざして、商人や旅人も足止めしました。また、天子(君主)も四方への巡視を行なわないで静かに過しました。 〔これらは全て、安静にして将来の善き大計を練り、弱い1陽を養い育てようとする意図からなのです。〕」
・ 后=君主 ・ 方=政治
《 25 & 26 のペア 》
25. 无妄 【天雷むぼう】 は、うそ・いつわりのないこと。
精神性3卦
● “無為自然”(老荘)の精神 ・・・ 無心にして人為・作為を用いないこと
※ 无は無で 妄〔みだ〕り無いの意。至誠。天地自然のまま。
“自然の運行”、生まれたての赤ちゃん、神意に逆らえば天罰てきめん、
“随神〔かんながら〕の道”(神道〔しんとう〕)
・ “无妄は災いなり”(雑卦伝):天の命、大自然の摂理に対する畏怖を示したもの
・ 「大いに亨りて以て正しきは、天の命なればなり。」(彖伝)
「大亨以正、天之命也。」 → 「大正」の出典、他に「大畜」卦彖伝、「臨」卦彖伝
cf. 横山大観の「無我」 ・・・無心
■ 上卦 乾天の下に震雷。
1)落雷の象。不慮の災難の意
2)上卦乾は天行、下卦震は動・春・生命 ・・→ 天行により四時の変化があり、
妄〔みだ〕りなく万物がそれに従ってゆく。
3)「天地否」【天/地】の初 に外から1陽が来て无妄となったと見る。・・→
「剛 外より来りて内に主となる。」(彖伝)
○ 大象伝 ;「天の下に雷行き、物与〔みな〕无妄なり(物ごとに无妄を与〔あた〕う)。先王以て茂〔さか〕んに時に対し万物を育う。」
(乾天の下に震雷が進み行く象が、无妄です。つまり、天の健全な運行に従って、万物は生まれ生長・発展してゆくのです。世界のあらゆるものが、この自然の法則・原理に従って運行しているのです。
古のよき王は、このことに鑑み、“天の時”に従い対応して、しっかりと成すべきことを成し、万物万民の育成に努めたのです。)
26. 大畜 【山天たいちく】 は、大いにとどめ・蓄えること。
3大上爻
● 大は陽・陽徳、“千里の道も一歩から”、継続の吉、“大器晩成”
・ 「日〔ひび〕にその徳を新たにす。剛上りて賢を尚ぶ。
能く健を止むるは、大正なり。」(彖伝)
「日新其徳」=※ “日新”
cf. 「苟〔まこと〕に日に新た日々に新たに 又日に新たなり。」(『大学』)/
「剛上而尚賢」=陽爻が上爻に上っているのはの意/
「能止健、大正。」(立派に健すなわち乾の尊いものを止めているのは、
大いに正道に適っています。)=※ 「大正」の出典、
他に「无妄」卦彖伝、「臨」卦彖伝
・ 上爻辞 「天の衢〔ちまた〕を何〔にな〕う、亨る。」 ・・・運気盛大、山の頂上
■ 下卦 乾天は、尊い・財貨・仁徳、上卦 艮山は、家・身体・止めるの意。
1) 山中に天の気が蓄積されている象。家の中に財貨ある象。
2) 大人君子が大徳・大才を蓄えていて動ぜぬ象。
3) “金厳中に在るの象”(白蛾) ・・・金は乾の象。厳〔いわお〕中は、
艮が上卦にある象。君子が才徳を蓄えて時機到来を待っている。
○ 大象伝 ;「天の山中に在るは大畜なり。君子以て多く前言往行を識〔しる〕し、以てその徳を畜う。」
(乾天のパワー〔気〕が 艮山の中にあって、しっかりと蓄積されているのが大畜の卦象です。君子たるもの、この象にのっとって、古の賢人たちの教えや行いを省みて認識し〔止め〕、その徳を養い蓄積するように努めるのです。)
《 27 & 28 のペア 》
27. 頤 【山雷い】 は、あご・おとがい。
遊魂8卦、 似離で空虚
● 身心ともに養う、演説、“口は災いのもと(禍の門)”、“欲望の問題”、食養生、
更年期・生活習慣病
・ 「頤を観てみずから口実を求む。」(卦辞) ・・・養うモノ、口に入れるモノ
※ 「口実」の語源 ―― (通例言い訳、弁解の意)
・ 4爻辞 「虎視眈々」〔こしたんたん〕 ・・・虎視するように熱意をもっての意
■ 下卦 震、上卦 艮。
1) 雷が山下に動くのは、草木を発生・養育せる象。
2) あけた口の象。頤は おとがい・上あご(艮の1陽)と下あご(震の1陽)のこと、
その間の陰爻は〔空虚〕歯の象意。→ 養う(正しく心と体を養う)=頤養の正道
cf. 貝原 益軒 『養生訓』 /
安岡 正篤著 『易と健康(下) ・ 養心養生をたのしむ』
※ 高齢社会進展の現在、“頤養の道”をしっかり考えたいものです。(by高根)
○ 大象伝 ;「山下に雷あるは頤なり、君子以て言語を慎み、飲食を節す。」
(艮山の下に震雷があるのが頤の卦です。艮山は止まって動きませんが、内にエネルギーがあって〔震が動いて〕万物を発生・育成する象です。 君子は、この象にのっとって、禍の基となる言語を慎み、健康の基である飲食を節して、しっかりと自らの徳と身体を養うのです。)
※ 口入れ(飲食)、口だし(言語・失言)を重視!ご用心!
太っているリーダーはダメ ?! ・・・・・・・(by.高根)
28. 大過 【沢風たいか】 は、大いに過ぎる。
遊魂8卦、 似坎で悩み多し
● 大(陽)が過ぎる 「過」は“不及”の反対、 過食・飲み過ぎ・過労死・房事過多
・ 「棟撓〔むなぎたわ〕む」(卦辞)・・・棟木は屋根を支える横木
・ 「クツガ〔くつが〕えるなり」(雑卦伝)・・・家 倒壊の危機
・ 2爻:老夫、若い妻をもらう(良い)、5爻:老婦、若い夫をもらう(良くない)
・・・老夫と老婦とでなぜ違うか?考えて見ましょう!
cf. 「過ぎたるは猶、及ばざるが如し」(『論語』・先進第11) =「中庸」
・・・ 「過」と「不及」とどちらがまだ良いか? → 「不及」
・・・ 本来、草木を養育すべき水沢が、大いに過ぎて滅失させる
(水も多すぎると植物を腐らせる。)
“過食”・“過色”・・・・ 本来良いものも 過ぎるとダメ
■ 下卦 巽風、上卦 兌沢。
1) 似坎〔にせかん〕にて、坎の洪流・氾濫の憂い。/
水中に風木の象にて洪水や沈没。
2) 棟撓む象。棟(2・3・4・5爻の4陽)が強すぎて、両端の柱(初・上爻の2爻)
弱く下に曲がる。 下卦巽木、上卦兌は倒巽で木。
巽は長い・調えるで4陽強剛で棟の象。/大坎の似象で、坎には棟の象あり。
撓むも坎の象(凹む)。/巽は曲がる、兌は毀折から撓むの象。
※ 2陰4陽の卦は15卦あるが、大過は陽4つの爻が中央に結集していて過大。
3) 君子栄えて小人衰えている象。 下卦巽は順う、上卦兌は和らぎ悦ぶ。
2爻・5爻は陽爻にて剛強・中庸の徳。
4) 巽木が兌沢の下に埋もれて、腐ってゆく象。
5) 巽の船が、兌沢の中に沈没した象。
6) “常山の蛇の如き象”(白蛾) ・・・「常山の蛇その首を撃てば則ち尾至り、
その尾を撃てば則ち首至り、その中を撃てば首尾共に至る也」(『孫子』九地篇)
・・・上・下に口あり、中は全て陽で剛強。
○ 大象伝 ;「沢の木を滅すは大過なり。君子以て独立して懼れず、世を遯〔のが〕れて悶〔うれ〕うることなし。」
(兌沢の下〔中〕に巽木が沈んでいるのが大過の卦です。本来、木を養育する水も、大いに過ぎれば木を〔腐らせて〕滅ぼしてしまいます。
君子は、この象にのっとって、〔リーダーの立場にあれば、人に過ぎたる行いをするように心掛ける。〕危急存亡の時、〔濁世にあっても、洪水のような非常事態にあっても〕 毅然として自主独立して、恐れ動揺することなく、また世を遯〔のが〕れ隠れて憂悶〔ゆうもん: うれい・もだえる〕することもないのです。)
※ 「独立不懼」 cf.「独立自尊」(福沢諭吉)
※ リーダー(指導者)は、ブレてはいけません。(‘09 麻生内閣)
続きは、次の記事(vol.4)をご覧下さい。