吹田市立博物館・講演 『 むかしの中国から学ぶ /【全6講】 』

【第3講】 §.「 陰陽相対(待) 」      (‘11.6.11 )

cover_20110611

(※本講は、私の教材・資料を用いて私の指導のもとに、
高弟の嬉納/汐満 両女史に分担して講義を担当してもらいました。
汐満先生は、プロのカラーアナリストとして第─線で活躍されてもおいでです。
講義の残り時間で、受講生の希望者を募って
パーソナルカラー 〔自分色〕の診断実演を、
オリジナル・ドレープ〔診断用色布〕を使って行いました。
とても好評を博しました。)



《§. はじめに 》

─── 受講のみなさまへ、陰陽相対(待)論について ───
                                (高根 秀人年)

 東洋思想(儒学)のみなもとの思想が 「陰陽相対(待)論」 です
具体的には、易学(『易経』)の思想です。

今からおおよそ 3000年(?)ほども前の古代中国に発祥いたしました。

そして、この古代中国の思想・文化は、
そのまま古〔いにしえ〕のわが国が受容・吸収いたしました。

日本の精神文化のルーツともいえましょう。


 「陰陽論(二元論)」 とは、すべて(宇宙)のみなもとは、「陰」と「陽」、
動物であれば「雌〔し/女性〕」と「雄〔ゆう/男性〕」からなるとするもの
です。

普遍〔ふへん〕的真理です。

現代文明の最先端技術であるコンピューターの原理も
“二進法” (1と0、オンとオフ)です。  易と同じです!


 そして更に、陰陽論にとどまらず「相対(待)論」と称されているのは、
単なる二元論ではなく(陰と陽が)相対的に
変化」〔チェンジ:change〕する ということなのです。

ここが、東洋思想の非常に “深い”ところなのです。

結論的にいいますと、この 「変化」とその「変化への対応」 こそが、
易(儒学)と老荘の思想(東洋の二大源流思想)のキーワードです。


 「陰陽相対(待)論」は、思想・哲学(=形而上学〔けいじじょうがく〕)ですが、
医学(漢方・中医)や建築 をはじめスペシャリストの 実学 として、
体系立てられています。

そして、一般ピープルにとっても、身近な日々の生活慣習の中に根づいている のです。

はじめにあたり、2・3の例をご紹介しましょう。


例 その1)  相撲〔すもう〕 

 日本の国技・相撲は(── 近年は不祥事の連続ですっかり堕落していますが)、
その中には易学の思想がよく取り入れられ残されています。

陰陽」・「五行〔ごぎょう〕」・「易の八卦〔はっか/はっけ〕」 などの思想が
よく現れています。

「陰陽」の例にふれておきますと。

 相撲場は、 □・四角の土俵(=陰/=地)に 
○・丸(円)い俵(=陽/=天)
 から出来ています。

その土俵の中で、東方〔ひがしがた〕(=陽) と 
西方〔にしがた〕 (=陰)
の力士が戦う「天地人和」の競技です。

 「呼び出し」の行司〔ぎょうじ〕は、木村家と式守〔しきもり〕家の両家のみが担当し、
木村家は軍配〔ぐんぱい〕を持つ指を下に向け「陰」を示し
式守家は軍配を持つ指を上に向け「陽」を示して、陰陽を区別します。 

── そして「ハッケヨイ!」(= 八卦良い! ) と声をかけるわけです。


 ( 土俵・俵 説明図 略 )



例 その2)  国旗〔日・韓〕 

 国旗には、よくその国の思想や民族性が表れています。
日本と韓国の国旗をみてみましょう。


A. 日本(「ひ」の「本〔もと〕」)の国旗、日の丸

白ご飯をつめた真ん中にウメボシをおいた弁当を “日の丸弁当” といっていますね。
(ウメボシ弁当の、生活の智恵的その陰陽論的効用は後述しています)

 太陽信仰(神道〔しんとう〕/天照大御神〔アマテラスオオミカミ〕/
日の出づる処の国 ・・・)の国ですので、白地に赤い丸です。

白は神道の高貴な色〔インペリアルカラー〕、赤は太陽の色です。 補注1)
太陽は「陽」、丸(円)い形(=「陽」)でもあります。
白地は、四角で「陰」・大地

立体的に象〔かたど〕れば、地の上の天〔=空:中国では空のことを天と表現します〕です。

 私感(高根)ですが、このビコロール〔2色の配色・ツートンカラー〕は、
白という最高明度の“無彩色”=「陰」と
赤という最高彩度の“有彩色”=「陽」の組み合わせであるともいえます


補注1)
朱赤/黄味の赤。太陽の(見かけの)色を、
「黄」 or 「橙〔だいだい:オレンジ〕」 or「赤」 と感じるか、
表現するか、はお国柄によって異なります。



B. 次に、お隣の韓国は、アジア諸国の中で、儒学の伝統を色濃く残しています。

韓国の国旗(大極旗・テグキ)は、白地の中央に大極マーク、
四方に易の八卦のうち「四象〔ししょう〕」をあしらっています。

 大極マークは、上部が赤色、下部が青色で彩色され、
「陽」と「陰」とを表わしています。

寒・暖という“温度感”にもとづく陰陽です。
(温度の高いものは上、低いものは下です。) 

青(ブルー)は寒色(=「陰」)の代表、
赤(レッド)は暖色(=「陽」)の代表
です。

 「四象」は、「算木〔さんぎ〕」の象〔しょう/かたち〕で表わされています。  補注2) 

上(半)部に 「天 【乾】」 と 「水 【坎】」 の「陽(男性)卦」を位置づけ、
下(半)部に 「地 【】」 と 「火 【離】」 の「陰(女性)卦」を位置づけ、
対角線上に 「天 − 地 」 / 「水 − 火」 の
ペア卦(算木の陰陽が反対になります)をレイアウト〔配置〕しています。


 ( 説明図(国旗/四象) 略 )


補注2)
「算木」の象  棒状の黒=「陽」、棒状の黒の中央部が赤=「陰」。

この黒は天をあらわし(中国思想で天の色は黒です)、
「陰」の棒は地をあらわします。

「八卦〔はっか/はっけ〕」(小成卦)は、
この3つの算木の組み合わせの 8パターンです。

→ 【        】  
 なお、易卦(大成卦)は、6つの算木の組み合わせで構成されていて、
8 × 8 = 64 パターンです。

『易経』 64卦 です。


── 『論語』の中に、孔子の 「温故而知新
(故〔ふる/古〕きを温〔あたた/たず・ねて〕めて新しきを知れば、
以て師となるべし)の名言があります。

この講座で、(1) “むかしの中国”をルーツ(みなもと)とする
「陰陽相対(待)論」の理〔ことわり〕を、正しく温〔たず〕ねてみましょう。
 

→ そして、(2)  かつての日本がそれを、(創造的に)受容・吸収したことも学びましょう。 

→ そして更に、21世紀初頭の“グローバルな世界”・
“色の時代 〔カラーエイジズ: Color Ages〕”にあって、
(3) (欧米の)色の視点から、(東洋の)「陰陽相対(待)」の思想を捉えてみいたいと思います。

★“むかし(「/古」)の中国”を「」ねて、
」めて(一味加えて)、「」しいものを「」ってみましょう。



(この続きは、次のブログ記事に掲載しております。)


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