こちらは、前の記事の続きです。

研 究

其の1 ・・・ ≪ 【損・益】の卦 と「老子」 ≫ 

【 42 / 77 / 53 / 81章】

『易経』64卦、【山沢損:☶☱】(41)と【風雷益:☴☳】(42)。この【損・益】の対卦は、【泰・否】(11&12)と【既済・未済】(63&64) とともに、『易経』のペア卦を代表するものです。とりわけ、【損・益】の思想は、現実社会の政治と経済に直結するものです。

老子は、わけても、【損・益】の思想を自分の主張として取り入れて、展開して述べています。ここに、一般には隠者的思想と思い込まれているムキのある黄老思想の現実的・政治的・為政者的(指導者・リーダー論的)側面が、よく現れているといえましょう。

私見ながら、この「損・益」は、老子の思想のベースに易学があるという一つの例であると考えます。「五経〔ごきょう〕」の筆頭として儒学の専売特許のように位置づけられている『易経』です。が、私は、この中国最古の奇書は儒学の源流思想であると同時に、黄老の思想形成にもおおいにあずかって影響を与えていると考えています。

そして、現今〔いま〕の経済立国・日本は、あたかも、たそがれて行く先を失い道に迷い窮せんとしているが如き状態です。現状の不慈不善を正し、日本の近未来の(そしてその指導者〔リーダー〕の)あるべき姿を取り戻すためにも、この“損・益の思想”は現代の光をあてて再考しなければなりません。

さて、【損】と【益】は、“反卦〔はんか〕”/「賓卦〔ひんか〕」の関係です。つまり、相手が対面していて(正面にいる)、その相手から見ての卦(=卦を180度回転させれば良いことになります)です。平たく例えれば、自分が 一万円あげる・損する( ギブ:give/lose )のは、相手から見れば一万円もらう・得する( テイク:take/get )です。試合や勝負で、自分が負けるということは相手が勝つということです。非常に、理に適っています。

◇以下、【損・益】の卦・思想について、ポイントをいくつか説明してみましょう。( →詳しくは《参考資料》 参照のこと )

まず、一言確認しておきますと。易においては、「陽」を以て余り有るものとし、「陰」を以て不足なるものとします。そして、上卦は為政者(政府)・指導者〔リーダー〕・金持ちであり、下卦は大衆・一般ピープル・貧しい人々、と考えます。(両者の)相対的関係では、主体を下卦の大衆・一般ピープル・貧しい人々を基準に考えます。(民衆中心の思想〔民本主義〕)

 
blog_image_201217_1

No.1
【益】  《上を損して下を益す》

もと、【天地否 ☰☷/乾・坤】であったものが、上卦【☰/乾】の4爻〔こう〕の一陽が下がって下卦【☷/坤】の初爻に一陽(入れ替わって)生じ【☳/震】となった象〔しょう・かたち〕です。上の有余しているものから(減らし)下の不足しているところへ、一陽を益し与えています。【否】の塞〔ふさ〕がっている時(代)にあって、上より下に与え、皆が“悦び活気づき、巽順にして大いに活動します(=☳/震の象意から)”。

ex.企業活動: 寄付・利益還元・社会貢献・フィランソロピー・メセナ ・・・

※(4爻と初爻の移動関係は、“応爻”の関係ということです。小成卦=八卦を上卦と下卦の順で左右・横に並べるとその対応関係がよく解かります。)

【益】彖伝〔たんでん〕: 

「益は、上を損して下を益す。民 説〔よろこ〕ぶこと疆〔かぎ〕りなし。上より下に下る。その道大いに光〔あきら〕かなり。  ・・・・・ 益は動きて巽〔したが〕い、日に進むこと疆〔かぎ〕りなし。天は施し地は生じ、その益すこと方〔ほう〕なし。およそ益の道は、時と偕〔とも〕に行わる。」

No.2
【損】  《下を損して上を益す》

もと、【地天泰 ☷☰/坤・乾】の安泰の時にあって、下卦【☰/乾】3爻〔こう〕の一陽を減〔へ〕らして上卦【☷/坤】の上爻に益した象です。公共のため社会のために誠をもって自ら進んで減らし損するのです。損すべきときに損するに値する損をする、時幾が大切です。正しい損=投資はやがて反〔かえ/=返〕ってきます。自分の代でなくとも、子・孫の代にも反ってきます。。“情〔なさけ〕は、人のためならず”です。

ex.寄付・税金を納める・ボランティア(勤労奉仕)・国家会社に仕える、正しい投資 ・・・

【損】彖伝〔たんでん〕: 

「損は、下を損して上に益し、その道上行す。損して孚〔まこと/= 誠心〕あれば、元吉にして咎〔とが〕なし。  ・・・・・ 剛を損して柔を益すに時あり。

大象伝: 「君子以て忿〔いか〕りを懲らし欲を塞〔ふさ〕ぐ。」


(この続きは、次の記事に掲載させて頂きます。)


【大難解・老子講】 の目次は下のボタンをクリックしてください。

 ba_roushi


「儒学に学ぶ」ホームページはこちら
http://jugaku.net/

メールマガジンのご登録はこちら


にほんブログ村 哲学・思想ブログ 儒教・儒学へ

にほんブログ村