こちらは、前の記事の続きです。

研 究

其の2 ・・・ ≪ 「黄老」 と 「易」 と 「禅」(一休) ≫ 

【 黄老と易の思想 】

「老子」のオリジナル〔原典〕を読み、黄老の思想について考えておりますと、本質的に易の思想と同一(時代的に易が母胎)であることに気付きます。“易学”を「本〔もと〕」にしているとも、至れるもの(=形而上学)が易と「一〔いつ〕」であるともいえましょう。

具体的に両者の共通するものとしては、私が想いますに、A)「変化」と「循環の理」 / B)「逆説の真理(論法)」 / C)アプローチの方法としての“覚智の世界” 、がそれです。 A)B)とは、一体となって思想を形成し説き述べられています。以下、少々例示してみましょう。

※ 例1 ≪ 【泰・否】のペア ≫  ➔ 《 参考資料 》 3.参照のこと

まず、易の思想的原点・出発点は、“陰陽二元論(相対論)”です。陽=【乾〔けん〕】・天 / 陰=【坤〔こん〕】・地 です。この、陰陽の組み合わせの典型的・代表的な「象〔しょう・かたち〕」(3陰3陽の基本卦)が、大成卦【地天泰】 と 【天地否】とのペアです。

要するに、上に【乾】・天/下に【坤】・地が“自然”の善き有様であるようで、じつは全く逆であるということです。“上に天/下に地” では、「閉塞〔へいそく〕・“八方塞がり”、天地交流せず男女和合せず」【否】反対に“下に天/上に地”で、天は上に行こうとし地は下に行こうとして、「天地交流し、万物循環し、男女和合して安泰・泰平が実現」【泰】 します。

このことは、誰もが易理を学んで最初に感じる、新鮮な驚き・おもしろさ(興味深さ)ではないでしょうか。まさに、「変化」と「循環の理」を含んだ「逆説の真理(論法)」、平行思考ではありませんか。

※ 例2 ≪ 【離】・【離為火】 =「火」 ≫

八卦の【離】=「火」・64卦の【離為火】 も、“離れる”と同時に“麗〔つ〕く”と逆説的真理で説かれています。

そして、「火」は“はなれつき”移りつづけます。そのあたりのことが、『荘子』 に具体的に説かれています。

○ 「指窮於為薪、火伝也、不知其尽也」 (指は薪を為〔すす〕むるに窮するも、火は伝わる、其の尽くるを知らざるなり)。 ( 『荘子』・養生主〔ようせいしゅ〕/篇・第三)

難解な断章部です。指で薪をおしすすめて火を焚くことが出来なくなっても、火は伝わり続けまったく無くなることはないのだ、くらいの意味です。

『荘子』には、『易経』の教養がベースになっている箇所が多々あります。『易経』が最古の書であり、儒家の批判的立場から道家(老荘)が成立することを考えれば当然かも知れません。

『易経』によれば、【離】=「火」。「火」は、離れ麗〔つ〕くで、(木などの)モノにくっついて移ってゆきます。人間(生命)の不変なるもの(=「一〔いつ〕」なるもの)も、“徳”と“DNA〔遺伝子〕”の連続として捉えることが出来ます

※ 例3 ≪ 「火」と「水」 ≫

八卦の【坎】=「水」・64卦の【坎為水】 は、多くの古今東西の思想家・賢人が好んでいるものです。儒学思想(孔・孟)においてもそうですが、黄老思想においてとりわけ「水」は重要です。老子は、その思想の「象〔しょう〕」を「水」としました。至れる善は水のごとくして「道」に幾〔ちか〕い、“柔弱謙下”・“不争の徳”です。老子を「水」の思想(家)といってもいいでしょう。→ (※後述)

そして、「火」と「水」の関係においても、私は「逆説の真理(論法)」を強く感じるのです

五行思想では相剋〔ライバル〕の関係“水剋火”(水で火を消す)。その場合、火のパワーが強すぎると(「焼け石に水」で)水で消えない。あるいは水が蒸発してしまい“剋”が逆転する。 (・・・ 命学・九星気学・四柱推命など)

易の中論だと、水と火〔正・テーゼと反・アンチテーゼの異質・対立するもの〕を、統一・止揚して〔アウフヘーベン・中す〕、価値の高い新たなるもの〔合・ジンテーゼ〕を生み出します。〔ヘーゲル弁証法〕

元来 天地万物、皆 矛盾するところがあります。相反し、剋し合っておわるものではありません。 例えば、水と火の協力でお湯が沸き生米から 美味しいごはんを炊くことができます。男性と女性という全く異なる陰陽の融合で、子供という新しい生命が誕生いたします。

○ 「天地位を定め、山沢気を通じ、雷風相い薄(せま)り、水火相い射(いと)わずして八卦相い錯(まじ)わる。」 (説卦傳)

※ 例4  ≪ 循環の理 & “回帰・復帰”の思想 ≫

易64卦は、全体として宇宙・人生の偉大な 「変化」と「循環の理」です。シーンやスチュエーション〔場景や情況〕として各卦に示される「変化」と「循環の理」です。そして、そこには「逆説の真理(論法)」が展開されています。

易の思想は、無始無終、循環の理です。『易経』 64卦は、63番目が【水火既済〔すいかきさい/きせい〕】で、完成・終わりの卦です。 64番目、最終の卦が【火水未済〔かすいみさい/びせい〕】で、未完成の卦です。即ち、人生に完成というものはなく、また再び 1番目、上経最初の卦【乾為天〔けんいてん〕】(もしくは、31番目、下経最初の卦【沢山咸〔たくさんかん〕】)に戻り、こうして、永遠に循環連鎖いたします―― 円周的循環、黄老の“回帰・復帰”の思想です

循環の理法は、各卦の関係(対/ペア)にも現れています。たとえば、損・益、【山沢損】と【風雷益】。損と益は一つのもの、同一根です。日本語にも「損して得取れ」 という言葉があります。もともと、 「徳」=「得」 です。“Give and take.”〔まず与え、そして取る〕という英語がありますが、益(利益)を望めばまず損(投資)せよです。乾・坤、【乾為天】と【坤為地】もそうです。乾=剛(強)ならんと欲すれば、まず坤=柔になれです。

「陰極まれば陽、陽極まれば陰」の循環。 ―― 波状的循環です。これは、易の「之卦〔しか・ゆくか〕」の考え方(当該「爻〔こう〕」の陰陽を逆転して近未来の傾向を探る)の根拠にもなっています。

 

《 参考資料 》 3.

( たかね・「易経64卦解説奥義/要説版」抜粋引用)

《 11 & 12 のペア 》

11. 泰 【地天たい】  は、やすらか

3陰3陽の基本卦、
12消長卦 (2月)

● 安泰・泰平、天地交流し男女和合す、賓卦・裏卦とも「否」・先々(近未来=上卦と下卦の入れ替え)も「否」、“治にいて乱を忘れず”、女性上位、房事過多、易者の看板
・「小往〔ゆ〕き大来る。吉、亨る。」(卦辞) 
A)天地のあるべき位置が逆である
B)小は陰で大は陽、陽は上り陰は下る

■ 外卦 坤地は陰(=柔)、内卦 乾天は陽(=剛)

1)天地交流 : 天は上に地は下に、暖かい陽気は上に冷たい陰気は下に行こうとする
➔ 交流し、合体融合の象。成就の象。懐妊の象。

2)“外柔内剛”(と “内柔外剛”=「否」卦)の象。

3)女性上位の象。坤地 陰の女性が、乾天 陽の男性の上に位置している。

4)“健全なる精神は健全なる肉体に宿る”の象。( by 高根 ) ・・・坤の肉体の内に乾の(乾善なる)精神あり。


12. 否 【天地ひ】  は、ふさがる

3陰3陽の基本卦、
12消長卦 (8月)

● 八方塞がり、天地交流せず男女和合せず、賓卦・裏卦とも「泰」・先々も「泰」

“君子の道塞がって小人はびこる”、冬も極まればやがて春になる

“否泰は其類を反するなり。”(雑卦伝) :「泰」の“外柔内剛”と「否」の“内柔外剛”、先々(近未来)と裏卦(過去)の対応関係

・「否はこれ人に匪〔あら〕ず。」 ➔ 
匪人(罪人の意)に塞がる(by 安岡正篤)
「比」の3爻辞も 「比之匪人」

■ 外卦 乾天は陽(=剛)、内卦 坤地は陰(=柔)

1)天地交流せず : 天の気は上昇し地の気は下降しようとする ➔ 天地は交流しない。隔たり、塞がり、通じない象。

2)“内柔外剛”と“外柔内剛”(「泰」卦)の象。

3)男性上位の象。

4)「人に匪ず」 :内卦に坤の肉体、外卦に乾の精神 (健全なる精神が宿らぬ肉体、精神の宿っていないスポーツマン。 スポーツマンシップとは何か?)

5)“月 霧裏に臓〔かく〕るるの象”(白蛾) :乾を月・君子とし坤を霧・小人とみます。
「小人の道長じ、君子の道消するなり。」(彖伝)

小人の道長じ、君徳行なわれない ―― 小人闊歩〔かっぽ〕する時
・・・ 今の時代・我国のように思われます (by 高根)


(この続きは、次の記事に掲載させて頂きます。)


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